盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題) 作:樽薫る
地球への落下コースを進むユニウスセブン。
未だ、そこでの戦闘は止むことなく続いており、つまりはザフトとB.A.E.Lの共同戦線もまた然り。
掘削作業機メテオブレイカーを運ぶゲイツRや105ダガーをジンハイマニューバ2型が狙うものの、各員がそれを妨害する。
だが、集められたザラ派は背水の陣にて決死の攻勢に出ている故に、名だたるパイロットたちでもそう簡単なことでもないのだろう。
ジンがビームカービンを使って射撃するも、105ダガーがビームサーベルを持ってそれを弾く。
だが、さらに別方向から接近したジンが105ダガーをすり抜けてそのままメテオブレイカーを斬機刀で突き刺した。
105ダガーは素早くジンを蹴り飛ばしてビームライフルで射撃、破壊するもメテオブレイカーは使い物にならなくなる。
敵は数少ないメテオブレイカーを潰すだけでことが済むのだ、こちらとは条件があまりに違いすぎる。
「えぇいこんな奴らにっ!」
ディアッカがヘビーバスターの携行砲を連結させ、対装甲散弾砲を放ち三機のジンを同時に撃破。
『連合が邪魔をするな! これは我等コーディネイターのための!』
「コーディネイターのためになんかなるかよ、そんなことぉ!」
携行砲を分裂させると、接近するジンの斬機刀を回避したバスター。
即座に右腕部追加装甲からビームサーベルを伸ばし振るうが、ジンは僅かに背後に下がりその直撃を回避。
片腕が切断されるものの、やはり今の一撃で撃破されないのは手練れの証拠なのだろう。
「なんて奴らだよ、ジンでこうまで……!」
だが、バスターの脚部追加装甲のハッチが開き、そこから放たれた拡散弾がジンの体中を穿つ。
即座に反転し、ゲイツRがメテオブレイカーを設置したのを見てそちらに加速。
ジンが放ったビームライフルを肩部のシールドで受け止めれば、さらに白いザクファントム、イザークのザクがそのジンを斬り裂いた。
『固定よし!』
『よし!』
瞬間、メテオブレイカーが起動する。
ユニウスセブンの地表へと打ち込まれたそのドリル状の杭が、地中深くへと突き進み───ユニウスセブンに亀裂が奔った。
そして、地球に向かい加速する半分に砕かれたユニウスセブンは、さらにその半分ほどの大きさへと砕かれていく。
余波に巻き込まれないようにとユニウスセブンから一度距離を取るディアッカとイザーク、そして同じくジュール隊とディアッカの部隊の者たち。
それをモニターで見ながら、ディアッカは腕を突きだす。
「グゥレイト! やったぜ!」
『だがまだだ、もっと細かく砕かないと……!』
突如通信で聞こえた声に、ディアッカは目を見開く。
「あ……アスラン!?」
『貴様までなにやってる! こんなところで!』
『そんなことはどうでもいい! 今は作業を急ぐんだ!』
「あ、ああ……」
バスターと白いザクファントムに合流する通常カラーのザクウォーリア。
オーブとザフトとB.A.E.Lの三人、予想外の同窓会にディアッカはこんな緊急時だというのに笑みがこぼれてしまう。
それも仕方ないことなのだろうが……。
『わかっている! 言われるまでもない!』
『相変わらずだなイザーク』
『貴様もだ!』
「やれやれ」
新たなメテオブレイカーが運ばれてくるのを見て、ディアッカは再度イザークと、そしてアスランと共に護衛を開始する。
「あ、そういやアスラン、おっさ……うちの大将はそっちにいんのかよ」
『大尉か……ああ、共に“出撃”している』
その答えに、ディアッカは呆れたように溜息をついた。
「やっぱいんのか……こえぇ」
『ディアッカふざけてるんじゃないぞ!』
「いや、マジで怖い話なんだって……」
◇
「く、まだか……!」
赤きザクのコックピットで、ウィレーム・マクスウェルは顔をしかめる。
次いでメテオブレイカーを設置しようとしているゲイツRを確認するなり、そちらに加速しつつ近づくジンを確認し、そちらにビームライフルを向けた。
それに気づき回避しようとするジンではあったが、ウィルは既に銃口を逸らしており、そのまま放ったビームはジンを貫く。
『なっ、ミネルバ隊ね、そこのザク!』
藍色のザクが接近してくるが、ウィルはそのままメテオブレイカーを守る様に立てば、同じく藍色のザクも隣にやってきた。
「フッ……シホ・ハーネンフースか」
『この声っ、あなたまさかっ』
「一年ぶりだな、と懐かしんでる暇もあるまいよ……!」
イザーク・ジュールと出会うこともあれば、彼女と出会うことも然り。
B.A.E.Lとして諸々と活動はしていたのだから、そういうことも珍しくはない……それに、かの三隻同盟に最終決戦のみとはいえ参戦したイザークの副官ともなれば、だ。
接近するジンを確認し、そちらに加速。
「イザークたちとは離れてしまったか……いや、仕方あるまい」
『なにしてるんですか、貴方は!?』
「君らと同じさ、だからこうしてモビルスーツに乗っている」
ジンが振るった斬機刀を回避し、ビームアックスでその両腕を斬り裂くとビームカービンでその胸部を撃ち抜きつつ、ビームカービンを手放しジンの持っていた斬機刀を回収。
───斬艦刀! じゃなくて、斬機刀、だな。
さらに接近するジンへとそれを振りかぶり……投擲。
「大車輪ッ……!」
回転して飛んでいく斬機刀は、そのままジンを斬り裂き爆散させる。
ゲイツがメテオブレイカーを作動したのを確認。
シホのザクとゲイツ二機がウィルの元へと下がるなり、さらにユニウスセブンが破砕……。
「くっ、小さいかっ!」
申し訳程度にしか砕けなかったが、それ以上と欲張れば今度は破砕すらできなかったかもしれないだろう。
所詮どう語ろうと結果論にしかならないのだから、今は少しでも被害が減るであろうことを喜ぶべきなのだが、そんな心持ちでいられるほどウィルは自分に優しくはない。
砕けていくユニウスセブンの中、そこに“赤白のモビルスーツ”を見つけた。
独特のフォルムのモビルスーツは、モノアイを輝かせ、テロリストたちが使用していたジンハイマニューバ2型が持つ斬機刀に似た“刀”を持ち、ユニウスセブンの破片を破壊している。
いいや、だがウィルは知っている。
むしろ斬機刀の方が、その“
『あれは……』
ウィルの識る
それが偽装であるということすら…・・いや、パイロットすらも彼は知っている。
一瞬、目が合うような感覚を覚えるが、きっと気のせい、なのだろう。
───シホとは因縁も多少ある相手だが、“
「王道を行かぬ者、か……フッ」
『なにを?』
思わず出た独り言に、首を左右に振る。
「いや、そろそろ阻止限界点だ。撤退を開始する」
『ちょっと、なんであなたが仕切ってるんです!』
接近するジンをレーザー対艦刀で斬り裂きながら、文句を言うシホは、ザクをボルテールへと加速させていく。
離れた方で信号弾が上がるのが確認できるが、おそらく“
そこから撤退を開始するウィルとシホとゲイツ二機。
少しして、離れた位置に緑色のアークエンジェル級を捉えるウィル。
───アークエンジェル級デュナミス、ということは……。
「君らはボルテールに戻れ、イザークによろしく頼む」
『……了解です』
シホの少しばかり不機嫌そうな声を聴き、苦笑を零すウィル。
そのままユニウスセブンへと加速するなりすぐに、撤退を始める105ダガー四機と黒いバスターことヘビーバスターをモニターに捉えた。
その五機は、ウィルの乗るザクことマユ機を前に止まる。
───おい、赤ってだけで俺だと思うんじゃぁないよ。
「さすがに単純な思考がすぎるぞ、ディアッカ」
『アスランから話聞いてるっての……』
すぐに通信が返ってくるあたり、話を聞いてるとはいえ、ウィルであることを確信していたのだろう。
『ほら、さっさと戻ろうぜ大将、機体のことが心配ならイザークたちの艦の方に……』
「……いや、私もミネルバと共に地上に降りる」
『そうそう、地上に降り……はぁ!?』
『大尉なにを!?』
『アズラエル顧問カンカンですよ!』
それは非常に怖いのだが、むしろ逃げたいのだが、これは逃げるためではない。
むしろいつか帰らなければならないのだからここで帰る方が、“身の安全”のためではあるのだが、ここで目を逸らすわけにもいかないのは、諸々の問題があるからだ。
せめてこの後に、オーブに着く前になんとか緩和させたい問題もある。
今後のことを思えば、それが正しい道だと思っているのだ……エゴだとしても。
「すまないディアッカ、ム……アズラエル顧問にはなんとか言っておいてくれ」
『おいなんとかって……なんて言えってんだよ俺にぃ! てか三馬鹿もキレてんぞおっさん!』
非常に恐ろしいことが聞こえた気がしたが、止まればもう進めない気がするので、進む。
ディアッカたちを振り切り、ザクを加速させていく。
ユニウスセブンの破片はだいぶ砕けているのだが、おそらく被害が無し、という状況には至らないだろう。
それに“ロゴス”……否、“ロード・ジブリール”はコーディネイターを潰す戦争を起こしたくて仕方ないのだから、例え被害がなかったとしても戦争を勃発させるきっかけを生み出すことは間違いない。
ユニウスセブンから離れた位置に、ミネルバを確認するとそちらへと加速。
「むっ、敵か……!」
『逃すかぁっ!』
『これ以上はやらせんっ!』
もはやその意思もないのだが、彼らからしたら関係のないことだ。
このままユニウスセブンと共に燃え尽きる覚悟である。
だからこそ決死の覚悟でユニウスセブンへと近づくモビルスーツは叩くのだろうが……。
『コーディネイターの未来のため……なぜザフトが邪魔をぉ!』
「地球には山ほどコーディネイターが住んでいるだろうに、それともプラントのコーディネイター以外はコーディネイターではないと言うか……!?」
思わず感情的になるが、それもまた仕方のないことだろう。
ビームアックスを折りたたんだ状態で持ち、切りかかってくるジンの斬機刀を受け流し、素早く蹴りを打ち込み上昇しつつミネルバの方へと加速。
だが、それを追ってくるジン二機。
放たれるビームカービンを回避しながら、ウィルは停止してジン二機を迎え撃つ。
『くッ! あそこには俺の婚約者も、父さんと母さんだっていたんだ……!』
『俺の娘もだ! 連合が、ナチュラル共が核など撃つからに!』
まるで前大戦を思い出す。いや、彼らの“刻”は前大戦、それより前から止まっているのだろう。
だから、そのような聞き覚えのある、聞き飽きたような言葉をウィルに投げつけるのだ。
ウィルはビームアックスを展開、ジンのビームカービンを回避し、さらに接近するもう一機のジンの斬機刀を肩部シールドで受け流す。
『なぁっ!?』
驚愕するジンのパイロットだが……並のパイロットにできる芸当ではないのだから当然である。
そのまま、ビームアックスを振るってジンの上半身と下半身を真っ二つにしつつ、機体を蹴って離れ、爆風で加速。
もう一機のジンへと加速しつつ、ビームアックスを振るい真っ二つにした。
「貴様らと同じ境遇の人間を増やしてなんとするッ……!」
そして、再度爆発寸前の機体を蹴って、ミネルバへと加速。
徐々に機体の振動が激しくなっていき大気の摩擦でモニターが赤く染まっていく。
ユニウスセブンへと“タンホイザー”を向けるミネルバの上方へと位置を調整し、そのままそっと後部甲板へと着艦。
次の瞬間、タンホイザーが放たれユニウスセブンがさらに破砕された。
「なにが娘たちの、だ。同じ境遇の者を生み出すとなぜわからん……!」
───いや……。
「わからんか……そうだろうな。復讐などあれこれを考えてするものでもない」
復讐は、自分のためのケジメなのだ。それ以上でも以下でもない。亡き誰かのためでなく、自分のためだ。
それも、所詮はウィルなりの自論ではあるのだが……。
誰かを亡くせば、自分とてその道を進まないなどとは言い切れない。
自分自身にケリをつけるために、その道を歩む可能性もあるだろう……。
だが、そうならないために戦っているし、戦った。
さらに、タンホイザーが放たれてユニウスセブンの巨大な破片が砕かれた。
……あとは、待つのみだ。
「ザクには大気圏を突破する能力がある。幸運なことにな……だからアスラン、死ではないぞ」
どこか懐かしい感覚……“あの時”はモビルアーマーだったが、今度はモビルスーツ。
あの時も、今も、守るべき、守ると誓った彼女らを置いて、こうして目の前のことで必死だ。
自身の感情にあまりに従順で、身勝手なことだ。
今は良いが、いずれ“パイロットだけをやっているわけにいかなくなった時”が来たとして、自分はどうするだろうか、どうすることができるだろうか?
だが、それをリアルに想像できるほど、ウィルは大人というにはまだ若い。
若さ故の過ちを犯すにしろ、まだ遅くない歳だ……だが、ウィル自身が、そう思うことはない。この先もきっと……
「私はつくづくエゴイストだな……」
悪態をつき、苦笑を浮かべるウィルの顔に、額から流れる汗が伝った。
おそらく戦争は避けられないだろう。
ともなれば、やるべきことはまた一つだ。
世界の行く末は変わらなかった。
ならば……戦いの中で探すしかない。道を。
───また戦争が始まるか、憂鬱だな……ラウ……。
キリよく少し短めでした
斬艦刀の件はちゃんと「だい・しゃ・りぃん!」って言わせたかったですがキャラに合わないので割愛
サトーさんは絡んだらウィルが論破しそうなので絡みなし
次回はディアッカの災難、ぷらすα
そろそろヒロインと絡ませたいとこですが、もうちょっとかかるかも?
では、次回もお楽しみいただければです