盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題)   作:樽薫る

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刻に吠える

 

 ミネルバは無事に、地球の太平洋へと降下を成功させた。

 

 空でしっかりとアスランのザクとインパルスを拾い、ミネルバの甲板にいたウィルもまた艦内へと入り、着水の衝撃をしっかりと体で味わいつつ、さして懐かしくもないはずの地球の重力を懐かしむ。

 やはりどこまで行っても“地球の人間(アースノイド)”なのだと、妙な気分にさせられる。

 母なる地球を恋しく思うことは別段普通ではあろうとも、“ガンダム(こういう)世界”で生きていれば、地球にしがみつくということに妙な拒否感もあるのだ。

 

 ふと、一人で廊下を歩いているウィルだったが、見慣れた少女が視界に映る。

 

「マユ……」

「あ、ウィレームさんっ!」

 

 駆けてくる少女───マユ・アスカ。

 

 おそらく兄からカガリとの接触禁止令を出されたわけだが、残念ながら当然。

 だからここで会うのが意外ではあったが、それもまた運命だろう。

 ルート的には、おそらく甲板に行って海でも見る予定なのかもしれないが……そうなればカガリと鉢合わせることは明白。

 

「お疲れさまです。ザクで出たって、大丈夫でしたか?」

「あぁ……いやすまない。少し調整まで変えてしまったからな、扱いづらくなってしまうと思うが、損傷はほぼ無い。安心してくれ」

「い、いえそっちは別に……でも、ウィレームさん、やっぱりすごいなぁ」

「そんなことはないさ、私以上に上手くやる者もいる」

 

 実際、イザークやディアッカ、アスランたちの方が上手くやってくれていただろうとウィルは判断している。

 自分がやったことなどたかが知れていると……。

 格段に被害は減ったが、無くすことはできなかった。

 

「そんなことない。アーモリーワンでだって、宙域の時だって……ウィレームさんがいなきゃマユたちは」

 

 そう言いながら、悲しそうな顔をされてはさすがにウィルもこれ以上、自らを卑下することもできない。

 苦笑を浮かべ、サングラスをそのままに、そっとマユの頭を撫でる。

 くすぐったそうにする少女を前に、ウィルは手を降ろすと目的地であるブリッジに行くか少しばかり葛藤するも……。

 

「あ、これから甲板で海を見に行くんですけど、ウィレームさんも行きますか?」

「……そうだな。同行しよう」

 

 カガリたちの誘いを断っておいて非常に行きづらくもあるのだが、彼女らなら子供にせがまれたのだと理解してくれるだろうと、ウィルはマユに手を引かれるままにそのあとを追う。

 

 この後のこと、ウィルの識る歴史通りに進めばシンが再びカガリに噛みつくわけだが、この時間軸においてその可能性はほぼ皆無。

 彼はウィルが識る彼以上に大人だ。

 だからこそ、その可能性があればマユであり、そうなったらまた全員が傷つく羽目になる。それは避けたい。

 

 などと思考している内に、甲板に辿りつく。

 

「あ、お兄ちゃん」

「マユ……ウィレーム大尉も」

 

 シンが振り返るより早くマユがパッと手を離したおかげで、別に怪しまれることも無かった。

 彼もマユがウィルに非常に懐いていることを理解しているおかげだろう。

 ウィル自身も、シンと多少は打ち解けたおかげと思いたい。

 

「大尉、あんなに強かったんですね」

「ああいや、そうたいしたものではないさ、あのザクの性能のおかげだよ。相性も良かった……アスランも自身に合った機体であれば」

 

 ───さらに、迷いがなければ。

 

「私など足元にも及ばんさ」

「……そうなんですか?」

「戦ったことあるんですかウィレームさん」

 

 ───やべっ、あ、いやまぁ普通か。

 

「私もモビルスーツ乗りが長いからな」

 

 そう答えながら、ウィルは少し離れた場所にいるカガリとアスランへと視線を向けた。

 下の階層には他のクルーたちがいて、上にいるのはアスカ兄妹と自分、そしてカガリとアスランだけのようだ。

 ふと、無意識に聞き耳を立ててしまう。

 

 潮風に髪をなびかせながら、カガリが隣のアスランを見やる。

 その瞳には迷いが見えるが仕方のないことだろう。

 

「ウィ……レーム大尉から聞いた。ユニウスセブンの件、ザフト脱走兵はザラ派だったって」

「そうか、大尉が……」

 

 アスランも、どこか苦々しく言葉を吐き出す。

 

「たぶん、お前も色々と聞いたんだろうけど……」

「ああ、そうだな。聞いたよ、色々と……」

「でもっ、あの戦いは……あの時の戦いは、今でも間違ってるなんて思ってない。アスランも、そうだろ?」

 

 その言葉に、アスランは頷く。

 そこで首を横に振られてはウィルとしても立場が無くなるので、それでいてくれて安心はするが、やはり彼から感じるのは明確な迷いだった。

 別に父の取った道が正しいとかどうではなく、やはり“ナチュラルやコーディネイター”に縛られて戦っている者たちがいることに、そして未だ父を盲信する者たちが戦っていることに、だ。

 

 だからこそ、今回も……。

 

「だが破片は、落ちてしまったんだ」

 

 被害は“ウィルの識る原作(歴史)”ほど甚大ではないが、かといって軽いものでもない。

 バラバラになった破片は、各地に被害をもたらし、やはり地図の書き換えは多少なりとも必要になるだろう。

 エイプリルフールクライシスほどでないにしろ、二次被害は懸念される。

 

 そしてそれをやったのは、コーディネイターだ。

 

「俺たちは、止めきれなかった……」

「……そうだな。それでも、オーブに帰ったら、やれるだけのことはやるつもりだ。私だって……お前たちを、今回の戦いをこの目で見たんだ」

「カガリ……」

 

 一部の者たちがやったこと。

 

 それは確かだが、やはり人類に根強く“ナチュラルとコーディネイター”という大きな枠組みがあるのも事実で、これは“コーディネイター”がやったこと、になる。

 その思考である者は、“コーディネイターを許さない”だろう。

 奇しくも構図は、前大戦を思い出させる様相へと変化していっているように思えた。

 

「こちらも、B.A.E.Lもそれなりに現プラントに関しては擁護していくつもりだ」

「っ……大尉」

 

 ウィルがアスランの肩に手を置いてそう言うと、アスランはぎこちないながらも笑みを浮かべる。

 

「もちろん、ミネルバのことに関しても……しっかりとハルバートン提督に伝える。共に戦っていたデュナミスのエルスマン隊もきっと上手く伝えてくれてるはずだ」

「……ありがとうございます」

 

 アスランの弱々しいそんな言葉に首を横に振り、スッと視線をカガリ、そして下の階層にいるクルーたち、そしてシンに向けた。

 嘘偽りない、ウィルは自身の言葉を自身の口でしっかりと伝える。

 

「こちらこそ、感謝したいよ。ミネルバの皆にもな」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 月面、プトレマイオス基地。

 ムルタ・アズラエルの執務室にて、ディアッカ・エルスマンは苦笑を浮かべていた。

 

 アークエンジェル級デュナミスにて帰還した彼は、ありのままを報告し、面倒な書類を部下に回しながら、最も面倒というかやりづらい仕事を引き受ける。飄々としているせいで気にする者は少ないが、所謂貧乏くじを自ら引きに行ったのだ。

 そして、それに感謝する者は少ない。

 

 実際、自分ががなられるわけではないが、やはり心臓には悪いことである。

 

「へぇ~ふぅ~ん、なるほどぉ~♪」

 

 テーブルに肘をついて頬杖をつく、ルーズサイドテールのアズラエルはニコニコと笑顔を浮かべていた。

 片手の指が机をトントンと叩いているが、おそらく不機嫌でリズムは不安定……。

 

 後に帰ってくる彼の自業自得ではあるのだが、さすがに合掌したい気分にもなってくる。

 前大戦の後は公私に渡り世話になった相手であるのだから、それも当然なのだが……。

 

「また勝手に地球に降りたんですか……へぇ~♪」

「あ~なんつーか、い、色々とやることがあるみたいですよ」

「別に良いんですけどぉ、また『オーブにいます~』とか連絡が来たらどうしてやりますかぁ♪」

 

 控えめに言っても、目の前の女性───ムルタ・アズラエルの容姿は良い。

 

 ディアッカにも愛する恋人がいるわけだが、それでもそれはハッキリと言えるだろう。

 そして、背後の応接用のソファに座っているクロト、オルガ、シャニもまたそれぞれジャンルの違うタイプの美女揃い。

 そんな彼女らに囲まれて、愛される“彼”を、ディアッカも一時は羨んだものである。

 

「へぇ~まぁたおにーさん勝手にどっか行ったんだ……」

「戻ったらケジメつけさせてやる……」

「……搾りカスにする」

 

 今は、微塵も羨ましくはない……というより、他人の恋愛ごとや男女間のことには的確にアドバイスして上手く収めたりできるというのに、彼自身の立ち回りがあまりにヘタなように、ディアッカは思えた。

 もしかしてわざとやっているのではないかと疑いたくもなるが、わかっていてやっているあたりは、事実である。

 

 だがそれでも、譲れないものがあるのだろう。

 

 ディアッカは素早く踵を返し部屋を出ようとする。

 

「早くミリィに会いてぇ……」

「あ~ディアッカくん」

 

 小声でぼやいた直後、呼び止められる。

 

「は、はい……?」

「この後、ユニウスセブンの被害とかに関しましても色々とあるので、会議室ですから」

「自分も、ですか?」

「ええ、当事者ですから、当分睡眠時間は削られますね。私も貴方も提督も」

 

 ディアッカはガクリと崩れ落ち、床に手と膝をつく。

 そしてそんなディアッカを見てクロトは腹を抱えて笑い、オルガはアズラエルの方を同情するような表情で見やり、シャニは“お兄さん”に対する極刑を思考していた。

 そう、デスマーチが始まるのである。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 画面の中、ギルバート・デュランダルが演説をしている。

 

 壁一面に並べられた数十のモニターの中、別のモニターではユニウスセブンの破片落下による被害状況を報道しているが、当然ながらその被害は深刻。

 エイプリルフールクライシスを思い出させる状況に、プラントへの憎しみを再度蘇らせる者もいる。

 

 そして、いずれその真実が知れれば、その憎しみの炎はさらに燃え上がることであろう。

 

『この未曾有の出来事を、我々プラントもまた沈痛な思いで受け止めております。信じがたいこの各地の惨状に、私もまた言葉もありません。受けた傷は深く、また悲しみは果てないものと思いますが、でもどうか地球の友人達よ、この絶望の今日から立ち上がって下さい。皆さんの想像を絶する苦難を前に我等もまた援助の手を惜しみません』

 

 他のモニターに映し出されるのは、プラントによる被災地への支援活動の様子。

 さらに、別のモニター数個に映るのは、まったく被災やらと縁遠そうな初老の男や女が数名。

 不満そうなその表情は、十中八九プラントの動きのせいであろう。

 

『デュランダルの動きは早いぞ。奴め、もう甘い言葉を吐きながら、なんだかんだと手を出してきておる……支援を拒否してはこちらの立場も危ういからな、あやつめ……』

『だが、こちらにはこれがあろう。先ほどジブリールから届いた面白いものだ』

 

 モニターに映し出されるのは、ユニウスセブンでの攻防戦。

 ザフトとB.A.E.L、そしてザフト脱走兵の戦闘。

 他にもジンハイマニューバ2型による工作の様子……明らかにファントムペインに撮れないはずの映像もあるのだが、それはかの“一族”からもたらされたものだ。

 地球とプラントを煽るための材料。

 

 それを見て、笑う“ロゴス”の面々。

 

「そんなものはこのさいどうでもいい……!」

 

 数十のモニターの前、勢い良く叩かれるテーブル。

 その上に乗っていたグラスが倒れ、入っていたウイスキーがカーペットを汚す。

 近くにいた黒猫がビクッと震える。

 

『おいおいジブリール、これは最高のカードだろう』

「我々が真に許すべきでないのはコレではない!」

 

 別に、そこにいる面々は誰も“ユニウスセブンの落下”に対して怒りを抱いてはいない。

 実に『困った』とは思ったとしても、それ以上の感情はないだろう。むしろ、コーディネイターへの怨嗟を生むための重要な“因子(ファクター)”であると、得をしたような感情すらあるだろう。

 だから、ロード・ジブリールが激怒している理由はそれではないのだ。

 

「見なさいコレを!」

 

 大きく映し出されるのは、“赤いザク・ウォーリア”の戦闘映像だった。

 

『赤いな……それに素人目で見ても凄まじいと思うよ』

『してこのザフトの新型がなんだね?』

「赤いモビルスーツなのはまだ良いでしょう、しかし……! この動き、明らかに……っ!」

 

 ギリッと握りしめられた拳、そして噛みしめた唇、“赤い唇”にさらに濃い赤が滲む。

 

「“赤い悪魔”を模しているのです! 彼は、彼はッ、我々ナチュラルの希望ッ!! そして、すべてのコーディネイターを駆逐するべき存在ッ!! にも関わらずッ……奴らめ私達の当て付けにあんなものを持ちだしたのですよ!?」

『むぅ、まぁ君の言うこともわからんでもないがね』

『確かに、これは許すべきではない、のかもしれん……な?』

「そうです! 許すべきではないのです! その光をもってして奴らコーディネイターを滅ぼすべき存在を侮辱したのです。これは我々ナチュラルに対する宣戦布告と考えても良い!」

 

 拳を握り、高らかに宣言するジブリール。

 

「今度こそ奴らの全てに死を、です……青き清浄なる世界のために!」

 

 そして“彼女”は不敵に笑い、恍惚とした表情で両腕を広げた。

 笑みを浮かべるロード・ジブリールは、マイクも拾わぬような小さな声で呟く。

 

「そして、赤い悪魔をもう一度……」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 ミネルバの甲板にて、ウィレーム・マクスウェルは腕を組んで装甲に寄り掛かっていた。

 視線の先、アスランが何度もトリガーを引いて高速で出現し消えるターゲットを撃ち抜く。

 なんだか強く見覚えがあるし、なんなら“読んだ”覚えもある。

 

 まさかこの場に自分がいるなどと想像もしてなかったし、そのつもりもなかった。

 

 故に、僅かに動揺もしているのだ。

 

 ───アスラン、やっぱチートくせぇなぁコイツ。

 

「うわーすっご、同じ銃使ってるのになんで!?」

「銃のせいじゃない、君はトリガーを引く瞬間に手首を捻る癖がある」

 

 それを見ていたルナマリアがはしゃいだように声を上げる。

 訓練規定を甲板でやろうと言うところまでは良かったのだが、いかんせん成績が芳しくないルナマリアが、たまたま近くへやってきたアスランを半ば“挑発”に近い形で訓練に誘った結果がこれであった。

 横目で少しだけそちらを確認するも、気にせず自身の訓練を続けるレイ。

 今しがたそこに来たシンとマユも少しばかり驚いたように見ている。

 

「これがアスラン・ザラ……」

 

 そして、アスランに少し遅れて到着したウィルを引きとめたメイリンがそう呟く。

 

「さすがだな」

「あ、ウィレーム大尉もどうですか?」

 

 メイリンに銃を差し出されるも、苦笑しながら首を横に振る。

 彼の後にやろうものなら、なまじ下手でない分、余計に白けた空気になりかねない。

 プトレマイオス基地で“彼女ら”とスコア勝負をしてみたりはするので鈍っている可能性は皆無であるが、だからこそだ。

 そして、そんなところでアスランと張り合う気もない。

 

 ───所詮は脇役だしな。

 

 自嘲するように笑うウィルを、メイリンとマユが首を傾げて見やる。

 

「こんなことばかり得意でもどうしようもないけどな」

「そんなことありませんよ。敵から自分や仲間を守るためには必要です」

 

 ルナマリアのそんな言葉に、迷いを孕んだアスランは苦笑を浮かべた。

 

「敵って……」

「自らの平和を冒す者たち、だろうさ……少なからず私はそうだった。だから戦ったつもりだ」

 

 ウィルの言葉に、意外そうにアスランが目を見開く。

 他の面々も、彼の方を向いて少しばかり難しそうな表情を浮かべるのは、やはり彼が連合で、前大戦で戦った相手だからであろう。彼にとっての敵は自分たちの親や上官たちだ。

 レイとふと目が合うが、すぐに彼は訓練を再開する。

 

 サングラスの奥で、ウィルは目を細めた。

 

「まぁそうだな。だが軍人ということは、誰かの平和を冒すこともある」

「大尉……」

 

 複雑そうな表情を浮かべるアスランに、ウィルは変わらず言葉を投げかける。

 いや、アスランにだけではなく、その場の全員に、であるのだろう。

 

 そして、自分自身にでもある。

 

「なら、敵は誰が決めることだと思う?」

「それは……」

「軍や上官です」

 

 その言葉に、握っていた拳銃を降ろしたレイが答えた。

 

「そうだな。それもまた間違いではない」

 

 アスランを見れば、言いたいことがあるという表情ではあるが、言わないで良いことだ。

 そんなことを続けていたら『昔の俺みたいになる』なんて、若者に言っても響くことではない。

 だからこそ、投げかけるべきは今この場では教訓ではなく……。

 

「自らで決めてそうしているならば、それもまた一つの選択だがな」

 

 サングラスをスッと外し、その青と赤の双眸でレイを見やり、彼を思いだし首を振る。

 

 ───違うな。違うよな。すまん。

 

 心の中で、僅かでも重ねてしまったことを謝罪する。

 

「まぁ所詮は年寄りの自論だと思ってくれて構わないが、自らで決めることを薦めるよ」

「自分で、敵を決める。ですか?」

 

 シンの言葉に、後の彼を識るウィルは微笑しながら頷く。

 このまま“原作(運命)”通りに進んでいけば、彼は自らの敵であるステラ(連合)を助けることを決め……だが、自らの故郷を敵と言われ、それに従うことを決め、焼く。

 前者はまだいいが、結局後者は迷いの中、自分自身に“デュランダル(議長)”が言うことだからと無理矢理に納得させ、退くこともできぬまま最後まで進むことなる。

 

 言うべきではないと思いながらも口は止まらない。

 

「それがなにかが重要なのではない。それを自らが決めることが重要なのさ」

「敵を、自分が決める……?」

「ああ……どんな敵を討つか、そして討たれるか、な」

 

 サングラスを右手で揺らしながら、ウィルは変わらず笑みを浮かべている。

 

「いやすまんな、年を取ると説教臭くなってかなわんよ。ただの老婆心だ。忘れてくれていい」

「えぇ、そんなこと言われたら気になりますよ大尉~」

 

 眼を細めて不満を漏らすルナマリアに片手を上げて、ウィルは首を左右に振る。

 

「偉そうにモノを言える立場でもないのだがね。私は……それにやはり、ただの自論さ」

 

 それは芝居でも演技でもなく、本心からの言葉なのだろう。

 若者たちに長々と説教をするタイプになりたいわけもなかったのだが、やはりどこか説教臭くなってしまった。

 さすがに本気で反省もする。

 

「忘れてくれ」

 

 そう言ってサングラスをかけ直そうとして、止まった。

 

「そうだな、それでも気になるようだったら……“宿題”だとでも思ってくれ、期限もなければ義務もない、な」

 

 そして今度こそサングラスを掛け直すと、ウィルはその場からアスランよりも早く立ち去っていく。

 

 

 残されたルナマリアはメイリンに今の言葉の意味を問うが、メイリンはやはり首を傾げた。

 レイは少しばかり眉を顰めながら、ヘッドホンを首にかけ遠くを見、何かを考える様子。

 マユはシンを見上げ、シンはなにかを考える様子で眉を顰めた。

 

 アスランはと言えば、どこかおかしそうに苦笑する。

 そしてそんなアスランに、シンはどこか難しそうな表情で問う。

 

「ウィレーム大尉って何者なんですか? まだ二十代って聞いてるんですけど」

「……あの人は達観しすぎっていうか、まぁ色々“見て”きたんだろうけど」

 

 その見方は正しい。彼は様々な“刻”を“視聴()”てきた者だ。

 

「でも、俺もあの人の自論に賛同するよ」

「……よくわからなかったけど、ちゃんと考えてみます。大尉の言葉の意味」

 

 シンの素直な物言いに、アスランは頷く。

 

「さすがだな、大佐は……」

「え、大佐?」

「ああいや、大尉な。大尉……」

 

 頬を掻きながら、アスランは歩き出した。

 

 







この前作キャラ感……
あまり絡む気もなかったウィルでしたがガッツリですね

そしてジブりんはこんな感じになりました
まぁアズにゃんと対比する意味でもこれはこれでと言った感じで、後々もっと意味が出てくる(

次回あたり、久々の登場キャラが多数

では次回もお楽しみいただければです
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