盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題) 作:樽薫る
ザフトのカーペンタリア基地からそれほど遠くないポイントに、大西洋連邦インド洋前線基地は建設されていた。
といっても、カーペンタリア基地のザフトに基地の建設を悟られるわけにもいかず、大規模な工兵は動かせないということで、労働はもっぱら現地住民たちを強制徴用している。
兵たちも深い良心の呵責は感じているし不本意なことではあるが、止める等という選択があるわけもない。
そんな建設を進める段階であるはずのインド洋前線基地では、現在慌ただしく機体の発進準備が進められている。
それは港に停泊する
ミネルバとボズゴロフ級の出航に、『ミネルバを墜とせ』との命令が下っているネオ・ロアノークはロゴス代表ことロード・ジブリールの命をそのままに、インド洋基地の全戦力を此度の戦闘に回すよう、インド洋基地司令官に指示した。
さすがに“ロゴス代表直轄部隊”の命令を無下にできるわけもない司令官は、拒否もできないまま基地防衛のために派遣された部隊を貸し出すことを決定したわけである。
「防衛にガイアをつけるとは言ったけど、不満だろうねぇ」
J.P.ジョーンズのハンガーに入るなり、白髪の長髪を揺らしながらネオ・ロアノークは苦笑した。
自身のモビルスーツの元へと移動しようとしていると、ステラ、アウル、スティングの三人を見つけて、ネオはそちらに“歩いて”向かう。
どうやらステラが『ネオと出撃できない』ということに対して落ち込んでいるようで、スティングはそんな彼女の頭を撫でて慰めていた。
「私もステラと出撃できないのは残念だけどね」
「あ、ネオっ!」
彼女を見つけるなり、ステラは駆け寄りその服を抓んで寂しそうな表情を向ける。
良心がキリキリと締め付けられて思わず眉を顰めながら、ネオはステラの横髪を左手で撫で、その額に自らの額をそっと合わせた。
吐息が掛かりそうな距離で、ネオはその真紅の瞳で、ステラの赤い瞳を覗き込む。
「なにもないと思うけど、任せるね……」
「……うん」
アウルとスティングが自らの機体へと歩いていくのを見て、ネオはステラから額を離す。
「大丈夫、すぐに終わらせて帰ってくるよ。約束する」
「約束……?」
「うん、約束」
そう言って今度は左手でそっと頭を撫でるなり、ステラに一度微笑んでから、歩き出す。
移動しながらも、ポケットからヘアゴムを取り出して口に咥えると“右手”で髪を束ね、左手も使っていつものポニーテールにするなり、赤橙色のウィンダムの前に立つ。
新たな右手と左脚の義手の感覚は悪くはない。これならば、ミネルバを討つことも可能であろうと、微笑を零すなり、ネオはウィンダムへと歩を進める。
「でも、長々と続いてくれるといいね。戦争が……」
でなければ、自分も“あの娘たち”も、存在意義を失ってしまうのだ。
生存戦略、それ以外の理由もあるまい。
インド洋前線基地からJ.P.ジョーンズと、30機のウィンダム、そして新たに派遣された20機のウィンダムと5機のディープフォビドゥンが出撃する。
敵の数だけを考えればあまりにも過剰戦力であると判断されかねないが、それがそうでもない。
オーブ沖会戦の戦闘、ネオはそれに“妙な不快感”を感じた。
「まぁ、あの艦とはこれでカタがつけば御の字だけどね。ネオ・ロアノーク、ウィンダム……
◇ ◇ ◇
ロゴス代表、ロード・ジブリールは数多のモニターが並ぶ暗い部屋にいた。
そこは会議室であり執務室であり作戦室、ロゴスの面々と顔を合わせて世界の行く末を
彼女は膝の上に座る黒猫を撫でながら、すぐ横のテーブルに置いてあるウイスキーを飲みながら、不敵に笑みを浮かべた。
モニターに映るのは、海上で戦闘するミネルバ隊。
オーブ沖会戦でのインパルスと赤いザクの戦闘映像であり、連合のウィンダムが次々とやられていく姿なのだが、やはりその表情にはどこか余裕そうな笑みが浮かんでいた。
一月ほど前にユニウスセブン落下阻止時の同じザクを見て怒り狂っていた人物とも思えないが、それを余裕で見られるだけの状態である、ということだろう。
『せっかくの待ち伏せもこれではな……しかし、建設中のインド洋前線基地から発見できたのは朗報であろう。あちらには多数の戦力があるしな』
『さらに増援も送った。確かに凄まじい力ではあるようだが、戦いは数だよ。やはり』
別モニターに映る老人たちはそう言って笑うが、ジブリールはそれには眉を顰める。
「間違いではないでしょう。数はもちろん……ですが、そのために必要なのは“英雄”です。象徴であり導く者です」
手元の端末のキーボードのキーを叩けば、モニターに映るのは赤銅色のモビルスーツ……それはかつて、ロマ・K・バエルが駆ったウィンダム。
「だから必要なのですよ。我々には英雄が」
撫でられた黒猫が退屈そうに鳴き声を上げた。
◇ ◇ ◇
カーペンタリア基地にて、マユは自らのザクの前にいた。
すでに整備も終えてあり先ほど、基地の試験場を借りて少しばかり“新型試作ウィザード”まで試したばかりで、マユも専用のパイロットスーツのままだ。
かなり特殊な立場であるせいか、マユはそれなりに知名度がある。新型機インパルスのパイロットであるシン・アスカの妹、というのも相まって……。
「私は、特別なのに……戦えるのに……」
ぼやくように独りで呟くマユは、その拳を強く握りしめる。
実際特殊でもあるし、特別でもあるだろう。
基地内でもある程度の自由は許されているし、なにより専用のモビルスーツ。
だがそれは、やはり借り物であるし、その真理は自惚れの類である。
しかしそんな時、おあつらえ向きに───基地内に鳴り響く警報。
「これっ!?」
「おいなんだ!?」
「沖で戦闘だってよ。ミネルバとニーラゴンゴが狙われてるんじゃないのか!?」
「マジかよ、パイロットに召集っていうか、今から救援隊を編成して間に合うのか?」
「間に合わせるんだよ!」
一転、慌ただしくなる基地内。
整備士たちもそうだがパイロットたちも駆け足で“そちら”へと向かって行く。
マユは拳を握りしめて、強い瞳で自らのモビルスーツを見上げた。
「あ、アスカさん!」
「え?」
突如呼ばれた声に驚きそちらを見れば、自身の機体や義手の整備を担当する人物が走ってくる。
少しばかり動揺しながらも、そちらへと向けばその男性は肩で息をしながら手に持っていた“ソレ”をマユへと渡す。
動揺しながらもそれを受け取ったマユは、小首を傾げた。
「これは、いったい?」
「それは議長からです」
「デュランダル議長が……?」
◇ ◇ ◇
既に海上では、ミネルバと連合との戦闘が開始していた。
戦闘開始直後、大量のウィンダムを次々と落としていくアスランの駆るセイバーとシンのインパルスであったが、隊長機である赤橙色のウィンダムが突出してからは状況が変わる。
カオスが出てきたところで、アスランには多少手間取ったところで、重大な状況変化が起こったと判断するほどではなかった。
確かに木端連合兵たちと比べれば強力であるが、大気圏内では四方からの攻撃も封じられたカオスでは捌きながらウィンダムを撃破することもそれほど難しいことではない。
だが、シンがやけに隊長機たる専用ウィンダムに苦戦を強いられるのを見て、戦闘指揮を任されたアスランが相手を代わってみてから状況は変わった。
「くっ……なんだ、この敵は!?」
セイバーのコックピットで、アスランは悪態を吐く。
赤橙色のウィンダムは他のウィンダムとは明らかに違う動き、素早い回避と獰猛的な接近、そして威圧感……どこかなにかを思い出しそうではあるが、やはりそれはハッキリとしない。
あえて思い出すことがあるとすれば、やはり専用ウィンダムと言えば前大戦時、先行的に実戦配備された“彼の機体”を思い出す。
だが、彼とは違うし、なんなら彼よりも……。
「くっ……!」
右腕のライフルを左手に持ちかえるなり、ビームサーベルを引き抜いて接近をかける。
だが、専用ウィンダムはビームサーベルも展開しないままセイバーに相対するように接近をかけてきた。
「でぇい!」
周囲のウィンダムをビームライフルで落としつつ、専用ウィンダムに接近しビームサーベルを振るうのだが、当然のように専用ウィンダムが左腕のシールドでそれを凌ぐ。
少しばかり停滞するも、こうまで接近していては他のウィンダム、それも一般兵は誤射を恐れてセイバーを攻撃できない。
左腕のビームライフルを至近距離でそのコックピットへと向けようとしたが、赤橙のウィンダムはビームライフルでセイバーのビームライフルの銃口を自身から逸らさせる。
「くっ……!」
だが次の瞬間、ウィンダムの右脚がセイバーの左脚を蹴るように動く。
その不自然な攻撃に、アスランは即座にセイバーの脚を後ろに下げるも、次の瞬間───ウィンダムの脚底からクローが展開された。そして彼はそれに強い既視感を感じる。
いや、確かに覚えていた。
「これは大佐と同じっ!?」
その鉤爪にセイバーの脚が掴まれれば、次に通常のウィンダムよりも遥かに強いパワーで引かれ、空中で態勢を崩すセイバー。
専用ウィンダムはシールドで受けていたビームサーベルをいなし、ビームライフルをセイバーの胴体へと向ける。
シールドがギリギリで間に合いビームライフルを弾くが、無理な姿勢で凌げばもちろんさらに体勢は崩れるが、次弾が来る前に動かなくてはならない。
「こんなところで……!」
だが、瞬間───アスランは“覚醒”する。
彼の中に迷いがないからか、それとも本能的に“彼女”を相手にするには必要となったのか、理由はどうあれアスランの中の“SEED”は二年の空白を経て弾ける。
まだ脚部は掴まれているが、アスランは頭部機関砲で専用ウィンダムを牽制。
PS装甲を持っているのか機関砲が明確に装甲を傷つけるわけではないものの、ビームライフルの射線を一瞬でも遅らせることができたならそれで十分だろう。
次に背部に装備された二門のビーム砲、その左側だけを稼働させる。
この距離ではもちろん撃てやしないが、ビームライフルを持つ右手の邪魔には十分だ。
「まだッ!」
それをやりながらも、左手のビームライフルを手放してシールドをパージ、右手に持っていたビームサーベルを手放し、空いた右手でウィンダムの左腕を阻む。
ビームの刃が消え、自由落下する柄を、自身にとっても邪魔なビーム砲を避けて素早く左手で掴み、手首を回転させその先端を真っ直ぐにウィンダムの頭部と向ける。
「これで……!」
角度的にコックピットは狙えないが、十分だ。
伸びたビームサーベルが専用ウィンダムの頭部を貫き、小さな爆発を起こす。
怯んだウィンダムを前に、左砲門を下げて、左脚部を掴むウィンダムの右脚を斬り落とそうとビームサーベルを振るうが、それは回避される。
離れるウィンダムへと向けて二門のビーム砲<アムフォルタスプラズマビーム砲>を向けるが、専用ウィンダムが離れたことにより他のウィンダムの攻撃が開始された。
「チィっ……!」
舌打ちをしながらも、素早く下降してビームライフルとパージしたシールドを拾い、可変しウィンダム一般機を<アムフォルタス>で薙ぎ払う。
モニターでインパルスを確認するが、カオスやウィンダムで手一杯だ。
二機だけでは凌ぎきれず、他のウィンダムもミネルバへと向かっていた。
赤橙色のウィンダムはまだ撤退する様子を見せていない。
『このままじゃ、こんな奴らにっ!』
「落ち着けシン!」
『は、はいっ……!』
素直にそう返事は返してくるが、やはり冷静ではないだろう。
アスランもかなり不利な状況であることは理解している。
彼が“その状態”だとしても、こうも多勢に無勢ではミネルバを守りきる自信はないし、なにより隊長機のウィンダムが他の比ではない。
ミネルバへと取りつこうとするウィンダムの迎撃にザクが出ていないこと、そして先ほど海上に水柱が上がっていたことから、海中で戦闘が起きていると思って良いだろう。
ともなれば、やはり隊長機か旗艦を潰すことが手っ取り早いが、それができれば苦労もない。
自身が囮となっている内にシンにミネルバの護衛を任せる。ぐらいしか考えもつかないが……。
「シン、俺が囮に」
次の瞬間、ビームが奔る。
『なんだ!?』
シンが驚愕の声を上げるが、次いでビームが数発放たれてウィンダムが二機ほど撃破される。
新たな敵機の出現に、連合が僅かに怯む様子を確認しながら、アスランはセイバーの<アムフォルタス>で敵機を牽制、撃墜しながらモニターでそちらを確認。
グゥルに乗ったモビルスーツ、ザクがビームライフルを構えていた。
「友軍機、グゥルで……カーペンタリアからか!?」
『あれは……マユ!?』
赤いザクが、グゥルから───飛ぶ。
跳ぶではなく、飛んだ。
明確な飛行は、その背部に装備された試作“飛行試験”ウィザードのおかげだろう。
それは次の“量産機”が装備しているフライトユニットなのだが、現状でアスランもシンもそれを知るわけもない。
だからこそザクが空中を飛ぶのに驚愕もする。
いや、シンの場合はそれだけではないが……。
『こちらマユ・アスカです! 援護します!』
『な、なにやってんだよマユ!? そんなことっ!』
『事情はあと! 大丈夫だから!』
『大丈夫ってなぁ!』
兄妹喧嘩が始まってしまう。否、始まっている。
だが、そんな状況でないのも確かで、アスランはビームライフルで敵機を撃破しつつ、状況を確認した。
一機味方が増えたところで、頼れる相手でもない。
……となれば、やることは変わらないだろう。
「落ち着け二人とも! ともかくシンはその子を連れてミネルバの援護を!」
『えっ、でもあの変なヤツとかカオスとかコイツらを一人でっ!』
『わ、私だって戦えます!』
「ミネルバを落とされたらどうしようもない。そっちで敵機を減らす間ぐらい持ちこたえられる!」
そう宣言をして再度<アムフォルタス>を放ち数機を薙ぎ払った。
まだ30を超えるウィンダムがいるのも確かだ。このままではいられまい。
実際、持ちこたえることは可能だろう。
ただ、敵の隊長の出方次第ではあるが……。
「なんだ……?」
ふと、敵機が別方向へと意識を向けているのに気づく。
モニターでウィンダムたちが意識を向けている方向を確認したアスランは、顔を顰めた。
「巨大な輸送機……!?」
全長300メートルを超える超大型輸送機が、その先にはあった。
徐々に戦場へと近づく、ブルーグレーの輸送機<ガルダ>は、大西洋連邦“B.A.E.L”所属であることを示す“自らを翼で抱く悪魔のエンブレム”をその側部に張り付けている。
敵ではない、とアスランは確信した。
「大尉……!」
そして、そこに“誰”がいるのかもまた然り。
ウィンダム数機がそちらへと向きビームライフルを放つも、ガルダはその一切を受け付けない。
ノーダメージなわけではないだろうが、その巨体のラミネート装甲のエネルギー拡散は並ではないだろう。ただのビームライフル程度なら十分無効化することができるはずだ。
周囲のウィンダムへとアスランが攻撃を開始すると同時に、シンのインパルスとマユのザクがミネルバへと向かう。
ガルダが、戦場へと近づくと共に下部のハッチを開く。
それは“本来のガルダ”であればない機能ではあるが、“彼”は細部まで大型輸送機ガルダを再現する知識があるわけもないし、所詮はただのガワであるのだから、“
だがやはり、それは十分な破格の性能と予算で設計、開発しているし、グリーンランド基地での収穫は彼らにとって十分な恩恵をもたらした。
ガルダの下部ハッチから、“ナニカ”が海上へと落ちて巨大な水柱を上げる。
しばらくして、その付近の海上に大きな水柱が上がった。
海中からB.A.E.Lの大型輸送機に奇襲をかけようと接近していたディープフォビドゥンが撃破されたのだろう。
さらに数秒もしない間に、海中から“ソレ”が姿を現す。
それは───赤銅色に染められたモビルアーマー<ザムザザー>。
悪魔のエンブレムを頂くザムザザー本体の、顔のような部分の中央部に“赤いブレードアンテナ”が展開された。
ザムザザーは操縦系の複雑さから、本来ならば機長・操縦士、砲撃手の三人を必要とする。
だが、そのコックピットに座していたのはただ一人の男、ウィレーム・マクスウェルであり、そのコックピットは一人分のスペースしか存在していない。
彼が三人分の仕事を一人でこなせるかと言われれば、答えは勿論NOである。
故に、彼は一人のようで、一人ではない。
「まったく、わざわざブレードアンテナまで必要か?」
独り言のように呟き、赤いヘルメット、その奥の赤と青の瞳が戦場を見据え、赤橙色のウィンダムを捉えた。
上空のガルダが旋回を始め、両主翼下のサイドハッチを開き、そこからバスターダガーが敵機の迎撃を開始するのを確認。
『
コックピットに女の声が響くが、ウィルはそれに驚くでもなく、当然のように笑みを浮かべて軽く頷いた。
「そうだな、なら仕方ないか……」
『わかってんじゃありませんの!』
───そりゃ男の子だしな。俺も。
しっかりとグリップを握りしめる。
『あら、怯えてやがりまして?』
「フッ……お前がいると怖くなくていい」
『あら、かわいいこと言いやがりますのね。なら結構!』
敵機が近づいてくるのを確認する。
『新生───チェシャ・マクスウェルの初陣ですわ!』
「いつから姓がついた。しかも私と同じ」
『不粋な男はモテませんわよ!』
「……さよか」
そう呟きながら、フットペダルに足をかける。
「これよりザフト艦ミネルバを援護する」
『かしこまりですわ! 改めまして、ユー・ハブ・コントロール!』
「……アイ・ハブ・コントロール、か?」
───さっきから私がコントロールしてるが……?
四方八方に“
見たことが無い(当社調べ)ザムザザーに乗る系主人公
懐かしのキャラ登場で、一人で乗れるという感じですね
チェシャ、復活でございました
そしてアスランちゃっかりSEED発動
敵が敵なのでしょうがないですね。ネオ・ロアノーク……強化しすぎたか(
ちゃっかりマユも合流しました
盗んだMS走り出すのは主人公の嗜み……
とみせかけてちゃんと大丈夫だったりします
では、次回もお楽しみいただければです