盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題) 作:樽薫る
現れた新たなる“
ウィレーム・マクスウェルの希望により設計・開発された大型輸送機ガルダと、グリーンランド基地にて接収したザムザザーを改造したウィレーム専用の赤いザムザザー。
両機体が頂く悪魔のエンブレムは、前大戦でその力を敵として味わっていない連合兵たちにも、十分な力を発揮するものであった。
明らかな動揺、それが伝染していくのを感じ、ネオ・ロアノークは赤橙色のウィンダム、そのコックピットで顔を顰める。
彼女とて、ロマ・K・バエルの威光は理解しているし、その影響力を直接的でないものの知っていた。否、知らない人間が、連合にいるはずもない。
「ま、ヤキンにはいなかったし実際に見たことはないけど……てか、他のもそうでしょうに」
ぼやきながらも、ネオはすぐに周囲の味方機に通信を繋げる。
ウィンダム数機とカオス、それで今は十分だ。
「各機、連携とって! 私らはミネルバを落とせればそれで良いんだからさ! 守りについたあの二機をなるべく切り離すように、でスティングは誘導をお願い!」
『あ? 誘導って……あぁ、そういうことか……了解!』
そう返事をするなり、カオスがウィンダム数機と共にミネルバへと加速していく。
セイバーがカオスらを追撃しようとするが、ネオは素早くビームライフルで牽制しつつ、加速して視界に入りやすいように立ち回る。
わかりやすい挑発ではあるが、“
故に、ネオとアスランの戦闘が再度開始される。
ブレードアンテナを再度折りたたむザムザザーのコックピットにて、ウィレーム・マクスウェルは周囲のウィンダムを確認しながら、フットペダルを踏み込み海上を低空飛行する。
大型モビルアーマーでありながらその機動性は従来のモビルスーツ並のザムザザーの機動性をさらに強化した代物だ。並のものではない。
上空のウィンダムが一斉にビームライフルを放ってくるも、ザムザザーは自慢の“陽電子リフレクター”を展開するでもなく、加速しつつ左右に揺れて回避していく。
ドデカイ一撃でもかまされない限り、まず使い様がないシステム、仕方ないのだが……。
「さて、ミネルバの援護もしつつ、でなければな……」
『あなたったら、いつの間にザフトの味方になりまして?』
「そのつもりはないさ、そうだな……ある程度は“筋書き通り”にことを運ぶ必要があるからな」
『はぇ~相変わらず正義の味方ルートはなさそうですわね』
慣れ親しんだそのような軽口を聞きながら、ウィルは口元に笑みを浮かべる。
「私を善悪というくだらない基準にあてはめるのは……よせ」
言いながら、目を細めて操縦桿とフットペダルを細かく操作。
上空から放たれたビームライフルを───バレルロールで回避。
「ザムザザーでバレルロールだとぉ!?」
「異常です! やっぱり本物なんじゃぁ……!」
「本物だったらなんでザフトの味方なんてする! B.A.E.Lの奴らがつくったイミテーションなんかに怯むな!」
バレルロールで敵機の攻撃を回避したザムザザー。
『あなたのそういう無茶な操縦!
「まったくだ……いてくれて助かるよ!」
相槌を打ちながら、ウィルは間髪入れずに次の行動へと移る。
ザムザザーの四肢<
さらに回転させつつ、上空を向く方の二足からガムザートフを照射して、上空のウィンダム4機をまとめて破壊。
『ほんっと無茶しやがりますわね!』
本来なら三人のパイロットで複雑な操縦系を扱う仕様であり、巨体の姿勢制御などもまた然り……さらに言えば、動かしているのは真っ当に通常想定された運用をするパイロットではない。
たとえ通常のナチュラルと一線を画す能力を持つウィルと、高性能で“特殊な演算システム”を持つチェシャと言っても、簡単なことではないだろう。
だが、それをできるのはやはり……。
『ラヴですわね!』
「なぜそこで愛!」
真下を向いたまま海上を滑る“奇怪なモンスター”ことザムザザー。
だが、意味が解らないというのは戦場において恐怖であり、連合のウィンダムが明らかに動揺していることをウィルに感じさせた。
逆さのまま、ガムザートフの砲口を真上へと向ける。
『モンスタークラブザムザザーとお呼びになって!』
「“
瞬間、ザムザザーを僅かに“上昇”させれば───海中からディープフォビドゥンが飛び出す。
背部ユニットから<ゲシュマイディッヒ・パンツァー>に装備された鋏状の<ニーズヘグ>を展開しながらトライデントを構え、ザムザザーを突き刺そうとする姿はさながら大物を今にも狩猟せんとする漁師と言ったところだが……。
それを“感じていた”ウィルは既に行動に出ていた。
ザムザザーの頭部の折りたたまれていたブレードアンテナが展開。
『伊達や酔狂でこんな頭してるんじゃありませんわよ!』
「そこだ……!」
ガムザートフが放たれると同時に、ザムザザーのブレードアンテナから───“ビームサーベル”が伸びる。
上空のウィンダム六機が、放たれた大口径ビームに薙ぎ払われ、海から飛び出したディープフォビドゥンはそのトライデントを獲物に突き刺すこともないまま、胸部をビームサーベルで突き刺された。
素早くブレードアンテナを折りたたみ、半回転して元の頭を上空へと向けた状態になると、ウィルはザムザザーを加速させる。
強烈な敵意と殺意、そして覚えのある感覚に顔をしかめつつ、フットペダルを踏み込んだ。
海上をドリフトするように滑るザムザザーの背後を奔るビームライフル。
回避こそしたものの、危なげなくことが終わるとも思えないその精度に戦慄しながら、ウィルはモニターで自らに攻撃をしかけた“赤橙色のウィンダム”を確認。
即座に四本の脚の上部に装備された単装砲を放つも、当然のように回避される。
『大佐!』
『大尉でしてよサクラン・ザラ!』
『え、あ、えぇっ!? い、いや、アスランです!』
接近してきたセイバーからの通信に、即座に対応するのは意外にもチェシャだった。
戸惑いながらも真面目に返すアスラン、なぜか得意気なチェシャ、気の抜けたような表情を浮かべつつ、ウィルは首を横に振る。
「口を挟まないでくれチェシャ、今はマジメな話をしているんだ」
『私と話してる時はマジメじゃありませんの……!?』
ともかくだ、まだウィンダムの数は20を超えているし、なによりも“
挙句、破壊するわけにもいかないという条件付きなのだから、アスランと共に戦う他選択肢もあるまい。
『すみません、バッテリー残量の問題があって……ミネルバに接近する必要があります!』
先からの戦闘、高火力の攻撃を数度も行っているセイバー。
一機だけを相手にしているウィンダムとは消耗もそれは違って当然だろう。どちらにせよミネルバを守ることが目的でもあるのだから、それも悪くはない。
専用ウィンダムからの攻撃を回避しながら、ウィルは頷く。
ガルダの方を確認するが、それほど敵機が接近していっている様子も見えない。
「了解した。一時ミネルバへと“接近”する……!」
そう言いながら、ザムザザーを僅かに下げて、海中から飛び出たディープフォビドゥンを<
上空で姿勢制御に必死になるディープフォビドゥンを、そのまま後ろ足の<ガムザートフ>で撃ち抜く。
ウィルとしても、四機中の一機でも鹵獲できれば目的に一歩近づくのだからそれで構わないのだろう。
海にも空にも地上にも、目的がある。
ウィンダムのコックピットで、ネオは顔を顰める。
下がっていくセイバーとザムザザーを尻目に、ヘルメットを取って胸元を開き、溜息をつきながら気の抜けた様子でウィンダムの数を確認。
50機いたウィンダムは既に30を下回っているし、ミネルバに決定打を与えられている様子もない。
対空戦闘ができる機体はセイバー、インパルス、ザク、そしてザムザザーの四機。
「にしてもあの赤いの……私が一撃貰うとはね」
頭部を破壊された時、妙な感覚を抱いた。
記録にあったモビルスーツ、イージスの記憶にない攻撃。
頭を振って、今は戦闘に集中しようと操縦桿を握る。
「スティング、上手くやってくれてるかな……」
指示は出した、上手くやってくれていれば戦力の分散にもなるし、上手くいけば一機や二機を落とすこともできるはずだ。
そうすれば、きっともう少し落ち着いた戦場に送られる可能性もあろう。
ネオはフットペダルを踏み込み、ミネルバの方面へと加速する。
ミネルバを取り囲むウィンダムを、インパルスが牽制していた。
ウィンダムの数があまりにも“
シンは“ブラストインパルス”の四連装ミサイルランチャーを放ち、上空のウィンダムを牽制。
シルエットをフォースからブラストに変更することで、セイバーが戻ってくるまでの時間稼ぎをしようという判断だったのだが、それは間違いでもなかった。
実際に周囲には落とされたウィンダムの残骸が10近い数ある。
本来ならば、それでザクが上空で攻撃をしかけてくれれば良かったのだが……。
『すまないシン! 待たせた!』
「アスランさん! マユがカオスを追って先行しちゃって……!」
『なんだと!?』
驚愕するアスランではあるが、シンとしても妹の不肖に思うところはあると言った表情で、さらに言えば心配の方が勝っているであろうことは彼にも理解できた。
だからこそ悩みながらも、アスランは頷く。
チラリとモニターに映るウィルの方を見れば、彼もまた頷いた。
『シン、ウィレームだ』
「あ、はい……! ありがとうございます!」
『礼は良い。ともかくマユを追って連れ戻せ!』
『ええ、その方針で、シン・アスカ、ここは任せておけ!』
「あ、ありがとうございます……!」
ホッと息をつくのも束の間、さらにその背後からウィンダムが多数迫っているのを見る。
「ってなにやってんですか! あんな一杯連れて来て!」
『問題ない、行け! ミネルバ、デュートリオンビームを!』
『はい! デュートリオンチェンバースタンバイ。捉的追尾システム、セイバーを捕捉。デュートリオンビーム照射!』
それは次世代の送電システムである。
ミネルバから照射されるビームを額部分に受けて、セイバーの電力は瞬く間に回復していく。
ウィンダムらがミネルバへと一斉にビームとミサイルにて攻撃をしかけるも、そのミネルバの前方に現れた赤銅色のザムザザーが陽電子リフレクターを展開しすべてを防御してみせる。
ミネルバのブリッジにて、タリアはホッと息を吐く。
『こちらB.A.E.Lのウィレーム・マクスウェル大尉。貴艦を援護する』
「ウィレーム大尉、あなた……協力、感謝します」
タリアの返事を聞くなり、笑みを浮かべて頷いたウィルを最後に通信が切れた。
彼の戦闘力を知ってる身として、さらにはあの大型モビルアーマーと戦った身として、これほど心強いこともないだろう。
ブリッジにどこか安堵するような雰囲気が生まれるが、タリアはすぐに表情を引き締める。
「まだ油断はできないわ、迎撃を続けてちょうだい! ルナマリアとレイ、ニーラゴンゴの方も気を配るように!」
「ハッ!」
各員の返事に頷くタリアが、ぽけーっとモニターを見るアーサーに気づく。
「にしてもあの機体、本当に“赤い悪魔”みたいですねぇ。案外本物だったりして!」
「余計なお喋りしてないで」
「え、あ、す、すみません!」
溜息をつきながらも、タリアもまたモニターに映るザムザザーを見やる。
エネルギーを回復したセイバーとザムザザーが上空にてウィンダムと戦闘を繰り広げているが、伝説のエース、アスラン・ザラと共に戦っているのにあまりに後れを取っていない戦闘力。
思うところはあるが、今は考えるべきではないと頭を左右に振って、タリアは今一度指示を飛ばす。
空中を滑るように加速するザムザザーが、ウィンダム一機をその爪で掴み粉砕。
背後から迫るウィンダムがいるが、後ろ脚二本の単装砲にて撃墜。
次いでバレルロールをしながら下降し、専用ウィンダムの攻撃を回避しつつ、脚部の単装砲と<イーゲルシュテルン>で牽制。
赤橙色のウィンダムは、それらを回避しながらビームライフルにてザムザザーを狙う。
「ぐっ、回避はできるものの……やはり!」
『あれを生かして捕獲とか難易度たけぇですわ~!』
「わかっているが、やらねばなるまい。しかし……!」
シンを行かせることで、海中での戦闘に参加はかなわなくなってしまった。
単装砲とイーゲルシュテルンを放つも、回避しながらその弾幕の中を突っ込んでくるウィンダムに、ウィルは戦慄する。
セイバーが斬りかかるが、それをシールドで受け止める専用ウィンダム。
「頭部がないというのに……アスランとやりあうって、やっぱ俺の腕じゃあ……!」
『アイツがおかしいだけでしてよ! バグですわ! チートですわチート!』
ネオとアスランの戦闘が始まってしまってはザムザザーで攻撃に参加すればむしろ邪魔なだけだと、ウィレームは後ろ髪引かれる思いをしながらも、他の一般機のウィンダムへと攻撃を開始する。
敵機にアラートが出るより早く、即座に砲口を移動先へと向けて放ち、ウィンダムを落とす。
さらに加速、すれ違いざまにヴァシリエフにて一機を斬り裂き、空中でドリフトのように横滑りをしながら、四肢からビームを放ちつつ───回転。
『回転ジェットですわ!』
「ぐぅ……!」
『おほほほ! ガメおろろろっ!』
一気に四機ほどのウィンダムを破壊して止まるも、間髪いれずにザムザザーを加速させ、海面へと出てミネルバを狙うディープフォビドゥンをヴァシリエフにて片腕を掴み“吊り上げ”て“放り投げる”。
『一本釣りですわ!』
「だが!」
上空のディープフォビドゥンへと単装砲を放ちつつ、そちらに加速。
ディープフォビドゥンは<ゲシュマイディッヒ・パンツァー>にて単装砲を防御するものの、接近したザムザザーはヴァシリエフにてディープフォビドゥンを下から救い上げるように攻撃。
トランスフェイズ装甲があるものの、その衝撃は殺し切れず空中で縦に回転するディープフォビドゥンを、ブレードアンテナを展開しそこから伸ばしたビームの刃で切り裂く。
「くぅっ……!」
『あなたまた無茶してまして!? 道理を無茶でこじ開けるタイプでしたっけ!?』
「場合による、な!」
接近していたウィンダムが縦一閃に振るったビームサーベルを───回避。
大型モビルアーマーにビームサーベルが回避されるとは思ってもみなかったウィンダムのパイロットは驚愕したことだろう。
ウィルは横へと移動させつつ機体を回転させて紙一重でビームサーベルを回避、さらに次いでそのウィンダムのビームサーベルを持った右手を爪で掴む……切断はしない。
「くっ!」
さらにもう一方の腕で逃げようとするウィンダムの左脚を掴み───引き千切る。
『悪役ですわ悪役令嬢ですわ!』
落下していくウィンダムをよそに、ウィルは引きちぎった手足を放りミネルバの方へと加速。
アスランとハイータの戦いは続いているようだが、決着はまだつきそうにないように見え、ホッとしたように息をつく。
矛盾しているが、一貫していることだ。
「少し黙っててくれ……」
『久々なので許してくださいまし!』
「……そうだな」
疲れたように息を吐きながらも、次の敵機を見据える。
懸念はハイータのことだけではない。
マユとシン、二人のことも同じく、だ。
スタイリッシュザムザザー降臨
一般兵相手の無双っぷりはいつものウィルです
そして狂犬マユ、狂犬が過ぎる
誰かに怒られそうですが、残当
映画やるまでに終わる気がしない……
では、次回もお楽しみいただければです
あとユーザーを統一したので活動報告とかでなんか小ネタ的なのをやるかも、です