盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題)   作:樽薫る

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偽物たち

 

 暗闇の中、寝そべる身体に纏わりつくのは不快感……。

 

 生暖かい感覚、やはりそれも心地いいものではない。

 

 ぬるっとした液体は間違いなく人間に流れるソレで、聞こえるのは呪詛。

 

「助けられただろ、お前なら」

「なんのために未来を知ってるんだ」

「止められたのに止めなかった」

「死んだんじゃない、殺したんだ」

「そうだ英雄、お前が殺した」

 

 ずいぶんと“久しい”夢であり、彼はこの夢の結末を知っていた。

 

 だから感じる怖気は凄まじく、今すぐにでも逃げ出したいという本能に駆られ……。

 

 故に呪詛と身体に纏わりつく“手”を振り切って立ち上がる……だがそれもいつも通りだ。

 

 

 走れば、車のヘッドライトの明かりが見え―――衝撃。

 

 

 身体は宙を舞い、地に叩きつけられ、自分から真っ赤な血が流れだす。

 

 じきに血液は酸素に触れ赤黒く変わっていき、どんどんと身体が熱を失っていくのを感じる。

 

 夢なのだが、鮮明なのは……それを体験しているからなのだろう。

 

 故に、彼は恐怖するのだ。本来まともな人間が経験するはずのない感覚―――“死”というものを。

 

 

「ッ!!!?」

 

「うわぁっびっくりしたぁっ!?」

 

 

 跳ねるように目を覚ます彼に、近くの椅子に座っていた彼女は同じく跳ねて驚きを露にした。

 ベッドの上で彼は肩で呼吸をしつつ、体の痛みに顔をしかめる。

 

 隣で驚いていた赤い髪を小さく首後ろで結った少女―――クロトはそんな彼の顔を覗きこむ。

 

 場所はおそらく医務室のベッドであることは明白だ。

 

「ぐっ……私は、なぜ……?」

「なぜもなにもないですよ……おにーさんやられたの、憶えてない?」

 

 そう言いながら、クロトが近くにあるボタンを押す。

 少し安心したような彼女の表情を見ながら体の力を抜いて、ゆっくりと先の戦闘のことを思い出してみる……。

 ミネルバと連合オーブ艦隊の戦闘、アークエンジェルの介入、そして自分たちB.A.E.Lの介入。

 

 自分はハイータの奪還を目的に戦っていたものの……途中、ステラが撃墜されそうなのを見てそちらに向かったが、先にハイータが介入してグフを損傷させた。

 だがグフ―――ハイネ・ヴェステンフルスの撃墜をなぜか阻んだ。さんざん見殺しにしてきた癖に、ここぞという時にハイネを犠牲にしてステラを助けるのでなく……ハイネの撃墜を防いでさらにステラを助けようとした。

 

 ―――上っ面の偽善、いや、偽善ですらないか…。ただの“我侭(エゴ)”だな、これは。

 

 そして波状攻撃を回避しきれず……あの男、おそらく自身……ロマ・カインハースト・バエルの“コピーの類”である<サタナ・L・タルタロス>に……。

 

 ……徐々に記憶が蘇っていく。

 

 斬り裂かれたコックピット、差し込む光、亀裂から見える赤いウィンダム。

 そしてチェシャの呼ぶ声。

 

 結局、ステラを回収しに呼んだはずのクロトはチェシャが主導権を握り撤退していくザムザザーの援護で……。

 

「ガイアは、回収っ、できなかったのかっ……!?」

「お、おにーさん寝てなって!?」

 

 無理矢理にでも上体を起こそうとするウィルを見て止めようとするクロトだが、ウィルは止まらない。包帯まみれのそんな体になぜそんな力があるのか、本気になれば無理やりにでも寝かせることは可能だがクロトにできるはずもなく、諦めた表情で彼が上体を起こすのを支えた。

 荒く呼吸するウィルを心配そうに見やるクロト。

 

「ザフトが回収したってさ……」

「そう、かっ……」

 

 良いか悪いかの区別などつくはずもない。

 ただ比較的“原作通り”にことが進んだかもしれないし、もしも原作通りステラが調整を受けているのだとすれば、ステラの衰弱はかなり早くなるだろう……。

 問題しかない。ロドニアのラボに関してはB.A.E.Lが早々に調査・処理してしまったのである出来事はかき消される覚悟はしていたものの……。

 

「最悪、だなっ……」

「おにーさんが生きてて最悪なことないよっ……」

 

 ハッとして横を見れば、瞳を潤ませるクロト。

 彼がそれを見て思い切り顔をしかめた理由は、自分が何もわかっていないことと、自分が彼女らの心配を無下にしてしまったから等、思うところは山ほどある故だ。

 だからこそ、自身の痛みなど無視して、腕を回してそっとクロトの肩を撫でる。

 

「すまない……ずっと先のことばかり考えていて、すぐ隣が見えなくなってしまうな」

「んっ……いいよ、もぉ。わかってるから……きっとハイータ助けることもだけど、おにーさんが頑張ってるっていうのは、わかってるからさっ……」

「クロト、すまない……ごめん……」

 

 震えるクロトがウィルに顔を向けないように俯く。

 ふと、廊下をけたたましく駆ける音が聞こえて、クロトがハッとした表情で顔を上げて離れようとするがやはりウィルが心配なのか支えたまま……扉が開いた。

 最初に現れたのは医務官……ではない。

 

「やぁ、ムルタ……」

 

 ぼさぼさの金髪のままのアズラエルがそこにいた。

 急いで服を着たのかいつものスーツはどこかぐちゃっとしていて、その瞳一杯に涙を溜めて……。

 

「い、いや待てっ……」

 

 両腕を広げて跳び込んで───。

 

「ストォォォップ!」

「なにやってんのおばさん」

 

 その両腕を掴んでそれを止めたのは共に来たオルガとシャニの二人。

 感極まって抱き着こうとしたアズラエルを止めた形である。彼女は元々感情的になると止まらないところがあるのはウィルとてよく知っているので、苦笑して頷く。

 だが、三人とも安堵した様子で自分を見ていることから、少しばかり気まずい表情を見せた。

 

 次いで医務官と看護官が現れて、ウィルへと近づく。

 

 医務官が心底ホッとした表情を見せるのは勿論、彼が誰だか大凡理解しているからだろう。

 

「よかった大尉、命に別状はありませんでしたが……」

「破片が脳天直撃コースだったらしぃぜ、危うく」

 

 次いでオルガが言葉を発するので、苦笑を浮かべた。

 

「ヘルメットが無ければ即死だった……」

 

 自然と口に出たし、いずれ言いたかった台詞(言葉)ではあったが、素直に喜べるところではない。

 すっかり染み付いたその口調……紛い物である自分。そしてさらに紛い者であるあの男……。

 

「私はどのぐらい眠っていた?」

「んっ…大体半日ぐらいですっ…」

 

 涙目のアズラエルがらしくもなく鼻を啜りながら言うので、碌な状況でもないというのに思わず笑みを零してしまい。案の定彼女にジトーっとした視線を送られる。

 そこに突っ込みを入れたいところではあるのだが、色々な整理も行わなければならないのも事実。故に、ウィルは半日という事実を噛み締め、まだ状況は悪くないことに安堵した。

 

 やるべきことは依然変わらない。だが難易度は飛躍的に上がっている。

 

「半日か……チェシャは? それからザムザザーと、ミネルバと連合オーブはどうなった?」

「んんっ、少し落ち着きましょう?」

「だね、おにーさん血ぃ足りてないんじゃない?」

 

 アズラエルとシャニの言葉に、自分がまた焦っていることを自覚し、落ち着きを取り戻すために深く呼吸をすれば、身体の内側が確かに痛み顔をしかめることになるが、それもまた抑える。

 そうしているウィルを見て多少なりとも無事なのを実感したのか、アズラエルは穏やかに微笑を浮かべつつベッド横に置いてある椅子に腰掛け、ゆっくりと状況説明をはじめた。

 どちらにしろガルダを動かすにも彼頼みなところがあるのだ。いずれにせよ軽くとはいえ説明は必要。

 

「ではチェシャのことからですね……」

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 連合軍、揚陸艦J.P.ジョーンズ。

 ネオ・ロアノークが勢いよく壁を殴りつける音がブリーフィングルームに響いた。義手でない方の右手から痛みが伝わってくるだろうに、それ以上に苦々しい表情を浮かべるのは彼女の“軍人らしくも無い感情”故なのだろう。

 義手義足を装着した彼女は今の今まで平静を装いながら今回の被害状況などの報告を受けていたのだが、一人になっては抑えなど利くはずもなかった。

 

 そしてそんな部屋に、扉を開いて男が入ってくる……ルビーのような赤い瞳をした金色の髪を持つ男。

 背ほどまである長い金髪を靡かせる男はネオへと視線を配らせるが、その時には既にネオは冷静な軍人の表情を浮かべており、彼からの言葉を待つのみ。

 

「報告だ。ネオ」

 

 その言葉にネオの眉がぴくりと動くが、男―――サタナ・L・タルタロスは気にすることも無く話を続ける。

 

「此度の作戦失敗はともかく、ステラ・ルーシェに関しては“損失”と認定するように、とのことだよ。ガイアも然りな」

「わたしの失態です。迂闊でした。フリーダムだけでなく、B.A.E.Lやザフトにしてやられましたし」

 

 あの異常なザムザザーへの追撃も失敗に終わり、挙句ガイアの救出も同じく……。

 追撃を前にフリーダムとB.A.E.Lの“異様なプレッシャーを放つダガーたち”の介入、救出を前にインパルスとザク、さらに“セイバー(赤い新型機)”の乱入、どちらもこなすのは不可能で、結局どちらも成せなかった。

 どちらか片方に寄せていても同じだっただろう。

 

「君は実によく彼らを使いこなしていたよ。その功績はジブリール嬢も認めていることだ」

「……お気遣い、ありがとうございます」

 

 そう言って軽く頭を下げるネオに、サタナは笑みを浮かべた。

 

「そう気負うことはない。わたしも君には色々と期待している……フリーダムの足止めができるパイロットなどそうはいないからね」

「……ありがとうございます」

「それとだが、残った二人の記憶は……どう調整する? 身近なステラ・ルーシェの死は邪魔にならないかね。今後の戦いの」

 

 彼の言葉は正しいのだろう。アウルとスティングの動揺はそう軽いものではないように思えた。

 それも一重に、ネオが彼女らに深くしっかりと愛情を注ぎすぎたせいに他ならないのだろう。兵器でなく家族として扱って……。

 

「ッ……!」

「おや、どうかしたか?」

「い、いえ……ちょっと頭痛が……あ、あと、あの二人の記憶の調整は今回は中止を考えます。“ゆりかご”は負担になりますから、損失は軽減させた方がよいと……」

「ネオが言うならばそうなのだろうな。なに、気にすることは無い……君には、これからも彼女らを導いてあげてほしい。頼む」

 

 慰めの言葉をかけながら、サタナが軽くネオの頬を撫でれば、彼女は動揺したように視線を左右に揺らし、手が離れるなりすぐに敬礼で返す。

 

「ッ……! ハッ…!」

 

 ブリーフィングルームからサタナが出て行くなり、壁に寄りかかって深く息を吐きながら、彼に触れられた頬を袖でごしごしと意味も無く拭う。

 素手である左手は鳥肌が立っている。なぜここまで彼が“ダメ”なのか自分でも理解できていないが、やはりそれは生理的なものであると、自分なりに納得し……上官にそうであるのは軍人としてよろしくないとも理解していた。

 我慢はする。だがどうしても……。

 

「きもちわるいっ……」

 

 吐き捨てるように言うなり、ずるずると壁に背をつけたまま座り込む。静かな部屋なせいか、義手のモーター音が聞こえる。

 

「損失、か……まぁ、そういう言葉になるんだろうね……」

 

 自嘲的な笑みを浮かべてネオは首を振るなり、立ち上がってしっかりとした足取りで部屋を出て行く。

 これ以上、喪うわけにはいかないのだと、二人の顔を思い浮かべながら。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 一方のザフト、ミネルバでの話題は先の戦闘のことばかりだった。

 

 突如戦場に現れたアークエンジェルとフリーダム、そして一時は同乗していたアスハのこと、味方していてくれたバエルの赤い悪魔疑惑のあったザムザザーのこと……そして“本物”の“赤い悪魔”のことと多種多様ではあるが、別に戸惑う声だけでもない。

 損害こそ軽微で負傷者もほぼいないミネルバ、そして奪還したガイア。挙句捕虜もセットとなれば、明るい顔をしている者達も確かにいた。

 

 だがハンガー内ではハイネ・ヴェステンフルスがしかめっ面で自身の右腕を無くしたグフを見上げている。

 そんな彼の隣にやってくるのはアスランだった。

 

「ん、アスランじゃないの、どした?」

「ヴェス……ハイネは、気にならないのか……?」

 

 それが何を指しているかは理解している。

 

「……まさかガイアに乗ってるのがシンの“コレ”だとはねぇ! ロマンチックでいいんじゃない!?」

「そっちでなくて!」

 

 小指を立てて笑顔で語るハイネにアスランが苦笑いをして『冗談だよ』と語り両手を頭の後ろで組む。

 そう、アークエンジェルのことだろうと大方予想がついた。だが、先程艦長室にて軽い聞き取りはあったし、後半はそれどころではなかったし……。

 だから、別に今さら聞くことでもない。タンホイザーを破壊されたのは一言あるが、それをアスランに言ってもしようがない。

 

「別にどーでもいいだろ。俺たちの役目は俺たちの敵を撃つことなんだからさ?」

「敵、ですか……」

「ちゃんと決めとけよ。さすがのお前でも迷ってると足元すくわれっぞぉ?」

 

 迷いから、先の戦いは不覚を取ってカオスを逃がして……ウィルを追い詰めてしまったという負い目が確かにアスランにはあった。

 アークエンジェルが、フリーダムが、キラに対して、戦うべきか、どうするべきか……。

 

 いつぞやのウィルの言葉が今になってリフレインする。

 

 “なら、敵は誰が決めることだと思う?”

 

 “それを自ら決めることが重要なのさ”

 

「……俺が、決める」

 

 

 

 ミネルバの医務室、そこにはシン・アスカがいた。

 そして正面のベッドには、鹵獲したガイアのパイロット……ステラ。

 連れ帰ってきた時にはすでに意識を失っていて、機体を持ち帰るなりすぐさまシンは諸々を無視して抱えて医務室まで連れて来た。

 一時は錯乱して暴れはしたものの、シンを見たことと鎮静剤ですっかり今は眠っていて……。

 

「ステラ……どうして、君が……」

 

 連合のエクステンデッド……それを聞いた時は驚愕と、怒りに震えた。兄妹喧嘩続行中であったマユが心配して声をかけるほどだ。

 今は筋弛緩剤も使っているしそれほど問題もないと判断されているのか、そこにはシンしかおらず……。

 

「シ、ン……?」

「ッ……ステラ!?」

 

 弱々しい声に顔を上げれば、重そうな瞼を開くステラがそこにはいて……穏やかな表情でシンを見ていた。

 身体はベルトで拘束されているものの、そもそも動かしにくい身体では拘束されているのもいまいち理解してないのだろう。頭もいまいち回っていないように思える。

 そっと彼女の手を握るシン。

 

「会いに、きた……?」

「うん。ステラ……また会えただろ?」

「ん…シン、また、会えた……」

 

 微笑む彼女に、涙に瞳を潤ませながら笑顔で応えた。

 医務室の扉が開いていることなんて気づかないほど嬉しいのか、そのままシンはステラと会話を続ける。

 

「アウル……スティング……ネオは……?」

「あ、いまはちょっとあって……!! だ、大丈夫! すぐに会えるよ! きっと!!」

 

 苦しいながらごまかしの言葉を紡ぎながらも、話を逸らしてステラと話しだすシン。

 そんな彼の声を聞いて、顔を見て、医務室の外でマユはそっと笑顔を零した。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 ガルダにて、ウィレーム・マクスウェルは聞いた情報を整理して、静かに頷いた。

 サタナ・L・タルタロスという男についての話も彼女らに洗いざらい話して、大よその理解は促せたはずだ。

 アズラエルが目を細めもみあげを指でくるくるといじりながら頷く。

 

「話を整理すると……ハイータのそばに貴方の偽者がいると……?」

「あぁ、どういうものかはわからないがな。わたしを真似ただけの者か、それともクローンか……あのいやらしいプレッシャー……おそらくは後者であると踏んでいるが」

 

 クロトとオルガとシャニは聞いているんだか聞いていないんだかな様子であるが、大よそ聞いていればそれで十分である。彼女らも自分らの仕事は考えることではないと理解している故に……。

 別段なにも考えないで戦うということではない。絶対的にウィルたちを信頼しているが故に、だ。

 

「クローンにしては、ですね……そういえばカーボンヒューマンというものを聞いたことがあります……」

 

 それについてはウィルも“識っている”のだ。

 

 クローンとはまた別のアプローチの人物の再現。記録やデータなどを使って擬似的に他の人間を作るものだ。クローンと違ってコピー元の人間に近い素養や年齢の人間の確保が必要になる。

 完全な再現はできないのはそうであるし、DNAなどを複数回に渡って改窟……手間はかかるがクローンよりもよほど早く戦力になろう。

 再現にはコピー元のDNAが必要にもなるが……。

 

「んじゃーこれからはそのおにーさんの偽者をぶっ殺してハイータを回収……的な感じですか?」

「んだよ。話がはえーじゃねーかよ。なぁ?」

「ハァン……やっちゃえばいいだけだもんね」

 

 軽く言ってくれる―――とウィルは苦笑を零すが、奴がいかように強かろうと自分のデータを使っているようではこの三人に勝てるとは思えないが……同時に懸念も存在するのだ。

 奴は自分よりも強い可能性がある。

 そしてハイータの奪還、アウルとスティングのことも然り。

 

「まぁ全部これからってことですね!」

 

 言うなりアズラエルが両手を叩いてパンッ!と音を鳴らす。

 

 まだまだ話したり無いところだが、ウィルも安静にしなければならないだろうと気を遣ったのだろう。クロトとオルガとシャニも軽く立ち上がるなり、出る準備をする。

 次の戦闘までにまだ時間はあることを理解しているウィレームも、機体のことなどは気になるがまずは自分の身体を休めることを優先しようと、大人しく横になろうとするのだが……。

 

「あ、忘れ物」

「ん、どうしたムルタ……っ」

「んっ…♪」

 

 至近距離に綺麗なアズラエルの顔が見える。唇に柔らかな感触。

 

「あぁあ!? おば、ねーさんがやった!!」

「おい病室でなにやってんだ!?」

「常識的に考えてなくね?」

 

 ブーステッドマンに常識云々を言われる盟主……否、元盟主。

 

 こんな公衆の面前で堂々とは珍しいなと思いながら、ウィルは羞恥に心の中で悶え苦しむ。すぐに顔を離した彼女の顔はいたずらに成功したとばかりの表情で。

 口に手を当てて笑っているが、それでもやはりその顔は少し赤く……。

 

「ふふ~っ♪ 興奮して頭の傷開かないようにしてくださいよぉ~♪」

「……フッ、善処するよ」

 

 いつも通り表情にはおくびにも出さずに応えるウィルだが、やはりバクバクと心臓が鳴っている。

 楽しそうに医務室を出て行くアズラエルと、そんな彼女に文句を言いながらついていく三馬鹿娘たち。いや、此度に至ってはアズラエルの方がアレであるが……何も言うまい。

 

 医務室に残されたのは医務官とウィルの二人。

 

「ははっ…いいものを見せてもらいました大尉。ごちそうさまです」

「なに、どうということはないよ。しかしだ……少々よろしいか?」

「ん、なんです?」

 

 不敵に笑みを浮かべるウィルが、そのままの表情で言う。

 

「傷が開いた」

 

「大尉ィッ!?」

 

 その流れ出す赤は、それほどあの“前世()”のような嫌悪するものでなく……なぜだか幸福感を感じさせた……。

 

 それはそれとして痛いが。

 

 







お久しぶりです
長らくお待たせして申し訳ありません!
ここから上手いこと更新していきたいとこですが…待っててくれた方がまだいれば嬉しいなって…!

久しぶりだったので投稿にだいぶ緊張しております
シリアスからのギャグで終わらせちゃったし

こんな感じだったかな……こんな感じだったかも……

とりあえず!次回もお楽しみいただければです
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