盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題)   作:樽薫る

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鼓動

 

 ヨーロッパ、マルマラ海近くの町。

 

 潮の匂いに海鳥の鳴き声、いっそ爽やかさすら感じるそんな町の……オープンテラスのカフェに溶け込むよう、普段は決して着用しないような服装で、男はいた。

 金色の髪をなびかせ、青いガラシャツの胸元をハタハタと揺らして風を送り込みうだるような暑さにサングラスの下の瞳を細め、片手の指先でビンを転がす。

 

「まったく、嫌にもなるな」

 

 暑い、どころではない、もはや熱い。星の環境の悪化なんてものを感じるべきか、それとも純粋にそこが気温が高いだけか……だが問題はそこではない。

 男はそれを物憂げに思ってしまう。それは彼がそういう男を模倣した“偽者”であるからか……それとも彼自身が地球に対して思うことがあるのか。どちらだとしても不思議なことではないだろう。

 まぁ“本物のように過激なこと”をする可能性などほぼ無いと言っていいのだろうが……。

 

「地球を休ませる、か……」

 

 別になんてことないナチュラリスト的な発言ではあるが、聞く者が聞けば中々物騒なことである。そこまでの思想もなければそれを笠に着て“決着をつけたい相手”がいるわけでもない。所詮は“模倣しただけの普通の男”だ。

 さらにそんな“模倣者”に“模倣者”がいるのだから……ぞっとしない話だ。

 

「さて、そろそろ……だな」

「ねぇお兄さん……もぉ、帰りたいんだけど……」

 

 男、ウィレーム・マクスウェルが呟けば、正面にいた綺麗な緑髪をした少女―――シャニ・アンドラスは暑さにやられ、心底ダルそうに言った。

 彼と同じくつけたサングラスの奥の目は瞑られており、着用していたワンピースの肩紐はかなり下がっている。 

 

「つつましくな」

「むぅりぃ~……」

 

 あれから数日が経ち、それぞれの陣営もあの激戦の傷を癒し、落ち着きを取り戻しつつも水面下でことは動いていた。

 ある筋の情報によると、アークエンジェルにいた“本物のラクス・クライン(ラクス・クラインを騙る者)”は“アンドリュー・バルトフェルド(付き人)”と共に非正規の方法で宇宙に上がり、行方をくらませただとか……。

 

 それだけであればまったく意味の薄い情報ではあるのだが、ウィルにとっては違う。

 その情報が出たということは既にアークエンジェルのキラ・ヤマトとカガリ・ユラ・アスハの二人はザフト、ミネルバのアスラン・ザラとの対話を終えたということだ……結果としては決裂するものではあるが、今がどの段階か、そして次の一手を打つには十分すぎるものである。

 

 ウィルがサングラスの奥の瞳をわずかに見開く。

 

「シャニ、わたしもつくづく運の良い男だ」

「んぁ……はぁ?」

 

 暑さでどうにかなりそうな中、そんなことを言われてもシャニとしても困惑するほか無い。

 サングラスの奥の彼の瞳を、サングラスの奥から確認して、その視線を辿っていけばそちらには赤い短髪の少女が見えた。薄着であるしそのボディラインは男にとってはかなり魅惑的だろう。

 冷静そうな言葉だが、声音が僅かに上がっているのを感じ取れば……目の前の男は一体現状のなにに不満を抱いているのだろうと顔をしかめた。

 

 ……いや、そもそも“デート(二人での外出)中”に正気かこの男、とシャニからの好感度はこれまでに類を見ない速度でまっさかさまである。

 

「……いや、なにか勘違いしていないか?」

 

 一種の直感である。

 

「べっつにぃ……てかわたしの方がおっぱい大き……いや、互角……?」

「ハイータみたいなことを言うな」

「えっ」

「そこはショックなのか……」

 

 勘違いの理由を理解しつつも、言葉にするより見てもらったほうが早いだろうと、ウィルは片手を大きく上げた。

 

「ルナマリア! ルナマリア・ホーク!」

 

 声を上げれば、赤い髪の少女こと“ルナマリア・ホーク”はウィルへと目を向けて、その場で彼と会うことなどとても予想していなかったという風に、目を点にして口をぽかんと開ける。

 

「えっ……うぃ、ウィレーム・マクスウェル、さん……?」

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 J.P.ジョーンズの甲板に、ネオ・ロアノークは立っていた。

 

「ふぅ……」

 

 海風になびく白髪が顔にかかれば、モーター音のする右手で軽く押さえて、視線の先―――バスケットボールをしているアウルとスティングを見やる。

 

 いなくなった一人、ステラの記憶を二人から消去するという措置はネオ自らが棄却した。ゆりかごというシステムはエクステンデッドの調整に必須ではあるが、そう頻繁に使っていては負荷によりその“消耗速度”を加速させていく。だからこそ、ネオは彼女らを消耗品として扱うことができないからこそ……使いたくないというエゴに適当な理由をつけて、限界まで使わないという方針でやってきているのだが……。

 

「本当に正解だったの、かな……?」

 

 常に一緒にいたアウルとスティングが、ステラがいないということをどう思っているか……自分の前では平静ではあるが、心の奥までは見通せない。

 逆にこれが身体でなく心の負荷になってしまったら……などと思えばため息もつきたくなる。

 考えても仕方ない。あの二人が本心にしろ偽りにしろ平気そうにしているのに自分が落ち込んだ姿を見せるなんてもってのほかだ……。

 

 だが、次の戦闘はもう近い。

 

 馴染む義手と義足、そちらに問題はない。前回の戦闘とてやれた……だが、結果それでも足りないことを実感させられた。

 フリーダムを相手には機体性能もさることながら押し負けたが、あれは明らかに手加減されていたとネオはハッキリと理解している。

 誰かと勘違いして接触通信までかましてきた挙句にあれだ……。

 

 先のロード・ジブリールとの通信を思い出す。

 

 

 

『わたしは過ぎたことをそうネチネチ言うタイプの女じゃぁないけど、いつまでも続く失敗にそういつまでも寛大なわけじゃないわ』

 

 モニターに映る女性、ロード・ジブリールの方を向きながら、ネオは静かに『ハッ』と軍人らしい返事で返す。

 心情としては今は絶妙に見たくない顔ではあるのだが……“あの男”よりはマシと思うことにした。

 

『エクステンデッドの損失も、まぁ仕方が無いわね。敵も必死なんだから……伊達に“我等が救世主”を模倣した機体を積んだ新造艦じゃない。被害があることも理解しているし、ね……だが、目的は達せられなければならないわけ。すべての命令は必要だから出てて、成功することが必須なわけ』

「ええ、そのことは十分に」

 

 モニターの中のジブリールが軽く長い髪を払って鋭い視線をネオに向ける。

 

『わかっているというなら……さっさとやり遂げてもらわないと、でないとこちらの計画も狂うし、あのミネルバは今や正義の味方のザフト軍、B.A.E.Lもそうよ。反連合のやつらに祭り上げられて……われ等のロマ・バエルのような英雄もいないくせに! ヒーローもかくやという扱いッ…!!』

 

 思い切り肘置きを殴りつけるジブリールに、ネオは辟易としてきた。

 

『片方はコーディネイター共の船だし……もう片方はわたしたちの赤い悪魔を“堕落”させて“潰した”アズラエルの軍なのよッ!! あいつらが勝ち続けるからこんなことになるッ……! 先の戦闘なんてベリアルプロジェクトの試作ぐらいしか役に立ってないじゃない……!!』

「ッ……そうですね」

『でしょう!? さすが“Bの因子”を使用した者よっ!』

 

 戦争は一人でやっているわけではない。ただ“トドメを差した”というだけで祭り上げるような素人になにがわかると心の中で悪態をつく。ゲームではないのだ。あれはこちらのエース全員を用いた波状攻撃の末にようやく与えた一太刀だ。

 だが、言う意味も無い。

 

『民衆は本当に愚かよ……先のことなんてまるで気にせず、今自分たちに都合が良いほうばかりを信じて、歓迎して、簡単に騙されて! コーディネイターがわたしたちナチュラルに本気で手を差し伸べるわけがないっ…! やつらは遺伝子的に劣るからという理由で我々を見下してきた……今だってどうせ道楽かなにかで“慈悲を施してやっている”自分たちに酔って楽しんでるだけだッ! なのに民衆はどこまでも愚かでっ……だからあの船は困るのよッ!』

 

 感情的にヒステリックに叫ぶジブリールに、ネオは頷く。

 ネオ自身、“自分もナチュラル”ではあるが、そこまで情熱的に反コーディネイター思想を抱くこともないでいる故に、少しばかり熱気が強い思想には疲れてもこよう。

 聞き流すように、適当な返事を返す。

 

「もちろんです」

『だからネオ……そのためのお前たちだって……忘れるんじゃないわよ』

「肝に銘じます」

 

 

 

 先のことを思い出せば、また気分は沈む。

 失敗に次ぐ失敗ともなれば……彼女のことだ。破棄なんかも平気で命ずるだろう。

 他の場所でもエクステンデッドは戦っているのだ。そちらのほうが優秀であれば無論そちらに任務を引き継がせて、こちらはお役御免なんてこともありえなくはない。

 だからこそ……。

 

「おい、ネ~オって!!」

「―――うひゃぁっ!!?」

 

 突然目の前に出てきたアウルの顔に驚いて数歩下がるネオ。そんな女性らしくもある素っ頓狂な声に、アウルとスティングは顔を見合わせてから、ワンテンポ遅れて同時に、腹を抱えて笑い出す。

 顔を真っ赤にしたネオは声にならない声を上げて、羞恥からなにか反論しようとするが、それも出てこない。

 二人にとってもそんなネオは珍しいのか、涙目になるほど笑ってから……。

 

「はぁ~はっ! めっちゃわらったぁ! ネオもそんな声出すんだなぁ!」

「しかも、顔っ……真っ赤じゃねぇかっ」

「ちょ、二人ともッ……! おねーさんをからかわないのっ!」

 

 そう反論するが、もちろんそれも燃料になってまた二人が笑い出す。

 ネオの顔が赤いのは羞恥からか怒りからか……まぁ両方がねるねるとされた結果のなんともいえない顔なのだろうけれど……なぜだかネオもそれがおかしくて笑ってしまう。

 隊員が少ないせいか、気にもせずひとしきり笑うと、肩で息をする三人。

 

 もちろん、三人とも思うところはあるのだ。ここにはいない一人に……だが、なればこそ、だろう。

 

「はぁ……あ~二人とも」

「ん、どしたよネオ……さっきのなら忘れないぜ一生」

 

 スティングの言葉に、ジトーと目を細めれば、バツが悪そうに頬を掻いてそっぽを向く。

 そんな二人にアウルがけらけらと笑えば、ほがらかな雰囲気にネオも先程までの緊張やらが抜けて肩が軽くなったような感覚を覚える。まぁ肩は常に凝っているが。

 

「なんかあーしてると普通だなぁ」

 

 なんて言葉が、どこからか聞こえて、三人は顔を見合わせる。

 苦笑しながらスティングは肩をすくめた。

 

「普通だってよ。全然普通じゃないのにな……?」

「だなぁ~生まれてから普通だったことないけどさ、普通ってなんだろ?」

「哲学的なこと言うねぇ」

 

 アウルの疑問に今度はネオが苦笑する。戦時中で戦闘艦に乗っているのが普通なのか、それとも戦時中でも家でごろごろしているのが普通なのか、ネオにとってもそんなものわかるわけがない。

 まぁ実際、誰に聞いてもあくまでそれは感覚的なものなのだろうが……。

 

「じゃあ普通っぽく……」

 

 ネオは言いながら両手を広げた。

 アウルとスティングはもちろん首をかしげる。

 

「ぎゅーってする? 前しなかったし」

「ッ~~! んでそうなんだよっ! てかどこが普通なんだよっ!」

 

 顔を真っ赤にしたアウルが即座に反抗するので、ネオは残念そうにスティングの方を向く。

 

「……しとくか」

「ってなんでだよ!!!」

 

 あっさりとネオの暴力的なまでの母性の塊に頭を突っ込ませるスティングにアウルは『うがー!』と擬音がつきそうなほどの猛抗議。

 両手でしっかりと抱きしめられ、撫でられているその後頭部に文句の連続。やれ『マザコン』だの『シスコン』だの『おっぱい星人』だの、言いたい放題であるが……放っておけないのはやはり……。

 

「たく、してぇならしてぇって言えば良いだろ?」

 

 頭を抱かれていた状態からあっさりと離れてそう言うスティングはにやついていた。

 つまりハードルを下げるために、アウルのために“わざわざ最初にされてやった”ということを示したわけであるが、アウルはそれに顔を真っ赤にする。

 

「バカにすんなよぉ! 全然マザコンとかじゃないんだからなっ!」

「ほらほら、アウルも落ち着いて」

「母さんは黙って―――ッッッ!!!」

 

 思わず放った言葉に顔をさらに真っ赤にするアウルに、ネオは驚いて一瞬固まるも、次の瞬間にはくすっと笑みを零した。

 まぁ……『母さん』なんて言葉が所謂『ブロックワード』でなくて本当によかった話だ。

 

「おかーさんの胸に飛び込んでくる?」

「ぜっっってぇしねぇ!」

「え~!」

 

 不満を吐くネオに耳まで真っ赤なアウルはその場から去ろうと艦へと入る扉の方へと歩き出すも……止まる。

 

「こ、今度の出撃が終わったら……その……してやらねぇ、ことも、ない、かも……」

 

 そんなわかりやすく古典的な言葉に、スティングはうずくまって甲板を叩いて声にならない声で笑いだすのだが、アウルもそうなることは見越していたのか、両手を拳にして握り締めて耐えていた。

 

 一方のネオはというと、最早涙目で自分を見てくるアウルに対して……心底嬉しそうな表情で……“ここ二年”は決して浮かべなかったような笑顔で、返事を返した。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 ウィルは正面に座るルナマリアに“ビン”を差し出した。

 胡散臭い相手を見るように目を細めるルナマリアを見て、シャニは頬杖をつきながらウィルに視線を向けなおしながら、シャツの袖を引っ張る。

 眉をピクリと動かしシャニのほうを向けば……。

 

「おにーさん、犯罪だよ……?」

「違うが」

 

 ザフトだとルナマリアは成人、セーフです! とか心の中で思ってからよっぽど二年前の三馬鹿娘と自分のほうがOUTだよなぁ……なんて“普通”の思考に陥り、即座にいまはそれどころじゃないと切り替えた。

 とりあえずは言葉にはした。あとは返答しだいであるが……。

 

「で、本当にこれが……?」

「あぁ、エクステンデッドの調整を抜きにしても、これがあれば衰弱を“ある程度抑える”ことができるはずだ。現状は大丈夫だとしてもじきに身体機能に影響が出て……最後は死に至る。わたしとしてはそれは不本意なのだ」

「不本意、なんでまた……?」

「彼女……ステラはわたしの身内のようなものでね。最終的にこちらで預からせてほしいのだよ」

 

 そんな言葉に、ルナマリアは小首をかしげた。

 

「現状、素直にそれを伝えてザフトが捕虜をこちらに預けてくれるか……? しかも連合の、エクステンデッドだ。未だザフトでは一部、我々B.A.E.Lがブルーコスモス派と繋がっていて、争っているふりをしているだけ、なんて考える者たちもいるだろう?」

 

 それはその通りだ。素直に、連合が分割されてます。片方はザフトの味方です。と言って全員が全員信じるものではないし、そもそもガイアを強奪したパイロットとわかればさらに、だろう。

 だからこそ、こちらから言っても無駄。ならばせめて、彼女の症状を和らげて延命するという以外に選択肢も“現状は”ありはしないのだ。

 

 だからこそ―――こうして“秘密裏”に渡す必要があり“秘密裏”に飲ませてもらう必要がある。

 

「……これバレたらわたしがヤバいんですけど?」

「理解しているよ。すまないな……“また”スパイのようなことをさせて」

 

 瞬間、ルナマリアの警戒心が強まった感覚を肌で感じた。

 シャニすらもそれを感じ取って、ウィルがなぜそんなことを言ったのかとも思うが、彼には彼なりのなにかがあるのだろうと理解しておく。これでも信用はしているのだ。戦いの部分だけではなく、諸々と……隠し事が多かろうと……。

 しかし、ウィルは言わないがルナマリアは揺れる理由がある。

 

 ウィルは識っている。甲斐甲斐しくもステラを見守るシンがミネルバにいることを……。

 

「信用して、いいんですか……?」

「それを当人に聞いても仕方があるまい。どちらにしろ言うだろうさ……信用してくれと」

 

 遠まわしな言い方ではあるが、事実だ。怪しすぎて逆に怪しくなく感じてさえきた。

 

「ウィレーム大尉……わたしは……」

 

 

 

 ―――その後、遠ざかっていくルナマリアの背を見るなり、ウィルは踵を返し歩き出す。

 

 近場にはジープも止めてある。中々ギリギリのタイミングではあったし、早々に戻って“次”に備えなくてはならない。

 少なからずステラは現状、ガイアに乗って戦場に出るよりは安全な場所にいるのだから、次はハイータ、アウル、スティングの三人。強欲にも救出したい少女たち。

 

 次のことを考えていれば隣のシャニが暑いと言いながらウィルの片腕に絡みつく。

 ルナマリアと同格ほどのその柔らかさを押し付けられて、ウィルは“正気を取り戻す”ことになるのは、なんとも皮肉というか、やはり彼はそういう方向にいつまで経っても慣れはしないのだろう。ただし、態度にはおくびにも出さないので組織内では相当な“強者”と思われてたりもするのだが……余談もいいところである。

 

 腕に絡みつきながら、シャニはウィルの顔を覗きこむ。

 

「おにーさん、よくあの人が通るってわかったね……?」

「運が良いと言っただろう。勘だよ」

 

 正気か? という表情をされて、さすがに苦笑を零す。

 

「“誰か”であればよかったんだ」

 

 もちろんほとんど絡みのなかった相手なら別だが、数名ほど候補は絞っていた。その中の最優良な相手がたまたま通りかかってくれたのは僥倖以外のなにものでもない。

 妹の方でもよかったのだが、先に“アスランの監視(別の仕事)”を頼まれていた分、可能性が高いのは彼女だとは思っていた。

 だからこそ、やはり、珍しく……ウィルは運に恵まれた。

 

「幸運の値は低いと思っていたが……なに、捨てたものでもないな」

「本気で言ってる、それ……?」

 

 一瞬ばかり本気ではあったが、なにを贅沢な、と苦笑を零すのは、仲間にも愛する家族や恋人にも恵まれていたということをしっかりと思い直したからなのだろう。

 いつも必死で近くが見えなくなる癖は直っていないなと、深く息を吐くなり、そっとシャニの頭を撫でた。

 猫のようにくすぐったそうにする彼女に優しく笑みを浮かべ、次に前を向く。

 

 

 ―――そんな欲張りができるほど、できた人間であれば、な。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 大型空母、ガルダの士官室にて、アズラエルはため息をついた。

 

 まぁ別に“彼と彼女”が二人で出かけたことは良い。別にいいのだ。帰りが朝とかにならない限りブチ切れる必要はないだろう。

 

 エクステンデッドについての情報を手に入れてから開発を進めていた薬剤についても……まだいい。もっていったこともまだ良い。

 

 せっかく万全とはいかないものの元気になったのにその元気さを披露してくれないことも、まぁ許していい……いや、やっぱりそこは許さない。絶対にNO。

 

 思考が脱線した。と頭を振る。

 

「ねーおねーさん! 僕らの新しいモビルスーツぅ!」

「クロトぉ、ちょっとは待っとけよ」

「オルガも気になってたじゃん! 戦力の差はモビルスーツの性能の差だからよ……とか言ってたじゃん!」

「言ってねぇよ」

 

 ソファでゲーム機片手にごろごろしているクロトと座って本を読んでいるオルガ。まぁそこも良い。

 だがまぁ、言いたいことというか悩みの種はそこなのだ。

 

「あ~ちょっと君たち」

「んぁ?」

「ん、どした?」

 

 軽く手招きすれば、ぴょん! と音が出そうな軽快さでソファから立ち上がったクロトがぴょこぴょこと寄ってきて、オルガも本を閉じて来る。

 アズラエルの横に立つ二人が、彼女が指差すモニターに視線を移す―――と同時に、表情を変えた。

 

 クロトはなぜだかキラキラとした目をしていて、オルガはアズラエルに近い。

 

「おいおい、冗談だろ……? アイツ落とされたばっかだろ?」

「おひょー! めっちゃいいじゃん!」

 

 二者二様のリアクションに、アズラエルはこうなると思ったという顔で、眉をピクピクと動かす。

 

「却下していいと思います?」

「え、でももう塗ったんだろ?」

「ええ……“ウィル”の指示通りに塗装した、とのことですよ」

 

 まぁ、アズラエルもオルガも今更“赤いウィンダム”なんてごちゃごちゃするのでやめてほしいとは思う。ただでさえ連合側は赤だとか赤黄だとか……ザフトはザフトで赤いザクと赤いガンダム。

 スタンダードだし人気のカラーではあるが、普通戦場では避けるべき色であるはずなのだ―――目立つから。

 

 だからと言って、コレはマジか、とアズラエルとオルガは片手を頭に当てる。

 

 目をキラキラさせたクロトは画面の中のウィンダムに興奮したように……。

 

「いいじゃん! “金色”!!」

 

 

 特にビームコーティングがされているわけでもない。機能があるわけでもない。ビームを反射など以ての外である。

 

 

 ただ、金色に塗装されたモビルスーツだ。

 

 

 

 







まだ感覚が戻らず「これでだいじょぶ?」と思いながら
ビクビク投稿する今日この頃

とりま繋ぎ回って感じですね。色々暗躍しつつ

次回か次々回あたりから戦争の時間

どう改変されるのか改変されないのか……生死とかも含めて


お楽しみいただければと思います
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