盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題)   作:樽薫る

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DREAM THE SKY

 

 クレタ沖、海上にはすでに戦火が上がっていた。

 

 ミネルバへ攻撃を仕掛けるオーブ軍の気迫は前回の比ではない。

 

 既に破損が目立つミネルバからは黒煙が上がっており、それはオーブからの攻撃、そして連合艦隊からの波状攻撃が凄まじいものであることを示す。

 護衛としてつけられていたボズゴロフ級からゾノやグーンが出撃したものの、連合の水陸両用モビルスーツであるディープフォビドゥンとの戦闘により、艦隊へ攻撃は仕掛けられない。

 

 甲板ではレイとルナマリアのザクが、近づくムラサメを迎撃しているものの、地上から空中を自在に飛行する敵を狙うのはエリートたる赤服とて容易なことでもない。

 ハイネのグフ、アスランのセイバー、そしてマユのザクとシンのブラストインパルスも迎撃に出てはいるが……。

 

「まったく……!またごちゃごちゃとしはじめたわね!」

 

 タリアの悪態も最もなことだろう。

 

「まさかまたあの船が……」

 

 副官であるアーサーの言葉に顔をしかめモニターを見れば、そこに映るのは……アークエンジェル。そしてストライクルージュだ。

 フリーダムと“情報の無いストライク”がオーブと連合の機体を破壊したものの、こちらの味方と言い切れないことをザフトの面々も理解している。

 関わらないに越したことはないが、そうもいかないだろう……。

 

『これではなにも護れはしない! 地球軍の言いなりになるな! オーブの理念を思い出せ! それなくして、なんのための軍かッ!!』

 

 そんな声が戦場に響く。

 ミネルバも混乱しているし、地球軍も再び現れた“誰の味方でもなければ”同時に“全員の敵”であるアークエンジェルに混乱しているだろうし、それ以上にオーブはもっとだ。

 板ばさみになるであろう指揮官にはタリアはこんなときだというのに苦笑を零してしまう。

 

 

 

 だが、それにもっとも怒りを向けるのは……怒れる瞳を持つ少女だ。

 

「なんでっ……なんであんたはっ……!!」

 

 専用ザクウォーリアのコックピットで、マユ・アスカは拳を震えさせて……“仇”を睨みつける。

 

「そんな綺麗ごとをッ!! いつまでもォォッッ!!」

 

 激情のままにそちらへとビームライフルを向け―――放つ。

 

 だが、即座にその前に出たフリーダムがシールドでそのビームを弾くなり、空中を飛ぶザクへと加速。

 

 

 

「マユこのバカッ!!」

 

 シンが悪態をつきながらも、ブラストインパルスのレールガンを展開、射撃。

 しかしマユのザクへと接近しながらフリーダムはそれを回避、シンがマユをやらせないために次の行動に移ろうとするも、すぐに反射的にその場から跳ねれば……それがアビスからの攻撃だったことに気づく。

 マユを護らなければならないのに、とその歯がゆさからシンは激情に駆られる。

 

「邪魔、するなぁあッッッ!!」

 

 そして種は割れ―――シンは接近してくるアビスのビームスピアを避け、その顔面に蹴りを打ち込む。

 

 海面に叩きつけられるアビスの中でアウルが叫ぶ。

 

「こいつぅうッッ!!?」

 

 だがそんなアビスにも見向きもせずシンはマユの方へ。

 

 しかして間に合うわけもない。フリーダムはザクへとビームサーベルを振るおうとしている。

 先の戦闘からしてコックピットを狙うことはないだろうと薄々感づいているが、それでも武装を破壊されては戦場の真ん中で的になるようなものだ。

 だからこそ、シンはマユを……ただ一人の肉親を救いに行こうとするが……。

 

「お前も…ッ!」

 

 コックピット、マユの着ているノーマルスーツの一部が発光を見せる。

 

「ふざけるなぁぁあッッッ!!!」

 

 激情と共に、マユの中の種もまた―――割れる。

 

 接近したフリーダムがビームサーベルを振るうが、ザクが後ろへとスッと下がりその一撃を回避。キラが驚愕に目を見開くも、次の瞬間にはザクがビームトマホークを振るう。

 

 それを呆気なく回避するキラではあったが、そのプレッシャー、怒気になんらかの違和感を感じ、距離を取った。

 だが次に、セイバーが接近をかけてくる。

 

 即座にザクから離れるが、セイバーは変わらず追ってきた。

 キラはそれに乗っているのが誰なのか知っている。先刻、話がしたいと言った彼、そして再び彼とは決裂し、別の道を歩むことになった。

 

 前のように殺し合いになることはない。そうは思いたい。思っているが……それでも、“(カガリ)”は今、泣いているのだ。

 本来ならそれを支えるべきは、目の前の男であったはず……。

 

『キラ、やめろ!』

「アスラン……!」

 

 サーベルとシールドをぶつけ合うフリーダムとセイバー。

 

『お前の力はいたずらに戦場を混乱させるだけだと言った筈だ!オーブに戻れとも!』

 

 それは到底無理な話である。だからこそ、こうして結局は意地をぶつけあうハメになる。

 こうして結局戦って……こんなもの彼にはとても見せられないが、どうせじきここに現れる。現れてしまうのだろうと、理解していた。

 お人よしで面倒見が良いのに、先を見通すのに長けた者だ。きっとこうなることも理解していて……。

 

「ごちゃごちゃとッ……! もらったぁ!」

 

 カオスがビームライフルとシールドに内臓した機銃でセイバーとフリーダムへと攻撃をかけようとするも、次の瞬間にビームライフルをビームで貫かれる。

 ハッとしながらシールドで誘爆を凌ぎそちらへと視線を向ければ、そちらには空を飛ぶ見知らぬパックを装備したストライク。

 顔をしかめながらそちらへと機銃を向けて放ちつつも可変、高火力ビームであるカリドゥス改を放つも、ストライクはそれをゆうに回避。

 

 ストライクのコックピットでムウは顔をしかめつつ。

 

「なんか嫌な感じすんだよねぇ……! けど、うちの大将をやらせるわけにはな! いけ!」

 

 その程度の相手でキラがどうにかなるとも思えないが、カガリへの心配はどうしたって無くなるものではない。彼女の失態だって山ほど知っているし、彼女への印象はやっぱりじゃじゃ馬なのだ。

 だからこそ特殊な“ガンダム”に全力攻撃をしかけるために、ムウはドラグーンを射出。バックパックの左右に装備された小型ドラグーンが一機ずつと、下部の大型ドラグーンが一つ。

 

「やれんじゃないの俺もさッ!」

 

 大気圏内でも“一応使用可能”と聞いていたがその分バッテリー消費も尋常ではないらしくせいぜい3回きりの大技らしいが……いざとなれば充電器を別のストライカーパックごと射出させるという荒業もある。

 なにより、ここでガンダムを落とせれば十分……。

 

「つりは来るってなぁ!」

 

「こいつっ…俺だってカオスの“機動兵装ポッド(コイツ)”があればッ……!!」

 

 四方からの攻撃に、シールドをもった左腕と右足が破壊されるも、スティングは加速し、距離を取り、思考を回転させる。

 

 これ以上、優しい“彼女”からなにかを取り上げさせるわけにはいかないのだ。

 

 

 

 一方でミネルバへと接近をかけるオーブ軍と共に、スティングの気にかける女……ネオ・ロアノークの駆る赤橙色のウィンダムはいる。

 ミネルバからの滞空射撃にくわえ甲板にて迎撃攻撃を続ける二機のザク。さらに時折浮上するボズゴロフ級からのミサイル攻撃、オレンジ色のグフ。

 どうにも責めきれないでいるのは確かで、こうして自分が増援にきたおかげでグフを足止めしているからオーブの攻撃が通るようになってはきたが……。

 

「くぅッ!」

 

 横薙ぎに振るわれたスレイヤーウィップを機体を倒して回避、と同時にサマーソルトの要領でグフを蹴り飛ばすと一回転。同時にビームライフルをグフに向けて放とうとするが、アラートが聞こえて下がる。

 そちらに視線を向ければ赤いザクが向かってきており……。

 二機を同時に相手にするには些か厄介であるが、サタナ・L・タルタロスに頼るのも癪ではある。今作戦では彼は指揮官であり出撃する予定はないのだ。

 

 だが、しかし……。

 

「これはちょっと不利かなぁっ……!?」

 

 言いながら接近し<テンペスト ビームソード>を振るうグフのその一撃をシールドで受けきれないと判断し即座に回避。脚部に蹴りを打ち込み、さらにクローを展開し突き刺し破壊。

 装甲の厚さやパワーの理由から引きちぎるまではいかないものの、多少引っ張るという行為はできたし、それでザクの射線にグフをわりこませて攻撃を牽制。

 二対一でまともにやりあうような愚策をするわけにもいかないと、脚部クローを収納させるとビームサーベルを出している余裕もないまま、グフを蹴って離れた。

 

「もらった……!」

 

 だがその二機の牽制をしている間にムラサメ三機がミネルバへと接近するも……。

 

「ッ! ダメっ……!!」

 

 その言葉もむなしく―――放たれた高火力ビームが三機のムラサメを撃墜する。

 

「チィッ!!」

 

 グフとザクを相手ににらみ合いながらも、そちらを確認。

 

 海上を水しぶきをあげてホバーし接近してくるのは……。

 

「金色ッ!!?」

 

 

 

 金色のモビルスーツ<フルアーマーウィンダム改>である。

 通常の機体より大きな体躯から装甲の厚さと武装の多さは一目瞭然。さらにその後方へと少し伸びた頭部、通常よりも前に長いバイザーから、通常のウィンダムとは違うことを理解させてくる。

 だが、その肩部につけられた自分の身を抱く悪魔のエンブレムは……。

 

 色こそ違えどそれが誰かとありありと示すものであり、その金色に戦場の兵たちは視線を引く。

 

 そのコックピットで、赤と青の瞳を持つ男はヘルメットの中からモニターを見やる。

 

 否、正確にはモニターの中の、赤橙色のウィンダムを、だ。

 

「正念場の一つだ。頼むぞ……!」

 

『はいはい! やだねぇ、またオーブを撃つんだってさ!』

『ま、どことやろうとかまわねぇよ。オレらがやることなんてわかりやすいもんだろ。アイツらより!』

 

『そゆことだね。やるよ』

 

 海中にて、連合のディープフォビドゥンが新たに現れた機体、フォビドゥンヴォーテクスの<フォノンメーザー砲>により撃墜される。ゾノとグーンのパイロットたちがその機体に『B.A.E.L』のエンブレムがついていることに気づき、唖然としつつ警戒を緩めないが、さらにシャニの駆るフォビドゥンヴォーテクスはゲシュマイディッヒパンツァーを使い、敵機を挟み込み、そこから展開した鋏状の<ニーズヘグ>にて敵機を解体。

 ザフトはすぐにそのフォビドゥンが味方と判断したのか、警戒を薄め、連合の部隊のほうへと向く。

 それを確認するなり、シャニのフォビドゥンヴォーテクスは通常のフォビドゥンの持っていた<鎌状のニーズヘグ>を肩にかつぎ、その色の違う相貌で敵機を睨む。

 

 ミネルバへと新たに追撃をしかけようと接近してくる連合のウィンダムではあったが、レイダーの背部に乗ったランチャーストライカーを装備したウィンダムがアグニを背に、左手にビームライフル、右手にバズーカ<トーデスブロック>にて敵機を撃ち落していく。

 レイダーも口部に装備していたツォーンこそないものの、その機銃は量産機を落とすには十分だ。

 

『選り取り見取りですねぇ!』

『遊んでんじゃねぇぞ!』

 

「さて、問題は“ハイータ”とヤツだが……!」

 

 海上をホバーで移動しつつ上空からのムラサメやウィンダムの攻撃を回避しつつ、手に持った“多機能大型ビームライフル<アンフィスバエナ>”にてビームを放ち落とす。

 

「なんで敵の攻撃ばかり当たるんだ!」

 

「慣らし運転もしていないまま使うが、フッ、珍しいことでもないか……!」

 

 いつも通りに彼は呟くと機体を空中へと跳躍させ、アンフィスバエナの砲口下部から展開したビームサーベルでムラサメを切り裂くと爆散する前に蹴って跳躍。爆発で加速し、次のウィンダムへと接近するなり今度は腰部横、通常のウィンダムと変わらぬ場所に装備されたビームサーベルを左手で抜いて袈裟斬りにし、バーニアを吹かし爆風から離れる。

 

 だが、次の瞬間に接近してくる赤橙のウィンダムを確認。

 

「この、気持ち悪いやつ……!」

 

「ッ! さすがだなハイータッ! あの二機を振り払って接近してくるとはッッ……!」

 

 重装甲ながらその分バーニアを各所に装備したFAウィンダム改は放たれるビームライフルを難なく回避。さらに、加速し接近するなり、蹴りを打ち込む。

 

「ぐぅう!!?」

 

「許せよハイータ……!」

 

 声が聞こえる。接触している故に、繋がれる。

 

『この声っ……ぐぅうッ……!! 不愉快……!』

「そう言われてしまっては、だが……!」

 

 身体をくの字に曲げるウィンダムを前に、ビームサーベルを振るおうとするが……。

 

「くッ!」

 

 殺気を感じて即座に下がれば、二機の間を迸るビームライフル。

 すぐに距離を取るネオのウィンダムへと追撃をかけることもなく……否、かける余裕もなく、ウィレーム・マクスウェルはビームを的確に放った相手……赤いウィンダムを見やる。

 どっちを向いてもウィンダムで嫌になりそうだと、ウィルは心の中で悪態をつきつつ、自らの“模倣隊”へと敵意を向けた。

 

 肩部の装甲を前面に展開すると、バックパックに装備されていたビーム砲二門が前方を向き、下降しながらもウィルはトリガーを引く。

 ロックなど必要ないし、左右に移動する“特殊なウィンダム”を相手にそれで勝てるはずもない。

 だからこそ、自分の直感で攻撃のビームを撃ったが、僅かにずれた専用ウィンダムは一発を回避、もう一発をシールドで弾いてみせ、即座にサーベルを抜いて接近してくる。

 

「やはり貴様か、サタナ・L・タルタロス……! “わたしなど”の模倣……!」

 

「生きていたかロマ・K・バエル。やはり貴様を消さねばわたしは大衆の望むわたしにはなれないというわけだな。だからこそ消すべきなのだ。貴様を……! であるからわたしは我を通して出てきた……!」

 

 戦場にてぶつかりあう二人の“赤”とならなかったのは、それをウィルが嫌ったからなのだろう。だからこそ金色にした。

 ぞわぞわとする感覚に、生理的嫌悪を自らが感じているのだと悟りつつ、自らの偽者と、海上と空中にて撃ちあい続ける。

 

 目の前の男を本気で嫌悪する理由など簡単なことだ。ただ模倣しているだけの者でないとウィルがそのもどきめいた力で理解し、本能で感じているからなのだろう。

 あれはそんな単純なものではない。自らと同じルーツを持つ者を感じる者を知っている。それが答えなのだ。

 

 接近した専用ウィンダムがビームサーベルを振るえば、その先にはFAウィンダム改の左腕。

 

「チィ……!」

『シールドを持たないと思えば……!』

 

 そのビームサーベルは、FAウィンダム改の左腕の前腕装甲で止まっていた。シールドを持たない代わり、かなりピンポイントで、高火力なビームは凌げるわけもないが、対ビームシールドの代わりを果たすものを仕込んでいたということだろう。

 ウィルは右手のアンフィスバエナで撃つなり切るなりしようとするも、サタナがシールドを使い銃口を向けさせすらされないように妨害をかける。

 

「チィ! 何者なのだ。貴様は……!」

『何度も宣言したはずだ。わたしは大衆の、世界の望むロマ・K・バエルであると……!』

「なぜロード・ジブリールはわたしなどのっ……!」

『散々と人々を惹きつけたきつけたのは貴方だったはずだが? 今更違うと言えるか? 貴方に光を見たからこそ我が“(ロード)”は“一族”を使ってまでわたしを作り上げたのさ。生贄を散々と用意して、失敗作を大量生産して……そしてわたしは生まれた。器となるわたしは!』

 

 薄々と理解していたが、はっきりと自らが原因で、自らのせいでそんなことになっていると突きつけられて、冷静でいられるほどウィルは大きな男ではない。

 だがそれでも、目前の敵と助けるべき者を見失うような生き方もしていない。

 これまでの全ても……。

 

『ナチュラルでありながらコーディネイターを凌駕する力。遺伝子調整などに劣らず、それすらを超える力、ならばそれは光であれと、だからこそ人の総意を受け止める器である必要がある……!』

「わたしはそんなに大きい男ではないよ……!」

 

 そして、だからこそ“遺伝子(ソレ)”を誇りとしている人間にとっては……。

 

「ならばこそ……!」

 

 両の機体が同時に足を振るえば、FAウィンダム改のパワーの方が上だったのか、専用ウィンダムの体勢が崩れる。

 

「そこだッ……!」

『ぐぅっ、なにをっ』

 

 右手のアンフィスバエナを手放すなり、拳を握り締める。

 瞬間、右前腕の装甲が即座に可変、そのまま可動し拳を守るためのナックルガードのような形へと変われば、装甲に装備されていた三つの赤いボルトのようなものが僅かに突出。

 ウィンダムがシールドを前方に向けるも、まともに受身を取れる体勢でもない。

 

 シールドへと打ちつけられるナックルガード付きの拳、そして―――。

 

「こいつが“オレの炸裂ボルト”だ……!」

 

 ―――炸裂。

 

 コックピットのウィルがトリガーを引くと同時に、ナックルガードから激しい爆発音。

 それと共に、装備されていた三つのボルトが射出され、超至近距離からシールドを貫き機体を貫く。

 

 だがそれでも。

 

「チィ、避けたか……!」

『くっ……あなたという象徴を再度担ぎあげるためのウィンダムではこんなものかっ』

 

 ギリギリでシールドを手放して無理やりに体勢を変えたのだろう。射出された三つのボルトが貫いたのは頭部と左肩部だけである。それでもその炸裂弾は大きな風穴を残していた。

 その状況を確認するなり、次の行動に移ろうとするウィル。

 

「祭事のようなことをッ!」

『祭事なのですよ。赤い悪魔を再び世界に知らしめるための……!』

「世迷いごとを!」

 

 追撃をかけようとするも、専用ウィンダムはバルカンを放ち僅かに隙を作るなりビームサーベルと足を引いて加速しウィルから距離を取る。

 追撃をかけようとするが……。

 

「ッ……! アウルか!」

 

 海から現れたアビスが両肩の三連装ビーム、計六連を放つのでそれを回避。

 

「チィ! なんで避けれるんだよあの金ぴかぁ!」

 

 ウィルはその背後にブラストインパルスを見た。そう、このままであれば……“原作(記憶)”どおりにことが進んでしまってはならない。

 だからこそ、アビスを誘導するようにその足元に向かって胸部からビーム……スキュラを放つ。

 

「うわぁっ!?」

 

 足元、海へと放たれたビームが水蒸気爆発を起こし、アビスはそこから逃れるために空中へ飛ぶ。

 

 だが悪手、ブラストインパルスがそちらへ向けて<デファイアント ビームジャベリン>を―――投擲。

 

『アウルぅ!』

「ネオッ……!?」

 

 声が聞こえるが、既に間に合う距離ではないだろう。あのザクとグフを相手にしているのだから当然、ならば……。

 

 だが、そうはならない。

 

『アウルッ!!』

「えっ!?」

 

 突如の衝撃。アビスの肩部を貫くビームジャベリン。

 自分の名を呼び蹴りを浴びせ“助けた”のは……金色のモビルスーツだ。

 

「な、なに……? なんか、懐かし」

 

 だが目の前の金色のモビルスーツは次の瞬間、赤橙色のウィンダムからのビームライフルを回避するために下がる。

 コックピットの中で、なぜかそちらに手を伸ばすアウルだったが、下降していくアビスと自ら距離を取る金色のモビルスーツの距離は離れるのみ。

 

 ハッとして横を見ればネオのウィンダムだが、直後にその機体にスレイヤーウィップが巻きつき、電撃を流す。

 

「なっ……ネオ!」

『があぁあああああっっ!!!?』

「んなくそぉ!!」

 

 アビスの残った右腕に握られた<ビームランス>を使いそれを切り裂く。

 

『あう、るっ……!』

「ネオっ! ねお!」

 

 あの“ステラ(末っ子)”のように名を叫んでしまうのもまた、仕方ないことなのだ。無意識下でアウルは錯乱している。“消したはずの記憶の底”から聞こえる声、それに弱々しいネオの声。

 だが、それはそう長くも続かない。

 

『あ、うるッ……!!』

 

 電撃を受けたネオからの必死の呼びかけ、だが気づいた時には、赤いザクはもう近くだった。

 

「え?」

 

「墜ちろぉォッ!!」

 

 投擲されたビームトマホークが、ゆっくりと近づいてくるのを感じる。

 

 なぜか死に直面しているというのに、アウルは記憶の底、自分に手を差し伸べる男の影が……。

 

 だが迫るビームトマホークを前に―――緑色の装甲が突然目の前に現れた。

 

「は?」

 

 それがボロボロのカオスだと理解するのにそう時間はかからない。気づけば目の前でカオスがくの字に曲がり、そのままアビスの斜め前へと倒れるようにして、墜ちて行って……。

 言葉も出ないまま、アウルはそれを見ることしかできず。

 

 

 

 墜ちていくカオスのコックピットで、スティングが笑みを浮かべる。

 

「はっ……らしくねぇことしちまった。けどよ……アウル生きてんだから、泣くんじゃねぇぞ……」

 

 戦いの前の、何気ない、アウルとネオとのやりとりを思い出す。

 優しい彼女のことだ。ステラに次いでアウルを失うなど、悲しまないはずもないだろう。汚れ仕事を任せられる特殊部隊の隊長らしくもない……否、軍人らしくもない。

 だからこそ、彼女のことを“姉だったり母親だったり”な感覚でアウルもステラも見てしまうのだ。面倒見のよさは元来のものなのかそれとも……。

 

 走馬灯に近いのだろう。数瞬の間に色々と思考したが……。

 

「もっと甘えとけばよかった、ぐ……だ、とか、普通に、だとか、よぉ……」

 

 目を閉じる。

 

「かなわねぇ……“夢”だよ、な……」

 

 

 

 ウィルは呆然としていた。

 

 想定外ではない。戦場にいるのだ。誰もが危ないのは間違いない……だがそれでも、冷静であるスティングよりもこの場において……“識っている”が故に、アウルを優先していた。

 別にそれは間違いではなかったのだろう。実際にアウルの危機を回避できたのだ。

 だが、それでもそれ以上にイレギュラーはあった。

 

 結果、マユがアウルを討とうとした。そして、スティングがそれを庇った。

 

 知らない未来。知らない現実。既にそこは知らない場所だったと理解してなかったわけではない。だが実際にそうだったとしても思い通りにことはいかない。

 

「スティングっ……!」

 

 彼の“知らない少女たち”は、いま自らと共にいる“クロト・オルガ・シャニ(少女たち)”と一緒だ。

 であるからこそ助けたいと思ったし、でなくとも関わってしまった。縁を結んでしまった。

 

 そうやって一つずつ、助けると誓ったものだけでなく、沢山のものを救った。救った結果がこれだ。

 

 救った者で、救いたかった者を殺す。

 

 だからこそ、また、そう……“守れなかった(お前が殺した)”。

 

 

 

 カオスが落下すれば、海から巨大な水柱が上がり、さらにすぐに……巨大な水柱が上がる。

 

「あ、ああぁッ! スティング……ッッッ!!」

 

 赤橙色のウィンダムのコックピットで、ネオが叫ぶ。

 

 だが、返事が返ってくるはずもない。

 

 肩を揺らして呼吸をしている。過呼吸になりかけのような小刻みな呼吸を続けながら、震える手で珍しくしていたヘルメットを外して放ると、すぐに胸元を開ける。

 嫌な汗が伝う。色々な感情が渦巻く。

 

 だがやるべきことは……。

 

 即座にウィンダムが動き出し、接近をかけてくるザクを蹴り飛ばす。

 

「はぁっ……! はぁ、はぁ……! あ、ぁあぁああァアアアッッッ!!!」

 

 咆哮、そして―――。

 

「お前ッ! お前ッ! お前らァァアァッッッ!!!」

 

 

 

 ―――種が、弾ける。

 

 

 







たぶん賛否両論、下手すりゃ否が多めの展開だろうなと思います

しかしてスティングとアウルが女の子になった時から暖めていた展開でした
女の子なったからといって確実に生還する!という感じになっては展開としてしょうもいかな、とか色々と思考しつつ……
まぁウィルらしいと言えばらしい、深く語るとボロが出そうなのでとりまこんな感じです

そして、ネオが覚醒。どうなるこれ、な展開

ちなみにフルアーマーウィンダム改はほぼフル百改でした

では、次回もお楽しみいただければです!

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