イナズマイレブンAnother   作:クレイЯ

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準決勝に向けて

円堂 side

 

 

「”ドラゴンクラッシュ”!」

 

「”熱血パンチ”!」

 

 

俺たちは今日も今日とて、準決勝に向けて練習を続けていた。

今日は木野と土門は用事があって来ていない。嵐山もこの前の試合で倒れたから、一応検査で病院に行っている。

残る俺たちは次の準決勝に向けて、自分の力を少しでも向上させようと頑張っている。

 

 

「わあ....!」

 

「.....(あれ誰だ?)」

 

 

集中して練習していると、見たことない奴が練習を見ていることに気付いた。

誰かわからないけど、偵察って感じではないな。

 

 

「おぉーい!ボール取ってくれるか!」

 

 

ちょうど弾いたボールがあいつの方に転がっていったので、ボールを取ってもらうよう声をかけた。

そしたらあいつはボールを蹴りながらこっちへ向かってきた。

 

 

「す、すげえ...!」

 

 

あいつはすげえドリブルテクニックで半田たちを抜き去り、どんどんとゴール前、俺の方へと向かってきている。

 

 

「よし....来い!」

 

「ふふ....行くよ!”スピニングシュート”!」

 

 

俺がシュートを要求すると、あいつはボールを逆立ちで回転しながら浮かせ、そのまま回転の勢いでボールを蹴りだした。

 

 

「負けるか!”ゴッドハンド”!」

 

 

ドゴンッ!

 

 

凄い勢いだ...!だけど負けねえぞ!

 

 

「うぐぐぐ......っ!止めたぞ!」

 

「はは!すごい!君の勝ちだ!」

 

「いや、ペナルティエリアの中からだったら、そっちの勝ちだった!」

 

 

なんとか止めることができたけど、その勢いにかなり押し込まれてしまった。

凄い威力だったし、ドリブルもすげえうまかった。こいつ何者だ?

 

 

「素晴らしい技だね。アメリカの仲間にも見せてやりたいな。」

 

「アメリカでサッカーやってるのか!?」

 

「ああ。この前、ジュニアチームの代表候補にも選ばれたんだ。」

 

「聞いたことがある。将来アメリカ代表入りが確実だろうと評価されている、天才日本人プレイヤーがいると...」

 

「「「へえ~...」」」

 

 

そんなすごい奴なのか、こいつ!

すげえな...世界か!いつかは世界を相手に戦ったりしたいよな!

そんな話をしていると、用事で遅れていた木野と土門がやってきた。

 

 

「何してるの?みんな。」

 

「おお木野!こっち来いよ!すごくサッカーの上手い奴が来ててさ!」

 

 

俺が木野にこいつを紹介しようとすると、突然木野に抱き着きだした。

全員が驚いているが、木野は突然のことに困惑していた。

逆に土門は突然のことに怒っている。

 

 

「お、お前何を......って、お前...!」

 

「久しぶりだね。」

 

「えっ....」

 

「俺だよ。ただいま、秋、土門。」

 

「い、一之瀬くん...!」

 

 

.....

....

...

..

.

 

 

一方そのころ...

 

 

嵐山 side

 

 

「付き添いありがとうございます、響木監督。」

 

「気にするな。俺もお前の状態は気にかけねばならん。お前を戦力として数えて良いかどうかで、今後の戦い方は大きく変わってくるからな。」

 

「そこまでですか。」

 

「ああ。...正直、今の雷門が世宇子に勝てる確率は2割もないだろう。だが、お前が全力で挑めるのなら変わってくる。」

 

「...ちなみにどれくらいですか?」

 

「ふっ........4割だ。」

 

 

4割....五分五分でもないとは、響木監督も随分と弱気だな。

だがそれも無理はないか。俺と響木監督だけは、これまでの世宇子の試合を見ている。そのどれもが圧倒的で、破壊的で....おそらく、世宇子との試合は文字通り死闘になるだろう。

 

 

「だったら何が何でも俺は試合に出ますよ。...ま、次の試合に勝つことが先ですけどね。」

 

「ああ、そうだな。」

 

 

prrrrrrr

 

 

「む....すまんが俺は電話に出てくる。」

 

「あ、はい。」

 

 

響木監督に電話がかかって来て、監督は席を外してしまった。

さて、検査の後はどうしようかね。練習...はさすがに辞めておいた方がいいか。

 

 

「あら、嵐山くん。」

 

「....夏未。」

 

「検査かしら。」

 

「ああ、まだ呼ばれてないけどね。」

 

 

これからのことを考えていると、夏未がやってきた。

どうやら今日も理事長の見舞いに来ているようだな。

でも、お付きの執事さんは今日はいないようだ。

 

 

「....何かあった?」

 

「えっ?」

 

「随分と暗い顔をしてる。」

 

「....貴方にはわかるのね。少し、気になっていることがあって。」

 

「気になること?」

 

「ええ.........でも、あなたに話すことでもないわ。気にしないで。」

 

「そっか。......ねえ、この後時間はある?」

 

「えっ?まあ時間はあるけど....どうかしたのかしら?」

 

「少し付き合ってよ。俺の検査が終わったらさ。」

 

「え、ええ...いいわよ。」

 

「じゃあ理事長の病室で待ってて。終わったら行くから。」

 

「わかったわ。」

 

 

.....

....

...

..

.

 

 

円堂 side

 

 

「15対15!もう一本!」

 

 

あれから俺たちは一之瀬と一緒に練習をしていた。

一之瀬のレベルがすごく高くて、すげえ楽しかった。

今は俺と一之瀬でPK対決をしているけど、今のところ15対15で互角の勝負をしている。

 

 

「もう1時間もやってますよ。」

 

「二人とも負けず嫌いだから。」

 

「ふふ、でも似てますね。外見は全然違うのに。」

 

「うん。初めて円堂くんに会ったときから、ずっと感じてた。」

 

 

「はっ!」

 

「させるか!」

 

 

何とか防いで、これで16vs15か!

まさかここまですごい奴がいるなんて...世界は広いんだな!

昔、嵐山に初めて出会った頃のことを思い出すよ。

 

 

あいつに初めて出会った時も、こんなにもサッカーが上手な奴がいるんだってわくわくしたもんなあ。

 

 

 

「円堂!仲良くなった記念に一緒にやりたいことがあるんだ!」

 

「ん?いいぜ、やろう!」

 

「土門も協力してくれ。」

 

「え?....まさか、あれか!?」

 

「そう、”トライペガサス”さ。」

 

 

”トライペガサス”....って、確か前に土門と木野が話してくれた必殺技だよな。

そっか、亡くなったと思ってた一之瀬が生きていたから、”トライペガサス”にも挑戦できるのか!

 

 

「よし!やってみようぜ!」

 

「ああ。俺と土門、そして円堂で完成させよう!かつての”トライペガサス”を!」

 

 

それから俺と一之瀬、土門は何度も”トライペガサス”に挑戦した。

一之瀬がいうには、三人がボールを中心に交わることで生まれるエネルギーをボールに注ぎ込み、そのボールを三人で蹴ることで放つことができる必殺技らしい。

 

俺たちは何度もボールを中心に交わるが、少しでも交わる位置がズレていると失敗してしまっている。

何て難易度の高い必殺技なんだ.....だけど諦めない!何としてもこの必殺技を完成させてみせる!

 

 

「全国大会で使う技でもないのに、ここまでしてやる意味って...」

 

「意味なんて関係ないよ。円堂くんたちは一緒にこの技を完成させたいだけ。ただそれだけなの。」

 

「男の子って、わけわからないですよね。」

 

「ふふ。だから応援してあげたくなるんじゃない。」

 

「...はい!」

 

 

 

.....

....

...

..

.

 

嵐山 side

 

 

 

「お待たせ。遅くなっちゃってごめんね。」

 

「いえ、大丈夫よ。」

 

「じゃあ行こう。」

 

「え?どこへ?」

 

「とっておきの場所さ。」

 

 

俺は検査を終え、約束していた夏未を迎えに来た。

響木監督は検査結果を聞いて、そのまま帰っていった。

後は若い奴らで楽しめ、とか言っていたがどういう意味なんだろうか。

 

とにかく、元気なさげな夏未を元気づけるために、俺のとっておきの場所に連れていこうかな。

まあ俺も円堂から教えてもらっただけだけどね。

 

 

そんなこんなで俺たちは病院から出て歩き、鉄塔広場へと来ていた。

辺りは日が落ち始めて、夕日が辺りをオレンジ色に照らしている。

 

 

「ここって...」

 

「さ、こっち。」

 

「え、ええ...」

 

 

俺は夏未に手招きして、鉄塔を上り始める。

何回登っても、やっぱりちょっと怖いな。

 

 

「よいしょっと......夏未、大丈夫?」

 

「ええ.....ありがとう.....っ...!」

 

「おっと....」

 

 

俺は先に登り切り、後から登ってきていた夏未の手を掴んで引っ張り上げる。

勢いよく引っ張り上げたせいか、夏未がよろけて俺に抱き着く形で倒れこんできた。

 

 

「ご、ごめんなさい...!」

 

「いや、こっちこそ勢い良く引っ張りあげすぎたよ。」

 

「いえ...」

 

「...ま、とにかく見てみなよ。」

 

「ええ........わあ.....」

 

 

俺が指をさした方を夏未が見ると、そこには夕日に照らされる稲妻町が一面に広がっていた。

夏未はその光景に見惚れ、感嘆の声を上げていた。

 

 

「円堂に教えてもらったんだけど、俺にとってもとっておきの場所でさ。...この風景を見てると、自分の悩みなんかちっぽけに思えてきて、何となくだけど気持ちが軽くなるんだよ。」

 

「ええ...そうね...」

 

「...」

 

 

この風景を見て、夏未も少しは元気になったみたいだ。

でも、根本的な悩みが解決しない限り、本当の元気を取り戻すことは無いかもな。

でも....

 

 

「ひとりぼっちじゃない。」

 

「えっ?」

 

「夏未、君には俺が、俺たちがついている。みんな夏未の仲間だ。」

 

「嵐山くん...」

 

「もし一人で悩んでいることがあるんなら、俺を頼ってほしいな。解決するなんて大それたことは言えないけど、仲間がいれば悩みは半分こできるし、嬉しさは2倍だろ?」

 

「.....うん!」

 

 

夏未は今日一番の笑顔で頷いてくれた。

まだまだ悩みは晴れていないだろうけど、こうやって笑顔が見れただけでも良かった。

 

 

「ありがとう、嵐山くん.......あなたがいてくれて....本当によかったわ...」

 

「えっ?何か言った?」

 

「ううん、何でもないわ。....準決勝、そして決勝....勝利を期待しているわよ。」

 

「ふっ...必ず勝つよ。ここまで来たんだ....もう優勝しか見えてないさ。」

 

「ええ....あなたの活躍、期待しているわ。...これは理事長の...いえ、私自身の言葉よ。」

 

「....仰せのままに。」

 

 

 

 

.....

....

...

..

.

 

 

「あの飛行機かな...」

 

「うん...たぶん...」

 

 

 

あれから1日経ち、俺は午後からサッカー部の練習に顔を出していた。

昨日電話で聞いてはいたが、どうやら一之瀬という秋の幼馴染が来ていて、一緒にサッカーをしていたそうだ。

俺も是非、一之瀬と一緒にプレーしたかったが....残念だ。

 

 

「一之瀬ええええええええええ!また一緒にサッカーやろうぜええええええええええええ!」

 

 

円堂が空を行く飛行機に向かって、叫んだ。

その瞬間、俺たちの後ろから誰かが近づく音が聞こえ....

 

 

「うん、やろう!」

 

 

「「「!?!?」」」

 

「一之瀬!?どうして!?」

 

 

みんなが振り返ると、俺の知らない男がそこにはいた。

円堂がそう呼んでいるあたり、こいつが一之瀬なのか。

 

 

「あんなに胸がワクワクしたのは初めてだ!だから帰るに帰れない。もう少しここにいる!俺、一つのことに燃えるみんなとサッカーがしたい!円堂たちと一緒にサッカーがしたいんだ!」

 

「雷門に来てくれるのか!?」

 

「うん!よろしく!」

 

 

まさか...一之瀬が雷門に入ってくれるとはな。

アメリカで天才と呼ばれたその実力、世宇子と戦うのに必要な戦力だ。

それに俺自身、外国で天才と呼ばれるだけのプレイヤーと一緒にサッカーができるのが、楽しみで仕方ない。

 

 

 

「あ、君が嵐山か!円堂たちから話は聞いているよ。君のような素晴らしいプレイヤーと一緒にサッカーができるなんて、楽しみで仕方ないよ。」

 

「ああ、俺もだ。...これからよろしくな、一之瀬。」

 

「オーケー、嵐山!」

 

 

俺たちはお互い、握手を交わした。

さあ、準決勝に向けて練習を開始しようじゃないか。

 

 

 

「みなさああああああああん!」

 

「あ、音無さん?」

 

「はぁ...はぁ.....つ、次の対戦相手が決まりました!」

 

 

お、次の対戦相手か....どこが勝ち上がってきたのかな。

まあどこが相手だろうと、俺たちは絶対に勝つけどな。

 

 

「つ、次の対戦相手は.....木戸川清修です!」

 

「っ!」

 

「き、木戸川清修....!?」

 

 

 

.




久々の更新です。
2視点で書いたのでちょっと場面転換が多めなのが気になる...

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