「癒子、ナギ、清香。ああいう男ってどうよ?」
「一億歩譲ってデリカシーが無いのは許すけど、いくらなんでもあれはない」
「癒子に同じ~」
「わ、私も」
四人は呆れた目で一夏を見る。見られている一夏は居心地が悪そうにしている。隣にいる箒とセシリアも同様。何故このような事態になっているかというと―――。
「いや、だって鈴がなんで怒ったのか言ってくれなきゃわからないだろ?」
「……いや、いくらなんでも分かるだろ」
光太郎たちは実際にその場にいなかったため箒からの又聞きだが、昨夜一夏と箒の部屋に鈴がやってきて箒に部屋を変われと言い寄ってきたらしい。冷静に考えれば部屋割りは学園の方で決めているため変えることは不可能だが、その時は箒も頭に血が上っており殴り合いになるかと思われたが、そこは一夏が抑えた。だが、問題はその後だった。なんでも鈴は一夏と幼馴染だったのだが、家庭の事情で中国に変えることになった。その際に「大きくなったら毎日酢豚を食べさせてあげる」と一夏に宣言したのだ。その時の年齢を考えればませているとも思えるが、まぁ「毎日君の味噌汁が飲みたい」の亜種と考えれば自ずと答えは出る。だが、この朴念仁はそれに気づいていなかった。
「……ねーわー。まぁ、存分に考えろ。色男」
「いや、意味分かんねぇし」
この件で癒子たちからの好感度が下がっている一夏。箒やセシリアはまだ惚れた弱みがあるのかそこまでではないがちょっとないわーな顔である。光太郎にいたっては―――。
「とりあえず、全世界の思春期男子に一発殴られればいいんじゃないか?」
「何故に!? というか、分かったなら教えてくれよ!」
「テメェでわからないと意味が無いんだよ。つっても、お前じゃあ一生わからんだろうな。だったら、クラス対抗戦で勝ったら教えてもらうとかにすればいいんじゃないか?」
「は? いや、あいつは二組の代表じゃないだろ」
「転校初日で寮の部屋を変えろと突撃する女だぞ? 無理やりやってもおかしくない」
光太郎の言葉通り、放課後にはある情報がクラスに届けられた。二組のクラス代表が転入生の鳳鈴音に変わったという情報が。そのおかげでナギが胴元だったトトカルチョの倍率変化が起こったそうだ。ちなみに、バレてはいない。
「ちなみにこーたろーが出場した場合は本命扱いで倍率も低いよ」
「だろうな」
その理由は、セシリア戦で見せた戦法故のことである。あんなもん学生にどうしろと。
「なぁ、日本は久しぶりだから俺の常識が遅れているのかもしれないが……いつから日本の思春期男子の趣味が地雷原でマラソン大会になったんだ?」
「妙な喩えね」
「でもあってるかも」
「光太郎くん。それは違うよ」
四人は呆れたように目の前の光景を見る。何が起こっているのかというと、一夏が鈴に向かって色々と話しかけていたのだが、鈍感朴念仁とツンデレネコ娘の化学反応が起こり口論に発展。そして、一夏が「貧乳」と言ってしまったため鈴が激昂。一夏の鳩尾に綺麗な崩拳が入った。つまり、要約すれば一夏が地雷を踏み抜いたのだ。
「あそこまでいくといっそ清々しいな」
無意識なのかどうかは知らないが一夏の鈍感にはある意味感心している光太郎。といっても、ああなりたいとは思わないし、なったら確実に父親に殺される。父親は一夏のような鈍感な人間は蛇蝎の如く嫌っているのだ。まぁ、立場的なものだろう。
「とりあえず、帰るべ。これ以上ラブコメに付き合う必要はない」
「ラブコメ……なのかなぁ?」
ギャーギャー騒いでいる一夏たちをおいて四人は寮へと戻っていった。
「そういえば、光太郎って中東にいたんだよね。やっぱ危険なこといっぱいだった?」
今日も光太郎と癒子の部屋に入り浸って駄弁る。もはや恒例行事である。というより、ナギと清香は「光太郎たちの部屋で生活して、自分たちの部屋は物置兼寝室」とう感じになっている。まぁ、四人ともそれで納得しているため問題はないだろう。
「基本的には平和さ。何も毎日ドンパチしているわけじゃない。ただ、一旦ドンパチが始まったら3日以上戒厳令が敷かれるけどな」
「へー紛争地帯って聞くとテレビで見るような危険な場所かと思ったけど案外そうでもないんだ?」
「いや危険なことには変わりないぞ? あくまで一年中ドンパチをしていないだけだからな」
中東やアフリカなどの紛争地帯は「戦争=ビジネス」である。確かに民族問題などがきっかけではあるが、いまや紛争地帯は様々な企業の実験の場と化している。政府軍と反政府軍、または行き過ぎた宗教団体などに企業たちが武器や資金を流す。その武器の『試験結果』を見てその他の紛争地帯の武装集団や他企業がその武器を購入するかどうかを決める。公には知られていない部分だ。だからこそ、紛争地帯では殺し合いが日常ではあるが『商品』を使う人間が減り過ぎないように企業の命を受けた連中が暗躍している。
「でも、光太郎くんは無事だったんだよね?」
「まぁ、俺がいた地域は比較的安全ではあったな」
「やっぱり自分の子供は大事だから?」
癒子は何回か弦一郎と会ったことがあるが、その印象は自他共に厳しすぎる人。そんな人でもやっぱり自分の息子は大事なのだろうと思ったのだが、光太郎本人から否定された。
「ないない。ありゃまだ新兵だったからであって、慣れたらだんだんと危険度が上がっていっただろうよ」
さすがに後継者を簡単に殺すような真似はしないだろうが、死んだら死んだでリリウムあたりを後継者に擁立しそうではある。
「しかし……一夏は大丈夫かね? 機体の相性が悪いんだが」
「どういうこと?」
「白式は近接戦闘オンリーの上に『零落白夜』のせいで燃費は最悪。一方の甲龍のほうは中距離から近距離戦用でどちらかと言えば持久戦向きのチューン。しかも、初見じゃあ対処しづらい空間圧縮砲がある。一夏の動体視力が優れていれば問題はないが…セシリアとの試合を見る限りじゃあ五分ってところか」
「こーたろー。空間圧縮砲って何さ」
「空間に圧力をかけることで発生する衝撃を砲弾として打ち出す兵装だ。平たく言えばドラ○もんの空気砲。ただ、こっちの方は砲身が見えない上に可動域の限界がない。つまり真後ろに撃つことも可能ってことだ」
「すごいね。ところで、なんで光太郎くんが知っているの?」
「情報っていうのは時によってはIS以上の価値を持つからな。集めておいて損はない」
「つまり、個人的に調べたの?」
「まあそんなところだ」
持てるだけのコネクションを使って日夜情報を集めている光太郎。特に父親からの情報はどうやって集めたと言いたいようなものも混ざっている。とにかく光太郎がIS学園にいる事情を考えるとどんな小さな情報でも欲しいのだ。
「とりあえず、もう寝るぞ」
「「「は~い」」」
とにかく、光太郎に今できるのはあまりない。だからこそ少しでも情報を集めて有事に備えることくらい。そしてその有事はすぐ近くまで迫っていた。
―――オートチェック開始―――システムオールグリーン
―――現在地確認開始―――終了―――現在地アメリカ合衆国アリゾナ州グランドキャニオンポイントB33
―――情報収集開始―――終了―――イレギュラー発見
―――行動開始―――目標『イレギュラー織斑一夏及び不破光太郎の消滅』
それは鉄の人形。幾人もの狂科学者により生み出されたイレギュラーを排除するための人形。中東において殺戮の限りを尽くし、ISをその身に取り込み自らの力とした化物。
パルヴァライザー―――行動開始。
卒論が何とか終わりましたので、これからは投稿も早くなりそう?
ところで、以前個人宛てににじファン時代に投稿していた「悪人無双」を再投稿して欲しいと言われたので、手直ししてから再投稿しようと思います。
あと、以前ネタとして書いていた「デモベ×ネギま」もお試し投稿してみたいとおみます。
それではまたお会いしましょう