天竜王におれはなる! 作:リリーカーネーション
3行で確認する前回のあらすじ。
1、ゼファー一行魚人島へ空手を学びに行く。
2、クザンエロ本を買う。
3、その頃地上ではシキが脱獄していた。
結論、三行目に尽きる。
怖いわ~、
逃げたのは通称『金獅子のシキ』。対象は自身か無機物に限定されるも触れたものを自由に浮かす事ができるフワフワの実の能力者として一人空賊紛いをやっていた古強者。スカイツリーの展望台から落ちた雪塊で人が死ぬのだ。海軍ひいてはこの世界に航空兵器など方舟マクシムくらいしかない以上、制空権のアドバンテージはもはや語るまでも無い。
また彼の能力は本人の力量と長年使いこまれた事で『覚醒』と呼ばれる現象を起こしていると思われる。
本当に触れた物
そして一度浮かせたものは能力者の意のままに操れる。
悪魔の実は能力と引き換えに海や多量の水に触れると脱力するデメリットが付くのだが、シキは海水すら制御下におき一方的に有利を取れ、海戦するなら緯度経度だけで済むものを彼がいるだけで
弱点はワンピース界最悪のデバフと言われる老化と、浮遊物も風や波、衝撃と言った外部的な力に影響を受ける点。
悪天候に
運任せじゃないか!
その通りだからこそ海軍監獄インペルダウンに入ってる間にとっとと消しておきたかった。空を飛び、四つの海と
と、言うのが俺の知っていた範囲。
そんな彼が監獄に入っていたのはロジャー処刑の一週間前に海軍本部へ怒りの殴り込みをし返り討ちにしたからだとか。そこらへんは映画本編でかなり薄味だったか、俺が興味を示さなかったか、そも説明がなかったかの三択で記憶にない。
じゃあなぜ知ってるかって?
ようやく口を割らせたのだ。
「クザン。 クザン。 クザン。 黙ってちゃあ分からないじゃないか~。私は君に「シキは捕まっているか」と聞いたよね? どうして本当の事を言ってくれなかったんだい? 答えてくれよ、なあクザン君。怒らないからさ」
「それ怒ってる時のじゃないっスか」
場所は変わらず海の中、魚人島停泊中の戦艦の一室。
呼び戻されたゼファーがそれを拒否し教練を続行したのだ。
曰く、
「それは俺の仕事じゃない。 魚人空手は確かに実用的だ。今はレリエル聖に用意していただいた機会を無駄にしないよう励みます」
とのこと。
即時帰宅も考えていたのだがゼファー君はそうは思わなかったらしい。妻子を海賊の逆恨みで殺されていたと記憶してたので意外な判断だ。まあ俺としても彼のすべてを見て、覚えているわけではない。長い人生の散り際、わずかながら120分の映画のさらに一部をうろ覚え、彼を知った気になっているに過ぎないのだ。
だからこそ今回クザン君がどうして虚偽申告したのか知る必要があるわけだが。
ずっと見つめても言いにくかろう。視線を紙とインクで構成された女体の神秘に目を落とす。
それからしばらくしてクザンは口を開いた。
「⋯⋯
「質問してるのはこっちなんだがね?」
異常ともいえる程の情報を持っていることに至極当然のメスが入りかけるも立場でねじ伏せる。
まったく、油断も隙も無いんだから⋯⋯
とはいえそんな理由。
「つまるところ、君はただ規律に従っただけだと、そういうんだね。 ファイナルアンサー?」
「⋯⋯はい」
「そう。じゃあ仕方ないってことで」
「⋯⋯はい?」
最終確認を取ると校長室に呼び出された子供のような、何ともバツの悪そうな返事で肯定して見せたクザンは一転し、拍子抜けしたような声が漏れ出た。
何やら思い詰めていたなら悪いのだが、クザンなりの考えあってそうしたのなら、それを信じられなくて何が「優秀な手駒」だ。言った俺がバカじゃないか。
「怒らないんですかね⋯⋯」
「怒ったってしょうがないでしょ? それにシキへの対処法がないわけじゃなし。 いいんじゃない? 君にもできることとできない事がある。今はそれを知れただけで」
「対処法って⋯⋯」
クザンの目元がぴくついた。
何も俺の考えることすべてが正しくそれ以外間違いだと、そこまで頭天竜人していない。それに信用されてない原因と心当たりは数える程ある。必然これは予期できた結果。俺の落ち度だ。
だから知りたかったのはその理由。むしろ思ったより嫌われてなくてよかったくらい。
まだ使えるね。
「⋯⋯おおよそ天竜人のお言葉とは思えませんねェ」
「そう訝しむな。私とほかの天竜人の違いは目的があるか否か。本質は同じです」
「だから怖いんすよ。できればソレ、目的ってェのを教えて欲しいんすケド⋯⋯。 あんた一体どこまで知ってて、何を見てるんですか」
「エロ本。人魚の」
「そーじゃなくて、真面目な返事が聞きたいんですけどねェ⋯⋯」
やだよ。「おっぱいハーレム」の為とか教えたら関係ない事にパシれなくなるではないか。
ともあれ、俺の思う理想の戦い方とは常に負けないところで勝負する事だ。それを当てはめると、シキ脱走は原作通りでなんのマイナスでもない。むしろ悪魔の実は手に入り、ゼファーは魚人空手に興味を示し、クザンの心根と原作開始の時期まで知れた。シキ脱走は原作開始から20年前なのだ。
これ以上は欲張りというもの。欲張りは身を滅ぼす。
まあハーレムは欲張るが。
そうして日程通り訓練も終わりを告げルンルン気分で天竜人の心の故郷、聖地マリージョアへ帰る。まずは届いてるだろう悪魔の実を選別して、ハーレムに入れたい原作キャラの洗い出しと予定表を立てなければならないと大忙しだ。
意気揚々と実家の戸を開けるとそこには父がいた。暖炉を前に土下座ばりに平伏させられた青年を踏みつけ、赤熱した焼鏝を持って今にも押し当てようとしている。また奴隷遊びらしい。
「ただいま帰りましたー。 新しい奴隷ですか?」
「おう戻ったかえレリエル! そうなんだえ、お前のいない間に綺麗どころがいたので買っておいたんだえ。まあこれはオマケだが。 女の方は焼いてないがその方がお前も嬉しいだろう」
綺麗どころ、ね。
お気にの原作キャラがいる今となってはそんじゃそこらの名無しモブなど眼中にない。むしろしらほしハーレム化計画においてそういう「不幸な奴隷」の存在は嬉しくもないのだが、ところで……
その青年、なんか呻き声がそこはかとなく櫻井孝◯に似ている気がする。ということはそれなりの名有りキャラクターのハズだが………あ。
あぁぁあああああああああああッ!!!
脳裏に最悪の可能性がよぎるも、男の顔は伏していてわからない。
唾がタールのように喉にこびりつく。
え、マジで? これ
⋯⋯このタイミングで!?
てゆか、テゾーロに恨まれる原因
「父上ちょっとたんま! 待って! その焼印待って!!」
「ぬ? どうしたえ? 突然声を上げて」
「とりあえず絶対焼き印入れないで! 絶対にだ! いれたらもう二度と口きかないからな! 綺麗どころって、女は!? 女の方はどこにいるんですか!?」
「それならお前の寝室に——」
その瞬間ベビーカーのギアをトップに入れて全力疾走。
これひょっとしてマズいんじゃね? 今後の人生を決定づける瞬間なんじゃね? 嫁探す前に邪魔しちゃいけない他人の恋路の邪魔してるんじゃね? 馬に蹴られて死ぬ前動作なんじゃ——
幾つもの不安が胸中に溢れる。
違ってくれ!
その一心でドアに体当たりした勢いでベビーカーから落ち、ダイナミックに入室した俺は小さな悲鳴でもって迎えられた。つくばりながらもなんとか顔を上げて、その声の主を見た。
「ステラアアアアアアアアアッ!? ステラアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「きゃあっ! え? な、何……!?」
二段階認証成功。思った通り、金髪でつねに日の当たる檻に入れられてたとは思えないほど色白で美人の奴隷、映画で見たステラそのままだった。
そこからの俺は早かった。蒸れる背中のあまりの不快さに寝返りをうとうと2年鍛え上げた肉体を余すことなく使い高速のハイハイにて父の元へ戻ろうとして気づけば立って走っていた。
え、立てるの2歳って!? 初めて知った……
かなり驚いたが今はそんな時ではない。
ギルド・テゾーロだ。
シキ、バレットに続く劇場版ボスが1人。元奴隷にして恋人を天竜人に弄ばれた挙句殺されたことで復讐に取り憑かれた天竜人の敵——になる前の彼がなぜかここにいる!!
よりにもよってこの家系に転生させるとか神様マジ鬼畜。俺の人生はRTAか何かだろうか。生まれて二年のイベントがあまりに濃密。父親を説得しなんとか焼き印は防いだがこんなものどうすればいいのだ。
さてテゾーロ、彼が手にした力はすなわち『金』でありゴルゴルの実の黄金を無尽蔵に生み出しながら操作もできるというウーナンなんだったのかな能力と溢れんばかりの経営力に持ち前の歌唱力を合わせて規模もサイズも世界一なカジノ船独立国家を築き上げ黄金帝と呼ばれるまでになる男。
とはいえ原因は天竜人に酷い目に遭わされたからであり、それさえなければ恋人ステラと小さなショーハウスでも経営できれば満足して一生を終えると思われるという、敵にすると厄介なのに味方に引き込むとなると一転しなんだかよく分からなくなる存在だ。
だったら放流してやればいいだろと思うかもしれないが、彼の経営力はここで見過ごすにはあまりに惜しく、まさに「それを捨てるなんてとんでもない!」状態。並の王族ですら一方的に奴隷認定できる天竜人を巨万の富に物を言わせ意見陳情どころか懐柔し、世界政府を動かすほどの才能が眠っている。
そんなの絶対欲しいじゃん?
だが彼がそこまで金にこだわったのも全ては人生の節目節目であとちょっとというところで金が足りず多くを失った経験からだ。それゆえに人は金に支配されているという狂気を孕んだ。
つまり満ち足りると人格が歪まないから性能が落ちてしまう。
だからこそどうしたものかと、ステラを守るために暴れた挙句守衛にボコボコにされたらしい意識のないテゾーロを自室に連れ込み、ステラと三人で黙りこくって気まずい時間を過ごしている現在に至る。
いやほんと気まずい。
理由の半分は咄嗟の事で俺がエロ本持ったままなのも関係してる気がするが、なによりステラがかいがいしく手当に専念するものだから声をかける隙がない。
ついには窓の外から茜色の光が差し込み夕餉の時刻が差し迫って来たという時にテゾーロが意識を取り戻した。目が覚めちゃったよ。何も思いついてないのに。
ええい、黙っててもしょうがない!行くぞ!
「うぅ⋯⋯す、てら⋯⋯? だい、じょうぶ、か⋯⋯。なにか、ひどいことを⋯⋯ううっ」
「私は無事よテゾーロ。でも⋯⋯」
「やあお二人さん、僕はレリエル!君たちの持ち主さ!ハイディホー!」
「「「⋯⋯⋯⋯」」」
やばい、なにか、とてつもなくタイミングを間違えた気がする。世界のどこかで俺を蹴ろうと馬がアップを始めましたねこれは。クザンもいないのに空気が凍った。
そこで天啓が降って湧く。そうだ、クザンと同じように脅せばいいのだ。
「んぁ⋯⋯なんだと⋯⋯?」
「言葉を慎みたまえ、君は天竜人の前に居るのだぞ。 私が気分を害した瞬間、君も、女も、ポンだ! 理解できたかね」
「⋯⋯⋯⋯!」
滑り出しこそ失敗したが帝王はこのレリエルだ!依然変わりなく!
完全に場の空気を取り戻した所で本題に入る。
「静かでよろしい。 ところで聞け。私はこの前生まれて初めてショーというものを見た。台の上で歌って踊るアレだ。知ってるか?」
歌って踊れるテゾーロ君を躍らせたい、手の上で。
「
「⋯⋯私?」
「そう
指したのはテゾーロ——ではなく隣のステラ。見た目はともかく、歌って踊れる才能があるか分からないステラ君だ。
我ながらいい案を思いついたものだと口角が上がる。きっと悪い笑顔だ。俺の顔を見た二人に恐怖が浮かんでいる。おいこら傷つくぞ。
とはいえ演出には使えるか。
その顔のままずかずか歩み寄り、まるでリンゴでももぐようにステラの顔を掴んで見回す。
「この肌、顔づくり、う~ん美しい。 ⋯⋯まあまあだな」
「⋯⋯え、あ、あの⋯⋯」
「黙れ!だーれが喋っていいつった!? ⋯⋯まあいい私は話の分かる男だ。そこの男とお前、只ならぬ関係と見た。 喜べ! ショーの出来次第では男と一緒に奴隷から解放してやってもいい」
その言葉に二人して目の色が変わる。
しかし人間の本質は天邪鬼寄り。うまい話を用意してもらってもどうしてか怠けてしまうんだなこれが。
「その代わり、もしこの私の名に泥を塗るようなショボい結果を出してみろ⋯⋯。 ちょっとこっち来い」
二人を連れて移動する事、向かった先はお袋の部屋。一緒にバスターコール見に行ってくれる父と違い、こっちはどちらかと言えばインドアな方で、奴隷遊びが大好きだ。「ちょっとお邪魔しますよ~」とドアを開ければもう既に臭い。血なまぐさい。実家とはいえシャボンマスク付ければよかったと後悔する。
部屋の中では斧を振り上げた母が薬でも盛られたのか痙攣する奴隷の足に狙いを定めていた。
「おひさしゅうございます母上。レリエル只今戻りました」
「あらおかえりなさいアマス⋯⋯ってレリエルちゃん! もう立てるアマスか!? 子供の成長は嬉しいアマスね。よいしょっと」
「ぎゃああああああああああ!」
「うるさいアマス!!」
「ぎゃああああああああああッ!!」
会話途中でもナチュラルに斧を振り下ろすとかさすが母上。そっちは立てませんねもう。
とまあ背後の二人もここで奴隷がどんな扱いになるか分かっただろう。翻って話の続きだ。
失敗したら
もう二度とショーできないねえ。
「てことで女。 自由になりたくば世界一のショーをやれ」
「そんな⋯⋯ッ!」
無茶ぶりだよね~。知ってる。
だが、それができる男がここにいる。
「⋯⋯ま、て⋯⋯! その話⋯⋯おれがやる!」
「ああん? ぬわぁんだねチミはぁ? 誰が喋っていいと——」
「おれなら⋯⋯確実にやってみせる! 世界一のショーを! だからステラを放せ!」
「勝手にしゃべりおって気分悪いわ。 お前がショーを? この女と違って華もなければそんなボロボロでみすぼらしい、お前がかぁ?」
「ま、待って⋯⋯! 本当にテゾーロは私より歌も踊りも上手なの⋯⋯!」
それも知ってる。
ギルド・テゾーロ。愛した女の為に天竜人に嚙みつかなければここにいなかった男。君は私から勝ち取るんだ。仕事と女とついでに自由を。
その他適度に難癖つけて凄んでやる度、彼はニヒルに笑って見せた。
「むしろ願ったり叶ったりさ……。 俺があんな海で燻ってたのも、元手がなかったから。場所とチャンスさえあれば、いくらでもやってやる」
「デカい口叩いたな⋯⋯だったらやってみろ! お前の代金5億ベリー。女の代金25億。劇場その他費用125億!!! そして、俺を不快に思わせた罪の数々!占めて66兆2000億ベリー! 稼げたなら自由!! お前がやるなら条件はそれだ! それでもやるっていうのかよ!?」
「やってやるっていってんだッ!!」
かっこいい。採用。
天竜人あいてに啖呵切れる人間はそうそういない。まあそういう人間だから大成すると言えるしここに連れてこられたのだろう。
かくして奴隷から一躍世界の大スターへ変貌するテゾーロのシンデレラストーリーが始まった。多少の恨みはかったもののプラマイ的には大プラであり塵ほどの損も無く言ってしまえば俺の一人勝ちだ。言ってしまったついでに口を滑らせるが66兆2000億ベリーとは半分ネタ的な意味合いでふっかけてしまったがそれでOKしたという事は本当に66兆2000億ベリー稼いでくるつもりなのだろうか。甚だ疑問である。
さてさてさて、いろいろとひと段落ついた所で現状を整理しよう。少年漫画としては全く活躍してないかもしれないがかなり磐石な基礎が完成したはずだ。
ゲーム風に説明するなら海軍の強化はレベルアップ毎に力+1、あるいは毎ターン兵力算出+1という風に先に取得した方が効果値が大きくなるもの。テゾーロに関しては運だが20ターン後に貨幣700、政治力300程度手に入るようなものと思えばいい。所持金無限なのに金がいる理由としてはその所持金の財源を俺が握ることにある。運が良ければほかの天竜人に対し家柄を超えて発言できるようにもなろう。
しかし今回の事はなかなかの不意打ちだった。たまたま帰省したからいいが、ともすれば原作通りになり面倒くさがった俺がダイナ岩でも使って爆殺していたことだろう。シキも最悪それでいいと思ってたりする。
俺はなにより俺が痛い思いをするのがいやなのだ。
というわけで今後痛い目を見ないように実家関連のイベントを思い出す。ロジャー処刑後のマリージョアでなにかイベントはあったかな、と。
天竜人といえば奴隷関連。奴隷と言えば魚人フィッシャー・タイガーによる奴隷解放。奴隷解放と言えば
奴隷と天竜人で仲良くできるとも思わないが、唾ぐらいつけておきたいのが男心。
そんなことを考えながら、とりあえず今できる事。手に入れた悪魔の実の確認でもしようと無駄にラッピングされた紙箱の封を切り、添付された説明書に目を通した。
最初は
ん?
頭の中でナニカが引っかかるも、そこまで気にせず次の実へ。
二つ目も
んん?
やはり何か胸騒ぎがする。どちらかといえば悪い予感だ。だがまあそんなことは一旦放置し、三つ目の実。これは
あ、もう流石に理解したわ。これきっとメロメロの実だ。
悪魔の実が三つ……来るぞ九蛇が!!