"日本国国防軍" -終わりなき戦い- 国際治安支援部隊 ISAF 作:Veruhu
"序章" 「悪夢」
*第一章*
「実状況開始 序章」
「黒木! 吉川! 谷口! 樹! おい誰か居ないのかッ! 返事をしろッ!」
俺は分隊員の名前を、次から次へと呼び掛け続ける。しかし何処からも返事がない。聞こえるのは、敵がAKを射撃する音と、その発射された弾丸が自身の頭上を高速で通過して行く音だけだ。
俺の周りには沢山の分隊員の達の死体が転がっていた。ある者は眉間を撃ち抜かれ、ある者は肩から心臓を撃ち抜かれて死んでいた。
その様相はさながら地獄絵図だ。死体から流れ出た赤い血は、カーキ色の砂漠を濡らし、どす黒い色へと変貌を遂げて血の池を作っていく。
俺の戦闘服にも多量の赤い血が付いていた。しかしその赤い血は全て、死亡した部下の物だ。俺だけが分隊の中で血を流さず、今だ健常で居た。
悔しさのあまり、今までとても大切にしてきた良き相棒でもあるSCAR MK16突撃銃を、放り出したい気持ちに陥る。しかし敵の声が聞こえ始めた。
敵はかなりの手練れのようだ。一方の援護部隊がこちらに制圧射撃をし続け、もう一方の突撃部隊がこちらに近接してきているのだろう。一方の援護部隊の制圧射撃を受けているせいで、俺は顔を上げることが出来ない。
俺は装備していたSCAR-L用多用途銃剣を鞘から取り出す。刃渡り30cmもある銃剣が鈍く光った。その銃剣を着剣金具に取り付けながら次の行動を考える。
チャンスがあるとすれば敵の援護部隊がシフトファイアをする時、すなわち敵の突撃部隊が最後の突撃を敢行してくる時だけだろう。
俺の突撃銃に弾は残されていない。弾倉も付けるだけ無駄だろう。俺は弾倉を抜いて、銃自体を出来るだけ軽くした。もう最早この突撃銃は銃ではなく、槍だ。刃渡り30cmもある銃剣が、やっと出番が回って来たのかと言っているようだった。今更ながら、SCAR MK16に着剣金具を取り付けるなどの魔改造を施した軍上層部には、感謝せねばならないかもしれない。
英軍は現代戦においても銃剣突撃を何度も敢行し、そのたびに成功を収めているのは知っている。しかし、今状況での俺とはあまりにも難易度が違いすぎた。俺はたった一人で敵の突撃部隊と白兵戦を交えなければならない。
恐らく勝てはしないだろう。逃げるなどという手も無いわけではないが、部下達の遺体を此処に放置したまま逃亡するなど、俺にはできなかった。また何よりも今は、部下の命を奪った敵を一人でも多く殺してやりたかった。
俺は銃を握りしめると、じっとその時を待った。体は震えていたが、幸い恐怖は感じなかった。むしろやっと御国の為に死ねるのだという達成感も生まれてくる。もう恐らくここまでだろう。
一時経つと敵はこちらに対する制圧射撃の射線をずらした。シフトファイアしたのであろう。やはり敵は相当の手練れだ。俺は
見えた!
敵はブッシュの向こう側から現れた。見えただけでも3人だ。それ以上いるのかどうかはまだ分からないが、3人だけで突撃してきているとはあまり考えられなかった。
4人の突撃部隊は慎重にこちらに接近してきているようだ。足腰及び、地面を掴んでいる左手に力を込め、一気に突っ込む準備を整える。
体は敵に見つからないよう石垣に完全に隠した。
「天皇陛下万歳。日本国万歳」
俺は敵に聞かれないよう静かに唱えると、敵の足音と声に神経を集中させた。
――――ズザッ
足音が3メートル以内に聞こえた。行くなら今しかない!
俺は全身に力を入れると前のめりになりながら、一気に飛び出していく。
「ヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
銃剣を取り付けた、SCAR-Lを右腰に添え、真正面に居た一人の敵に突っ込んでいく。その敵は、まさかこちらの生き残りが単身で突っ込んで来るとは思っても居なかったのか、銃も撃てずにたじろいでしまう。
俺は銃剣が届く範囲まで一気に近接すると幾度も繰り返してきた訓練通り、遠慮もせず、一気に胸を刺突した。
「うぐぅッ…………」
刃が肉を切り裂く嫌な感覚が、銃剣から腕全体に伝わって来た。胸を刺突された敵は、大声も上げられないのか苦しそうなうめき声を上げる。
俺は素早く銃剣を胸から引き抜くと、体を左に転回させ、また新たな敵へと突っ込んでいく。
俺に新たに狙われた敵は、恐怖のあまり尻餅をついてしまった。恐怖のあまりパニックを起こすと、でたらめに銃を乱射してきた。だがその銃弾は一発も俺には当たらない。
銃剣の届く範囲まで近づくと、銃剣道の要領通り、一気に敵の銃を左へ弾いた。そしてその勢いのまま一気に敵の胸に銃を付き下ろす。
「ごがッ…………」
敵は苦しそうな表情で呻くが、構っている場合ではない。俺は素早く銃剣を引き抜いた。すぐに銃剣を引き抜かないと、刺した部分の筋肉が収縮して、銃剣自体が抜けなくなってしまう恐れがある為だ。
そして俺は振り向き、背後に居るはずの敵に突っ込もうとする。
――――ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ!
しかし突然俺の体は後ろから殴られたように突き飛ばされた。俺はまともな受け身をとることも出来ず、地面に顔面から激突してしまう。
一瞬意識が朦朧としてしまったせいで、事態の把握が遅れる。しかしコンマ遅れで、背後から撃たれてしまったことに気が付いた。
あまりの痛みに立ち上がることが出来ない。防弾チョッキは機能してくれたのだろうか。至る所が痛く、また熱かった。
一時もがいていると突然、後頭部に銃を勢いよく押し付けられた。その勢いで、俺の顔は再度地面と衝突してしまう。
俺に銃を突きつけた敵は、味方等となにか相談をしているようだ。しかし捕らえられれば恐らく虐殺されるだろう。俺は必死に抵抗を試みた。それに応じ、敵も必死に取り押さえようとする。
しかし敵もついに根負けしたのか、お決まりの名台詞を吐き始めた。
「「「アッラーファクバル! アッラーファクバル! アッラーファクバル!」」」
――――ダンッ!
一発の銃声の下、俺の全ての意識は混濁の闇へと吸い込まれてしまった。
*第一章*
「実状況開始 序章」 了