"日本国国防軍" -終わりなき戦い- 国際治安支援部隊 ISAF 作:Veruhu
小隊員等は力強く敬礼を行うと、素早く解散し、宿舎に戻って行った。分隊長等は小隊長に指示された通り、その場に残り小隊長の下に集合する。
「第一分隊長中川! 集合完了!」
「第二分隊長藤井! 集合完了!」
「第三分隊長荒木! 集合完了!」
「ご苦労、休め」
小隊長の号令で、各分隊長は休めの姿勢を取った。
「本日はいよいよ作戦開始日だ。皆、緊張していると思う。だが各分隊長共々、隊員の士気をしっかりと獲得出来るよう努めて貰いたい。…………第一、第二分隊から事故者が発生してしまったことは誠に残念だった。だが此処は戦場だ。大抵の者は皆、恐怖を覚えているだろう。従って各分隊長は速やかに事故者の状況を確認し、無理そうであるならば予備隊から選抜を行え。重要なのは必ずしも戦闘技術だけではない、死地で矢弾を交えることが出来うるだけの勇猛果敢さである。そういう隊員を選抜すればよい。尚、その際の人員報告は小隊付に行え。了解か!」
「了解!」
「了解!」
中川と藤井は動じず、鋭い目線で小隊長に応えた。
「しかし荒木の隊は流石、古狸が率いているだけあって事故者が出なかったな。何かコツでもあるのか?」
「…………分かりません!」
俺はそう答えた。しかし実際コツが無いわけではない。孫子の兵法だろうと、帝王学だろうと、歩兵操典だろうと、士気を獲得する方法はいくつも学習している。だが、今朝の絶叫を思い出すと、とても自信を持って言える物ではなかった。
あれを見た隊員は恐らく、俺が多少の恐怖を覚えているのだろうと、そう思ったことだろう。あの時点で俺の士気獲得は最悪の出だしになった。臆病者の命令など、だれが喜んで聞くものか。俺は悔しくてたまらなかった。
「そんな訳ないだろう。お前の事だ、いろいろやってるに違いない。…………それに元特戦で昔ここで戦ってた経験もあるんだろう? それだけでもかなりのアドバンテージだ。隊員は死ぬまでお前に付いてくるさ」
「……努力します」
「うむ……。この偵察小隊ではお前は一番の後輩だが、戦場ではお前が一番の先輩だ。俺にも、小隊付にも中川、藤井にもまだ分からない点、多々あると思う。その辺りを補佐してもらうよう、頼むぞ」
「了解」
小隊長は鋭い眼差しで頷くと、分隊長全員を検閲するかのように見渡した。
「お前たちはこの小隊の中でも特に優れた隊員……いや兵士だ! 最前線で指揮するのは俺ではなく、貴様等分隊長である! 貴様等がしっかりしていなければ小隊は動けん! 貴様等は勇猛果敢な心を持って己が分隊を指揮し、小隊全体を
『別れます!』
俺たち分隊長及び小隊長は互いに敬礼を実施した。小隊長の後ろで小隊付、甲斐一等陸曹が納得したのか小さく頷いたのが分かった。俺たち分隊長は小隊長が敬礼を止めたのを確認すると、素早く敬礼を解除して解散した。
元居た宿舎まで一度戻って朝食を取らなければならない。この朝食以降もう糧食班に作って貰ったまともな飯はもう食べられないから、とにかく食えるだけ食っておきたいものだ。
途中までの経路は同じ為、中川、藤井と一緒に黙々と道を進んだ。俺たちの間に会話は無い。中川も藤井も覚悟を決めての事だろう。だが士気を獲得するにおいて、重々し過ぎるのはかえって隊員に余計な心配を抱かせ、逆効果になる。
俺たちはやがて別れ道に辿り着いた。部屋に戻れば、俺たちはもう分隊長として隊員の士気獲得活動に入らなければならない。つまり下手すればこれが今生の別れとなるかもしれないということだ