ー幻想郷ー
そこは、『人』と『人ならざる者』が共に暮らす楽園。
そんな楽園には、『程度の能力』と呼ばれる力を持つ者達が存在する。
ある者は空を飛び、ある者は魔法を使う。
様々な能力が存在する中で、“彼”は生きている。
魔法の森 とある家
青年「………」
キィィィィン
今の状況を説明しよう。ここにいる青年は今、『程度の能力』を使って作業している。両手から放たれている光は、作業机の上にある拳銃に注がれていた。
青年「……よし」
作業が完了したのか、拳銃を持って外へ出た。目の前の木に試し撃ちをするつもりなのだろうが、残念な事にこの銃には弾が入っていない。”空のマガジン“をセットしたところでなにも発射されない。
嗚呼誰か、この期待に満ち溢れた顔をした青年に現実を教えて…
ドオォォォン
…何が起きたのだろうか。青年が引き金を引いたと思ったら、目の前の木が壊れていた。銃に入れたマガジンは確かに空だった。元々この銃は、良く御世話になっている古道具屋から買ったものだ。汚れは多少あるものの、手入れをすれば使うことはできる。しかし、弾の無い状態で銃を撃ち、目の前の木が壊れる現象は普通では絶対にあり得ない。
青年「よっしゃ! 上手くいった!」
普通ではあり得ない光景に青年は興奮していた。上手くいったということは、この結果を予想していたのだろう。
青年「【反動軽減】、【魔力還元】、【魔弾構成】、【威力増加】、【放出】。これをベースとして他の魔方陣を付与していけば…!」
青年はノートを取り出し、なにかを記していた。そこには、先程呟いた言葉と魔方陣が書かれていた。
青年「後は銃の確保だよな。香霖堂に置いてあったなら無縁塚に落ちてるよな?
よし、明日探索に行ってみるか!」
なんとも行動力のある青年である。しかし、彼が口にした場所は、この幻想郷で最も危険な場所であるとされており、現在彼がいる魔法の森も、所々に化物が潜んでいる為安全とは言えない。今いる場所より危険な所へ一人で行こうと言うのだから、襲われても大丈夫な自信があるのか、好奇心だけで後先考えず行動する大馬鹿者なのか…。
青年「……いやいや落ち着け。実験が成功したからって流石にあそこに一人は無謀すぎるか…。香霖堂に運良く置いてあったから買えたが、次も入ってるとは限らないし…、かといって入荷待つなんてこともしたくねぇし…」
どうやらどちらでもなかったらしい。
???「おーい!」
青年「ん?」
青年が悩んでいると、上から声が聞こえた。空を見上げると、箒に乗った少女が青年の方に向かってきた。黒の魔女服に白のエプロン、黒いとんがり帽子を被った金髪の少女《霧雨 魔理沙》である。幻想郷では知らぬ者はいない有名人だ。そんな彼女と顔見知りなのか、青年は特に嫌な顔もせずにこやかに迎え入れた。
青年「よぉ、魔理沙。どうした?」
魔理沙「いやぁ、森でキノコ取ってたらデカイ音が鳴ってな、その方向にお前の家あったの思い出してきてみたんだが…」
彼女の目には、特に変わらぬ青年の家があった。ただ、ひとつ違うのは、彼女の後ろにあるひしゃげた木だ。
魔理沙「これ、お前がやったのか?」
青年「おう! 研究の成果がようやく形になってきた所だ!」
魔理沙「てことは、ようやくお前と弾幕ごっこが出来るってことか!」
青年「ああ!…とは言っても一歩前進っていったところさ。
…そうだ!魔理沙、明日暇か?」
魔理沙「明日?まぁ暇だけど…」
青年「んじゃ無縁塚行かねぇか? こいつが落ちてるかもしれねぇんだけど、俺だけだと流石に不安でな…。勿論、付き合ってくれた御礼も出すからさ」
魔理沙「成る程。よし!この魔理沙様にドーンと任せろ!」
青年「サンキュー!」
取り敢えず、青年が我慢できずに一人で突っ走り、化物にやられる事態にはならなくて済みそうだ。
魔理沙「んじゃ、問題無さそうだから私は帰るぜ。明日迎えに来るからな」
青年「おう、また明日な」
魔理沙「ああ、じゃあな《シャルム》」
そういって魔理沙は帰っていった。
シャルム「さーて! 明日は忙しくなるぞ~!」
彼の名はシャルム・ウェヌスタ
『物に魔法を
主人公の名前は、フランス語でまじないの意味の『charme(シャルム)』と、ラテン語で魅力的の意味の『venusta(ウェヌスタ)』から取りました。
フランス語を使った理由は、元々、エンチャントという言葉はフランス語で魅惑的の意味を持つ『fascinant(フェシナント)』が転じて英語で魔法をかけるという意味の『enchant(エンチャント)』になったから。ラテン語を使った理由は、ラテン語等の特別な言語で魔方陣が書かれていたらしいので、二つの言語を入れてみました。