むかし、むかし、ある所にウマ娘のお母ちゃんともう一人のお母ちゃんが住んでいました。
お母ちゃんは山へ芝刈りに、もう一人のお母ちゃんは川へ洗濯に行きました。
お母ちゃんが川で洗濯をしていると大きな桃が流れてきました。
「なんと大きな桃じゃろう!家に持って帰ろう」
とお母ちゃんは背中に担いで家に帰り、その桃を切ろうとすると、なんと桃の内側から実を食い破って大きな赤ちゃんウマ娘が出てきたのです。
「おっとたまげた」
二人は驚いたけれども、とても喜び、
「何という名前にしましょうか」
「桃から生まれたから、スモモモモモモモモというのはどうだろう」
「それがいい」
しかしその名前は既に馬名登録されていたので、名付けることは叶いませんでした。
代わりにスペ太郎と名付けられたウマ娘はあっと言う間に大きくなり、立派な優しいウマ娘になりました。
「鬼ケ島に悪い鬼が住んでいると聞きました」
ある日、スペ太郎は二人に言いました。
「時々村に来て悪いことをするのでみんな困っている」
とお母ちゃんが答えると、
「それでは私が行って退治しましょう。お母ちゃん、きび団子を作って下さい」
お母ちゃんはとてもおいしい日本一のきび団子を作り――途中スペ太郎がつまみ食いをして食い尽くしてしまったので、また作り直してはスペ太郎を叱り――スペ太郎はそれを腰の袋に入れるとさっそく鬼ケ島に向けて旅立ちました。
旅の途中、スペ太郎はサクラチヨノオーに会い、
「スペ太郎さん、袋の中に何が入っているんだい」
「日本一のきび団子だよ」
「私に一つくれればお伴します」
「あげません!!!!」
「えぇーっ!?」
食い意地の張ったスペ太郎は、当然の如くその提案を断ります。
スペ太郎には一人でも鬼を倒す自信があったのです。
台本と違うよぉ……チヨはそう呟き、悲しそうに去っていきました。
スペ太郎が歩いて行くと、今度は安心沢刺々美がやってきて、
「ワォ、あんし~ん☆ スペ太郎さん、ブスっといっとく?」
「――こらっ、あなた!また学園に不法侵入しましたねっ!?」
「やべ……ワォ、退散~☆」
不審者はどこからともなく現れたたづなさんに追われ、その場を逃げ去りました。
何だったんだろうあの人……スペ太郎のその疑問に答える人は、もう誰も居ません。
そうしてしばらく行くと、
「……あの、会長?」
「おい誰だ台本にダジャレを入れた馬鹿は!」
「えっ、アタシ」
「シービーィィィイイ!!」
ナレーション役のルナちゃんの親父ギャグに生徒会メンバーは大慌て。
そうこうしているうちにも、スペ太郎の物語は進みます。
「グアァーッ!」
「……えっ!?この子って確かエルちゃんのペットのマンボくん!?」
「あぁぁーっ!マンボー!そっち行っちゃ駄目デース!こっちに戻ってくるデスよぉー!」
突如現れた鷹の姿に、観客たちは何事かとそわそわし始めます。
それもそのはず、本来はここでエルコンドルパサーがやって来る予定だったのですから。
しかし、せっかくだし本物のコンドルを連れてこよう――鷹だが――と画策したエルコンドルパサーによって連れてこられたマンボが逃げ出したようです。
飼い主のエルコンドルパサーは大慌てでマンボを回収しようとしますが、飼い主の心ペット知らず。
暢気に毛づくろいを始めたマンボでしたが、スペ太郎の視線に気づくと、
「グアッ」
「え……?」
マンボは羽に携えていた紙切れをスペ太郎に渡すと、またどこかへと飛び立っていきます。
マンボー!と悲鳴のような声が木霊する中、スペ太郎が渡された紙切れには「SSR確定メイクデビューチケット」と書かれていました。
「うおおおおキタサンキタサンキタサン!!クリーククリーク!!ファイン!!!!」
「とか、浅ェこと思ってンだろうなァ」
「あああああああああああああああああ!!!」
光輝くチケットは姿を変え、エアシャカールが現れました。
スペ太郎はエアシャカールを無事4凸すると、こうなっては仕方がないと、エアシャカールを家来として引き連れることにしました。
とはいえ悲しみを全て拭うことは出来ず、ストレス解消にスペ太郎はきび団子を全て食い尽くしていると、
「ふぉっふぉっふぉっ、スペ太郎よ、そんなに腹を出してどこへ行くのかね?」
「あっ、ゴールドシップさん! 私たち今から鬼ケ島に向かうんです!」
「へぇ……面白れぇ!ゴルシちゃんも連れてけェい!」
ゴールドシップは時価564万円相当の黄金船を取り出し、スペ太郎一行はそれに乗って大海原へと乗り出します。
しばらく行くと鬼ケ島が見えてきました。
「あれが鬼ケ島に違いない」スペが吠えました。
鬼ケ島に着くと、お城の門の前に、大きなアドマイヤベガが立っており、スペ太郎は大きな綿をつかむとアドマイヤベガに向かって投げました。
エアシャカールはデジタルキーだった門にハッキングを仕掛け鍵を開けました。ゴールドシップはルービックキューブを564面揃えていました。
「ふわふわ……」
そういうと、アヤベさんはふわふわの中に逃げていきました。客席のカレンチャンとナリタトップロードはアヤべさんの貴重な寝顔に歓喜の声を上げています。
するとお城から沢山の鬼が出てきて、ついに大きな鬼があらわれました。
「生意気な小娘。ゴルシ様が懲らしめてやる。」
大きな錨を振り回しながら言いました。
なんということでしょう。鬼の首魁の正体は、ゴールドシップだったのです。
「あなたがかしらですか」
と言うとスペ太郎はすばやく錨の上に飛び乗り、
「悪いゴルシさん、村人に悪いことをしたからには許せない。私のこぶしを受けてみろ」
「馬鹿め、お前程度の実力など、アタシの子分だけで十分だ」
ウオッカ、スカーレット、やっておしまいなさい!
鬼の子分たちがスペ太郎へと襲いかかります。
「ウオッカ、挟み撃ちにするわよ!あんたは左から攻めなさい!」
「はぁ!?何勝手に指示してんだよ!むしろお前が俺に合わせろよな!」
「なんですって!?」
二人は突然ケンカを始め出すと、どっちが指示を出すに相応しいかレースで決めるとターフへ行ってしまいます。スペ太郎が二人のケンカを止める間もないほどの圧倒的早さでした。
「つ、使えねー! あいつらただ夫婦喧嘩しに来ただけじゃねーか!!」
これにはゴールドシップも予想外。呆れて肩を落としてしまいます。
しかしまだまだ子分たちは残っている。ゴールドシップは気を取り直して再び子分をスペ太郎へと向かわせます。
「ふっふーん!最強無敵のトウカイテイオーさまだぞー?」
「はぁ、なぜわたくしがこんな役目を……」
「さぁテイオーにマックイーン、今度こそスペ太郎をやっておしまい!」
カッチャウモンニ!テイオーは鳴き声を上げながらスペ太郎へ襲い掛かります。
キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!
「私の勝ちです!」
「ワケワカンナイヨー!」
「ふっ、情けないですわねテイオー。ですが友人として貴方の仇は取ってあげましょう」
マックイーンはエレガントにポーズを決めると、スペ太郎へ声をかけ、
「スペ太郎さん、ここはウマ娘らしくレースで――」
「……ません」
「え?」
「あげません!!!!」
「えぇーっ!?」
よよよー!
マックイーンはスペ太郎の気迫に負け、勝利を譲ってしまいました。
天丼は二回までなら許されます。
「次はあなたの番だ、ゴルシさん」
「ぐぬぬ、使えない子分どもめ。ええい、こうなったら……スペ太郎、これを見ろ!」
「えっ――きゃっ!?ウソでしょ、誰か助けてーっ!」
「スズカさん!?」
なんと鬼は観客席に飛び降りると、のんびり鑑賞していたサイレンススズカを舞台上に引き上げます。
そう、鬼はスペ太郎の大の仲良しであるスズカを人質にするつもりなのです。
劇だからとけっこう呑気してたスペ太郎もこれには驚愕です。
「ゴルゴルゴル……さぁスペ太郎よ、この娘の命が惜しければアタシのいう事を聞くんだな!」
「そ、そんなーっ!? い、一体どうすれば……」
「スペちゃん……私のことは気にせず、どうかゴールドシップさんを……」
「えぇーい人質は喋るでなぁい!これでも咥えてろ!」
「むぐっ」
鬼はたい焼きをスズカの口にねじ込みます。
両手をゴルシに塞がれている為、スズカはそれをじっくり味わうしかありません。
「~~~……っ!」
「ひょっひょっひょ!どうだシークレットたい焼き(からし)の味はぁ?そうかそうか涙が出るほど美味いかぁ!」
「スズカさん!スペペペペ……許すまじ、ゴルシ!」
「な~に言ってんだ、お前が許そうが許さまいが、人質がこっちにいる以上お前は手も足も出まい!」
鬼はスペ太郎を指差しながら嘲笑う。
「何勘違いしてるんですか」
「ひょ?」
「まだ私のバトルフェイズは終了してないZE!速攻魔法発動、
「気性難の魂!?」
テーン・テレレーテレレーン♪(館内に流れ出すBGM)
「手持ちのきび団子を全て捨て、効果発動!これは気性難のウマ娘の魂を呼び起こし、対象に取り憑かせるカード。今回呼び起こす魂は、エアシャカールさん!」
「あァ?」
「そして対象はもちろん……ゴルシさん、あなたです!」
「エアシャカール!?*1 はっ……あの時!」
アニメウマ娘第1期のBlu-rayBOX、通称ウマ箱の第4コーナーに収録されたBNWの誓い。
その中で行われた大阪杯の記憶が、ゴールドシップの脳裏に過る。
(まさかスペの奴、そこまで考えて……!)
「脚本の人そこまで考えてないと思うよ」
「チヨちゃんどうしたの急に」
チヨノオーは真顔でそう答えた。
「さぁお願いしますシャカールさん!」
「よっしゃ、任せろ」
(ぐっ、言っちゃ駄目なのに……クソっ駄目だっ!!)
大阪杯、エアシャカール――そして、出遅れ。
鬼は近づいてくるエアシャカールを前に、とうとうその言葉を出してしまいます。
「負ける気がしねェ!」「負ける気がしねぇ!」
「「……あぁ?」」
「マネすんじゃねーよ!」「真似すんじゃねーよ!」
「「……あ゛ァん?」」
「テメェ!!」
鬼の怒りが爆発――気性難ここに極まれり。
人質のこともすっかり忘れ、鬼はエアシャカールへと突っかかってしまいます。ついでに客席からとある女性の悲鳴も聞こえてきました。
「スズカさんっ!」
「スペちゃんっ!」
「あっ、しまった!」
鬼の手から解放されたサイレンススズカ。
スペ太郎は急いで彼女を助け出すと自らの背中へと回し、安否を確かめます。
「スズカさん、無事ですか?怪我はしてませんか?」
「え、えぇ……口の中がちょっと辛いけど、それ以外は特に……」
「良かったぁ……スズカさんがもし怪我したらって思うと、それだけで私心配で、不安になって……!」
「スペちゃん……」
不安げに瞳を揺らすスペ太郎を、スズカは抱きしめます。
スズカの抱擁がスペ太郎の体をふんわりと包み込み――B70に包み込める大きさがあるかは別として――スペ太郎はケツイに満ち溢れていきました。
「スズカさん……私、もう大丈夫です!」
「良かった。やっぱりスペちゃんは笑ってる時が一番素敵よ」
「え、えへへ……」
やはりスペスズ……スペスズは全てを解決する……。*2
そんな中、鬼のゴールドシップはこの隙を伺い逃げ出そうとしていました。
「……今のうちに逃げとこ――」
「おい、こいつ逃げようとしてんぞ」
が、ここで待ったをかける存在が一人。
そう、エアシャカールです。彼女は二人の代わりに鬼を見張っていてくれたのです。
「悪いゴルシさん。スズカさんを巻き込んだこと、決して許してはおけぬ」
スペ太郎は怒気をあらわに鬼へと近寄ります。
流石にこれはマズいと思ったのか、鬼は弁明を始めます。
「ま、まぁまぁスペ落ち着けって!アタシはちょーっと劇を盛り上げようと思っただけなんだよ!それにスペ、お前とゴルシちゃんは一緒に空気読みをした仲じゃないか!ほら、ここは空気を読んで乙女の可愛いお茶目って事で許して――」
「でもゴルシさんあんまり私との空気読みませんでしたよね」
「っすー……っな、ならスズカお前からも言ってくれ!そんなガチで手荒にはしてなかっただろ!?」
「もぐ……え?」
「って何でたい焼き食ってんだよ!?」
「だって私が口付けちゃったから、食べきらないと勿体ないし……」
「それは確かにそう!!」
スペ太郎が「覚悟は良いですか?」と問う。
ゴールドシップはにへら、と笑みを浮かべ、
「ワビサビってヤツだよな……」
「
鬼の一味はスペ太郎に征伐された。
そしてスペ太郎はお城の金や銀や織物や、荷車一杯の宝物を手に入れました。
こうして、スペ太郎はおじいさんとおばあさんの待つ家に帰り、みんなで幸せにくらしました。
おしまい。
「ふわわぁぁ……変な夢見ちゃって寝不足です……」
「あら、どうしたのスペちゃん」
「あ、スズカさん!いやぁ、ちょっと変な夢見ちゃって……ってあれ、そのたい焼きどうしたんです?」
「これ?フクキタルから『夢のお告げでたい焼きのシークレット味を持つが吉と出ました!』って言われて渡されたのだけど……」
「……シークレット味? ……中身は何なんですか?」
「辛子よ」
「えっ――」
「おいスペ!お前に桃太郎をモチーフにした劇の出演依頼が来てるぞ!」
「……なしてー!?」
スペシャルウィークは夜更かし気味になった……。
P.S.僕はゴル×マク派です。
これ書くのに1週間かかりました。