Dark Matter In Fairy Tail   作:bbbb.

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六魔将軍
三話


 

 x784年 フィオーレ王国。

 

 「ふーんふふふーん♪」

 

 陽気な日差しが降り注ぐ中、青髪でロングヘアーの少女・ウェンディが鼻歌を歌いながら上機嫌に森の中を歩いていた。背中には何か荷物の入ったリュックを背負っている。そして、その少女の横には羽を生やした一匹の白いネコ・シャルルが宙を飛び、後ろには金髪で赤いシャツの上から茶色のジャケットを着た一人の青年・垣根帝督が静かに歩いていた。

 

 「今日のご飯は何だろうねシャルル」

 「さぁ?ってかアンタ、さっきからえらく機嫌がいいじゃない」

 「んー?そう?」

 「そうよ。ニヤニヤしながら鼻歌なんか歌っちゃって。なんかあったの?」

 「別にー?ただ、お仕事が順調に終わって良かったなーって」

 「…なんだ、そんなこと」

 

あまりにも単純な理由にシャルルは小さくため息をついた。するとウェンディは何か思いついた素振りを見せると、急に後ろを振り返り垣根に話しかけた。

 

 「あ、テイトクさん。そういえばマスターって今日評議員の定例会でいないんでしたっけ?」

 「あ?あぁ、そういやそんなこと言ってたな。けど早けりゃ今日の2時頃には帰ってくるって言ってたし、もしかしたらもう帰ってるかもな」

 「そっかぁ~。じゃあ私たちも急ぎましょう!」

 「は?何でだよ」

 「だってマスターが帰ってるなら、お仕事が上手くいったこと早く伝えたいですし!」

 「…いや、別にそんな早く伝える必要ねぇだろ。つか前見て歩け。またコケんぞ」

 「大丈夫ですよ~…ってあわっ!?」

 

間抜けな声と共にドテン!と音を立てながら、ウェンディはその場で尻もちをついた。垣根は呆れたようにため息をつくと、転んだウェンディの下へ歩いて行った。

 

 「いったぁ~…」

 「だから言っただろ。お前は何回コケりゃ気が済むんだ」

 「えへへ…あ!ありがとうございます」

 

恥ずかしそうに頬を染めながら、ウェンディは垣根が差し伸べてくれた手を取った。

 

 「まったく、ドジなんだから」

 「あははは…」

 「オラ、あともう少しだ。さっさと行くぞ」

 「はい!」

 

ウェンディの元気な返事と共に三人は再び進み始めた。彼らのギルド、化猫の宿(ケット・シェルター)へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔導士ギルド 化猫の宿(ケットシェルター)

 

 「おぉ~ウェンディ!お帰り!早かったなぁ」

 「お帰りなさい!」

 「仕事は無事に終わったんだな!」

 「テイトクもいるし、当然でしょ」

 

 ウェンディ達がギルドへ帰ると、ギルドメンバーの暖かい言葉によってその帰還を迎えられた。皆の言葉に嬉しそうに手を振りながら応えるウェンディは、そのままマスターについて尋ねた。

 

 「そういえばマスターって帰ってる?」

 「ん?あぁ。マスターならついさっき帰ってきたぜ。あ、そういやお前達のこと探してたな」

 「え?私たちのこと?」

 「いや、厳密にはテイトクのことかな」

 「あ?俺?」

 

突然名指しされ、思わず聞き返す垣根。すると聞き返された男は頷きながら答えた。

 

 「あぁ。詳しいことは分かんないけど、テイトクが仕事から帰ってきたら教えて欲しいって言われたんだ」

 「……」

 「あの、マスターは今どこに?」

 「マスターならいつものテントにいるよ」

 「そっか。ありがとう!」

 

ウェンディは教えてくれた男に礼を言うと、垣根に向き直った。

 

 「テイトクさん…」

 「一体テイトクに何の用かしら?」

 「さぁな。ま、取り敢えず行ってみれば分かんじゃねぇの」

 「そうですね!行きましょう」

 

そう言うと三人は、マスター・ローバウルのいるテントに向かった。

 

 

 

 

 

 「マスター!ただいま帰りました!」

 

 ウェンディが元気よく声を発しながらテントに入ると、テントの奥にいたローバウルがウェンディ達に気付いた。

 

 「おぉ!帰ったか!どうじゃった?仕事の方は」

 「はい!バッチリです!」

 「おぉそうかそうか!それは良かったな」

 

ローバウルはウェンディの報告を嬉しそうに聞いていた。端から見ていると、この二人はまるで祖父とその孫のような関係に見え、とても微笑ましく映るのだった。

 

 「マスターも定例会お疲れ様でした」

 「あぁ、ありがとうウェンディ。しかし評議員め、この老体をこきつかいおってからに。年寄りはもっといたわるもんじゃ」

 「年寄りだなんて。マスターはまだまだ若いですよ」

 「ハッハッハ!そうかの?」

 

ウェンディのジョークにローバウルは豪快に笑い、ウェンディも楽しそうに笑う。するとここで垣根が横から口を挟んだ。

 

 「談笑の最中に悪いが、じいさん。俺を探してたってのは本当か?」

 「ん?おぉそうじゃったそうじゃった。実はの、お前さんに一つ頼みがあっての」

 「頼み?」

 

垣根が怪訝そうな表情で聞き返すと、ローバウルは頷きながら言葉を続けた。

 

 「うむ。先日の定例会で、六魔将軍(オラシオン・セイス)という闇ギルドが、なにやら動きを見せているという議題が上がっての」

 「オラシオン…セイス…?」

 

ローバウルの言った単語を復唱しながら、ウェンディが頭にクエスチョンマークを浮かべていると、垣根がひとりでに呟いた。

 

 「評議員から過去に解散命令が出てもなお、秘密裏に活動を続ける犯罪者集団、闇ギルド。その中でも特に強い勢力が、三つの闇ギルドからなる『バラム同盟』。その『バラム同盟』を構成する闇ギルドの一角が六魔将軍(オラシオン・セイス)だ」

 「そうじゃ。よく調べておるの」

 「これくらい誰でも知ってんだろ」

 「そうなんだ…私全然知らなかった…」

 「アンタは別に知らなくいいのよ」

 

ウェンディは垣根の説明によってなんとなく六魔将軍(オラシオン・セイス)について理解すると、ローバウルが話を続ける。

 

 「で、その六魔将軍(オラシオン・セイス)についてじゃが、とても危険なギルド故無視は出来んということになり、どこかのギルドが奴らを叩くことに決まった」

 「えっ?それって…」

 「まさか…」

 「……なるほど。その貧乏くじをウチが引かされたってわけか」

 

垣根とウェンディ達はローバウルの話の真意を理解する。そして、ローバウルが垣根を探していたということは、その役目を垣根に頼みたいということなのだろうということも垣根は一早く察した。

 

 「んで、それを俺に頼みたいってこったな」

 「うむ。まぁ端的に言えばそうなる」

 「そんな!無茶だよマスター!相手は闇ギルドの最大勢力の一角…それをテイトクさん一人に戦わせるんですか!?」

 「まぁ落ち着けウェンディ。話はまだ終わっとらん」

 

取り乱すウェンディをなだめると、ローバウが再び話を続けた。

 

 「今回ばかりは敵が強大すぎる。どこか一つのギルドだけで戦ったとしたら、後々そのギルドがバラム同盟によって集中的に狙われることとなる」

 「まぁ確かにそうね」

 「うむ。そこでじゃ、我々は他のギルドと連合を組むこととなった」

 「「「連合??」」」

 

垣根達は驚きの表情を浮かべながら、ローバウルを見つめる。他のギルドと合同で仕事に当たるなど滅多にあることではない。六魔将軍(オラシオン・セイス)とはそこまで強大なチームなのか、とウェンディやシャルルが考えていると、ローバウルが連合を組むギルドについて話始めた。

 

 「今回連合を組むギルドはウチを含め四つ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)青い天馬(ブルーペガサス)蛇姫の鱗(ラミアスケイル)、そして化猫の宿(ケットシェルター)。四つのギルドが各々メンバーを選出し、力を合わせて六魔将軍(オラシオン・セイス)を討つのじゃ」

 「連合…チーム…」

 「それで、ウチからは俺が派遣されるってわけね」

 「…今回ばかりは危険度が今までの仕事の比ではない。実力的にお前くらいしか安心して送り出せんでな。大変なことを頼んどるのは重々承知の上で聞くが、どうじゃ。引き受けてくれるか?」

 

ローバウルは申し訳なさそうに垣根に尋ねる。ウェンディやシャルルも垣根の方を見つめる中、垣根はニヤリと笑うとローバウルに答えを返した。

 

 「ま、そういうことなら仕方ねぇな。いいぜ。任せろ」

 「…すまんな。いつもお前にばかり重い役目を押しつけて」

 「で、出発はいつだ?明日か?」

 「あぁ。明日の朝、青い天馬(ブルーペガサス)の別荘に向かってくれ。場所はあとで地図を渡して教える」

 「あいよ」

 

垣根は短く返事をすると、テントを出ようと背を翻した。すると、

 

 「待って下さいマスター!」

 

突然ウェンディがローバウルに話しかける。ローバウルは些か驚いたように目を見開きながらウェンディを見つめると、ウェンディは言葉を続けた。

 

 「マスター、その仕事私にも参加させて下さい!」

 「えっ!?」

 「あ?」

 「ウェンディ…」

 

シャルルやローバウルは勿論、テントを出かかっていた垣根すらも思わず足を止めウェンディの方を振り返った。皆の視線が集まる中、ウェンディが再びローバウルに訴えた。

 

 「私にも参加させて下さい!」

 「いや、じゃが今回の相手はそこいらの相手とはレベルが違う。ウェンディにはまだ早い気が…」

 「確かに私は戦闘は全然出来ませんけど、仲間をサポートする魔法はそれなりに使えます!きっとお役に立てるハズです!」

 「しかしだな…」

 「そうよウェンディ!マスターも言ってたでしょ!?今回の相手は闇ギルド最強格の相手。アンタが行っても足手まといになるだけよ」

 「でも…!」

 

シャルルの言葉に、悔しそうに顔を栂ませるウェンディ。そんなウェンディを見てローバウルは腕を組みながら難しい顔で唸った。

 

 「ふーむ…」

 「マスター?」

 「…テイトク、お前さんはどう思う?」

 

ローバウルが突然垣根に話を振ると、垣根が眉を上げながらローバウルに問い返した。

 

 「あ?なんで俺に聞くんだよ」

 「この二年、一番ウェンディの側におったのはシャルルとテイトクじゃ。お前さんならワシより適切な判断が出来ると思っての」

 「私は反対よ。ウェンディにはまだ早いわ」

 「……」

 

シャルルが反対の声を上げる中、垣根は再びテントの中に引き返すとウェンディの側まで近づいた。そして涙目で垣根の顔を見上げるウェンディをじっと見つめる。

 

 「ふーむ…」ジー…

 「あ、あの~…」

 「ちょっと!なにウェンディの顔ジロジロ見てんのよ!」

 

ウェンディがうろたえ、シャルルが苦言を呈する中、垣根はポスンッとウェンディの頭に手を置きローバウルに答えを返した。

 

 「ま、来たきゃ来てもいいんじゃねぇの」

 「!」

 「ほぅ!」

 「な…っ!?」

 

垣根の予想外の返答にシャルルやローバウルは勿論、ウェンディ自身まで驚いていた。ウェンディが目を丸くして垣根を見つめる中、垣根が続ける。

 

 「こんなんでも一応滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だろ。お前らが思ってるほどヤワじゃねぇよ」

 「ちょ…っ!?アンタそれ本気で言ってんの!?」

 「そう喚くなシャルル。別に前線で戦わせるわけじゃねぇ。行ったとしてもいつも通り後方支援だ」

 「そ、それはそうかもだけど…」

 

思わず口ごもるシャルルだったが、それでもまだ納得していない様子だった。するとウェンディがシャルルの下まで近づき、目線の高さまでしゃがむと諭すように話し始めた。

 

 「シャルル。私このギルドの力になりたいの」

 「……」

 「絶対無事に帰ってくるら。だから、信じて?」

 「ウェンディ…」

 

優しく微笑みながらシャルルを見つめるウェンディを、シャルルは複雑そうな表情で見上げる。黙ってウェンディとシャルルのやりとりを見ていた垣根は、スッと踵を返すと今度こそテントから出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝。垣根は昨日ローバウルから頼まれた六魔将軍(オラシオン・セイス)討伐に向かうため、自身のテント内で荷物の準備をしていた。すると、突如背後の入り口付近に人の気配を感じ、ゆっくりと振り返るとそこにはマスター・ローバウルが立っていた。

 

 「どうじゃ?準備は順調か?」

 「あぁ。もう終わるとこだ」

 

ローバウルの質問に垣根は短く答える。垣根の答えを聞いたローバウルは小さく微笑むと、そのままじっと垣根を見つめ、再び口を開いた。

 

 「テイトク、これはお前だけに話しておくが…」

 「?」

 「今回の相手、六魔将軍(オラシオン・セイス)。奴らはニルヴァーナを狙っとるかもしれんという情報が入った」

 「!」

 

ローバウルの言葉に目を見開く垣根。ローバウルも眉間にしわを寄せ、ゆっくりと吐き出すように言葉を続けた。

 

 「お前さんには以前話したな?ワシらの罪を」

 「……」

 「ニルヴァーナ…あれは絶対に人の手に渡ってはならん代物じゃ。だから頼む。もし奴らの狙いが本当にニルヴァーナだったなら、絶対に阻止してくれ」

 「…言われねぇでも分かってるよ」

 

垣根が荷物に目線を戻しながらそう答えると、ローバウルは満足気に笑った。

 

 「ホッホッホ!言うまでもなかったか」

 「いらねぇ心配してねぇで、あんたらは飯でも作って待ってろ。いつも通りサクッと終わらせる」

 「そうじゃな…それとテイトク」

 「あ?まだ何かあんのかよ?」

 

垣根が面倒くさそうに振り向き、再度ローバウルの方を向くとローバウルは垣根を見つめながら静かに言った。

 

 「ウェンディを頼んだぞ」

 「……」

 

ローバウルの言葉に垣根は何も言わず、準備を終えた荷物を右手で持つとローバウルの立っているテントの入り口まで歩いて行き、ローバウルとすれ違うようにしてテントを出て行った。ローバウルがゆっくりと振り返り、垣根の背中を見ると、垣根が左手をヒラリヒラリと振っている姿が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はっ…はっ…はっ……テイトクさん!急いで下さい!集合時間に遅れちゃいますよ!」

 

 息を切らしながら森の中を走っていたウェンディが立ち止まり、後ろを振り返りながら言う。ウェンディの視線の先にはいつものようにポケットに手を突っ込みながら、ゆっくりと歩いている垣根の姿があった。ウェンディの声を聞いた垣根だったが、なんら急ぐ素振りを見せず面倒くさそうに言葉を返した。

 

 「何言ってんだ。まだあと3分もあるじゃねぇか。んな急がなくても間に合う」

 「3分しかですよ!こんな大事な作戦の集合時間に遅れたら他のギルドの人達に怒られちゃいますよ~!」

 「あーそうかい。そいつは楽しみだな」

 「もう!真面目にやってください!先行ってますからね!」

 

真面目に取り合ってくれない垣根に腹を立てたウェンディは、垣根を置き去りに再び走り出した。垣根はそんなウェンディの背中を黙って見つめながら、唐突に言葉を発した。

 

 「行っちまったぜウェンディの奴。お前も急いで追いかけた方がいいんじゃねぇの?」

 「……気付いてたのね」

 

垣根の発した言葉に聞き慣れた声が返事を返すと、垣根の背後の木陰からシャルルが姿を現した。シャルルは垣根の横まで歩いてくると垣根の方を見ずに尋ねた。

 

 「いつから気付いてたの?」

 「んなもん最初からだ。バレバレだっつーの。気付かないのはあいつぐらいなもんだ」

 「そう…私もまだまだね」

 

一瞬頬を赤らめたシャルルだったが、すぐに歩き出し歩きながら垣根に言った。

 

 「なにボサッとしてんのよ。さっさと行くわよ」

 

垣根は肩をすくませる素振りを見せたが、何も言わずにシャルルの後を歩き始めた。

 

 

 

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