ヒロイン達が主人公を惚れさせる異能を持ったラブコメ。なお、全員ヘタレとする 作:ウジ虫以下
オリジナル:現代/恋愛
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第一話
5月某日。桜が咲いていたことすらももう忘れ、すっかり若葉が顔を出し始めた、そんな季節。新入生達ももう以前程の真新しさは感じられないだろう。
そんな時分、とある高校とある文芸部室にて3人の少女達が相見えていた。
「……ふっ、ふっはっはっはっは!!勝った!!この完璧なプランがあれば、この恋愛戦、私の勝ちだ……!!」
「……どうしたんですか、早乙女先輩。急に高笑いなんかあげちゃって」
文芸部部長である3年 早乙女ハルユキは、急に高笑いを上げるような女だということを文芸部員達は知っていた。
そのため、今回のようなことは特に珍しいというわけでもなく、最早文芸部では日常となっている。新入部員である東アキコすら見慣れた光景だとばかりに呆れた顔をする。
「何を惚けている?たった今、私に与えられた【恋愛異能】を活かした最高で最強で完璧で完全なるプランが完成したというのに!!」
「「!?!?!?!?」」
早乙女の言葉を受けて、他二名の部員はこの世の終わりでも見たかの様に驚いた顔で固まってしまう。二人は取り乱し、早乙女に詰め寄る。
「ど、ど、ど、どどういうことなんですか!?」
「キミ達も持っているだろう?綴利ハジメくん、彼を攻略するための【恋愛異能】を!!」
「そ、そんな事は重々承知しています!!そ、それよりアレを活かせる最強のプランだなんて……。嘘と言って下さい、部長!!」
二人はどうしようもない程焦っていた。部長にアレを、【恋愛異能】を使われてしまえば自分達の大好きな彼が部長の手に堕ちてしまうからだ。
「残念だったな。キミ達の【恋愛異能】は使われることもなく、終わる!!」
「なぜなら私の【恋愛異能】『10秒間目を合わせれば相手が惚れる能力』による最強のプランが完成したからだ!!」
部長早乙女は、大袈裟に天高くガッツポーズを掲げ、ガッハッハと不敵な笑みを浮かべた。もはや敵無しと言わんばかりの様相が、二人をより焦燥感に苛ませる。
「ま、まだです!絶対に部長にツヅリ先輩はあげません!」
初めに声を上げたのは東。新入部員にも拘らず部長である早乙女に物怖じせず立ち向かっていく。
「ワ、ワタシの【恋愛異能】『会話を続ければ続けるほど惚れていく能力』があれば、きっとツヅリ先輩だってワタシのことを選んでくれるはず!!」
「———くっ!?確かにアズマの【恋愛異能】『会話を続ければ続けるほど惚れていく能力』は強力だ……。だがしかし、私には最強のプランと【恋愛異能】『10秒間目を合わせれば相手が惚れる能力』がある!!」
ぐぬぬ、私のプランは最強なんだ…と部長が唸る。そこに余裕を取り戻したもう一人の部員、2年黒城ナツハが追撃する。
「部長、お忘れじゃないですよね?アタシの【恋愛異能】『手を繋げば相手の考えていること、好みがわかる能力』の存在を!!」
「———!?し、しかしコクジョウ。キミの【恋愛異能】『手を繋げば相手の考えていること、好みがわかる能力』は、私やアズマのと比べて直接性に欠けているという話だったではないか……。」
「——部長もしかしてまだ、自分だけしか計画を完成させていないとでも思ってるんじゃないかね?」
「——ま、まさかコクジョウ、キミも謀っていたというのか!?【恋愛異能】を使った計画を!?」
自分があんなに高らかに宣言したというのに、目の前の彼女は陰で着々と計画を企てていた。そんな現実をまだ早乙女は直視できない。
「ま、待って下さい!!そもそも先輩達は【恋愛異能】を使い熟すことができるんですか!?」
東は結局、大好きな彼に対して【恋愛異能】を使える程の実力があるのか、と無力な先輩達に説く。そう、【恋愛異能】があるという確信はあるのだが本当に効くかどうかは試して見ないとわからないのだ。
「甘い!!アズマ新入部員!!私の【恋愛異能】『10秒間目を合わせれば相手が惚れる能力』は既にその効果を実証済みだ!!」
「……何……だと……」
東は驚きが勝ちすぎて、歳上であり部長であるはずの早乙女に対して、敬語を忘れてしまっている。
「この前、ペア活動があってな。隣席の級友と向かい合う機会があったんだ。隣の席のサトウくんには悪いとは思ったんだが【恋愛異能】『10秒間目を合わせれば相手が惚れる能力』の実験台になってもらったんだ。」
「結果はどうだったと思う?」
「——————ラブレターを貰った」
そんな早乙女部長の問い掛けに、東は即答する。
「ん?……あ、あぁそうだ。その日の内に恋文を貰ったんだ。悪い事をしたとは思うが、断らせてもらったよ。隣の席のサトウくんが実証してくれたように、私の【恋愛異能】『10秒間目を合わせれば相手が惚れる能力』は通用する!」
「……そんなことをやってたんですね、サオトメ部長。それより、10秒間も男の子と目を合わせられたんですか?」
「??? 何を言ってるんだコクジョウ。そんなことは普通だろ?」
「それよりも、黒城の【恋愛異能】『手を繋げば相手の考えていること、好みがわかる能力』なら誰にでも試せるのではないか?」と早乙女が問い掛ける。
「えぇ、そうです。その点において言えばアタシの【恋愛異能】『手を繋げば相手の考えていること、好みがわかる能力』は誰にでも使える万能型とも言えますね」
「……それを考慮すれば恐ろしい能力だな。最初は誰に試したんだ、コクジョウ?」
「……あれは、そうですね。体育でフォークダンスの練習があったんです。その時のペアのヤマダくんだったと思います」
「ほう、それでヤマダくんの考えていることから好みまで何もかも筒抜けにしてしまったのか?」
黒城はコクリと頷き、言葉を返す。
「でも、サオトメ部長が言う通りアタシの【恋愛異能】『手を繋げば相手の考えていること、好みがわかる能力』は惚れさせる、という決定力に欠けています。ですから、アタシも試したんです!!」
「なるほど。……続けたまえ。」
「だからアタシも、【恋愛異能】『手を繋げば相手の考えていること、好みがわかる能力』によって得たヤマダくんの考えていたこと・好みに基づいて後日ヤマダくんの理想の女の子を演じて見たんです」
「結果はどうだったと思います?」
「……恋文を貰った?」
「……はい。アタシも断りはしましたけど、どうやらアタシの【恋愛異能】『手を繋げば相手の考えていること、好みがわかる能力』によって得られた情報は本物みたいです」
「……なるほどな。全く末恐ろしい女だよ、キミは……。」
それよりアズマは何を黙っているんだ?と早乙女が問い掛けると東はビクビクぐぬぬとしながら唸った。
「……ま、まさか先輩達も実戦に移していただなんて……。ワタシがスズキくんで試した【恋愛異能】『会話を続ければ続けるほど惚れていく能力』の方が絶対有用ですよ!!」
「ならば、語って貰おうじゃないか。事の経緯をな、アズマ新入部員」
「………始まりは何気ない会話中でした。クラスメイトのスズキくんと好きなゲームの話題で盛り上がった時に悪いと思いながらも使って見たんです……。」
「………結果はどうだったと思いますか?」
「………ら、ラブレターを貰った……?」
「………はい、そうです。告白は断りましたけど、何だか良い気はしませんでしたね。」
「それよりも!!先輩方も試して見て解ったと思いますけど【恋愛異能】は本物です!!」
黒城は東の気迫にゴクリと息を呑む。あぁ、そうだ【恋愛異能】の効果は実証済み。各々がその威力の凄まじさを理解している。条件さえ満たせれば、綴利ハジメ、彼にも有効であろう。
「スズキくんで試してわかりました!ワタシの【恋愛異能】『会話を続ければ続けるほど惚れていく能力』は会話さえしていれば相手が惚れていく最強の能力!!不自然な行動は必要ありません!!部長のプランがあろうと、この【恋愛異能】は負けません!!」
「………くっ!!」
東の強気な物言いに、部長早乙女は堪らず歯噛みしてしまう。目の前の女は自分の【恋愛異能】こそが最強なのだと言い切っている。
「ワタシの【恋愛異能】『会話を続ければ続けるほど惚れていく能力』があれば、ツヅリ先輩も惚れてくれるはず!!そうなればこの恋愛戦、ワタシの勝ち!!勝ったッ!第3部完!」
文芸部員は日々、綴利ハジメがオススメする漫画を借りている為、時々こうして漫画の中のセリフがあった。それでも、そのクセが漏れるのは文芸部内においてのみであり、彼女らが文芸部を気の置ける場所としている証拠であろう。
「……そ、それでも私の最強プランとサトウくんで実証した【恋愛異能】『10秒間目を合わせれば相手が惚れる能力』があれば———」
「———こんにちは。委員会終わったので今来ました。なんの話してたんですか?」
早乙女の話を遮り、突如現れた声の主。綴利ハジメ。そう、彼こそが彼女ら三人の想い人であり唯一の男子文芸部員。
話によると委員会の仕事で遅れていたようだ。まあ、遅れるということは事前に報されていたため彼女らが別段驚くことはない。
しかし、綴利ハジメの背後から続くように入って来た人物、桜井チフユの姿を見て異常な程に取り乱す三人。
「…………そ、そ、そ、そ、そうだったな!?ツヅリくんとサクライは同じクラスで同じ委員。………そのままの足で来れるよな……。」
部長早乙女は、自分で言った事の内容を改めて思い知らされる。そうだ、綴利ハジメと桜井チフユは同じ委員会に所属しており私達の知らない所でも同じ時間を共有している。
なんとも羨ましきことだ。それに普段の行動から、桜井は綴利と良好な友人関係を築いていることが見て取れた。そんな桜井チフユのことを三人はライバル視していた。
「えぇ、そうです。図書委員ってカウンター二人で回さないと行けないから大変なんですよね。特に今日なんて貸出多くて。でも、気の知れた桜井さんがペアで良かったよ。」
「確かに今日は大変だったよね。私もツヅリくんと一緒で良かったと思うな」
不味いと思った。既に二人で和気藹々としたムードで自分達をそっちのけで会話を始めている。そんな二人を嫉視反目とばかりに見つめることしか出来ない。誰かの口からぐぬぬというようなテンプレート的言葉が漏れた。
「………こ、このままでは不味いな。最強のプランを実行すべき時が来たようだ」
「「!?」」
早乙女が小さく溢したそんな言葉が、黒城・東の二人の耳に入る。勇気を出す為の独り言であったが、二人は一字一句確実に聞き漏らすこともない。二人は露骨に焦り出す。
「………な、なぁ、ツヅリくん。わ、私な?さ、最近『睨めっこ』に目がなくてな〜?ど、どうだ、私とやってみないか?」
そのように提案した早乙女ではあるが、これまで全くと言っていい程に綴利と目を合わせられていない。
「……『睨めっこ』ですか?変顔で笑ったら負けなんでしたっけ?」
「い、いや私が子供の頃にやっていたのは、目と目を合わせて逸らした方が負けのルールだったんだ。そ、そっちで頼む!!」
そう、部長早乙女ハルユキが考えた最強のプランとは『睨めっこ』に乗じて【恋愛異能】『10秒間目を合わせれば相手が惚れる能力』を使ってしまおうという計画だったのだ。
「あぁ、本来はそっちの方が正しいルールなんでしたっけ。それじゃあ、やりましょうか。にっらめっこ、しましょ〜〜。」
「えぇっ!?いや、早い!?まだ心の準備が」
「———あっぷっぷ、っと」
早乙女は無理矢理に心の準備を終わらせ、綴利と顔を合わせる。目の前に愛しい想い人の顔がある。それだけでもう顔が沸騰しそうな程に熱くなり赤面してしまう。
(………目を、目を10秒間合わせたら私の勝ちだ!!………勝ち、勝ち…かちぃ………)
意識した瞬間には勝敗が決まっていた。早乙女は2秒も保たずに目を逸らしてしまったのだ。
「……………わっ、私の負けだ…………!!」
早乙女は、身体をわなわなと震わせて赤面した顔を隠すように手で覆い、部室の外へと走って行ってしまう。
「あっ!!部長!!……行ってしまった。自信あり気だったし、よっぽど悔しかったんだろうか。悪い事しちゃったかな?」
部長早乙女ハルユキ、【恋愛異能】『10秒間目を合わせれば相手が惚れる能力』。
撃沈!!
自信満々であった早乙女が失敗に終わった、この機を逃すまいと言わんばかりに東が行動に移る。【恋愛異能】『会話を続ければ続けるほど惚れていく能力』が猛威を振るう時が来たのだ。
「ツ、ツヅリ先輩!!き、きょ、今日は良い天気ですね………。」
まさかの天気デッキ。彼女、東アキコは綴利ハジメとの会話だけは、どうにも苦手だった。彼と話せそうと思うと、こうして事前に会話のネタを決めておく必要がある。だからこそ無難に続けやすそうな天気デッキというのを組んだ。
「あぁ、そうだね。こんなに快晴だと暑く感じるような季節になってきたよね」
「………そ、そうですよね!…それだけです。」
「僕はもっとアズマさんと話してみたいと思ってるんだけどなぁ…」
「———ふぇっ?❤︎!?!?!?!?」
「アズマさんは、快晴の方が好きなのかな?」
東は彼との会話が苦手視する余りに、会話も出来ない女だと思われたくなくて、素っ気なくしてしまう。だから会話が続かなかった。
しかし、綴利ハジメという男は逃げ道を塞いだ。出来れば文芸部内での唯一の後輩である東と良好な関係を築きたいと思っている綴利は会話を続けたい、と強く望んでいた。
だからこそ、彼女の天気デッキから展開して行こうと考えたのだが…。
「……………お、終わりです❤︎……それだけって言ったじゃないですか……❤︎」
「ごめん。今はあんまり話したくなかったかな…。」
大好きな綴利先輩とこんなにも会話出来てしまった❤︎と浮かれて、ニヤニヤ顔が止まらない顔をバレないように机に突っ伏した。側から見ると会話に飽きて寝入ってしまったようにも見える。
今日も東アキコの会話は、このようにして終わりを迎えた。
新入部員東アキコ【恋愛異能】『会話を続ければ続けるほど惚れていく能力』。
撃沈!!
ずっと機会を伺っていた黒城ナツハの耳に「うぅ……今日もダメだった。…ダメすぎるぅ❤︎」というような内容の独り言が聞こえて来たが、無視した。
最後は自分の番なのだ。邪魔が居ないほうがいい。これから己の考えた最強の計画が牙を剥くというのだから!!
「———ハジメ。アタシ最近手相占いに凝っているの。アンタの手相も見てあげるわ」
黒城ナツハと綴利ハジメは幼馴染であった。下の名前で呼び合うのは唯一の特権。幼稚園に通っていた頃、無理矢理にハジメと呼び始めたのが理由であるが、ナツハはそんな過去の自分を褒めてあげたいと思う。
「そうだったんだ。そんな素振り無かったように思うんだけど裏で練習してたの?ナツハが占いなんて意外だなぁ…。」
「いいから早く、手を出しなさいよ!!」
強い言葉を使って催促する。そう、彼女はハジメに対してはツンデレ的であった。ただしまだ、デレたことはない。
「じゃあ、お願いするね」
あんなに強い言葉を使われたというのにハジメは、にこやかとしている。ハジメは、ナツハが不器用な少女であることを知っている。だからこそこんな物言いでも、これまで過去一度も嫌いになったり突き離したりすることはなかった。
「………じゃ、じゃあ見るわね」
ハジメの手に触れるナツハ。思えば彼女は幼馴染だというのに幼馴染らしいことは出来てはいない。朝起こしに行ったり、弁当を作ってあげたり。そういう漫画だけで行わられるような行為に憧れてはいるが、彼女では出来るはずもなかった。
手相を見てあげるという名目で、ハジメの手に触れる。文芸部に所属しており、運動なども特にしないハジメの手。それでもナツハのそれとは違い、大きくて硬い。
(…………よし!!やってやるわ!!これでハジメの何から何までを筒抜けにしてやるんだから!)
ナツハが、【恋愛異能】『手を繋げば相手の考えていること、好みがわかる能力』を発動したその時であった。突如として衝撃が襲う。
(———なっ、なにこれ❤︎ハ、ハジメのがアタシの中に入ってくる……❤︎❤︎❤︎しゅ、しゅごいコレ……❤︎❤︎❤︎ヤマダくんのより、大きい❤︎❤︎❤︎)
「う、嘘よ。バーカ。し、素人のアタシが手相なんて見れるわけないじゃない………❤︎」
「なんだ、揶揄ってたんだ。それよりナツハ、顔赤いけど体調悪いの?それとも気温とか…。保健室に連れて行こうか」
「だ、大丈夫。ちょ、ちょっと火照っちゃっただけだから…。風にでも当たって来ようかなー。なんて………」
ナツハはそう言うと、早足で部室から出て行ってしまう。なお、未だに早乙女部長は戻って来ていなかった。
黒城ナツハ【恋愛異能】『手を繋げば相手の考えていること、好みがわかる能力』。
撃沈!!
そう、【恋愛異能】を与えられた文芸部員3人は
「………みんな、まだやってるんだ。あの【恋愛異能】とかいうやつ………。」
「桜井さん、何か言った?」
「——ううん、なんでもない。それより、部長やコクジョウさんは戻って来ないから、アズマさんを起こして執筆作業に取り掛かろうか」
こんな一日こそが、とある文芸部の見慣れた日常であった。
続かない。てか、3人はクズ。