新一郎、ウィリアム率いるライジングイーグルが結成されて数日、最初の任務を遂行する。それはー
「ふぅ~…やはりブルーマーメイドの輩出校だけあってたくさんの受験生が来ているなぁ~」
「うんうん、みんな緊張していますよトムさん、……オラたちも志望校の受験があったらそんな顔になっていますよ!」
トム・K・五十嵐と金城幸吉は横須賀女子海洋学校の警備員。
校門前には幾人の女子中学生、受験生がやってきた。
他の隊員のトチローは横須賀ブルーマーメイド基地で搭乗機の整備、キャサリンも双子を抱えながら食堂で給士の仕事をしている。
シャルロットは医療関連。
そして、新一郎とウィリアムは横須賀女子海洋学校を見物。
それは、ライジングイーグルの結成の宣言後。
早朝 宗谷家
沖田新一郎は毎朝、庭で常に武術の鍛錬をしていた時
「はぁ…はぁ…」
屋敷の門でインターホンが鳴り、新一郎は赴いた。
「ん…?どなたですか~?」
「おはようございます。私は海上安全整備局の局長の南方勝子です。宗谷家に住むライジングイーグルの責任者、沖田新一郎さんを尋ねにきました」
それから宗谷真雪が南方勝子を家の居間でもてなした。
「早朝からあなたが来るなんて…」
「まぁまぁ真雪ちゃん、それよりイーグルの隊長、沖田新一郎さんに面会したくて、居てもたっても…」
「はぁ…あなたの好奇心は、学生時代から変わらないのね…」
真雪は新一郎を呼び、局長の彼女と面会した。
「以前の客船救助の武勇、伝え聞いていますよ」
「いやぁ~…この世界に存在しない航空機があったからこそです…」
「あなたたちは、何者ですか…?」
「元、日本海軍大尉沖田新一郎です。神の
いたずらにて、別の世界の戦時からやってきました…」
「ふふふ…確かに、ブルーマーメイドとホワイトドルフィンの隊員と違って、顔付きが違うわね。あなたたちイーグルの航空機を詳しくいいかしら…?」
新一郎はあの世界大戦のことについて語り始めた。
「あら、もうこんな時間に…沖田さん、また何かあったら、私の命で力をお貸ししますよ」
「はい!」
南方勝子は、専用の乗用車に乗って整備局に向かった。
「うん…やはりあの沖田新一郎の言動、ただ事ではないわね…」
その時から、ライジングイーグルと南方勝子の繋がりが始まった。
「今から横須賀女子海洋学校の見学、ですか…?」
「えぇ、もうすぐましろの受験に見学を勧めたいの」
新一郎とウィリアムは宗谷家の真雪の書斎にて横須賀女子海洋学校の見学を勧めた。その言葉でウィリアムは緊張していた。
「いいですか?Mrs.真雪、女子校は男子禁制。私は入ってもいい身分ではありませんが…」
「ふふっ!私は学校の校長ですから、私がいる限り許可します。それじゃ行きましょうか!」
「「はい!」」
こうして、真雪は新一郎とウィリアムを連れて、宗谷家から出て、港で用意されたクルーザーに乗り、横須賀女子海洋学校へと向かった。
横須賀女子海洋学校、校門
クルーザーが学校、校門の桟橋に接岸、二人はクルーザーから降りて学校を見上げた。
「ここが横須賀女子海洋学校…」
「うん、俺は『みくら』の航海と零観の飛行と着水以来だ!」
ブルーマーメイドの養成学校であり、真霜や真冬、平賀、福内と岸間、鈴留が学んだ場所である。新一郎はこの世界に来てからの馴染みがあり、ウィリアムは初めてであった。
真雪と新一郎、ウィリアムは校門を抜け、学校の敷地に入る。すると
「校長!」
「!?」
一人の教員がやって来た。
「あの真雪さん、…そちらの方は?」
「こちらは、この学校の指導教官の古庄薫二等監督官!」
「初めまして、古庄薫です」
「沖田新一郎です!」
「ウィリアム・スパロウです!」
二人は古庄に対して日本、アメリカ海軍の身分を隠しながら自己紹介をした。
後に二人に大きな影響を与える人物である。
「ああ、あなた方が!校長から話しは聞いています!」
「「 は、はぁ… 」」
「古庄教官!彼らに学校を案内して頂戴!」
「わかりました!」
「じゃあ私は、後日の受験生に関しての用事があるから、新一郎さん、ウィリアムさん、また後で」
「「はっはい!」」
真雪は受験生の試験関連の用事があるため、学校案内を古庄薫に任せ、校舎内に去って行き、新一郎とウィリアム、古庄だけが残った。
「では、校舎を案内しますね沖田さん、スパロウさん!」
「はい。」
「よろしくお願いしますミス古庄。」
「ふふっ」
「ん…?何が可笑しいのですか?」
「いえ、ごめんなさいね!鈴留と真霜から聞いたけど、スパロウさんは子持ちの愛妻家で沖田さんは想像通りの男性ね!」
「えっ、鈴留さんと真霜さんから!?…失礼ですが、あなたは二人とどんな関係ですか…?」
「鈴留は学生時代の同期、真霜は後輩よ!……彼氏がいて羨ましいけど…」
古庄薫は、この横須賀女子海洋学校の出身であり、鈴留は同期、真霜の先輩でもある。彼女は小声で真霜と新一郎の関係を羨んでいた。
「古庄さん…?」
「あっ、それでは学校を案内します。」
「はい、お願いします!」
そう言うと新一郎とウィリアムは古庄薫の案内の元、横須賀女子海洋学校の学校案内が始まった。
横須賀女子海洋学校は、ブルーマーメイドの養成学校の一つで、ブルーマーメイドになる為の必要な知識や艦艇の技術など3年間を学ぶ。他にも呉、舞鶴、佐世保に4校が存在する。
「へぇ~ここと同じ学校が4校も、海軍の士官養成学校も同じだな」
ブルーマーメイドの養成学校が4校あることに驚く。
かつての新一郎の世界にも海軍士官学校がある。彼は呉海軍兵学校出身であるものの中退、霞ヶ浦で飛行機の基礎知識と技術を学び、教育を終えた後で呉の水上航空部隊に配属した。
因みにウィリアムもアメリカのアナポリス兵学校出身、無事に卒業して航空学校で飛行機の技術を学びハワイに配属した。
「航海実習はあるのですか?」
「勿論!入学して直ぐに海洋実習があります。艦に1クラス30人が乗艦して共に学びます」
「……大体、私が学んだ学校と同じカリキュラムだな~」
「向こうの世界の学校ですか?」
「「えっ!?」」
古庄からとんでもない言葉を聞いて、二人は驚愕する。
「えっ!?……じゃあ俺たちが別の世界から来たことと……」
「我々の航空部隊と機体もですか!?」
「えぇ!9年前の横須賀上空の飛行物体の飛来とあなた方の水上飛行機のことも」
「「えぇ…!?」」
古庄は新一郎たちの異世界の転移と飛行機の件を知っていたので、機密情報が漏れていると驚いていた。
「大丈夫!私は機密に触れる資格を持っています。」
「そうですか…よかった…」
古庄は機密に触れる資格を持っていたため、知った新一郎は安心して見学を続行した。
「そして、我が校の本校舎です。」
新一郎は、校舎を見て驚愕する。
「(これが校舎か…俺が一時学んだ江田島の海軍兵学校の校舎に似ているが、懐かしいな…)」
赤レンガ造りの校舎は、新一郎とかつての戦友、厚木十三が学んだ海軍兵学校の校舎に似ており、どこからか懐かしく感じた。
「沖田さん、どうしたのですか?」
「いえ、……私が学んだ兵学校の校舎に似ていたので……それに、赤レンガの校舎は異世界と言えども、伝統は受け継がれているのですね」
校舎に入ると、懐かしい江田島の兵学校の廊下と教室。ウィリアムは、教室のドアをそっと覗くと、そこには、幾人の可愛いセーラー制服を着た女子生徒が懸命に勉強をしていた。
そして、校舎を出て講堂へと向かう。
横須賀女子海洋学校、講堂
「此処が講堂です!」
「こ、これは!?」
この講堂も向こうの江田島と同じ鉄骨煉瓦石造の大講堂によく似ているが、中は、まるでスポーツを行うスタジアム見たいな作りになっており、下には、作戦図案の様なテーブル機器が3つ設置されていた。
ウィリアムは講堂の中を見ながら、そのテーブル機器を間近で見る。
「これは、一体何ですか?」
「これは図上演習用のシュミレーションシステム機器です。」
このテーブル機器は、図上演習用のシュミレーションシステム機器の様だ。
「図上演習!?」
ウィリアムは、図上演習用の機器だと聞き、古庄が手本として機器を操作して見た。
機器を操作すると画面には、演習に使う艦艇や編成が記載されていた。
「空母が無い…まぁ当然か!」
新一郎は、演習に使う艦艇の中に空母が無い事に気づく。
この世界では、航空機が無いので、空母を基準とした図上演習が無いのだろうと新一郎は理解する。
二人は、講堂を後にし、先に向かう。
横須賀女子海洋学校、地下ドック
そして、古庄に案内されエレベーターに乗って地下に降りた。
「今度は何ですか?」
「見てからのお楽しみです!」
そう言うとエレベーターは地下に到着して、エレベーターから出た新一郎とウィリアムが見た光景は
「これは!?…地下にこんな施設が有るなんて…」
二人が見た光景は、横須賀女子海洋学校の地下にある内部ドックだった。
「驚きましたか?」
「「え、ええ…」」
広大な広さの内部ドックには、多種多様な艦がドック入りをしており、修復点検作業が行われていた。
「このドックは、教育艦が浦賀水道を通る民間船や貨物船やタンカーなどの邪魔にならない様に作られ…学生達に自分が乗る艦の点検もできる様に最高の施設を用意してます」
「こんな施設は、私達の世界にはない!…雅に先を行っている!」
「地下の秘密基地みたいだ…」
航空技術や光学技術は、二人の世界が先を行ってるが、フロート技術やこの様な施設を作る技術は、あまり無い。
「では次に行きますか?」
「そ、そうですね…」
そう言うと次に行ったのは、学生寮で此処も立派で二人も関心してた。
横須賀女子海洋学校、食堂
見学を終えた新一郎とウィリアムは、学生食堂で古庄と昼食をとる。
「今回の学校見学は、如何でしたか?」
「あぁ。ブルーマーメイドの養成校あって、中々良い学校ですね…まあ、流石に私達の学校には及びませんけど…施設の一部などが雅に未来的な物ばかりで驚きました」
確かに授業や実習のカリキュラムについては、日米軍の養成校と甲乙着け難く、先に見た地下ドックなどは、日米軍の養成学校にはない施設ばかりがある。
「それは、良かったですね!」
「はい!」
3人は、学生食堂で注文した横須賀女子特製カレーを食べる。
「新一郎、旨いなぁ」
「あぁ、どの世界でもカレーは共通するな」
「…」
古庄がカレーを食べる新一郎をジッと見る。
「あれ…?何か付いてますか?」
「真霜が聞いた通りの人ね!」
「何がですか?」
「気にしなくて良いわ!大した事じゃないから」
「はぁ…?」
新一郎は首を傾げ、カレーを堪能していると薫は個人的な質問をした。
「ねぇ、沖田さん。横須賀は以前に来たことは?」
「いえ、今回が初めてです。俺のいた世界で横須賀は、戦闘機部隊の専門場。俺の弟と同期は、横須賀で配属しました。」
「弟さんが?…あなたはどこで配属を…?」
「広島の呉です。水上偵察機部隊専門のパイロットとして、配属してました。」
「…呉で………」
ブルーマーメイドの世界では、呉の女子海洋学校はエリート中のエリート。
どこで反応したのか、薫の胸は高鳴った。
和やかに食している時、新一郎の足元に丸々としたどら猫が近づいて座った。
「ん…猫?
」
「なんか丸々しいな…」
「あぁ、その猫は学園に住み着いている五十六です」
「五十六…?…まさか、山本五十六元帥が猫になっちゃった~♪なんて……」
「山本五十六…?」
薫が首を傾げた時だったー
「『その通りだ沖田君』」
「へ…?…沖田君?誰だ……俺を呼んだのは?」
「新一郎、確かに僕も聞こえたぞ?」
「え?…誰も呼んでないわよ沖田さん」
「あれ~…おかしいな…確かに誰かが呼んだんだが…気のせいかな…」
頭を掻きながら、食堂のテーブルには誰もいなかった。
「『気のせいじゃないぞ沖田君!君の足元だ!』」
「え、足元…?」
「…五十六…?…山本五十六…っ!!…山本元帥ですか…!?」
正体は新一郎の足元にいるどら猫の五十六だった。
「『そうとも沖田君、ラバウルで君たち六勇士と整備、給士。そして現地人の少女と、アイヌの郷土料理チタタプは絶品だだったな~♪』」
「…っ!!」
新一郎は内心驚いた。
山本五十六長官が戦死前夜の1943年4月17日、ラバウル基地の辺鄙な兵舎付近で水上機部隊の虎雄と幸吉、零戦パイロットの十三と洋介、弟の進次郎。整備、給仕のトチローとトチコの兄妹。そして、現地人のサンとチタタプを食した当時、連合艦隊司令長官、山本五十六が賞味したのであった。
「長官……なんで猫になったのですか……」
「『それだ沖田君、わたしはあのブーゲンビル上空で、米軍の待ち伏せで殺された。だが、目が覚めたとたん猫の姿になっていたのだよ!』」
「猫に…ですか…」
「『はははっ、猫の姿になっても悪くは無い、自由気ままに過ごせられるからな~♪』」
「はははっ……自由気ままか~」
五十六元帥の言葉で新一郎は苦笑した。五十六は次の言葉を述べた。
「『そこでだか沖田、この世界の日本は水没して航空機が存在しないことに驚いた。私が亡くなった後に日本はどうなった?』」
「はっ!…実は…」
山本五十六連合艦隊司令長官が亡くなった後、1944年にマリアナ沖海戦とフィリピン決戦で大敗。
海軍の象徴たる戦艦大和と武蔵が撃沈された。そして、日本の懐である硫黄島と沖縄が占領された。
「B-29という重爆撃機で母国は灰塵、8月に新型の原子爆弾で広島と長崎が壊滅。ソビエトロシアの参戦。後からこの世界に来たトチローから聞きましたが15日に敗戦、戦争は終わりました。」
「『そうか……やはり大国に抵抗した結果か。君たち六勇士と兵士たちはよく戦ってくれた。礼を言う』」
「…長官…ですが…ラバウル六勇士、隊長の厚木十三はフィリピンで戦死。弟の進次郎を生かす為に桜井洋介も北方の戦いで戦死。トチコさんも、フィリピン近海で行方不明に……」
「『そうか、…気の毒なことを言って申し訳ない…』」
「いえ、長官。あの大戦で戦って悔やんだこともありますが、この世界に来て良かったこともあります。幸吉とトチロー、そしてそこにいるウィリアムと彼の家族と一人の日系人、フランス人の従軍看護婦もいます。私の愛機零観と彼らの哨戒機のPBYカタリナを共同で配備、ライジングイーグルを結成しました!」
「『そうか、…もう一人のパイロットはどうした…?』」
「…大賀虎雄少尉ですが…奴はこの世界で出現したものの行方不明です…」
「『うむ…大賀少尉を発見次第、新部隊『ライジングイーグル』に編入させよ!』」
「はっ!!」
新一郎はどら猫の五十六に対して敬礼をした。するとー
「『…ところで沖田君、この世界にやって来て好きな娘はできたかね~?』」
「すっ……好きな娘ですか〜!?///」
その言葉を聞いた新一郎は赤面した。
あれから新一郎はブルーマーメイドの隊員から好意を抱かれていた。
主に、平賀倫子と同僚の福内典子。スキッパー部隊隊員の岸間菫、横須賀女子海洋学校の古庄薫。そして、宗谷真霜であった。
「新一郎さんとウィリアムさん、なにしているんだろうな~トムさん…」
「さぁな…」
時間と場所を戻し、幸吉とトムが敷地内で見張っている時、横須賀女子海洋学校の校門を賑やかなグループがくぐり抜けた。
「ほら、早くーっ!!」
「待ってよ~っ!!」
「試験に遅刻とか洒落になんないーっ!!走れ走れー!」
「時間はまだ大丈夫だってば~!!」
「汗かいちゃった」
「折角朝シャワー浴びたのに~」
「…ん?」
にぎやかな声が聞こえ、トムと幸吉が振り向くと慌てて受験会場に飛び込んできた四人の受験生が居た。
「も~レオちゃんてば、大丈夫っ言っても止まらないんだもん」
青みがかった黒髪、広田空にツーサイドアップの髪型の女の子、若狭麗緒が息を整えながら愚痴るかのように言う。
「もとはと言えば留奈がお寝坊するからでしょー!こっちも被害者だよ」
麗緒が急いでいた理由を言う。
原因はツーサイドアップの髪型の女の子、駿河留奈が寝坊したのが原因の様だ。
「あ~全力疾走したから数式忘れたかも…せっかく暗記したのに~」
赤いリボンを着けた、カチューシャをつけた空が息を整えながら嘆く。
「あっつ〜い…コート脱いじゃおうかしら…?」
四人の中でも背の高いサイドテールの女の子、伊勢桜良は手で仰ぎながらコートを脱ごうとする。
「サクラ、エロいからやめな」
「えっ!?」
「色っぽ~い」
コートを脱がせるのを止めたエロいと言われ、ショックを受けているような感じの背の高いサイドテールの伊勢桜良。
四人はワイワイと談笑しながら会場の中へと入っていった。どうやら、同じ中学の同期の様だ。それを見た二人は
「に、にぎやかな4人組だな……」
「そ、そうですね……」
「ま、まあ、緊張しすぎた雰囲気だらけだし、そう言う感じもいいんじゃないか~?」
「トムさん、油断は禁物ですよ…」
「人がたくさん…みんなわたしと同じ受験生かなぁ。さすがブルーマーメイドの登竜門...! よーし、今日は頑張るぞーっ!なんとかなるっ!」
その中のツインテールをした少女、岬明乃が気合いを入れる。
その後、新一郎とウィリアムはライジング=六勇士、の隊員である幸吉とトチローに知らせ、山本五十六がどら猫になっていたことに新一郎同様に驚愕した。