ハイスクール・フリート   ~空を翔る鳶と海虎~   作:鷹と狼

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第8話 試験の結果と祝い

 

 

 

受験から数日後、通常の高校と違い入学試験から僅かな期間で合格発表をするのは、この高校独自のシステム。

 

入学試験の成績によりクラスを決める為、早急に入学予定者を集める必要があったのだ。

 

更に合格には補欠合格もあり、横須賀女子学校に入学の意志がある者には直ぐに手続きを取ってもらう必要がある。

 

そして合格発表を掲示する掲示板の前には受験生が合格か否かを見に来ていた。あるものは受かって喜んだり泣く子もいた。

 

そして不合格だった子はまるでこの世の終わりみたいな表情をして家に帰っていった。

 

岬明乃は横須賀女子海洋学校の受験結果の合格番号、100313を探した。

 

 

「(やった!合格したよ、もかちゃん…虎ちゃん…)」

 

 

明乃は合格をしたことを心の中で憂いした。

 

小学校の卒業まで施設で暮らした親友と、呉のフロート公園で出会った少年の名前を。

 

 

一方、トムと幸吉は合格発表を見に来た受験生たちを見ていた。

 

 

「…飛行学校時代を思い出すな…」

 

 

「オラもそうですよ~入れるだけでも奇跡ですよ…」

 

トム自身も航空学生のころ、日系アメリカ人の航空訓練生になれるかどうかではらはらしたのを覚えている。航空学生の合格率は非常に低い。

 

トム自身も無事に合格し、卒業できたことは今でも奇跡だと思っている。

 

そして、幸吉も操縦士になるためにも懸命に頑張ったものの試験に落第。だが、空を飛ぶことは諦めず、天測航法と敵機敵艦種判別、電信と暗号文作製を叩き込んで成績がピカ一。卒業後はラバウルに転属した。するとー

 

 

「うわあぁーーーーん!!!」

 

 

「「 ん? 」」

 

 

急に誰かが泣き叫ぶ声が聞こえたかと思ったら、一人の少女がトムと幸吉の横を走り抜けていく。

 

 

「人間なんてやめてやるぅ~!!」

 

 

「待て、留奈!!」

 

 

「留奈、人間やめるってよ!?」

 

 

「意味が分からん!!」

 

 

走り抜いていった少女を追って、三人の少女達が後を追いかけていく。

 

 

「な、なんだ?」

 

 

突然の出来事にトムは首を傾げ、幸吉も唖然としていた。

 

 

「あれ?確かあの先て海だよな……まさか!?」

 

 

「あ、ちょっとトムさん!」

 

 

トムは何か悟ったのか、急いで先ほどの少女を追いかける。

そしてそれに続いて幸吉とマロンたちも走り出すのであった。そして留奈は桟橋の方へ走り出す

 

 

「私は今日からお魚として生きていくー!!」

 

 

「何言ってんだ!!お前は肺呼吸だろう!?」

 

 

「お魚さんなめんな!!」

 

 

後を追いかける少女らもなんかズレている事を言う。

 

 

「母なる海よ!!」

 

 

そう言って彼女は桟橋から海へと飛び込んだのだが、今は二月の中旬、海は氷のように冷たかった

 

 

「あばばば!!冷たいし!!寒いよ!!助けて!!母も私を拒絶するのか!!だ、誰か助けて!!」

 

 

自ら飛び込んだのに助けを求める留奈。すると

 

 

「この馬鹿!命を粗末にするな!!」

 

 

と、そこへトムが海へ飛び込み留奈を抱えて、岸ヘとあげる。そして留奈の友達がやってきた。

 

 

「ああ、警備員さん。ありがとうございます」

 

 

「お騒がせしました」

 

 

と、トムに礼を言うとトムと幸吉は

 

 

「大丈夫か!?」

 

 

「全く、何があったか知らないが、まだ若いのに命を粗末にするなよ」

 

 

「いや、若いってあんたも若いじゃん」

 

 

トムの言葉に麗緒が突っ込む。すると

 

 

「さ、寒い~‥‥」

 

 

冬の横須賀の海に飛び込んだ留奈は、寒さで身体をガタガタと震わせる。

 

 

「もぉ~ずぶ濡れじゃない」

 

 

桜良がハンカチで留奈の身体を拭くが、焼け石に水である。

 

 

「どこかで乾かさないと風邪ひいちゃうよ」

 

空が心配そうに言う。そこへ

 

 

「何でぇ、誰かと思えば実技試験で隣に居た四人組じゃねぇか」

 

 

マロンたち4人が追いつく

 

 

「あっ、ちっちゃい凄い人」

 

 

マロンの声に気づいた4人が振り返る。

 

 

「ちっちゃいは余計だ!!」

 

 

すると、菱餅の髪飾りの娘こと杵崎ほまれが

 

 

「あの‥‥よかったら、家の船で休んでいきます?そのままだと風邪を引いてしまうので‥‥警備員さんたちも一緒にどうですか?」

 

 

「ああ、僕も彼女がなぜ海に飛び込んだか事情を聴きたいからな」

 

 

ほまれの誘いにトムと幸吉、留奈たちは屋台船に世話になる。そして船の中で 

 

 

「とりあえず、全部脱げ」

 

 

マロンは留奈の着ている服を脱衣と聞いた幸吉は

 

 

「え?お嬢ちゃん。それって追剥か?それとも…」

 

 

「変態!?」

 

 

「違わい!!濡れている服なら脱いだ方がマシだってんでい!!」

 

 

怒ってそう言うと皆は納得し、幸吉は立ち上がって外套を脱いだ。

 

 

「とりあえず、オラの外套を着て身体を暖めろ!」

 

 

「…あ…ありがとう…」

 

 

「トムさん、ちょっと着替えを取りに行きます!」

 

 

「あぁ、頼むよ幸吉」

 

 

幸吉は警備員室へ向かい、衣服を着替えを取りに向かった。

 

 

「やっぱり…受験に落ちたから海に身を投げようと?」

 

 

「うっ…ごめんなさい」

 

 

「はーい、和菓子屋杵﨑特製蜂蜜生姜ゆず湯~」

 

 

「ありがとう~…」

 

 

「警備員さん二人にもサービスです~」

 

 

「あ、ありがとうございます。」

 

 

「ありがとうございます。」

 

 

幸吉は警備員室から予備の制服に着替えた留奈は警備員であるトムと幸吉から事情を聴いていた。

 

 

「でもさ、それで魚になろうなんて、すっとこどっこいかオメェは?」 

 

マロンは事情を聞いてあきれた表情をすると洋美が

 

 

「でも下手をしたらマロンも海に飛び込みそうね……」

 

 

「「何となくそんな気がするわ」」

 

 

麗緒と空も、洋美の意見に同調した。

 

 

「するか!!」

 

 

麻侖は必死に否定する。するとトムは

 

 

「でも命は大事にしなよ。生きていればまたチャンスはつかめるんだからさ」

 

 

とトムは留奈を励ますが

 

 

「はぁ〜お終いだ。いくら積めば裏口入学できるかな?」 

 

 

「それ犯罪だぞ!?人生詰む気か!?」

 

 

「金を積むより徳を積め!徳を!」

 

 

トムとマロンはとんでもないことを言う留奈に突っ込む。もう打つ手はないかと絶望する留奈に、幸吉はあることに気づいた。

 

 

「ん?そう言えば…君は補欠合格の掲示板は見たの?」

 

 

「…え?補欠合格?」

 

 

「ああ。合格者のほかに補欠合格っていうのがあるぞ。見てないのか?」

 

 

留奈は幸吉の言葉にぽかんとするとほまれが

 

 

「補欠合格者は通常の合格者とは別の場所に貼り出してあったと思ったけど‥‥」

 

 

「ああ、あそこなら合格発表が掲示されている場所から、100メートル離れた場所にあるな」

 

 

「うそっ!!見ていない!!」

 

 

ほまれとトムの言葉に留奈は驚きの声を上げマロンが 

 

 

「なにぃ!!全員立て!!今すぐ見に行くぞ!!」

 

 

「「「「 イエッサー 」」」」

 

 

「随分息が合っているな」

 

 

「そうですね…」

 

 

息の合った行動にトムと幸吉、あかねが苦笑してそう言うのであった。

そして留奈は補欠合格者発表の掲示板を見ると自分の受験番号が張られてあった。

 

 

「100005…あれだ!」

 

 

「あった‥‥ほんとうにあった!!」

 

 

「よかったね」

 

 

留奈は補欠とは言え、合格して居た事に桜良に抱きついて喜んだ。

 

 

「ってか、補欠合格ってなに?」 

 

 

若狭が補欠合格とは何かと尋ねるとトムは

 

 

「まあ簡単に言えば、合格者が辞退した時の穴埋めだな。繰り上がり合格が来れば学校から連絡が来るぞ」

 

 

「ほんと!?私にも希望が!ありがとう警備員さん!」

 

 

「君は補欠と言えども、最上位だね!」

 

 

横須賀女子に入れるチャンスがあり、最上位と知った留奈はトムに礼を言う中、洋美は

 

 

「でも、そうそう辞退者何て出ないと思うけどね‥‥」

 

 

「まあまあクロちゃん。無粋な事は言いっこなしでぇい」

 

黒木の言葉に麻論はそう制す。その言葉に黒木は喜ぶ留奈や友達を見て

 

「‥‥そうね

 

 

と、ポツリとそう呟いた。その後、留奈たちはもう一度トムと幸吉に礼を言い、マロンたちとともに帰ったのであった。

 

 

 

そして、宗谷ましろの受験の結果、合格した。

 

 

 

あれから数日後、トムと幸吉は学園の警備員の勤務を終え、帰宅の時だった。

 

 

「やっと終えましたねぇ~」

 

 

「あぁ、ましろさんも合格してよかったな~!」

 

宗谷家の令嬢、ましろは横女の試験に合格した。

 

 

今夜は、カタリナのメンバーとトチローが宗谷家に招かれたのであった。

 

 

「ましろさんの合格祝いに何か買って行こう!」

 

 

「はい、ん…?」

 

 

幸吉の目に止まったのは、和菓子のれんを掛けた一艘の小舟だった。

 

 

「へ〜車で移動営業する食べ物屋は知っているけど、船の移動営業なんて初めて見るな。これも海洋国家ならではかな?」

 

 

二人は和菓子屋に向かって手を振った。

 

 

「いらっしゃ~い…あ!」

 

 

「ん、君たちは!?」

 

 

驚いたことに、中の店員はあの受験で合格した蜜柑の髪飾りの少女と双子の姉妹であった。

 

 

「伊良子美甘です。」

 

 

「わたしは杵﨑ほまれです。」

 

 

「そして、妹のあかねです。」

 

 

「オラは金城幸吉です。」

 

 

「トム・K・五十嵐です。」

 

 

そして、屋台船の客席では柳原麻侖と黒木洋美、若狭麗緒と駿河留奈、伊勢桜良と広田空のメンバーが合格の祝賀会を行っていた。

 

トムと幸吉はその場で簡素な紹介を済ませた。

 

 

「へぇ~、トムさんは日本人だけどアメリカ人なんだ~」

 

 

「幸吉さんはアイヌの人?弓矢で狩したことあるの?」

 

 

麗緒と留奈の質問を色々と訊かれた時、トムはとっさに腕時計の時間を確認した。

 

 

「…もう、こんな時間か~では我々は失礼します!」

 

 

「おぅっ、もう少し居てくれねぇのか!?」

 

 

「居たいのは山々だが、宗谷家へ行かなければ!」

 

 

「っ!?なんですって!」

 

 

洋美は幸吉が聴いた言葉に反応した。二人は麻侖と美甘、洋美に背を向けた。

 

 

「あっ!ちょっと、…金城さん、五十嵐さん!宗谷さんと何の……」

 

 

「どこに行くんでぃ~?クロちゃん!」

 

 

洋美は追いかけようとした時、麻侖に抑えつけられ行けずじまいになった。

 

 

宗谷家では、末っ子のましろが横須賀女子海洋学校に合格したことを、学校で忙しい母親の真雪を除き、姉の真霜と真冬。

 

ライジングイーグルのメンバーが祝した。

 

 

「ましろさん、合格おめでとう!」

 

 

「おめでとうございます!」

 

 

「おめでとう、ましろちゃん」

 

 

「ましろさん、おめでとうございます」

 

 

「ましろちゃん、合格おめでとうございます!」

 

 

「「 お姉ちゃん、おめでとう!! 」」

 

 

「ましろさん、おめでとう!」

 

 

因みにウィリアムとキャサリン、トムとシャルロットに関しては真雪がブルーマーメイド時代、真霜と真冬がハワイの研修で知り合ったと説明を受けた。

 

 

「お母さんと姉さんたちの知り合いが、わざわざハワイから来て祝いの言葉を述べてくれて、大変感謝しています!私は宗谷家の女性として、横須賀女子海洋学校で海に関して知識を採り入れて必ず海に生き、海を守り、海を往く。ブルーマーメイドになります!!」

 

 

「いよっ!いい演説だった!ましろ嬢ちゃん!ヒック…うぃ~」

 

 

整備員のトチローは酒瓶を片手に持ちながら酔いしれながら拍手を贈り、みんなもトチローに合わせて拍手を贈った。

 

その光景を見たましろは恥ずかしながら照れ、赤面した。

 

 

「うぅっ…///」

 

 

「相変わらず酔っているなトチロー。妹のトチコさんが見れば、怒られるぞぉ~」

 

 

「「「 はっはっはっ! 」」」

 

 

新一郎はそう言いつつ、みんなで笑い合い、テーブルに並べられたキャサリンの手料理を堪能した。時にグラスに入った横須賀の地酒を一口飲みながら思い出した。

 

 

東南アジア攻略を終結後、ニューブリテン島のラバウル基地配属と同時に家族からの手紙が届けられた。記した内容は、弟の進次郎が戦闘機パイロットに合格したことであった。

 

 

「(弟の進次郎が予科練と戦闘機パイロットに合格した時も、そんな光景だったんだろうなぁ~)」

 

 

呉、孤児施設の食堂にて、岬明乃が横須賀女子海洋学校の受験に合格したことを祝っていた。

 

 

「おめでとう明乃ちゃん」

 

 

「ありがとうございます、雫さん。」

 

 

「もえかちゃんと再会するのが楽しみね。」

 

 

「はい、もかちゃんと会うのがとても楽しみです。そして、艦で家族を作ります。海に生き、海を守り、海を往く。それがブルーマーメイドになります!(見ていてね、虎ちゃん)」

 

 

食事を終えた明乃はバルコニーに赴き、夜空を見上げながら海で出会った男の名前を呟いた。

 

 

 

 

 

 

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