ハイスクール・フリート   ~空を翔る鳶と海虎~   作:鷹と狼

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第9話 真霜と新一郎

 

 

 

2月中旬、愛知県名古屋 万里小路重工業ー

 

 

トチローはライジングイーグルが使用する航空機の部品不足が懸念されて、海洋安全整備局の本部長、南方勝子と真霜の推薦により零観とカタリナに航空機で移動した。

 

万里小路重工業を訪問。赴いたのはパイロットの沖田新一郎とウィリアム・スパロウ。整備員の秋山敏郎。

 

監督官の宗谷真霜と技師の浦賀鈴留は取締役の方と会談した。

 

 

工業、客間室ー

 

 

「…部品製造はお任せ下さい。引き換えにライジングイーグル様のログインしたIDはこの通り万里小路社が秘密裏にお預かりします」

 

 

「いつも、新型のスキッパー配備を大変感謝しています」

 

 

「…いえいえ、ブルーマーメイドとホワイトドルフィンが海の安全を守ってくれているおかげです。しかしながら、新設したイーグル様の航空機。空想のだった産物が、実物を目にするとは、未だに信じられないです」

 

 

「はははっ!我々も同じ気持ちです」 

 

 

「メタンハイドレートの採掘で、日本が沈下したなんて、我々は未だに半信半疑です。それに、あの機体は女子海洋学校の艦艇同様に、戦争で使いたくない、最小限のみに納めたいのです」 

 

 

新一郎とウィリアムたちも、万里小路重工の創業者一族で、現在も東海地方の居住用フロートの大部分の建造を担い、海洋安全整備局が使用するスキッパー製造のおかげで成り立っている。

 

 

「楓」

 

 

「はい、お父様」

 

 

取締役が手を鳴らしたと同時に、髪が美しく、おっとりとして礼儀正しい少女が入室した。

 

 

「はぁ~別嬪だなぁ~」

 

 

「美しいお嬢さんですね」

 

 

「ありがとうございます。お客様。わたくしは万里小路楓です」

 

 

「私の一人娘です。万里小路家に恥じない嗜みを施しています」

 

 

「…これが、…大和撫子か」

 

 

ウィリアムは心底驚いた。

 

 

「あの、わたくしは弦楽器が得意ですので、何かリクエストしますか?」

 

 

楓はイーグルたちにリクエストを述べ、トチローが真っ先にてを挙げた。

 

 

「じゃあ嬢ちゃん、椰子の実を頼む!」

 

 

「椰子の実か~、トラック諸島以来だな♪」

 

 

「畏まりました」

 

 

楓は所持しているヴァイオリンを演奏、新一郎とウィリアム、トチローは目を閉じ、耳を傾けた。

 

彼らの脳裏に、嘗ての東南アジアとハワイ、ラバウルやポートモレスビーの暮らしが懐かしく、一粒の涙を流した。

 

演奏が終わると、楓はお辞儀をして、 彼らは拍手した。

 

 

「いかがですか?」

 

 

「あ…あぁ…とても素晴らしかった…」

 

 

「全くです、横須賀で勤務しているキャサリンたちに聴かしてあげたかったな。」

 

 

「そうだなウィリアム…おれっちは、あの仲間たちに聴かしてやりてぇぜ…」

 

 

万里小路楓に関しては受験を終えたばかりであり、合格した学園が横須賀女子海洋学校であった。

 

 

「それは、おめでとうございます」

 

 

「そりゃめでてぇなぁ〜!しかし嬢ちゃん、なんのために入学を?」

 

 

「強いて言うなら…わたくしは音楽家に、音楽家は旅をするものなのです♪」

 

 

「「「 なるほど~ 」」」

 

 

新一郎たちはどことなく、納得した。

 

 

重工業、湾岸波止場地区ー

 

 

楓は自ら新一郎たち4人を見送りに赴いた。

 

そして彼女は零観とカタリナを見て、心おきなく驚いた。

 

 

「これが、横須賀の都市伝説に聞く空を飛ぶスキッパー…」

 

 

「そう、ブルーマーの連中から聞くが、それは別の機体だ。しかしお嬢さん、我々の機体に関しては最重要機密だ。父親以外、内密に頼みたい」

 

 

「畏まりました。ライジングイーグル様の武運、お祈り申し上げます」

 

 

「ありがとう!」

 

 

新一郎とウィリアム、トチローは楓に対して敬礼。それぞれの機体に搭乗、横須賀に向けて、闇夜の空へ飛行した。

 

 

 

 

 

零観 新一郎、真霜ペアー

 

 

 

 

「あ〜終わった終わったぁ〜…さて、家に帰って…食事と風呂に入って…」

 

 

「新一郎ぉ!!」

 

 

「わわっ!?」

 

 

零観の操縦桿を握る新一郎は、後部座席に居座る真霜からの伝声管の怒鳴り声で慌て、バランスを崩した。

 

 

「きゃっ!?」

 

 

「あぁっ、真霜!すまん!えっと…なんの用だ…?」

 

 

「明日は私の大事な日であるから、早く帰ってきてね!」

 

 

「あ、あぁ…明日もまた、忙しいんだなぁ~」

 

 

新一郎はこの世界に来てから、ライジングイーグルを結成して重大な役職に就いた為に、常に忙しさに身を置いていた。

 

海上安全管理局の役人との対面やブルーマーメイドとの海上訓練に参加。夜間のみの哨戒飛行を行う。

 

新一郎はそう思いつつ、横須賀基地に帰還した。

 

 

 

宗谷家、台所ー

 

 

 

「ふんふん~♪ふ~ん♪」

 

 

仕事で疲れた新一郎と幸吉、ましろが寝込む時間に、真霜は機嫌よく、台所で何かを調理していた。

 

 

「ただいま〜真霜姉〜!台所でなにを?…ん?おっチョコじゃん♪いただくぜ~♪」

 

 

真冬が勤務を終えて帰宅、台所にチョコレートが置いてあり、彼女は手を伸ばした。

 

 

 

バシッ 

 

 

「真冬~…このチョコに手を出したら許さないわよぉ~」

 

 

「ひっ…」

 

 

真霜の口が微笑んでも、目は笑っていない。真冬はその顔を見て、身体が震えていた。

 

 

「わわっ、悪かった悪かったよ真霜姉~。それにそのチョコでなにしているんだ?」

 

 

「ふふふ~♪それは、明日のために使用する兵器よ♪」

 

 

 

 

 

翌日、2月14日ー

 

 

 

 

 

新一郎と幸吉は宗谷家からブルーマーメイド基地に出勤。基地の門にくぐり抜けた時ー

 

 

「沖田さーん!」

 

 

「ん…?わわっ!?」

 

 

新一郎を待ち伏せしていたブルーマーメイド隊員たちが囲い込んだ。

 

 

「沖田さぁ~ん、私のチョコを受け取ってください!」

 

 

「私の受け取ってください!」

 

 

「私も!」

 

 

「私も~!!」

 

 

「新一郎さん!新一郎さん!!」

 

 

幸吉はブルーマー隊員の蚊帳の外に離され、何度も新一郎を呼んだ。

 

そして、新一郎はブルーマー隊員たちの足元にて匍匐前進。

 

 

「ぷはぁっ!…幸吉、離脱するぞ!」

 

 

「了解!」

 

 

新一郎と幸吉はブルーマー隊員の群集から離脱。何とかイーグル隊の格納庫へたどり着いた。

 

 

「バレンタイン?」

 

 

「そうです。バレンタインは女性が男性へのチョコレートを贈る西洋文化の習慣です」

 

 

新一郎と幸吉はトムからバレンタインの解説を受けた。

 

 

「なるほど~」

 

 

「そして、大尉と幸吉はブルーマー隊員から貰ったのですか?」

 

 

「あ、いや……わからなかったから……」

 

 

「なら、あそこの木箱に入れてありますよ」

 

 

トムが指差す方向に5つの木箱があった。それぞれウィリアム、トム、トチロー、幸吉、新一郎専用のバレンタイン箱を設置していた。

 

その中で一二を争うのがトムと新一郎のであった。

 

格納庫内部でカタリナをしていた整備トチローとウィリアムはチョコレートを貰ったことにウキウキした表情だった。

 

 

「ウィリアムは嬉しそうだなぁ~」

 

 

「はっはっはっ!私はそれ以上に、キャサリンのチョコは最高だからな♪」

 

 

「おれっちは、こんなに貰えるなんて夢見てぇぜ!相変わらずの、愛妻家だなぁ〜!おい、トム。おめぇはシャルロット嬢ちゃんから貰ったのか!?」

 

 

トチローはブルーマーメイド本部から書類を持って戻ってきたトムに尋問した。

 

 

「えぇ、彼女はパティシエでありますので、今日の任務が終えた後に食べるのが楽しみです!」

 

 

シャルロットは医療看護婦になる前、パティシエを嗜んでいたため、少しの心得を持っていた。彼女はキャサリンと共に他のイーグルの隊員たちにも配布して労っていた。

 

 

「へぇ~シャルロットさんがパティシエか……流石はフランスの貴族様ですねぇ~」

 

 

幸吉は感心している時ー

 

 

「『ガガ…沖田監督官、沖田監督官。至急、第4格納庫へ!』」

 

 

新一郎を呼ぶスピーカーが流れ、本人は気づいた。

 

 

「あっ、いかんいかん…今日は東京の海上安全管理局に関係者に会いに行かねばならん!そんじゃウィリアム、俺は行ってくる!」

 

 

「おう、あとは任せろ!」

 

 

新一郎はあとの現場の指揮をウィリアムに委ね、哨戒艇が待機する第4格納庫に向かい、真霜も管理局に行く用ができた為、先に新一郎がたどり着き、彼女を待った。

 

 

「ちょっと早すぎたかな?」

 

 

「沖田さーん!」

 

 

「あぁっ…岸間さんか」

 

 

本日の哨戒艇を操縦して同行する岸間が担当することになった。

 

 

すると

 

 

「沖田さん、…これ…わたしからの心からの気持ちです///」

 

 

岸間は新一郎に赤面しながら、心ばかりのバレンタインチョコを差し出した。

 

 

「あ、ありがとう、ははっ…嬉しいなぁ~///」

 

 

「新一郎っ!!」

 

 

岸間からのチョコを新一郎が受け取った時、真霜がやってきた。

 

 

「こんなところでなに隊員とデレデレしてるのよ!!」

 

 

「はっ!?俺がデレデレしてるって?馬鹿言え、女性からの贈り物を受け取っただけだ。何が悪い?」

 

 

二人は岸間が扱う哨戒艇に乗艇してもピリピリした雰囲気だった。互いに距離から離れ、背を向けながら景色を見ていた。

 

そして管理局に来て、新一郎は南方勝子本部長に初めて面会。

 

正式にライジングイーグルはブルーマーメイド、ホワイトドルフィンに続く第3の組織を創った。

 

 

 

 

ライジングイーグル、編入条件

 

 

1、航空機は戦争に使用不可の象徴として量産厳禁

 

 

2、パイロットと機体は最重要

 

 

3、編入の引き換えに部品を支給する事

 

 

だが、南方部長の視線からはどことなく新一郎と真霜の雰囲気は悪い状況であった。

 

 

 

「……あ、あの……沖田監督官の条件を受け入れますが……」

 

 

「えぇ、南方部長。我々イーグルがこの条件を正式に受け入れれば、あなた方の手となり足となり動きます!私は愛機と共に、マーメイド及びドルフィン艦を母艦として行動します。海に生き、海を守り、海を往く。そして、行方不明の同胞を探しに。では!」

 

 

「は…はい…」

 

 

新一郎は南方に対して海軍式の敬礼をして、管理局から退出。

 

再び哨戒艇に乗艇し、次の行き先は横須賀女子海洋学校へ向かった。

 

 

 

 

横須賀女子海洋学校ー

 

 

 

「新一郎!どこへ行くの!?」

 

 

「ん……俺は…学生艦を見学してくる。」

 

 

「じゃあ私も……っ!?」

 

 

真霜がバレンタインチョコを隠しながら近付いた時だった。

 

新一郎の目が変色して、真霜の身体は何処となく動くのを封じられた気分であった。

 

 

 

「…新一郎……」

 

 

 

学校、食堂ー

 

 

真霜はブルーマーメイドの先輩であり、海洋学校教官の古庄薫と相談した。

 

 

「…と、言うことなんです先輩…わたしは言い過ぎたのかしら……」

 

 

「そうなんだ…あなたは妬いていたのね…」

 

 

真霜は薫の言葉に頷いた。

 

 

するとー

 

 

「あなたが早く恋人にチョコを渡さないと、沖田さんは私が貰うわよ~♪」

 

 

「なっ…ちょっと先輩!?」

 

 

「あの人が飛行機のパイロットだけじゃなく、別世界で戦い抜いた歴戦の勇士として勇まく、魅力があるからね~///」

 

 

「…ぐぬぬ…先輩……」

 

 

薫は赤面になりながら、真霜に宣告した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、新一郎はチョコを口にしながら学校の整備ドッグで艦艇を見物しながら歩いていた。

 

 

「…武蔵、摩耶…」

 

 

あの地獄のフィリピン決戦で戦没した艦艇を眺めた。

 

 

「沖田さん!」

 

 

「…ん…岸間さんか」

 

 

「ライジングイーグルの整備局の正式加盟、おめでとうございます」

 

 

「あぁ…ありがとう」

 

 

岸間は新一郎たち航空機部隊が正式に加盟したことを祝辞した。

 

 

「あの、沖田さん///……わたしをあなたの花嫁候補になってもいいですか…?///」

 

 

「なっ…///」

 

 

「飛行機の興味はもちろん、わたしは沖田さんと会ってからその…胸が…///」

 

 

岸間の言葉を聞いて、新一郎は基地に帰投するまで口を開かなかった。

 

横須賀基地に帰投し、ウィリアム、トムのペアはカタリナの夜間哨戒に出動。零観は幸吉、トチローにより整備を受けた。

 

シャルロットは医療に熱心で、キャサリンは子守りをしながら食堂で調理していた。

 

新一郎は基地にいても任務がなかった為、宗谷家に戻り、自身の部屋から横須賀の夜空を眺めた。

 

 

「はぁ~…トチコさん…洋介…進次郎…十三…俺は…何の為に、この世界に来たんだろ……」

 

 

「新一郎~いる?」

 

 

新一郎がかつての戦友と弟を呟いている時、部屋の扉をノックして真霜が入室した。

 

 

「…真霜か……」

 

 

「新一郎…あの…基地であんな事言って…ごめんなさい…」

 

 

真霜は基地での出来事に謝罪した。

 

 

「いいんだ、…俺も…その…君を睨んでごめん…俺は戦場で勇敢なパイロットと言えども、今まで女性と付き合ったことのないヘボな男だ…」

 

 

新一郎は頬を掻きながら謝罪した。するとー

 

 

「これ、私からのバレンタインチョコ。貰ってくれますか?」

 

 

「真霜、ありがとう…///では頂きます♪…ん…美味しい~♪」

 

 

新一郎は真霜からのバレンタインチョコを受け取って、美味しく食べた。

 

だがー

 

「うぐっ……あがが…身体が……これ…は………」

 

 

チョコを食した新一郎の身体に睡魔が襲い、頭数を押さえながらベッドに倒れた。

 

 

「フフフ…如何やら効いてきたみたいね!」

 

 

目の前の真霜が突然、とんでもない事を口走った。

 

 

「き、効いてきた?…チョコに…何を入れたんだ!?」

 

 

新一郎としては、真霜が何を言っているのか理解できなかった。

 

 

「フフ…さっき、貴方が食べたチョコ!…その中に薬を入れたのよ!」

 

 

チョコの中に入っていたのは、媚薬惚れ薬であった。

 

 

「薬?…何でそんな毒物を入れたんだ!!」

 

 

 

新一郎は、何で媚薬を入れたのか、真霜に問う。 

 

 

「毒物とは失礼ね~決まっているじゃない!」

 

 

何と真霜は、新一郎と快楽をしようと企んでいたのだ。

 

 

「だ、抱く!?」

 

 

真霜の発言に思わず驚愕する。

 

 

「な…何…ふざけた事…言ってるんだ!?」

 

 

「ふざけて何もしてないわ!!私は、本当に貴方の事が好きなの!!」

 

 

「えっ…嘘だろ!?」

 

真霜が自分の事が好きだと聞き、新一郎は、つい冗談かと思ったが

 

 

「嘘じゃないわ!…もう、この気持ちが抑えられないの!///」

 

 

既に真霜の心は、新一郎がこの世界に来た時から好きで一杯になっていた。

 

 

真霜は、新一郎ににじり寄る。

 

 

「ふ、ふざけるな!!…俺は、君を抱く気は…く、くるな!」

 

 

薬で動けないとは言え、新一郎は、必死で拒む。

 

 

「抵抗しても無駄よ!」

 

 

だが、新一郎の抵抗も空しく、真霜は、新一郎と唇を交わした。

 

 

『んっ‥‥ちゅっ‥‥んむっ‥‥ちゅっ‥‥んんっ‥‥ちゅっ‥‥んんっ‥‥ちゅっ‥‥んっ‥‥んむっ‥‥///』

 

 

長い口付けをして、離れた時にお互いの口から唾液が糸となって、2人の唇の間に引かれた。

 

 

次の瞬間

 

 

「きゃっ!?」  

 

 

新一郎は、真霜をベットへと押し倒す。

 

 

「し、新一郎?」 

 

 

いきなりベットに押し倒された真霜は驚いた顔で新一郎を見る。 

 

「うう…仕返しだ!///」 

 

真霜を見た新一郎は唖然とした顔で、真霜を見降ろしていた。 

 

 

「はっ!?んちゅっ///」

 

 

真霜の目の前で、新一郎はキスを交わした。

 

 

その長い夜、真霜は、途端にけたたましい叫び声を上げて一気に絶頂する。

 

新一郎は、真霜がどれだけ悶えていようと構わず責め立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、夜が明けた。新一郎はベッドから目覚めると

 

 

「ふぁ~もう朝か?」

 

 

新一郎は目を覚まし、大あくびをしながら起きる。

 

 

「(ああ、酷い夢だった…雅か俺が真霜を犯すなんて…変な夢を見たもんだ!…あんなのは、ヘルブックだけで充分…)」

 

 

新一郎は、昨日、自分が真霜を犯した出来事が全部夢だと思っていた。

 

 

「(いや待てよ!…夢にしては現実過ぎる?…そもそも何で俺は裸なんだ?…もしかして!?)」 

 

 

新一郎は、恐る恐る毛布を捲ると、そこには、幸せそうに眠る真霜の姿があった。

 

 

「はっ!?」

 

 

それを見た瞬間、新一郎の顔は、真っ白になった。

 

 

「(夢じゃない!?…俺は、何て事をしたんだ!?ヘルブックみたいにやってしまった…んだ…)」

 

 

いくら真霜が自分を求めて迫って来たとはいえ、それを抑えられなかった自分は、堆本能に従って、大切な宗谷家の長女を傷物にした。

 

新一郎は、真霜にしてしまった事をつくづく後悔する。

とは言うものの、このまま真霜を此処に置いておく訳にはいかない。

 

 

「おい、宗谷真霜監督官!!…朝だぞ!!‥‥起きろ!!」

 

 

新一郎は、真霜を起こそうと身体を揺する。

 

すると

 

 

「う…ん…もう朝?」

 

 

真霜が瞼をゆっくりと開けて、目を覚ます。

 

 

「お‥おはよう宗谷監督官殿!」

 

「お…おはよ…///」

 

 

新一郎と真霜は、互いに挨拶をする。

 

 

「しんいちろう~‥‥んっ!」

 

 

「んっ!?///」

 

 

真霜は、寝ぼけた様に新一郎に迫り、新一郎の唇を奪う。

 

 

「んっ…ん、うふふ~♪ご馳走様!」

 

 

 

新一郎と口付けしたら、一気に覚醒した様子の真霜。

 

 

「ああ…!?」

 

 

真霜にまたしても奪われた事に新一郎は困惑する。

 

 

その後、真霜はベッドから降り、床に散らばった下着と衣服を着る。

 

 

真霜は衣服を着用して、新一郎は小声で話し、真霜を横抱きして真霜の部屋に送り届けた。

 

 

「…新一郎……///」

 

 

「///真霜…ぐっ…///」

 

 

新一郎は赤面しながら自身の部屋に戻り、何もなかったかの様に朝食を済ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基地に出勤して、イーグルの書斎室にて書類整理をしているものの、新一郎は真霜との関係で上の空だった。

 

 

「…郎…新一郎っ!!」

 

 

「はっ、ウィル…みんな、どうしたんだ?」

 

 

ウィリアム、トム、幸吉、トチローの4人が彼の机の前に現れた。

 

 

「どうしたんじゃねぇってんだ、新一郎!万里小路工業から零観、カタリナの部品が届いたから書類に判を押せってんでぃ!」

 

 

「あぁっすまんすまん……」

 

 

「どうしたんですか沖田さん?朝からぼーっとしてますよ…」

 

 

トムは新一郎の事が心配になって尋ねた。

 

 

「いや、……さて、愛機の整備を……」

 

 

「ですが新一郎さん、宗谷校長が面会を求めています」

 

 

「な、なんだってーっ!?」

 

 

「「「「 ん…? 」」」」

 

 

「いや、…お通ししろ…」

 

 

「了解です!」

 

 

真霜の母親である宗谷真雪が面会を求めてきた。それを聞いた新一郎の鼓動が高鳴った。

 

あの昨晩、真霜との熱い一夜を過ごしたことで悩みに悩み、4人が書斎室から退室した後、新一郎は書斎に閉まっているホルスターから南部十四年式拳銃を抜き出し、頭部に突き付けた。

 

 

「(真霜を傷付けてしまった…詫びて自決を…進次郎、幸吉、トチローすまん。…洋介…十三……今そっちに……)」

 

 

引き金を絞ろうとした時ー

 

 

「失礼します」

 

 

「はっ!どうぞ…」

 

 

扉のノックと同時に彼は咄嗟に拳銃を閉め、真雪を入室させ、彼女をソファに座らせた。

 

 

「沖田さん、昨晩は学校関連で忙しく会えませんでしたが、ライジングイーグルが正式に海上安全整備局の編入、おめでとうございます」

 

 

真雪は新一郎の前でお辞儀をした。

 

 

「あ、いえいえ。真雪さんのおかげです。我々を、飛行機と、扱うパイロットを保護してくれた事を心より感謝します!」

 

 

新一郎も深々と真雪に礼をした。すると、真雪は話題を変えた。

 

 

「あなたたちはブルーマーメイド、ホワイトドルフィンに関する貴重な組織。いずれ、パイロットの教育する学校と教員が必要になります」

 

 

「…つまり、…我々イーグルの…飛行機のパイロットを育成とのことですか?」

 

 

真雪はソファから立ち上がり、窓からカタリナと零観を眺めた。

 

 

「先のザ・ドラゴン号事件の一件であなた方は秘匿したと言えども、飛行機の重要性が高まっています。横須賀、呉、佐世保、舞鶴の学校に並ぶ育成学校を築きたいのです」

 

 

新一郎は目を閉じて考えた。この世界に転移してから色々とお世話になっている。彼らはよそ者と言えども、新一郎と幸吉は宗谷家に居候したり、ウィリアムたちは横須賀基地の隊員寮で世話をしていた。

 

ザ・ドラゴン号の一件以来、ブルーマーメイドとホワイトドルフィンの要請で哨戒飛行や物資運搬を行ったり、さらに万里小路工業から部品を調達することができたのは全て宗谷の協力があったからこそだった。

 

 

「……わかりました。今の我々はまだ産声を挙げた小さな組織です。いずれ、あなた方が猫の手を借りる優れたパイロットを育成する学校を築きます」

 

 

「ありがとうございます。沖田さん」

 

 

「いえ、私は今でも一宿一飯の恩義があります。土佐出身の意地と仁義です!」

 

 

「真雪さん、ようこそおいでに~♪新一郎さん、お疲れ様です♪」

 

 

その時、キャサリンが紅茶を持って書斎に入室。新一郎の言葉を聞いた真雪は微笑み、運命的な言葉を述べた。

 

 

「紅茶をありがとうキャサリンさん。それと沖田さん。私の娘、真霜を貰ってくれないかしら?」

 

 

「ぶはっ…っ!?なんですって…つまり…///」

 

 

彼女の一言で、新一郎は紅茶を吹きこぼした。

 

 

「ふふふ…沖田さんの嫁として貰って欲しいのです」

 

 

「…な…///」

 

 

「ウワアォ~♪新一郎さんと真霜さんが結婚を~♪」

 

 

新一郎は改めて驚愕して赤面、その言葉を聞いたキャサリンははしゃぎ、興奮した。だがー

 

 

「その話、お断りします…」

 

 

「なっ?」

 

 

「なんでですか?」

 

 

新一郎は身体が震えて歯噛みながら、理由を話した。

 

 

「…私は軍の航空部隊に入隊してから、国に命を捧げました。いつ、どんな任務でも死を覚悟して戦場で戦ってきました。今更、女性を貰う覚悟が…それに、身分が違い過ぎます。あなた方宗谷家は代々ブルーマーメイドの家系、私は高知の貧しい漁師村出身です。私が如何なる任務で死ねば、真霜さんが悲しみ、申し訳ありません…」

 

 

「新一郎さん、それはちょっと……」

 

 

キャサリンがフォローしようとした時、真雪に制止された。

 

 

「身分でもキャリアでも関係ありません。あなたがこの世界で初めての航空部隊の基礎を創った人間ならこそです。高知出身なら、坂本龍馬のように夜明けを変えてください」

 

 

坂本龍馬の名前を聞いてハッとした。

 

彼も高知出身で身分も下級武士。のちに脱藩して、お龍と結ばれ、新しい日本を創ったのだ。

 

 

「(…俺は龍馬と似た者同士かな…)あの…校長…真霜さんからの返事はありますか?」

 

 

「えぇ、あの娘の返事はOKよ。真霜からは新一郎以外の男性とは付き合いたくない、お母さんが私と新一郎の関係を引き裂くなら、宗谷の縁を切って駆け落ちしますと宣言したわ」

 

 

真霜は差し詰め、アンデルセンの童話に出てくる人魚姫みたいだった。

 

 

「…真雪さん、いえ…お義母さん、改めて真霜さんを嫁にください。必ずや彼女を、真霜さんを幸せにします」

 

 

新一郎は真雪の前でお辞儀をした。

 

 

「ありがとう、新一郎さん」

 

 

その言葉を聞いた真雪は微笑んだ。

 

 

その日の夕方、イーグルの隊員たちは一日の任務を終えた後、ブルーマーメイド行き着けの居酒屋『わかみや』にて、キャサリンはみんなに新一郎の出来事について報告した。

 

 

「「 おめでとう、新一郎おじちゃん! 」」

 

 

「いよっ、新一郎!おめぇやるなぁっ!」

 

 

「よかったですね、新一郎さん!」

 

 

「すごいですわね沖田さん♪」

 

 

「はっはっはっ!頑張れよ新一郎!」

 

 

「…あぁ…///…ありがとう…みんな…」

 

 

新一郎は一人一人の祝辞を受けて赤面。

 

だが彼はまだ、どことなく複雑そうな顔をしていた。

 

 

「…沖田さん、どうしたのですか…?」

 

 

「…トム……あの娘、真霜はまだ20代、俺は90過ぎのじじいだ。俺はこんな年の差でいいのか…別世界からきた俺が彼女の婿でいいのか…」

 

 

「新一郎は新一郎よ!」

 

 

「…!?」

 

 

新一郎たちの背後に真霜と真冬、平賀と福内、岸間のブルーマーメイド主要幹部一行が居酒屋に入店した。

 

 

「聞きましたよ沖田さん!あなたが宗谷監督官の婿になると」

 

 

「宗谷監督官はいいなぁ~、私も沖田さんを狙っていたのに!」

 

 

「え〜倫ちゃんも!わたしも沖田さんを狙っていたのよ~」

 

 

「倫ちゃん、典ちゃん、わたしもよ~…」

 

 

平賀、福内、岸間がぼやいている時だった。

 

 

「お前ら~、これ以上ぼやいていると、あたしが根性を注に…」

 

 

  カキイィン

 

 

真冬が根性注入という名の尻を揉もうとした時、彼女の目に火花が散った。原因はスパナを持ったトチローだった。

 

 

「バッキャロー!こんな破廉恥な行動は、海賊か強盗相手にしろってんだ!!べらぼうめぇ~!!」

 

 

「痛てぇ~…トチローさんよぉ…スパナで頭を殴ることはないだろ~」

 

 

真冬は頭を摩りながら涙目で訴えた。

 

 

「へっ、帝国海軍による真の根性注入をしようか~?」

 

 

「ひっ…」

 

 

真冬はスパナを所持したトチローの言葉で青ざめた。

 

この場にいた平賀たちから見れば、トチローは救世主に見え、酒場から笑いが溢れた。

 

 

「ふふふ~♪新一郎、よろしくね」

 

 

「…あぁ…真霜…///」

 

 

 

居酒屋『わかみや』にて、ライジングイーグルのパイロットと関係者と、ブルーマーメイドの人形たちは閉店時刻まで騒ぎ、宴会を行っていた。

 

 

 

 

 

 

 

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