「パパ~!ママ~!」
「こっちこっち~!」
「走ると転ぶわよ~!」
横須賀、主人のウィリアム・スパロウが久しぶりに休暇を取り、妻のキャサリンと双子のエマとエミリーの一家水入らずで諏訪大社に向かって階段を登っていた。
「はぁ~着いた~」
「これが諏訪大社…」
ウィルとキャサリンは財布から小銭を取り出して賽銭箱に入れて、鐘楼を鳴らし、手を合わせて祈り詣った。
「しかしながら、…この異世界の未来に来てから、この生活に馴れたな」
「えぇ、ハワイの暮らしも良かったけど、この世界の日本も暮らしと生活しやすいわよ~♪」
「あぁ、そうだな……♪」
キャサリンたちにとって、あの戦時に比べれば配給も灯火管制もせずに済んだ。
ショッピングにしても品揃えも豊富、そして、便利なスマートフォンを常に所持しているのであった。
「便利なのはいいが、この子供たちの学校はどうするんだ?」
そう言って、ウィルは双子の愛娘の頭を撫でた。
本来、エマとエミリーは青人魚の世界に来る前の9月、小学校に入学する予定だったが、神の悪戯で転移してしまった。
そう心配しながら妻のキャサリンに相談した。
「ふふふ~♪このあいだ真雪さんと相談して、春から横須賀の国際小学校へ入学する手続きをしてくれるからって!」
「そうか!そう安心したな~♪キャサリン、エマ、エミリー!あの戦時でみんなと離れた分、幸せな家庭を築くぞ!」
「…うん…ウィル」
「「 パパ 」」
ウィルは安心した笑顔で、キャサリンとエマとエミリーを抱きしめた。
「あのアメリカ人の家族、幸せそうだなぁ~」
「あの家族の男性の制服…軍人かな~?」
巫女姿で、神社の路上を箒で掃いていた八木鶫と、後方で応援していた宇田彗はウィルの家族を微笑ましく見ていた。
すると、ウィルたちは神社の売店にやって来た。
「へぇ~巫女さんか、ハワイで見たことがあるが、やっぱ本場は違うな~」
「「 ねぇねぇ、巫女のお姉ちゃん!綺麗だね~! 」」
「あら、ありがとう~♪お礼に御守りをどうぞ♪」
鶫はエマとエミリーに誉められ、お礼に神社の御守りを譲った。
「ありがとうございます!」
「あぁ、こちらこそ♪この愛娘に」
「あの、アメリカの軍人さんですよね?」
「ん、そうですが?」
「何しにこの横須賀へ?ブルーマーメイドに関しての任務ですか?」
「まぁね、だけど君たちは横須賀女子海洋学校の入学生徒であっても機密だ」
「「 !? 」」
鶫と彗は驚いた顔で驚愕した。なぜ、アメリカの軍人が自身が横須賀女子海洋学校に入学する生徒なのか。
しかし、何度かアメリカの軍人を目撃した彼女たちも、どことなく違うオーラを感じた。
「あの、なんでわたしたちが横須賀女子の入学予定の生徒なのを知っているのですか?」
「匂いだな。僕はアメリカ海軍少佐、ウィリアム・J・スパロウです」
「わたしは八木鶫です」
「あの…、宇田彗です」
「ふふふ、あたしはウィルの妻のキャサリンです」
「わたしはエマで~す」
「エミリーです!パパはひこうきのパイロット~!」
「「 …え……? 」」
「おっと、…君たちの名前、覚えておく。また、いつか会おう!」
鶫と彗も互いに自己紹介を行った。
だが、ウィルはエミリーの口を塞ぎ、笑みを浮かべながら諏訪大社から去った。
「なんだか…不思議な家族だったね…流暢な日本語を話していたね鶫ちゃん」
「…うん…だけど、あの娘が言っていたひこうきって…なんだろう…?」
「…さぁ…?」
エミリーの言葉で二人は首を傾げた。
トム・K・五十嵐とシャルロット・F・トライン、金城幸吉は休暇を取り、ブルーマーメイド使用のパジェロを運転する秋山敏郎は横須賀市街を走行していた。
横須賀、ショッピングモール
「おめぇら!楽しく出歩いてこい!」
「トチローさんも、お気をつけて!」
「あたぼうよ、じゃあっ!」
トチローと別れたトムとシャルロット、幸吉はショッピングモールでふらついた。
食事処で名物の横須賀バーガー、お茶やデザートを食事。ブランドの衣服店で試着。ある時は映画を観賞した。
「あのバーガーはヒンナだった~♪」
「あの上着よかったな~!」
トムと幸吉は階級を抜き、出会った時から仲が良く、互いに肩を組みながら眼と口にした物を語った。その光景を見たシャルロットは微笑ましかった。
「うふふ~♪あなたたち、子供みたいにはしゃいでますわねぇ~♪」
「おいおいシャルロット、君だってさっき観賞した映画に嵌まっていたじゃないか!」
「そうそう、仁義ない任侠で目つきと声マネはヤクザみたいだったぞぉ~!」
「そ、それはわ、忘れてくださいまし~……///」
「「 ははははは~! 」」
彼女は恥ずかしく赤面、二人は笑いながら次のスキッパー店舗に足を運んだ。
トムたちは、もて余りの時間でブルーマーメイドの平賀たちからスキッパーの操作教習を受けていた。ついこの間、三人はスキッパー免許を獲得した。
スキッパー 販売所
「はぁ~…ブルーマーの専用と違い、色んな種類のスキッパーがあるな~」
「しかも、民間用であっても値段が高い…」
「二人に同感ぞな~…」
「「 ぞな? 」」
変な語尾を聞いたトムと幸吉は首を振り向くと、サイドテールの少女がスキッパーを目にしていた。
「あっ、これは失礼したぞな~」
「いやいや…」
「ん…?君は…あの時の受験生か!?」
駿河留奈が海に飛び込んだ時、スキッパーで走って、トムと幸吉が留奈を救助した時に協力した少女、勝田聡子であった。
「あ〜あの時の警備員さん。あれはお疲れ様ぞな~」
「いや、感謝するのは我々の方だ。ありがとう!君の協力がなければ、アウトだったよ」
「お二人さま、この娘とお知り合いですの?」
二人はシャルロットに勝田聡子のことを説明した。
あの受験結果の当日、瑠奈が海に飛び込んだ時、たまたまスキッパーで走行していた彼女の手を貸してもらった事を語った。
「なるほど…しかし、勝田さんもスキッパーを扱えられるとは…いつから習ってましたの?」
「中学生の頃ぞな」
「へぇ~…そうなんだ」
「おらたちの飛行学校と変わらない年齢でか…」
「え…?ひこう…?」
聡子は幸吉の言葉に頭を傾げた。
「ほらほら、お二人さま。わたくしたちは海洋安全整備局のスキッパーがありますゆえ、では…」
「海洋安全整備局!?…あんたらは一体…?」
シャルロットはトムと幸吉の腕を掴み、この場を去った。
聡子は三人の職務が海洋安全整備所属の人材に驚き、詳しく聞こうにも販売所を去って行った。
時間を遡り、横須賀港を一望できる丘に登ったトチローはお茶を飲んで一服していた。
「平和だ…時代と世界は違えど、景色は俺っちの横須賀だな~ん…?」
トチローはある二人の少女のペアを目にした。
一人は画用紙とペンで何かを描き、もう一人は暇をもて余し、帆船模型を造っていた。
「えーと、これはここで…ん…百々どんなキャラクターを書いているの?」
姫萌は百々が描いているイラストを訪ねて聞いた。
「それはッスね、あの丘の風に当たっているおじさんを書いているッス…あれ?どこに…?」
「誰がおじさんでぃ〜!俺っちはまだ25歳でぃ~!」
「「あ…それは…その…」」
姫萌と百々の前にトチローが赴いた。百々がモデルに描いているトチローの前で二人は冷や汗を掻いた。
「……俺っちが漫画の人物になるなら許す。俺っちは秋山敏郎。トチローと呼んでも構わんでぃ!」
「私は青木百々ッス!」
「私は和住姫萌です」
トチローは姫萌と百々と互いに自己紹介。姫萌はあることが気になった。
「えっと…トチローさんはなんでそんな江戸っ子の口調なの…?」
「あぁ、俺っちは横須賀出身。親父は江戸の佃島出身だってんでぃ。つい、この口調を受け継いだってんでい!」
「へぇ〜!なら、わたしと同じだ。両親の実家が神田なんだ♪」
「そうなんだ、別の意味で遭遇したなぁ~♪しかし、帆船の模型造りに関して上手いな~」
「ありがとう!わたしと百々は、春から横須賀女子海洋学校に入学することが決まったから」
「そうッスよ~♪私もこの広い海で世界を見たいッス~♪」
「そうか!」
トチローは二人の趣味を褒めながら空を見上げた。
「なぁ二人とも、海の景色もいいが、空からの景色を見たことはあるか?」
「「 え…空…? 」」
姫萌と百々はトチローの言葉で戸惑った。
「トチローさん、空飛ぶ気球と飛行船は人が乗れないよ…そんな夢見たいことは、百々のイラストに描いて貰いなさい~」
「トチローさん、どんな形の物ッスかぁ~?」
二人の言葉でトチローはやや戸惑いながら、公園の時計を確認した。
「……おっと、こんな時間か。すまんが姫萌ちゃん、百々ちゃん。俺っちは知り合いと、横須賀基地へ戻らんといかん。じゃあなぁ~♪」
「横須賀基地?ブルーマーメイドの拠点ッスよぉ~!」
「トチローさん、あんたは何者なの!?」
「俺っちは基地の専属整備士ってんでい、嬢ちゃんたちが入学したら、自慢の整備機体を見せる。あばよ!」
トチローはブルーマーメイド仕様のパジェロに乗車。幸吉とトムは、シャルロットを迎えに出発した。
「あの人がブルーマーメイドの関係者…」
「…でも、あの人の整備している機体が気になるッス…」
公園に残った姫萌と百々はベンチで唖然としつつ、トチローの整備する機体が気になった。
トチローは横須賀のショッピングモールで三人と合流、ブルーマーメイド基地へ帰投した。
その頃、沖田新一郎はライジングイーグル執務室の接待ソファーで居眠りをしていた。
連日の夜間哨戒飛行やトチローとの機体整備。海洋安全管理局本部で黒潮と虹川の口喧嘩などの疲れが貯まっていた。
「…新一郎……あっ…」
「…スー…スー……」
ブルーマーメイドの監督官、宗谷真霜が執務室に入室。新一郎が眠っているところを視認、ゆっくり彼の元に近づいた。
「…夜間飛行、お疲れ様。新一郎……ちゅっ」
真霜は新一郎の頬に唇を寄せた。するとー
「ん…?…真霜か…」
「あっ…新一郎///お目覚めかしら…///」
「あぁ~よく寝た~…」
「最近、忙しいのね…」
「あぁ、本土近海で厄介なのが、武器や弾薬などの密輸だ…」
最近、新一郎と幸吉は、本土近海の哨戒飛行で海上の治安の悪化が激減しているにも関わらず、密輸を取り締まっていた。
新一郎は武器を販売する闇ルートを探っているため、常に目を光らせ、ブルーマーメイドのスキッパー部隊の岸間たちと捜索していた。
だが、最近横須賀で人間が蒸発する不可解な事件が報告されている。
「こんな不可解な物が出回っていれば、いつ戦争が行ってもおかしくない…」
「ねぇ、イーグルのみんなは…?」
「あぁ、俺以外は全員外出休暇…」
「そうなんだ…ねぇ、新一郎の休暇は…?」
「明日だ。これから四国まで夜間哨戒飛行の時間だから…飛行衣服を…」
「ふふふ♪今夜は幸吉君の代わりに私が行くわよ♪」
「え?いいのか?」
紀伊水道 上空
零観が飛行する正午、新一郎が座る操縦席には外套を身に付けた真霜が横抱きの状態で座っていた。
「綺麗…本当に綺麗…やっぱりいいねぇ~♪真っ赤な夕陽に照らせれる空の景色は~♪」
「そうかっ!なら、自慢の飛行技を披露する。舌を噛むなよ!」
「えっ!?ちょっと…きゃあぁっ!!」
新一郎は居座る真霜に飛行技を披露した。連続宙返りや急降下、きりもみと超低空背面飛行などの曲芸飛行。
新一郎と真霜が搭乗する零観は四国の香川に着水、少しの間に金比羅を巡り歩いた。
太陽が西に傾いた時だった。
「さて、横須賀に戻るぞって…?」
「うふふ~♪」
真霜は複座席から立ち上がり、新一郎の操縦席に寄り添った。
「帰りだけど、新一郎の操縦席で一緒になりたいわ~♪」
「…///…飛行中、操縦席が狭くて出て、空から落ちても知らねぇぞ…」
二人は搭乗、横須賀に向けて飛行した。
横須賀、ヴェルニー公園
一人の少女、知名もえかは微笑みベンチに居座りながら、夜空の星を見つめた。
「…ミケちゃん…どうしているのかな……虎ちゃん……ん…音……?」
爆音に気付いたもえかは夜空を見上げると、フロートを装備した空飛ぶ物体を目の当たりにした。
「あれは?……きゃっ!?」
もえかの目の前を通過した時、その影響で強風に煽られ、もう一度空を見上げた時にはその姿がなかった。
「…あれは…もしかして……」
もえかは予感した。あの幼少で出会ったあの少年の言葉を…
横須賀基地 ー
22時に帰還した新一郎は、零観を自動陸揚げ装置で、格納庫に収納。
真霜は操縦席で居眠り、新一郎は彼女を横抱きで操縦席から降ろした。
「しかし、自動装置は便利だなぁ~♪どうだった真霜、空の旅は……って…気絶して聞けないか…」
「……うーん…新一郎…」
「あっ真霜、気が付いたか…家へ帰ろ…むぐ…///」
「///んチュッ……新一郎…///」
空のデートに続き、零観の格納庫で二人っきりになり、情熱的になっていちゃついた。
だが、二人は気付かなかった。格納庫の扉の隙間には、後に元凶となる者が覗いていた。
休息が終わり、新一郎とウィリアムは横須賀女子海洋学校、宗谷真雪により招集を受けて赴いた。
横須賀女子海洋学校
「ごめんなさい、沖田さん、スパロウさん。急に呼び出して…」
新一郎とウィリアムは真雪に呼び出される。
何か仕事で問題があったのか心配だったが、雰囲気からしてどうやら違うみたいだ
「い、いいえ…それよりも真雪さん。何の用ですか?」
「あなたたちの飛行機のことは真霜から聞いたわ。それであなたに頼みたいことがあるのよ
「頼み事?」
「どんな頼み事ですか?Mrs.真雪…?」
「実は今回の入学後の海洋実習があることは知っているわよね」
「えぇ…」
「それと零観とカタリナ一体何の関係が?」
二人が首をかしげると真雪は言った。
「実は、沖田さんとスパロウさんたちイーグルのメンバーに、その零観とカタリナを小笠原諸島に行ってもらいたいのです」
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