横須賀女子海洋学校校長室
男性教官が校長の宗谷真雪に海洋安全整備局から晴風の報告に赴いた。
「晴風が反乱!?」
「はい、集合時間に遅れて到着した晴風は、突如教官艦さるしまを攻撃、撃沈したそうです」
「…なぜ…そんな事態に!?」
「さるしま艦長、古庄教官は意識を失った状態で、まだ詳しいことは分かっていません…もう一つ知らせることが、航行していた晴風の付近に正体不明飛行物体が飛来、留めを刺された後、晴風と動向したそうです」
「…正体不明の飛行物体!?…もしかしたら…あの時の…」
「「 失礼します!! 」」
突如、校長室に元日本海軍大尉、零式水上観測機のパイロット、沖田新一郎と元アメリカ海軍少尉、PBYカタリナの副長パイロット。トム・K・五十嵐が入室した。
「…お義母さん……いえ、宗谷校長!西之島に、正体不明機が出現したと報告を聞いたのですが…本当ですか…!?」
「新一郎さん!?えぇ…これがさるしまが沈没寸前に撮られた写真です…」
真雪は沈没寸前にさるしまが撮った写真を新一郎に渡した。するとー
「…二式水戦……虎雄……間違いない…あいつだ……虎雄のヤツだ!」
写真を見た新一郎は身体が心底震え、瞳から涙が溢れた。
戦争末期、マラッカ海峡上空で戦死した訃報を聞き、鹿屋基地で新一郎を始め、ペアの金城幸吉と零戦パイロットの桜井洋介と弟の沖田進次郎。整備員の秋山敏郎(トチロー)は嘆き悲しんだ。
「ぐっ...! 宗谷校長、私を…零観で小笠原諸島へ行かせて下さい!本機で片道のみ飛行可能です!」
新一郎が涙を拭い、彼の隣で黙っていたトムは口を出した。
「私からもお願いします!昨日、ブルーマーメイド本部にて、カタリナの定期連絡が途絶えたウィリアム機長と幸吉、トチローさん。そして、武蔵に乗艦しているシャルロットの消息が気になります!沖田さんと出動の許可を!」
「……許可します。私からの条件ですが、横須賀校の学生航洋艦と晴風の探索をお願いします。」
トムの言葉で沈黙した真雪は目を閉じ、条件付きの許可を与えた。
「「 はっ!! 」」
新一郎とトムは横須賀女子海洋学校校長、宗谷真雪に対して敬礼をした。
二人に与えられた任務は、大賀虎雄と二式水上戦闘機と消息不明のPBYカタリナのパイロットウィリアム・J・スパロウ少佐。
そして、今回のみ人員機上配置した金城幸吉一飛曹と整備員のトチローの捜索。
新入生の航海実習で直教艦武蔵で艦医として乗艦したシャルロット・トライン。宗谷真雪の娘、宗谷ましろが乗艦する学生航洋艦晴風の捜索を命ぜらた。
校長室から退室した時、黒服の制服を着た数人の女性が入室した。
「失礼!沖田新一郎とトム・K・五十嵐か?」
「あぁ…」
「あなた達は…?」
「我々は海上安全公安局の者だ。君たち二人に逮捕状を持ってきた」
彼女の制服の懐から逮捕状の書類を広げて見せた。
「…なんだとっ!?」
「何の為に僕たちを!?」
「罪状は、学生航洋艦晴風とグルで、飛行機で上空から教官艦さるしまの撃沈に関与した罪だ」
「馬鹿な、休み休みも言え!」
「そうだ!いくら我々ライジングイーグルの水上飛行機は小笠原に飛行する だけでも数時間は掛かるが、往復分の燃料が足りないぞ!」
「動向はどうあれ、君たちの飛行機による攻撃は変わらない。ただちに沖田と五十嵐を逮捕拘束、イーグルが所有する零式水上観測機を押収せよ!」
新一郎は察知した。
連中は黒潮の手下であり、虎雄の行動に濡れ衣を被せる形で喉から欲しがる飛行機を手に入れることが目的であった。
公安の者が部下に指示を出した時、真雪がたち塞げた。
「公安の方々、この方たちは重要な使命を受けたばかりです。お引き取りを!」
「宗谷校長!いくら校長でもあなたの権限はありません」
「なんですって!?…なら…南方局長に……」
「南方は海上安全管理局の局長は解任された!」
「…そ、そんな…」
「…くっ…トム…」
「沖田さん、こ…これは…?」
新一郎はトムに向いて、ただひとつしか無い零観の格納庫の鍵を渡して、小声で呟いた。
「(…トム…俺からの命令だ。今からこの鍵を持ってこの場から離脱。零観で消息不明のイーグル仲間と俺の同胞。学生艦を捜索せよ!)」
「(…沖田…大尉…)はっ!!武運を!!」
トムは校長室の窓に向かって飛び込み、離脱した。
「逃げたぞ!?」
「追え!!」 パァン パァン 「「「 !? 」」」
「動くな!!」
新一郎は懐からモーゼル拳銃と南部十四年式拳銃を取り出して発砲した。
「貴様ら!一歩でもトムを追い掛けたら、身体に風穴を開けるぞ!!」
公安の職員は新一郎の言葉に恐怖で震えた。
死闘を繰り広げ、血肉を争い、忌まわしく地獄の様な上海やマレー、ソロモン、マリアナ、フィリピン、本土防空などの戦場で、戦ってきた者にしかわからないオーラを感じた。
「「 ひぃっ… 」」
「くっ、……ここは任せて、五十嵐を追い掛けなさい!」
「はいっ!」
3人の公安員はテーザー銃をホルスターから取り出し構えた時ー
パァン パァン パァン「きゃっ!?」
新一郎の馬族の拳銃技、流し撃ちで全てのテーザー銃を弾き飛ばし、更に武術で公安を気絶させた。
「貴様ら!トムを捕まえたければ俺を倒してから行け!…お義母さん…」
新一郎は、常に身に付けていた短剣を真雪に渡した。
「(……新一郎さん?)」
「(お義母さん、…万が一私に何かあった時に、この短剣を真霜に渡してください!)では!」
「新一郎さん!」
新一郎は二挺の拳銃を構え、一人一人の公安隊員の武装を狙い射ち、一人、また一人の公安員を気絶させた。
トムは学校から基地の格納庫へ向かい、エナーシャで零観のエンジンを回し、唸らせた。
「よしっ、…機長、シャル、幸吉、トチローさん。待ってろよ…待ってろ…うぅ……ぐ…」
トムは零観に搭乗し、操縦桿を握ろうとしたが、自身の右手が拒んみ、震えた。
「……ぐ……沖田さん…僕は飛行機の操縦桿が握れません…スキッパーで行きます!」
零観で逃亡を図る筈だったトムは飛行機の格納庫を封じ、スキッパーの格納庫に向かった。
「はぁ…はぁ…今度こそ往くぞ……」
格納庫からスキッパーを取り出してスロープで下ろし、水上に浮かせた。
ヒュッ 「!?」
スキッパーに搭乗を仕掛けた時、一発の銃弾がトムの頬を掠めた。
「ここまで来たか!」
トムは背中に背負っていたM-1小銃を取り出し発砲、銃口に人を向け威嚇した。
バアァン バアァン バアァン ピーン
「くっ……あばよ!」
弾切れになった時に手榴弾を投げて、爆破と同時にトムはスキッパーに搭乗、水平線の彼方に向けて水上を走行した。
「追え!!」
「はっ!…きゃっ…!?」
公安隊員がスキッパーに搭乗した時、背後から新一郎が発砲。
狙い撃ったのはスキッパーのエンジンで、全てを使用不能にした。
「よしっ、こんなもんだな~♪」
「こ…こ…この野郎~!!」
一人の公安隊員が震えた手でテーザー銃を握り、新一郎に向けた。
新一郎は隊員に反応して左手のモーゼル拳銃を向けた。だが
カチカチ 「しまったっ!?弾切れだ…」
「くらえ!」
「やられるか!」 シュッ
空のモーゼル拳銃を投げ、テーザー銃の斜線を遮り、勢い走って隊員の腹部を強打、気絶させた。
「(許せ…)」
新一郎が格納庫から出ると、多くの公安隊員がテーザー銃や警棒、盾を装備して周囲を囲んだ。
「沖田新一郎!お前は完全に包囲されている!武装を解除して、格納庫にいる人質を解放すれば、罪を軽くする!」
「……わかった…………」
新一郎は公安の要請を呑み、所持するモーゼル拳銃と南部十四年式拳銃を足元に置いて解除、両手を挙げた。
「だが、俺を捕まえても何人かの海鷲はこの大空と海原に羽ばたいている限り、捕まえられない!」
数人の隊員が新一郎に近づき、手錠を掛けられ海上整備局に連行された。
「(…トム、あとを頼む。…ウィリアム、幸吉、トチロー、シャルロット、虎雄…待ってくれよ……真霜、…すまない…)」
新一郎は心の底から仲間と、結婚する真霜に謝罪した時、すれ違いしたかの様に、真霜が私的で海洋学校の校長室に赴いた。
「…トム君が逃亡…新一郎が逮捕ですって…お母さん!?」
母親の真雪から衝撃的な事実を知らされた真霜は驚愕した。零式水上観測機が航洋艦晴風と手を組んで教官艦を撃沈。
そして公安が察知、首謀者たる沖田新一郎が逮捕され、トムがスキッパーを強奪して太平洋に逃亡した。
「…なんで…なんで新一郎が逮捕されなきゃならないのよお母さん……」
「…ごめんなさい、真霜…公安の前では逆らえることが……」
巴御前と称された宗谷真雪も、己自身の無力を悔やんだ。
「お母さんに責任はないわ。私は公安局に行って確かめに…うぅ…ゴホッ…ゴホッ…」
「…真霜…真霜!?しっかり!」
真霜は扉のノブに手を掛けた時に咳き込み、片手を口と腹部を押さえながら倒れた。
横須賀から逃亡したトムは太平洋、青ヶ島にて燃料、糧食を調達する。磯部に隠しているスキッパーに積み込んだ。
「……よしっ!…しかしながら、この間貰った給料がスッカラカン……さすがにスキッパーってのは、飛行機と違って時間が掛かる……僕も…沖田さんの飛行機を扱えれば……」
戦闘機部隊出身のトムはあの戦争終結前、沖縄救援に航海した日本海軍の戦艦大和との海戦で新一郎の弟、沖田進次郎の零戦に撃墜された恐怖がトラウマになった。
岩場に座り込み、水を飲みながら水平線に沈む夕日と格納庫の鍵を握りしめながら眺めた。
「沖田さん…キャサリンさん、エマ、エミリ…僕だけ逃げてすみません。……ウィリアム機長、幸吉、トチローさん、シャルロット。そして、大賀虎雄。…必ず探し見つけ出す!」
その頃横須賀基地、隊舎にてウィリアムの愛妻キャサリンはエマとエミリの小学校を終えて療に帰宅した時、哨戒機カタリナの行方不明の知らせを聞いて、悲しみ、危機を感じて、SAA拳銃に弾丸を装填して所持した。
「ママ…」
「……なんで…むち…とピストルを…?」
「ごめんなさい二人とも、もしかしたらこの家に悪い人がくるかも知れない……!」
「「…う…うん」」
二人は母親に従い、立てこもりの準備を行った。
キャサリンも二人に関して気の毒と感じつつ、国際小学校に入学して2日目でこんな事態になるなんて思ってもいなかった。