ハイスクール・フリート   ~空を翔る鳶と海虎~   作:鷹と狼

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第17話 絶海の牢獄

 

 

 

 

 

海上安全整備局 拘置所

 

 

 

 

「…ぐ…はぁ……は…ぁ……」

 

 

 

ライジングイーグルの零観パイロット、沖田新一郎は行方不明になった全隊員に成り代わり、保安部により逮捕された。

逮捕された新一郎は毎日の様に、保安部の虹川により部下共々の拷問を受けていた。

 

 

「さぁ、吐いて貰おうか。君の所有する飛行機格納庫の予備の鍵を」

 

 

「…喋るかよ…貴様に…飛行機のネジ一本たりとも売る訳には…」 

 

 

   バシッ

 

 

「うぐっ…!」

 

 

「沖田ぁっ!!」

 

 

「…俺たちの世界…ライト兄弟が動力飛行機で人類初飛行してわずか11年、人間は飛行機が兵器になることに気付いてしまった。飛行機は化け物となり、戦争の様相を一変させた。この世界で平和に過ごした貴様らに、あの大戦で経験した者の忠告だ!!」

 

 

拷問室に虹川雪男が入室、片手に注射器を持っていた。

 

 

「さぁ、沖田君。君に薬を注入するよぉ~♪」

 

 

「へっ…自白剤か…そんなもの注入しても、黒潮と虹川の暴言を吐き続けるぞ!!…それに…貴様ら…海賊の犬が…」

 

 

 

「ふふふ~♪この薬剤を投与したら、拷問以上の地獄が待っているよぉ~♪」

 

 

 

「…拷問以上の地獄…おい、虹川…まさか……?」

 

 

不敵な笑みを浮かべた虹川は、新一郎の腕に薬剤を注入した。

 

 

次の日から、新一郎の地獄が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

時は遡り、4月6日

 

 

日本近海

 

 

その頃、武蔵は、晴風と同じ様に集合地点の西之島新島沖へと向かっていた。

 

 

超大型直航艦武蔵、艦橋

 

 

 

「明日から他のクラスと合流ですね!」

 

 

海図を見ながら当直中のクラスメイト、吉田親子がもえかに声を掛ける。

 

 

「うん!」

 

 

海図から吉田に笑みを浮かべながら言うもえか。

 

 

 

 

医務、保健室

 

 

横女海洋医=ライジングイーグルのシャルロット・F・トラインはデスクに居座りながら医学本を読み、勤勉していた。

 

 

「ふぅ…70年、医学が進歩しているから、学び覚えるのに大変ですわ…」

 

 

 

ズシイィィン

 

 

「え…?」

 

 

 

艦内で微妙に震えた感じがした。気になったシャルロットは伝声管で艦橋へ連絡した。

 

 

「こちら、医務室。振動を感じたのですが、何かあったのですか…?」

 

 

「『 航海長の吉田です、艦長は射撃指揮所の様子を見に降りました! 』」

 

 

 

「なんですって…!?」

 

 

 

武蔵、通路

 

 

艦長の知名もえかが射撃指揮所へと向かっていると、通路の向こうからまるで何かから逃げているかの様に走って来るクラスメイトの角田夏美がいた。

 

 

夏美は、もえかに飛びついて涙を流す。

 

 

「艦長、皆が…皆が…」

 

 

「皆って?」

 

 

もえかが、夏美が逃げて来た通路の先を見ると、そこには大勢のクラスメイトの姿があった。

 

 

「ひぃっ!?」

 

 

夏美はそんなクラスメイト達の姿を見て怯える。

 

 

「どうしたの貴方達!?…何を…?」

 

 

もえかは恐る恐るクラスメイト達に声を掛けるが、彼女達は、無口無表情のまま何も言ってこない。

 

 

「貴方達!?…一体…」

 

 

もえかも恐る恐るクラスメイト達に声を掛けるが、やはり彼女達は、無口無表情のまま何も言ってこない。

 

 

すると、彼女達は、無口無表情のままゆっくりともえか達に近づいてくる。

 

 

「ひいぃっ!?」

 

 

「おやめなさい!」

 

 

もえか達が恐怖の中、別の通路からデッキブラシを持ち、数人のクラスメイトを気絶させた。

 

 

「シャルロットさん!」

 

 

「こ……これは……?」

 

 

シャルロットの視線から、敗残兵の行進が見えた。

 

 

「あれ、艦長如何したんですか?」

 

 

逃げる途中、偶然、艦橋に報告しに通路を歩いていたクラスメイトの小林亜衣子と出くわした。

 

 

「小林さんも急いで上に!!」

 

 

「何か遭ったんですか!?」

 

 

「良いから上に…付いてきて!!」

 

 

亜衣子は、理由も聞けず、何事かと思い、シャルロットともえか達と共に艦橋へと避難する。

 

 

 

 

武蔵 第一艦橋

 

 

 

艦橋に避難したシャルロットともえか達は、急いでドアに鍵を掛け、ついでにバリケードを構築し、階段(ラッタル)のハッチを閉め、モップの柄とロープを使い、階段(ラッタル)のハッチを開かない様にした。

 

 

「これでしばらくは、誰も入って来られない!」

 

 

誰も入って来られないと聞いて、5人は、安心する。

 

 

「何が何だか分かりませんが、そもそもこうなった原因は何ですか?」

 

 

「それはわたくしにも分かりません…角田さんは、何か知ってる?」

 

 

「わ、私にも分かりません…機関の調子を見に行こうと機関室に行こうとした時、急に皆に襲われて…その後、何も考えず逃げたんです!!」

 

 

「と言う事は、原因は、全くわからないのですのね…!」

 

 

「これから如何しますか艦長!」

 

 

「そ…そうね…」 

 

 

「取り合えず、やるべき事は…先ず状況の把握と必要な物の調達ですわ…」

 

 

シャルロットは、状況の把握と必要な物の調達を指示した。

 

 

先ず、シャルロットともえかが状況の把握の為、辺りを確認してくると残りの3人は、必要な物の調達を命じられた。

 

 

「じゃ、3人とも危なくなったら直ぐ戻ってきて」

 

 

「分かりました。」

 

 

「それからわたくしと艦長のどちらかが戻らなかった場合、探しに来ないで…」

 

 

「何故ですか?」

 

 

「まだどんな危険が有るか分からわかりません…貴方達を危険に巻き込む訳にはいきません…わたくしは、宗谷校長から貴方達をどんな事から守ってほしいと言われてあります…」

 

 

「シャル先生、艦長…」

 

 

「それじゃ…行きましょう…」

 

 

 

任務が開始され、シャルロットともえかは、階段から、他の3人は、エレベーターから下へと降りて行った。

 

 

そして、武蔵から位置を知らせるビーコンが途絶え、行方不明になった事にシャルロットやもえか達は気づかなかった。

 

 

 

 

4月8日

 

 

 

シャルロット、もえか、親子たち3人は水と糧食の確保、シャルロットともえかは遭難に備えて必要な医薬品を確保。連絡するために、無線室へ赴いた。

 

無線室に入ると中には誰も居らず、無線も無傷のままの状態でほったらかされていた。

 

 

親子は、直ぐに無線機を取り、外部に連絡を取ろうとした。

 

 

「どお吉田さん…学校との連絡は取れそうですか?」

 

 

「…駄目です!!…雑音が酷くて、通じません!!」

 

 

「救難信号は?」

 

 

「それも駄目です…」

 

 

雑音が酷くて、通じず、救難信号も駄目だった。 

 

 

「航海長、ちょっとわたくしに操作させてください!」

 

 

「はい!」

 

 

彼女はライジングイーグルの零観とカタリナに連絡を試みたが、ノイズが流れていた。

 

しばらく待てば、ノイズも消えるかも知れない。

 

 

だが、このまま此処に居ても危険過ぎる。

 

 

「仕方ありません、取り合えず非常用無線機だけでも持って、艦橋に戻りましょう!」

 

 

仕方なく、シャルロットは、机の下にあった非常用無線機だけでも持って、艦橋に戻る事にした。

 

 

「…よし、誰も居ない様です…」

 

 

ドアの隙間から通路を除き、誰もいない事を確認し、通路を出て、来た道を通って、急いで艦橋へと戻る。

 

 

 

武蔵、通路

 

 

 

「此処を通れば甲板ですわ!」

 

 

通路を進み来た道を通って、艦橋へと向かう。

 

通路を通る中、放浪している生徒達と出くわさなかった。

 

 

 

 

エレベーター前

 

 

 

「良かった!…何とか辿り着きましたねシャル先生!」

 

 

ようやく、エレベーターに辿り着き、もえかは安心する。

そして、親子がボタンを押すと、エレベーターが下へと降りてくる。

 

 

「早く!早く来て!!」

 

 

しかし、降りてくるのに時間が掛かり、シャルロットは焦る。

 

 

「先生!?」

 

 

焦っているともえかが何事かとはやてを呼び、シャルロットは、後ろを向く。

 

 

すると、後ろから、さっき放浪していた生徒が現れ、しかもその数は、先の4〜5人から10人程に増え、ゆっくりとこっちに向かってくる。

 

 

「不味いよ先生!…このままだと皆捕まってしまいます!」

 

 

エレベーターもまだ降りてこない.後ろから放浪している生徒がゆっくりとこっちに向かってくる。

 

 

「機長やトムさん程じゃありませんが、時間を稼かねばなりません!!」

 

 

デッキブラシを護身用として所持したシャルロットが野人化した生徒と戦った。

 

 

「はぁっ!たぁっ!」

 

 

「凄い…」

 

 

もえかと親子はシャルロットのブラシ捌きで何人か気絶させた。

 

だが、戦う内に彼女の体力が危うく、最大の危機が迫った。

 

 

 

その時

 

 

 

「あっ、間にあった!」

 

 

ようやく、エレベーターが降りて来て、3人は、急いで乗り込み、艦橋へ帰投した。

 

 

超大型直航艦武蔵の現状で、正常なのは艦長の知名もえか、航海長の吉田親子、応急員の角田夏美、調理担当兼予備倉庫管理者、小林亜依子。そして医学生のシャルロット・F・トラインの5名に留まった。

 

 

 

艦長の指示でみんなは艦橋に持ち込んだ緊急用無線機で物資を確認する時、外から轟音が鳴り響いた。

 

 

「え…?なにこの音…?」

 

 

「艦長!左舷10時方向、上空に何かが飛行しています!」

 

 

双眼鏡で水平線を見張っていた親子が視認した。

 

 

「え…?見せて!…あ…なに…あれは…?」

 

 

親子はもえかに双眼鏡を譲り、彼女は視認して驚愕した。

 

 

「艦長…何をみてらっしゃるのですか…?」

 

 

「……シャル先生…これを…」

 

 

「あれは…カタリナ?なんてことですの!!」

 

 

シャルロットも双眼鏡で確認、視認した機影はアメリカ海軍の双発哨戒機、PBY-5カタリナだった。 

 

 

「かたりな…?シャル先生、なにそれ?」

 

 

もえかと親子は彼女にはてなを浮かび上がらせた。

 

2日前、不穏な行動を取る武蔵は本艦を通過する船舶に対して砲撃。

一方、カタリナは徐々に武蔵に向けて飛行してきた。

 

 

「止めてください、機長!!近づけば撃ち落とされます!!親子さん、無線機の修理を急がしてください!」

 

 

「わかっています…落ち着いて!」

 

 

「あっ…モールス信号が…!」

 

 

シャルロットがカタリナに向けて叫んでも無に等しく、親子に無線機の修理を急がせる様に直訴した。

 

 

だが、武蔵の主砲どころか、機銃はカタリナに向けず、徐々に本艦の速度が減速、停船。

 

そして、カタリナは海上に着水、本艦に接近した。

 

カタリナの搭乗員、金城幸吉と整備士の秋山敏郎は洋上で武蔵の生徒から燃料と弾薬の補給を受けていた。

 

その光景を見たシャルロットの身体が震え、膝に着いた。

 

 

 

「なんてことを…なんでカタリナが…武蔵から補給してらっしゃるの…?教えて下さい…ウィル機長…幸吉さん…トチローさん…」

 

 

「…シャル先生…?」

 

 

「あの…シャルロットさん…どういうことですか…?」

 

 

「…あの空飛ぶ飛行物体…シャルロットさん…どういう関わりなの…?」

 

 

「あなたは…何者なの…?」

 

 

「……隠しても…仕方ありませんわ…全て仰います」

 

 

シャルロット・F・トラインは全てのことを語った。

 

自身は別の異世界から送られてきた住人、忌まわしい時代と戦場で従軍した看護婦と述べた。

 

この世界にきてから、まだ未発表の組織、ライジングイーグルの隊員と呟き述べた。

 

 

武蔵のもえかたち生徒は青ざめ、冷や汗を流した。

 

 

「……し…信じられない…」

 

 

「…別世界で…日本は世界と戦争をしていたなんて……」

 

 

「シャルロットさんが言うひこうき…想像で描かれた産物を…あなたの言うことはあながち嘘ではありませんね…」 

 

 

「もえか艦長…わたくしを信じるのですか…?」

 

 

「はい、それとシャル先生。戦時の世界からきたとなれば…大賀虎雄さんのことは…?」

 

 

「え…?」

 

 

艦長のもえかはシャルロットに、幼少に出会った、大賀虎雄を述べた。

 

 

午後5時、作業も終わり、ようやく非常用無線機が使えるようになった。

 

 

「これで届くの?」

 

 

本当に救援が呼べるか夏美は、不安になる。

 

 

「問題ない筈…唯電源がバッテリーしかないので使えるのは、数分かと…どうぞ…」

 

 

問題はないが、維持できる電力がバッテリーの為、使えるのが数分程度。 

 

しかし、他に手がない。

 

親子は、もえかに無線機のマイクを渡す。

 

 

「此方武蔵、此方武蔵…現在アスンシオン島沖北西10マイル…非常事態が発生しています…現在アスンシオン島沖北西、至急救援を…至急救援を…」 

 

 

もえかは、電源が切れるまで、救援を呼び続けた。

 

 

それをたまたま、退避中の晴風が傍受した。

 

 

しかし、ノイズが酷く、横須賀女子海洋学校や海上安全整備局には届かなかった。

 

 

こうして、もえか達は、絶海の牢獄の中で挫けず、残った4人と一緒に艦橋に立てこもった。

 

 

 

 

 

八丈島 近海 岩場 ー

 

 

 

 

「うーん……晴風よ…ましろちゃんよ…武蔵よ…シャルロットよ…どこの海で彷徨っているんだ……」

 

 

トム・K・五十嵐はタブレットで海図を睨んでいた。

 

 

 

「ビーコンがやられているのか…?……機長…幸吉…トチローさん……あんた達は一体どこに……」

 

 

 

 

 

 

 

 

横須賀 隊員宿舎

 

 

 

「キャサリンさん、私です平賀!」

 

 

昨日、今日の食堂にキャサリンの姿がなかった。

 

気になった平賀がスパロウ夫婦が暮らす部屋へ赴き、扉をノックしても、静かだった。

 

 

「…静かだ…もしかして夜逃げ…いや、出入口の監視所から報告があるはず…あれ…?」

 

 

ノブを回すと扉が開いた。部屋の中は真っ暗だった。

 

 

「あの…キャサリンさん…エマちゃん……エミリーちゃん…?…きゃっ!?」

 

 

平賀が床に躓き、前向きに倒れた。

 

 

「痛たぁ~…」

 

 

「「 それぇ~!! 」」

 

 

 

「きゃっ!!なに、なに~!?」

 

 

平賀が紐でぐるぐると巻かれた時、天井の蛍光灯が付いた。

 

 

「動くな!!」

 

 

SAA拳銃を構えたキャサリンが出てきた。

 

 

「あ……倫子ちゃん……」

 

 

「「 …倫子お姉ちゃん......! 」」

 

 

ライジングイーグルの関係者、ウィリアム・J・スパロウのグループは、横女学校の教官艦さるしまを攻撃した罪により行方不明。

 

隊長の沖田新一郎が公安部により逮捕された。危機を感じたキャサリンは自身と双子の娘を護る為に拳銃を構えた。

 

そして、彼女たちが暮らす部屋の出入口に罠を設置していた。

 

 

「あの…倫子ちゃん、ごめんなさい…」

 

 

「「 倫子お姉ちゃん、ごめんなさい 」」

 

 

キャサリン、エマとエミリーは、平賀に謝罪した。

 

 

「あはは…いいのよ…この事態なら、仕方ないわ…それに、キャサリンさん、イーグルは立場上、危うい状況に措かれていますが、私達ブルーマーメイドが、全力であなたたち家族を守ります!」

 

 

「倫子ちゃん、ありがとう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『黒潮君、あなたの言う異世界の異物、残りの飛行機はいつ入手するの?』

 

 

「…申し訳ありません、カタリナを入手したものの、零式観測機は格納庫に封じられ、専用の鍵は一人の隊員が所持し、太平洋に逃亡…奴らのは一枚上手でした…」

 

 

『ふふふ…まぁいいわ、横須賀女子海洋学校の学生艦とドイツの留学生艦に例の生物を、拿捕したアメリカ機に積み込み、上空からばら蒔けたことは大きな成果だわね。いずれ七つの海を制し、我が物とするわ。今後、残りの飛行機を捕獲し、とことん海洋整備局の艦艇を殲滅するのよ。今後もあなたを期待するわよ』

 

 

「はっ……黒ひげ卿」

 

 

 

 

 

黒潮鈴江がモニターであることを報告し、電源を閉じた。

 

黒潮が通じた相手こそ犯罪界の女海賊、沖田新一郎たちライジングイーグルが捜索する最重要人物、コードネームは黒ひげ。

 

 

 

 

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