ハイスクール・フリート   ~空を翔る鳶と海虎~   作:鷹と狼

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第20話 眠る虎の短剣

 

 

 

日本近海 和歌山沖 

 

 

一方、甲板では艦首先で、楓が午後17時を知らせるラッパ(音色の悪い)を吹いていた。

記録係の幸子は、被害状況を確認する為、各部を見回っていた。

 

 

そして第一主砲塔付近では

 

 

「武田さん!主砲の状況は、どうですか?」

 

 

幸子は、武田美千留に各主砲の状況を聞く。

 

 

「見ての通り点検中…大部分は、自動化されてるけど、点検が大変だよ!!…どう、光?」

 

 

美千留は砲塔の頂上で整備をしている小笠原光に訊くとゴーグルをつけて点検をしていた光は

 

 

「まだぐずてるんだよね、この子…」

 

 

汗を拭いながらそう返事をする。

 

 

「あと、どれくらい掛かりますか?」

 

 

「日没までは、何とかするよ~!!」

 

 

日没までには、主砲の修理作業が完了の予定の様子

 

 

「よろしくお願いします!!」

 

 

『は~い』 

 

 

幸子は、主砲の修理作業を美千留と光に任せ、第三主砲塔付近に向かうと美甘が修理が忙しくて、食堂室まで食べに行けない生徒に対して、おにぎりなどを配っていた。

 

 

「おにぎりできたよ~!!」

 

 

「「「 ありがとう 」」」

 

 

皆が美甘に礼を言いおにぎりを取る。

 

 

「顔になってるのが梅干が入ってるやつね…」

 

 

「松永さん、姫路さん。こちらは何か異常ありませんか?」

 

 

二人がおにぎりを食べていると幸子が尋ねてきた。

 

 

「発射管は、異常な~し」

 

 

「ま~あ、魚雷が一本も無いけど…」

 

 

さるしまの砲撃で模擬と云えども、唯一の魚雷を使用したことを、報告する。

 

幸子が美甘の持つバットの中にあるおにぎりを見る。

 

 

「皆さんのお食事は、おにぎりなんですね」 

 

 

「みんな修理で食堂まで来れないし、忙しいから…あっ!?そう言えば武蔵から非常通信が着たって、本当?」

 

 

美甘は、武蔵からのSOSが来た事を幸子に問う。すると松永理都子と姫路果代子が

 

 

「私もそれ聞いたよ」

 

 

「他の艦って、如何なってるのかな?」

 

 

と、二人がそう訊くと

 

 

「「 …あ 」」

 

 

二人は幸子の様子が変わったのに気づく。そして幸子は

 

 

「『世界の全てが敵に回っただと!!』『武蔵を沈める訳には、いかない!!南の果てまで逃げYO!』」

 

 

いつもの一人芝居が始まったのだが

 

 

「そのネタ、あんまり面白くない…」

 

 

「え~!!」

 

 

元ネタが分からないのか美甘から、あまり面白くないと言われ、幸子はがっかりする。

 

すると美甘が 

 

 

「そう言えば、あれ結局なんだったの?」

 

 

後部甲板に固定され置かれている二式水戦を見て幸子に訊く

 

 

「さあ?私もよくは…さるしまとシュペーの上空を飛んでいたのは事実ですよ」

 

 

「それはみんなから聞いたけど…それに誰か乗っていたんでしょ?」

 

 

「だけど、この物体はカッコいいねぇ♪エンジン部分と翼に武装があるんだねぇ~」

 

 

「もしかしてあれ、未来とか異世界から来たんじゃないですか?遥かな世界から異次元の嵐に巻き込まれ気が付けば…あ!別世界に!!」

 

 

「「「…………」」」 

 

 

「ん~…乗って、扱ってみたいな…」

 

 

理都子が目を輝かせながら、水戦の翼を撫でる。

 

暫くして、各部の被害状況を確認し終えた幸子は、艦橋へと戻ると各部の被害状況を報告する。

 

 

「損傷の確認、出来ました!!」

 

 

「状況は?」

 

 

ましろが訊くと幸子はタブレットを動かす。

 

 

「現在、機関修理中…3番主砲使用不能、魚雷残弾なし、爆雷残弾1発…戦術航法装置並びに水上レーダー損傷…通信は、受信のみ出来ますが…」

 

 

「そうか…」

 

 

「あと、あの飛行物体の武装を、砲雷撃科の皆さんと確認したところ、20ミリと7.7機銃。最後に爆弾が一発です。」

 

 

「あの飛行物体にも武装か、何がなんでも横須賀に持ち帰らねば……」

 

 

幸子はましろに各部の被害状況は、深刻で、特にさっきのアドミラル・グラフ・シュペーとの戦闘で第三主砲は、損壊し修理は、不可能。更に機関も逃げる時に無理をした為、現在修理中。弾薬も残り少ない状況だったことを報告をする。

 

未確認飛行物体=二式水上戦闘機の武装も報告し、タブレットに記し保存し、更に横須賀へ持ち帰ることを検討している。

 

 

「航行に必要な所の修理最優先でどれくらい掛かる?」

 

 

「機関だけなら後8時間くらいですね」

 

 

「先ずは、其処からだな…」

 

 

ましろはそう言うと伝声管へと向かい

 

 

「…機関長!動きながらで大丈夫か?」

 

 

伝達管で麻侖に確認を取る

 

 

『何とかする〜!でも、巡航以上は、出せねいぜ~!』

 

 

麻侖は、機関を修理しながら、答える。

 

 

「分かった!!……巡航で学校に戻る最短コースで良いですね…艦長?」

 

 

麻侖の言葉にましろはそう返事をし、そして明乃に伝えるが、先ほどの武蔵の件で動揺していて気が抜けている為、全く反応がなく、すると五十六が明乃の頭の上に乗っかり、尻尾で叩くにも全くの反応なし。

 

 

「艦長!!」

 

 

ましろは、大声で叫んだ。

 

 

「えっ!?…シロちゃん、何?」

 

 

ましろの呼び出しに明乃は、ようやく気付く。

 

 

「はぁ、気持ちはわからなくはないですが、しっかりして下さい!!」

 

 

「ごめん、つい…」 

 

 

ましろはため息をついてそう言い明乃は謝るのであった。

 

一方、通信室では鶫が鼻歌を歌いながらスマホをいじっていた

 

 

「…ん?」

 

 

突然、どこかの通信を傍受する。

 

 

「海上安全委員会…」

 

 

傍受した内容を鶫は、スマホに記録する。

 

そして傍受した内容をまとめた鶫はその内容を

幸子に連絡する。そして幸子は明乃たちのもとに向かった。

 

 

「八木さんが、緊急電傍受したそうです」

 

 

「「 何所から!? 」」

 

 

「海上安全委員会からの広域通信ですね」

 

 

「広域通信…?」

 

 

幸子が通信内容が書かれたタブレットをましろと明乃に見せ、それをましろが読み上げる

 

 

「え~と…現在、横須賀女子海洋学校の艦艇が逸脱行為をしており、同校全ての艦艇の寄港を一切認めないよう通達する…また、以下の艦は抵抗するようなら撃沈しても構わない…航洋艦晴風!?」

 

 

内容の中に晴風の名前が記載されていた事にましろは、驚く。

 

 

「げ…げき…」

 

 

「撃つのは、好きだけど…撃たれるのは、やだぁ~!」

 

 

撃沈という言葉を聞いて志摩と芽衣が頭を抱え動揺する。

 

 

「何所の港にも寄れないって事?」

 

 

「そう言う事だろ?…」

 

 

「私たち完璧にお尋ね者になってるよぉ~!!」

 

 

明乃とましろの言葉に鈴は涙目でそう嘆くと、明乃は先ほどの武蔵の緊急通信を思い出す。

 

 

「もしかして、武蔵も同じ状況なのかも…だから、非常通信を…」

 

 

「こっちと違って、簡単に沈むような艦じゃない」

 

 

「でも、助けを求めてた…だから…」

 

 

「我々の方が助けが必要だろ!!それに、実技演習もしてない私達が如何やって助ける気だ!」

 

 

明乃の言葉に、ましろは大声で言う。そしてましろはこう続けた。

 

 

「艦長、気持ちは私にも少しはわかります。ですが今はこっちを…みんなの安全を優先するべきです。学校へ戻る方針を変えるべきじゃない…武蔵の事は、学校に報告して任せよう」

 

 

現状を見て今はここ、晴風の乗員の安全を優先すべきと考えたましろは武蔵の事は、学校に任せ、我々は、学校に帰投すべきである事を告げる。

 

そしてそれを聞いた明乃は少し考えると小さくうなずいた。

 

 

「わかった…シロちゃんの言う通り、学校へ戻ろう。」

 

 

「うぃ」

 

 

明乃はそう言うと志摩もうなずく

 

 

「じゃあ私が艦橋に入るから、皆は、休んで」

 

 

「うぃ?」

 

 

明乃はみな休むように言うと志摩が首を傾げ幸子が

 

 

「今夜の当直は私と鈴ちゃんです」

 

 

タブレットを動かし当番の予定表を明乃に見せる。そしてましろも

 

 

「正しい指揮をする為には、休むのも必要です」

 

 

そう二人が言うが明乃は

 

 

「私は大丈夫だから‥‥」

 

 

そう述べた。だが

 

 

「良いから休んでください!!」

 

 

「うん…分かったよ…シロちゃん」

 

 

ましろの剣幕に明乃はしぶしぶ承諾し、休むため艦長室へと向かうのであった。

 

そしてましろは明乃が艦長室へ向かったのを確認する。

 

 

「やれやれ…」

 

 

呟きながら、ましろ艦橋を出る

 

 

「あれ?副長。そっちは医務室ですよ?」

 

 

幸子がそう言うとましろは

 

 

「私は休む前に、あの物体に乗っていた男を見てみたい」

 

 

背を向けたまま幸子に言い、その場を去るのであった。

 

 

医務室

 

 

「美波さん、失礼する……留守か……」

 

 

ましろが医務室の扉をノックし、入室。

美波が留守の時、ましろはシュペートの乗員が眠るベッドの隣のベッドに眠る、二式水戦のパイロット、大賀虎雄を見つめていた。

 

 

「(この男が大賀虎雄……)」

 

 

沖田新一郎と金城幸吉、秋山俊郎が背後に写る南洋のラバウルの花吹山と零戦と零観にて、モノクロ写真に写っていた9人の内の一人だった。

彼が所持していた二式テラ銃と南部十四年式拳銃。

そして新一郎と幸吉が所持・装飾した、同じ短剣だった。

 

 

「(この男のせいで…私の…)」

 

 

ましろは横須賀の諏訪神社で二式水戦を目の当たりにしてから不幸がつづいた。

入学以前、武蔵の乗艦ミスで比叡に乗艦。神社のおみくじの悪さ、入試でのミス。

心の底から怒ったましろは銃を選択した。だが、下手に撃てば銃声でみんなに気付かれるのを恐れ、短剣に変更して手にして、鞘から刃物を抜いた。

 

 

「っ!」

 

 

「ん…副長…!?」

 

 

「あっ…美波さん…」

 

 

保健の美波が医務室に戻り、ましろに振り向いた時、彼女は短剣を咄嗟に隠した。

 

 

「何か用か…?」

 

 

「い…いや、あの飛行物体の…搭乗員が気になったから…失礼する!」

 

 

ましろは短剣を持ったまま医務室から出ていった。

 

 

そして同じころ艦長室ではベッドに転がった明乃が浮かない表情をしていた。 

 

 

「(もかちゃん…助けに行きたい…でも、今は…教えて虎ちゃん…)はぁ~もっと艦長として、しっかりしないと…」

 

 

明乃は、そう言いながら眠りにつく。

 

 

その頃、晴風のすぐそばの海域で海の中、二隻の潜水艦が動いていた。

 

 

 

 

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