4月9日
10:00
東京拘置所
晴風と二式水上戦闘機が無事に伊号第201潜水艦、ガードフィッシュの脅威から脱した頃、東京拘置所に幽閉されている沖田新一郎は、取り調べの為、両手を手錠で拘束されたまま、特別取調室へと向かっていた。
「…」
拘束されてから、4日が過ぎ、新一郎の顔は少し頬が剥れ、髪と鬚が伸びていた。
東京拘置所、特別取調室
東京拘置所の特別取調室は、凶悪犯罪者などを取り調べる為に特別に作られた部屋で外を見る為の窓が一切なく、唯あるのは大きな鏡(マッジクミラー)が有るのと真中に机と椅子が2つあるだけの撒布系の部屋であった。
特別取調室に連れて来られた新一郎は、両手を手錠で拘束されたまま、取り調べを受ける。
しかし、検察官2人がかりで何度も新一郎を問い詰めても、新一郎は、断固として落ちなかった。
「いい加減にしろ!!」
「…」
「いい加減、認めたら如何ですか、沖田監督官!…もう証拠も有るのだし、此処は、潔く罪を認め、刑に服するべきです…そうすれば、いくらかの恩赦を受けられるよう我々が保証してあげましょう。」
今度は潔く罪を認めれば、いくらかの恩赦を受けられるよう取引を持ちかけてきた。
「何で、やってもいない罪を認めなければならないんだ!!…それに、その証拠が本物か如何か見せて貰おうじゃないか!!」
しかし、新一郎は挫けず無実を訴え、証拠を見せるよう逆に要求する。
「な、何だと!?」
「貴様!!犯罪者の分際に我々を脅す気か!?」
「脅すなんて別に…俺は、有罪に出来る程の証拠を見せろと言ってるだけじゃないか?」
「ふざけるな!」
「ふざけるのは、貴様らの方だ!!」
数時間も同じ状態が続き、結局、少し休憩する事になった。
休憩中、新一郎はある事を思う。
「(…いつまで、こんな事を続ける気だ?…いい加減、うんざりしているんだが…)」
いつまでこんな事を続ける気か、新一郎は心中で呆れていた。
「(今頃、皆如何しているのだろうか?…無事で居るのか?…そう言えば、キャサリンさんとエマとエミリーは、大丈夫だろうか?…トム…虎雄を頼む…)」
そんな時
「!?」
突然ドアが開き、中からさっきの検察官2人ともう1人、虹川雪男が入ってきた。
「また虹川か?何度やっても同じ事だ…!」
また続きかと新一郎は平然と笑う。
ホワイトドルフィンの保安部の制服を着た、虹川雪男だった。
「…私は、管理局顧問の黒潮鈴江の使い出で来ているのだよ!」
「黒潮の犬が何のようだ?それに南方局長はどうした!?」
黒潮の使いだと知って驚き、南方はどうしたのかと聞く。
「南方局長は任を解かれ、今は謹慎中その代理として、私の上司、黒潮鈴江が国交大臣代行に就任した。」
「あの悪女か?」
南方の謹慎を知り、新一郎は何故だと問う。
「それは貴方が素直に我々に協力しないからですよ沖田監督官!…素直に協力すれば、こんな事にならなかったものを…」
「ふざけるな!!…誰がお前らに協力などするのか…協力するぐらいなら、死んだ方がましだ!!貴様らは…海賊との裏ルートを…ぐはっ…」
新一郎の海賊との言葉で、虹川が彼を殴った。
「ふん!……本当に、馬鹿な男だ!それに…何でお前なんだ!!」
「……ん?」
「何であいつは俺じゃなく、お前を選んだんだ!!」
突然、虹川は態度を変え、新一郎を問い詰める。
「な、何だ?何の事を言ってるんだ…?」
突然妙な事を言われ、新一郎は何の事か分からなかった。
「惚けるな!!…お前が俺から真霜を取ったせいで、俺がどんな目にあったか!?……お前さえ…いや…飛行機が現れなければ、真霜は、俺の物になっていたのに…」
新一郎がこの世界に来る前から、虹川と真霜は恋人の関係だった。
だが、それは単なる思い込みで真霜は、虹川に興味は無かった。
昔は小悪党のグループリーダーで、悪さをしていた事や、同期をたぶらかし彼女に好意を抱いている虹川は、真霜はこれっぽっちも興味が無い。
虹川もブルーマーメイドの真霜しか目に入らず、真霜に内緒で密かに追いかけていた。
だが、以前に横須賀の空を飛行した二式水上戦闘機と呉の空に現れた新一郎との出会いで真霜は変わった。
そして、飛行機を探索調査する真霜は、異世界から飛行機を扱う新一郎の元に行ってしまった。
真霜のストーカー行動がばれ、親から勘当を言い渡され、虹川は出世コースから外され、危機的な状態に落ちいたが、黒潮の人脈で親との勘当は免れ、虹川は黒潮の恩に報いる為、今まで海賊と悪事を重ねてきた。
いつしか真霜を自分の物にし、更に横取りし、自分をこんな目に合わせた新一郎とその仲間達に復讐する事を胸に秘めた。
「へっ…欠伸が出て聞いて呆れる…(そう言えば真霜は…こいつと何度か遭って、嫌ってるんだろう…だから彼女は、こいつの名を口にしなかった…)」
新一郎は、真霜が虹川の名を言わなかった事に気づく。
「まあ良い、どうせお前はもう終わりだ…晴風も間もなく処理される」
「な、何だって!?…おい!…晴風を処理するとはどういう事だ?…まさか!?」
晴風処理を聞いて、新一郎は、驚く。
「察しの通り!…晴風には、既に撃沈命令が下っている…それに貴方には、さるしまを大破した叛逆罪で起訴が決まっている。」
晴風撃沈命令と新一郎の起訴を彼に告げる。そして、どさくさ紛れに水戦を略奪する
「貴様、何を考えているんだ!!…相手は、学生艦なんだぞ!!…撃沈すれば乗っている生徒は如何なるか、分かってるのか!!」
晴風撃沈命令を聞いて新一郎は、激怒する。その中の乗員が、大賀虎雄との繋がりを探りたかった。
「そんなの知った事か!…私には関係のない事だ…」
虹川は晴風を撃沈しても何とも思わなかった。
「お前、それでも人間か?…俺は、如何なっても良い…だから、晴風を助けてくれ、頼む!!」
新一郎は自分の身を省みず、イーグルの仲間と晴風を救う様、虹川に頭を下げて嘆願する。
それを見た虹川は
「フフハハハ!!…惨めだね沖田監督官!誇りある元帝国海軍の士官が聞いて呆れるわ!!」
新一郎の姿を見て嘲笑う。
「まあ、助けられないと言う訳でもないが……」
晴風を助けられると虹川は言う。
「本当か?」
晴風を助けられると聞いて、表情を変える。
「但し条件がある」
「条件?」
晴風を助ける代わりに虹川は、新一郎にある条件を突き付ける。
「晴風を助ける代わりに、イーグルで残された零式水上観測機と飛行機の技術を我々に提供する事だ。そして、真霜を引き渡せ!」
晴風を助ける代わりに、守っていた零観などの飛行機の技術を引き渡せと言って来たのだ。
だが、零観を収納している格納庫に鍵を掛けて、封じていたために、手を出せなかった。
更に、真霜を引き渡す要求を出した。
だが
「ふざけるな!!そんな条件が飲めるか!!」
新一郎は断じて拒否する。
「良いのか…?断れば晴風は救えんぞ!?」
「ん…」
新一郎は悩む。
「如何する?」
考えた結果
「悪いがそんな条件は呑めない!!」
拒否を選んだ。
「晴風とイーグルが如何なっても良いのか?」
「確かに晴風は心配だが、俺の仲間たちは、地獄のような戦場で戦った身だ!…こんなの切り抜けられる!!」
新一郎は、虎雄が晴風の生徒を守りながら学校に戻れる事を信じていた。
「ふん!…そんなに仲間を信じるなら、面白い時間になってきたな…」
「あ…ぐぐぅ…ああぁ……!!」
新一郎の身体が震えて、口から唾液と泡が吹き出すほど苦痛を浴びていた。
以前に注入されたのは、真実の血清と言われる強力な自白用の麻薬で、注入されれば洗いざらい吐き、副作用として廃人になる。最悪の場合、死に至る。
「さて、そろそろしゃべってくれませんかね?……でないと、薬がないと生きていけないよ…?」
虹川は、真実の血清が入った注射器を新一郎に見せつける。
「…ああぁ…やめろ!!…これ以上…注入するな…屈しない…屈しないぞ…!!…ゴホッ…ゴホッ…」
「ふん!好きにしろ!」
「へっ…好きにするぜ………飛行機ってのは…女を抱くように扱うんだぜ…」
「…なんて屁理屈を…この野郎!!」
虹川は怒り、所持する拳銃を新一郎の頭部に向けた。
「へっ…撃つなら撃て……俺を撃ち殺したら…機体を強奪しても…搭乗するパイロットの……育成が…出来ん…ぜ…」
その言葉で虹川は、拳銃のグリップを握り絞め、ホルスターに入れた。
「こいつを牢に閉じ込めておけ!!」
「「 はいっ!! 」」
虹川は二人の検察官に命じ、新一郎を牢獄に閉じ込めた。
牢獄
「くそっ…この苦痛は……あの戦争で…命を奪った罰だな………あぁ…な…なんだ…?……あぁ……十三……洋介……進次郎…」
新一郎は牢獄の中にて、薬物の副作用の幻覚で、あの戦争で命を奪った敵と自身が関わる味方、そしてラバウル六勇士の一員、戦場で散って逝った戦友の厚木十三と桜井洋介。
取り残された実弟、沖田進次郎の幻覚を見た。
「……真霜…真霜…まだ見ぬ子よ………一目…見るまで死なんぞ…死なんぞ…ぐ…!」
ホワイトドルフィン 東京基地
「くそっ…なにがなんでも…飛行機を……」
虹川が執務室で苛立つ中、一人の側近が入室、報告した。
「先程、入ってきた情報によりますと…昨夜、晴風は和歌山沖で東舞校所属の教育艦伊201と戦闘、伊201とアメリカのハワイ高校所属のガードフィシュを航行不能にし、その後逃走したとの事です」
昨夜あった晴風と伊号第201潜水艦、ガードフィッシュとの戦闘を虹川に報告する。
「被害は?」
「艦は航行不能になりましたが、生徒全員は無事に救助されたそうです」
「そうか…でも、晴風はどうした?」
伊号第201、ガードフィッシュ潜水艦の生徒全員が無事であり、晴風を述べながら睨んだ。
「その事ですが…報告にはまだ続きが…」
側近から、もう一つの報告を聞く。
「何?」
「救助された生徒の話によりますと、ガードフィッシュの生徒が空飛ぶスキッパーに機銃掃射の攻撃され、そのスキッパーが晴風と行動の主張をしているんです」
「そうか…ならば、保安部の精鋭隊員の数人を晴風を探すんだ!!」
気が狂った様に、晴風を探せと部下に命じる。
「は、はい!!」
虹川は機体を奪う為、晴風の捜索を密かに開始した。
だが、広い太平洋をどう探すのか、そこで宗谷真霜の元にスパイを密かにつける事にした。
横須賀ブルーマーメイド基地、作戦本部
一方その真霜の方では、監禁されている新一郎を救い出すべく、母親の真雪と協力して、虹川より先に晴風の保護をすべく動いていた。
「その後、晴風の情報は?」
真霜は現在の晴風の情報が無いか、情報を集めていた。
救助された伊号第201潜水艦、ガードフィッシュが先に晴風を攻撃したと主張していると、生徒からの報告を受ける。
「…引き続き、晴風の情報収集及び捜索を続行して!!」
「はいっ!」
何が起きているのか掴むべく、真霜は引き続き、晴風の情報収集及び捜索を続行するよう命じた。
「(…待っていて新一郎!…絶対に貴方の無実を証明してあげるわ!)」
真霜は、新一郎の短剣を両手で握りながら無実を証明すべく、再び晴風の捜索を続行する。
齎された情報は、全て晴風の捜索を行っている平賀と福内に送られた。
送られた情報を元に平賀と福内は、二手に分かれて捜索する。
しかし、平賀と福内は気づいていなかった。
2人の動向は、逐一虹川達に筒抜けだった。
その為、虹川は2人のうちどちらかが晴風を見つけたら、直ぐに先に確保するよう命じていた。
その事も知らず、平賀と福内は晴風捜索を続行する。
横須賀女子海洋学校、校長室
「そうですか…」
その頃、横須賀女子海洋学校では真雪が校長室で、今回攻撃した側の東舞鶴男子海洋学校校長と電話会談をしていた。
「東舞校長は何と?」
「晴風捜索に協力を申し出てるわ!!」
教頭に電話会談の内容を話す。
「それは、此方にもありがたい事です」
「艦の現状は?」
「現在、全艦寄港命令で帰投中です…間宮、明石、舞風、浜風は、晴風の捜索中…」
現在、海洋実習に出ている艦艇は、全て真雪からの全艦寄港命令に従い帰投中。
間宮、明石、舞風、浜風は、晴風の捜索の為、別行動を取っていた。
「……引き続きブルーマーメイドと協力して、晴風捜索を続行。そして、ライジングイーグルの隊員、トム・K・五十嵐の保護最優先を」
「はっ!」
こうして真雪は、東舞鶴男子海洋学校の協力を経て、晴風捜索を続ける。
しかし、真雪は知らなかった。
武蔵以下、海洋実習に出ていた艦艇が密かに次々と通信が途絶え始めていると言う事を
日本近海 高知沖
「あ~あ…燃料が危ういな…」
洋上でスキッパーに股がるトム・K・五十嵐は、黒潮、虹川から横須賀から脱出して数日、幾度も虹川の追手と戦闘を繰り返しながら四国近海に浮かんでいた。
「バカスカ燃料を食っているな…スキッパーよ…さて……この四国近海で…一番近い補給拠点は…」
トムはタブレットを立ち上げ、地図で付近を確認した。
「…あ…四国オーシャンモール……補給しないよりマシか……」
トムは四国オーシャンモールに向けて海上を走った。
「(ウィル機長、沖田さん、シャルロット…幸吉…トチローさん…キャサリンさん…エマちゃん、エミリーちゃん…無事でいてください…)」
トムはバラバラになったメンバーを心中、無事を祈ることばかりであった。
大賀虎雄と二式水上戦闘機、晴風を保護する者、狙う者が晴風を捜索する。
果たして晴風を見つけるのは、青人魚か、海鳥か、白いイルカか?