ハイスクール・フリート   ~空を翔る鳶と海虎~   作:鷹と狼

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第24話 虎の交流と乙女の買い出し

 

 

 

 

4月13日 早朝 晴風 後部甲板

 

 

大賀虎雄は自身の愛機、二式水上戦闘機を点検して、頭を悩ましていた。

 

 

「畜生…アメ公の潜水艦め、ワシの愛機に穴を空けやがったな……!!」 

 

 

ガードフィッシュとの戦いで、唯一装備する対空機銃により被弾、胴体はまだしも、フロート部分と発動機の後部にある燃料タンクに穴が空き、燃料が漏れて空になった。

 

その他に胴体と翼の鋲が跳んで、機体はガタガタ。下手すれば空中分解をしかねない。

 

朝からの機体の応急処置で、晴風乗員が虎雄と二式水上戦闘機について質問したり、女子たちが所持する板状の所持物で、内蔵するカメラで記念写真、写された写真はモノクロではなく、天然装飾された写真であり、所々驚愕した。

 

 

「はぁ…全く…この時代と世界の人間は、当たり前の様にカメラを持っておるな……」

 

 

「おお〜!これが、別の世界からやってきた空飛ぶ飛行機械か~!」

 

 

続いてシュペー乗員の副長、ヴィルヘルミーナが自ら後部甲板に置く二式水戦を見物にやってきた。

 

 

「ん…?…えっと…ヴィルヘルミーナさん!ヴィルヘルミーナさんも見物か?」

 

 

虎雄は見物にきたミーナに挨拶をした。すると、彼女の顔は驚愕していた。

 

 

「っ!…君は…ドイツ語が喋れるの…?」

 

 

「ドイツ語……?何を言う、ワシはドイツ語どころか、英語はさっぱりじゃ…」

 

 

「さ…さっぱりにしても……君は日本訛りもなく流暢過ぎる……どこで習ったの…?」

 

 

「ん…どこで習ったと言えども、ワシはパイロットを育成する佐世保海軍航空隊出身じゃ。ミーナさんは、なんでこのアジアに来たんじゃ?」

 

 

虎雄はミーナに極東の日本近海までの航海を質問し、彼女は深刻な顔をした。

 

 

「我等がアドミラル・シュペーか…」

 

 

「そうじゃ…あっ、だが言いたくなかったらいいんじゃ…」 

 

 

「いや、私もよくわからないが聞いてもらった方がいい」

 

 

そう言うとミーナはあの時、シュぺーで何があったのかを思い出しながら虎雄に話した。

 

 

「我らの艦は横須賀校との合同演習に参加する予定だった…」

 

 

「日独との合同演習…」

 

 

虎雄はシュペーとの合同演習のため、気まずそうな感じで目を見開かせた。

 

 

「私らは合流地点に向かっていたんだが、突然電子機器が動かなくなって調べようとしたら、誰も命令を聞かなくなった‥‥」

 

 

「それって叛乱?」

 

 

「わからん、私は艦長から付近に航行するこの晴風に知らせるよう命じられて脱出してきた」

 

 

「艦長?」

 

 

「私は必ずシュペーに戻らなければ、必ず…」

 

 

そう話すミーナの瞳には明確な決意が宿っていた。

 

 

「分かった、ワシも手伝うぜ!」  

 

 

「え?」

 

 

「ワシもよく分からんが、この世界に送られた意味があるかも知れんからな」

 

 

虎雄もミーナが戻れるように手伝うと言うと、ミーナは虎雄の方を見る。

 

 

同舟相救う、その船を同じくして渡りって、風にあおればその相救うや左右の手の如し。

 

先ほどの医務室で、ミーナは美波にことわざをそう言われたことを思い出した。

 

平素は敵どうしでも、いざと言う時には助け合う。つまり、敵同士でもいざと言う時は、お互いに助け合うべきだという意味だ。

 

 

「他人ごとではないが、協力しますよ。ヴィルヘルミーナ副長!」

 

 

虎雄はミーナに対して敬礼をした。だが、彼女は手を差し出した。

 

 

「私は副長と言えどもまだ学生の身だ、年齢としては君が年上だ、私のことはミーナと呼んでくれ!」

 

 

「わかった、ワシは虎雄と呼んでくれ」

 

 

「あ…///」

 

 

虎雄はミーナと握手し、彼女の心臓の鼓動が鳴り、赤面した。

 

 

虎雄は一人になったところ、短剣を所持する生徒が、連装砲の影に立っていた。 

 

 

「すぅ~…はぁ~…」  スチャ

 

 

深く呼吸し、刃物を鞘から抜いた時

 

 

「ぬ…」

 

 

「っ……うわわ~……!!」

 

 

生徒が猫に驚き、その場を去った。

 

虎雄が水戦の応急処置をなんとか終わらせた時、ある猫が虎雄に近づいた。

 

 

『成がでるな、大賀君!』

 

 

「あっ、元帥!」

 

 

虎雄の元にやってきたのは、どら猫の五十六。

 

教室の自己紹介の後、虎雄は艦艇に猫が乗艦していることにやや疑問を感じつつも、猫好きであった。

 

だが心の中に声が聞こえ、その猫こそがあの戦時のブーケンビル島上空で命を落とした、山本五十六元帥であったことに驚愕した。

 

猫になった五十六は、横須賀にて元ラバウル六勇士の沖田新一郎大尉、ペアの金城幸吉一等飛行兵曹、整備士の秋山敏郎兵曹長と再会。

 

かつての敵、アメリカ軍のウィリアム・J・スパロウ少佐、日系人のトム・K・五十嵐少尉、従軍看護婦のシャルロット・F・トラインがこの世界に転移した。

 

零式水上観測機、PBY-5カタリナの愛機ごと転移。敵味方を越え、海洋救難の任務に着く部隊を編成した。

 

そして、六勇士のパイロットである大賀虎雄を探索することも第一に、海原を飛んでいた。

 

 

「全く、信じがたい話と編成ですよ…まぁ、沖田さんならやりかねませんね。…フィリピンで戦死した厚木隊長は喜びますが…あの戦争で多くの敵を殺し、味方を見殺しにしての罪滅ぼしになりますから…」

 

 

『そうか、私も君たちの手を殺戮の血に染めてしまったことに謝るよ。』

 

 

「いえ、元帥がはみ出しの水上戦闘機パイロットのワシをラバウル六勇士の一員に指名して頂けたことに感謝しています!あの部隊で厚木隊長や沖田さん、洋介と進次郎、幸吉たちの出会いがなければ、ワシは愛機と共に殺戮者となり、戦場で命を落としていました。そして、沖田さんたちと再会するのが楽しみですよ」

 

 

『そうか…』

 

 

一人のパイロットと猫が海を眺めている時、五十六は笑みを浮かべながら言った。

 

 

「大賀君、この晴風に彼女になる娘はいたかね…?」

 

 

「なっ…元帥…///」

 

 

五十六の言葉で虎雄は赤面した。

 

 

「実はな、この世界でスパロウ少佐はハワイで生き別れた妻と双子の娘さんと再会。沖田君はなんと、横須賀で由緒ある家系の女性と結婚の約束をしている」

 

 

「へぇ〜沖田さんが…って!…えぇ!?」

 

 

かつて勇士の一員で、上官である沖田新一郎は、この世界に転移して1ヶ月。晴風副長、宗谷ましろの姉、宗谷真霜と婚約を交わしていることに虎雄は驚愕した。

 

 

「はぁ…沖田さんが…それに弟の進次郎が驚くな…残ったあいつに義姉ができたか…」

 

 

「そう言うことになるな、…ところで、私が亡くなった後、譲った短剣は持っているかね…?」

 

 

「っ!……元帥…それが……」

 

 

短剣の言葉で虎雄は気まずくなった。

 

山本五十六が亡くなった後、虎雄たち六人のパイロットたちは、上官から短剣を受領。ラバウル六勇士を編成した。

 

1944年の3月、戦局は悪化を辿り六勇士は解散。なお、解散しても六人は短剣を所持し続けた。

 

シンガポールに配属した虎雄は、マラッカ海峡から大事に飛行服の懐に納めながら、この世界に転移。

 

ドイツ艦アドミラル・グラフ・シュペーの奮戦で気絶し、晴風に回収した後に紛失した。

 

 

「そうか…まぁ気にするな、猫のわたしがこの晴風の艦内を捜索する」

 

 

「元帥…色々とすみません…」

 

 

頭を下げて深々と謝罪する虎雄。

 

艦長の明乃がスピーカーで交代と見張りの者だけを残し、大部分の生徒は晴風の教室に集められた。

 

 

晴風、教室

 

教室に集まった生徒達は突然の招集に何事かと思い、教壇に上がった媛萌と百々が今回、全員を招集した理由を話し始めた。

 

 

「日本トイレ連盟によると、女性が一日に使うトイレットペーパーの長さの平均は12.5m…うちのクラスは30人、航海実習は2週間続く予定だったので、余裕を見て250ロールは用意していたんです…それが…」

 

 

「日本トイレットペーパー連盟…?つまり何が言いたいんじゃ和住さん?」

 

 

何が言いたいのか、虎雄は答えを迫る。

 

 

「つまり…もうトイレットペーパーがありません!!」

 

 

『ええ…!?』

 

 

トイレットペーパーが無いと言う現実を告げられ、皆は驚愕する。

何故トイレットペーパーが無くなったのか、理由を詮索すると

 

 

「誰がそんなに使ったの!?」

 

 

「このクラス、トイレ近い人ばっかなの?」

 

 

辺りで責任の追及を始めた。

 

 

「1回10cmに制限すれば?」

 

 

「えー困る!?」

 

 

なかに桜良と空が、トイレットペーパーの制限案も出したが、直ぐに却下された。

 

 

「誰よ!?…無駄に一杯使ってんのは?」

 

 

芽衣までもが犯人を探ろうとした時

 

 

「あ…でも私トイレットペーパーで鼻もかんじゃいます…」

 

 

何とトイレットペーパーの使い過ぎを幸子が自ら自供した。

 

 

犯人は幸子だけかと思ったら

 

 

「すいません!…私、持ち込んだティッシュが無くなったので、1個通信室に持ち込みました!」

 

 

更に鶫が、自分の持ち場にトイレットペーパーを持ち込んだことを白状した。

 

 

「食堂でも見たよ、ロール」

 

 

「ちょこっと拭くのに便利なんだよね!」

 

 

「うん便利!便利!」

 

 

続いて果代子の目撃情報で、杵崎姉妹が使った事を白状した。

 

 

「あ…ワシも…愛機のオイルが漏れて、あの紙で拭き取ったな……」

 

 

虎雄自身も、トイレットペーパーを使用したことも、気まずそうに自白した。

 

 

「全く、どいつもこいつもすっとこどっこいだなぁ…」

 

 

そんなやりとりを聞きながら麻侖が鼻を鳴らした。 

それから、殆んどの生徒がトイレットペーパーを無断で使用した事が明らかになった。

 

無くなった原因が無断使用と皆の我慢の忍耐力が無い事が分かり、虎雄は呆れてしまう。

 

 

「如何しよう…無くなったら、おトイレ行けなくなるのかな…」

 

 

鈴が今後のトイレの不安を言う。

 

 

「……」

 

 

「ぬう」

 

 

横では、志摩が今後のトイレ問題が深刻化する時に、手製の猫じゃらしで五十六と遊んでいる。

 

 

「それもこれも、日本のトイレットペーパーが柔らか過ぎるのが駄目なんだ!…だからつい沢山使ってしまう!」

 

 

ミーナが席から立ち上がり、日本のトイレットペーパーの素晴らしさを力説する。

 

 

「蛙鳴蝉噪」

 

 

トイレットペーパーの問題で論争する生徒を見て、美波がポツリと呟く。

 

 

「戦争だと!?」

 

 

ミーナが美波の聞こえた言葉の部分に反応する。

 

 

「意味は「五月蠅いだけで無駄な論議」って事ですよ!」

 

 

幸子がミーナに蛙鳴蝉噪の意味を教える。

 

 

更にトイレットペーパーの論争が激しくなり、収拾がつかなくなる。

 

 

「艦長、まとめて下さい!!」

 

 

それを見かねたましろは、明乃に皆をまとめるよう指示する。

 

 

「あ、うん…み、みん」

 

 

「静かに、…皆、落ち着け!」

 

 

明乃が皆をまとめようと言おうとした時、虎雄が代わりに皆の論争を止める。

 

虎雄の一声に皆は論争を止め、彼に注目する。

 

 

「では、艦長!」

 

 

注目したところで、直ぐに艦長である明乃に交代する。

 

 

「は、はい…皆!!…他にも足りない物、必要な物ない?」

 

 

明乃がトイレットペーパーの他に何か不足している物は無いか皆に尋ねる。

 

 

すると

 

 

「魚雷!」

 

 

「ソーセージ!」

 

 

「模型雑誌!」

 

 

「真空管…」

 

 

何とも、今、必要が無い物ばかりが出る。

 

4人から出てきた意見を虎雄は、呆れながら息を吐いた。

 

 

「これから学校へ戻るとすると、2日は掛かる…何とか物資を補給したいところだ」

 

 

「燃料や弾薬は学校経由じゃないと調達できないから、薬品、食料、最低限必要な日用品だけでも、如何にかしたいな…」

 

 

横須賀女子海洋学校まで、丸2日は掛かる。

 

だが、それまで物資が持つか分からない。

 

何とか物資を何所かで調達したいが、今は追われているので、何所の港にも寄港できない。

 

 

「戦闘禁止命令が出ているとはいえ、なるべく他の船には遭遇したくないよね…」

 

 

「位置がバレるんで、通販は出来ないですし‥‥」

 

 

「通販?」 

 

 

鈴も幸子も同意見であるが、虎雄は通販の言葉が気になった。

 

そうなると、残る手は一つ 

 

 

「買い出し行こう、買い出し!!」

 

 

買い出しだ。

 

 

「買い出し?」

 

 

芽衣が買い出しに思いつき、明乃もそれにくいつく。

 

幸子はタブレットで、何所か近くで買い出しできる場所を探す。

 

 

「えっと…確か此処に『オーシャンモール四国沖店』がある見たいですけど…」

 

 

すると、近くにオーシャンモール四国沖店があるのを見つけた。

 

 

「買い物…行きたい!行きたい!」

 

 

「日焼け止め持ってくるの忘れちゃったし」

 

 

「私もヘアコンディショナー無くなっちゃった…皆、私の使うんだもん!」

 

 

買い出しの言葉を聞いて、皆がオーシャンモール四国沖店に行きたくなる。

 

だが今の状況下で、晴風の生徒全員が買い物へゾロゾロと行ける筈がない。

 

 

「確かに、今の状況で皆で楽しく買い物に行く訳には行けません!!」

 

 

「だね…目立たない様に少人数で買い出しに行こう!!」

 

買い物を楽しみにしている生徒達には悪いが、ここは少人数で目立たない様に買い出しに行くしかなかった。

 

 

「艦長!…もう一つ重大な問題が!」

 

 

オーシャンモール四国沖店へ買い出しに行く事が決まった中、突然美海が立ち上がり、明乃にある重大な問題を言う。

 

 

「何?」

 

 

明乃が何かと問う。

 

 

「…お金が……足りません…」

 

 

「…えっ!?…」

 

 

何と買い出しに必要な資金が無かったのだ。

 

美海の発言の内容を聞いて、全員が硬直する。

 

金が無いなら調達するしかない。

 

明乃は艦長帽を脱ぎ、逆さにし

 

 

「トイレットペーパー募金、お願いしまーす!!」

 

 

明乃は皆に、トイレットペーパーの募金を呼びかける。

 

皆もそれに乗じて、ポケットから財布を取り出し、中身を確かめる。

 

しかし、お金が少ないせいか、皆の表情は良くない。

 

中には不満そうな顔の者も居る。

 

 

「宵越しの金は持たねぇ!」

 

 

つまりお金を持っていないということなのだろう。

 

 

「小切手は使えませんわよね‥‥」

 

 

「うん‥多分…」

 

 

楓はお嬢様だから、支払いも小切手。

 

 

「ジンバブエのお金ですが、良いですか…?」

 

 

今度は幸子が、外国の紙幣を出してきた。

 

 

だが外国の紙幣は、銀行で日本の紙幣に変えなければならない。 

 

 

「ワシはユーロしかない!」

 

 

ミーナはドイツからの留学生なので、持っているのも幸子と同じ外国の紙幣だった。

 

 

『ワシ?』

 

 

ミーナの一人称に杵﨑姉妹が聞き間違いかと、ミーナの顔を見ながら聞き返す。

 

 

「‥‥何かワシの顔に付いてるか?」

 

 

周囲の人が自分の顔を見ていたので、ミーナは周りの人に何かと尋ねる。

 

 

「ワシ…!?」

 

 

『きゃはは……!!』

 

 

女学生の一人称にしては可笑しかったのか、周囲から笑い声が立ち始める。

 

 

「な、何が可笑しいんだ…!?」

 

 

皆に笑われ、ミーナは両手を上げ、ムキーッと声を上げた。

 

 

「虎ちゃんは…?」 

 

 

「あぁ…わしのは…」

 

 

虎雄は懐から財布を出し、紙幣があるにも関わらず、旧時代の紙幣であったために使えなかった。

 

「へっ…ここじゃ紙くずか……あっ……そうじゃ!」

 

 

航空半長靴の踵部分から純金の金貨数枚を出した。

 

 

「えっマジ、金じゃん!?」

 

 

「金貨じゃん!!」

 

 

「なんでこんな物を持っているの!?」

 

 

「あぁ、わしは陸軍さんからの要望で、マレー・フィリピンから本土に金塊を運搬する船団の護衛を任務を担い、その報酬じゃ」

 

 

こうして生徒全員は、虎雄が所持する金塊の協力で、何とか資金を確保した。

 

人選は各自でジャンケンで決め、勝った方が行く事になった。

 

 

 

ある程度、決まった人選は

 

 

そして、生徒は艦長の岬 明乃、機関員の和住媛萌、主計の伊良子美甘、保健の鏑木美波の計4人が選ばれた。

 

そして、用心棒である海軍少尉、大賀虎雄

 

5人は怪しまれない様に私服に着替え、スキッパーが置いてある前部甲板に集合する。

 

 

 

晴風、前部甲板

 

 

「それじゃあ私と虎ちゃん、ミカンちゃん、ヒメちゃん、美波さんとで、買い出しに行ってくるから、晴風をお願いね、シロちゃん!!」

 

 

明乃は自分が艦を離れている間、ましろに指揮を委ねる。

 

 

「艦長!?…副長もしくは、宗谷さんと呼んでください…」

 

 

相変わらずあだ名で言われるのが嫌いなましろ。

 

 

「副長、そればっかりですね!!」

 

 

後ろから幸子が突っ込む。

 

5人は、それぞれ2艇のスキッパーに乗艇する。

 

 

スキッパー1号艇

 

 

操縦士

 

岬 明乃

 

便乗者

 

大賀虎雄、伊良子美甘

  

 

 

スキッパー2号艇

 

操縦士

 

和住媛萌

 

便乗者

 

鏑木美波

 

 

乗艇後、スキッパーが海上に降ろされ、2艇はオーシャンモール四国沖店へと向かう。

 

 

海上

 

 

「一度駅に寄って、バスでオーシャンモールに行くから…」

 

 

何所にブルーマーメイド、ホワイトドルフィンの目が有るか分からないので、直接では無く、駅からショッピングモールへと向かう事にした。

 

 

「お忍びで行く訳だな!」

 

 

「ちょっと、カッコイイね!」

 

 

「艦の話とか専門用語を出しちゃ駄目だからね!…それと無駄な買い物も駄目!」

 

 

「卵と生クリームとイチゴを買いたいんだけど…」

 

 

「駄目に決まっているでしょ!」

 

 

「ヒメちゃん、レバーとかチーズとか食べてる?」

 

 

「どっちも嫌いだし」

 

 

「やっぱり~ビタミンB12が足りないとイライラするらしいよ…」

 

 

「してないから!」

 

 

2人は無駄な論争を始める。

 

 

「はいはい、2人とも無駄なお喋りはここまでじゃ!…この通信も傍受されている可能性がある…目的地到着まで、緊急以外は無線封鎖!」

 

 

『ん…』 

 

 

軍隊で経験のある虎雄が、無線で連絡し合い論争を止める。 

 

スキッパー2艇は、オーシャンモール四国沖店へと向かう。

  

 

1号艇

 

 

明乃がスキッパーを操作しながら質問した。

 

 

「虎ちゃんはこの世界に来て休めた…?」

 

 

「あぁ…あの戦時下で、敵が来る度に愛機と出撃して戦った…それが嘘のように感じる……」

 

 

「……わたしたちは…本当の戦争は知らない……SFの類いしかしらない戦場で…虎ちゃんは戦っていたのね……」

 

 

「…わしや…関わる仲間と敵は…戦争になると互いに殺戮者になってた……明乃艦長や美甘ちゃんたち仲間には…そんな地獄を、わしは話しとうない…」

 

 

「…………」

 

 

明乃と美甘は、虎雄の身体が震えていた。彼女たちからして見れば、あの戦争で戦い、生きるのに必死だったのを物語っていた。

 

 

 

晴風、前部甲板

 

 

明乃達を見送り、ましろ達は艦橋に戻る。

 

 

「艦長直々にトイレットペーパーの買い出しとは…はぁ…艦長は、自分の艦に…」 

 

 

「副長がジャンケンで負けるからじゃないですか…10回連続で…あれは、見事でしたねぇ~」

 

 

ましろは、本来なら自分が行くべきだったが、明乃にジャンケンで10回負けたので仕方なく艦に残った。

 

 

「艦長にジャンケンで挑んだのが間違いだった…」

 

 

ましろは自分の運が付いていないのに、運が付いている明乃と勝負したのが間違いだった事につくづく自分の行動に呆れてしまう。

 

 

「ジャンケンはジャンケンでも…負けた方が行くって事にしておけば良かったんじゃないですか?」

 

 

「!?…もっと早く言えっ!」

 

 

幸子からの意外な案が出たが時既に遅く、もっと早く言えとましろは幸子を怒鳴る。

 

 

「きゃ~コワ~イ」

 

 

ましろに怒鳴られ、幸子はまるで子供みたいに逃げる。

 

 

「そもそも副長、スキッパー運転できるのかな?」

 

 

「さぁ…」

 

 

芽衣と鈴がましろにスキッパーの運転が出来るのか、思い詰める。

 

本当は、ましろはスキッパーの免許は持っていないのだ。

 

だから行っても、足手まといになるだけである。

 

その事に本人は、全く気づかない様だ。

 

 

 

 

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