ハイスクール・フリート   ~空を翔る鳶と海虎~   作:鷹と狼

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第2話 空を舞う青人魚

 

 

 

 

 

ブルーマーメイド管轄の呉病院

 

 

 

戦争末期、零観ごと戦争が無いパラレルワールドに迷い込んだ沖田新一郎と金城幸吉。

 

新一郎は確かめたいことがあった。

 

 

 

「あの、宗谷さん!今は何年だ…?」

 

 

「え…2016年です」

 

 

「2016年!?」

 

 

「異世界と言えども、あの戦争から70年…おいらたちは浦島太郎みたいに………なってしまったんだ………」

 

 

 

幸吉のごもっともだった。

 

その場で新一郎たちが来た世界と真霜たちブルーマーメイドの情報について意見を交わした。

 

新一郎と幸吉が来た世界は真霜たちの世界の歴史が一変していた。

 

1914年、第1次欧州大戦が始まり1918年に終結した。

 

1939年に第2次欧州大戦が勃発、1941年に大東亜戦争が勃発。日本は米英に宣戦布告。新一郎は大戦の開戦前に志願し、幸吉は戦時徴兵された航空機のパイロットであった。

 

戦争末期、日本はアメリカ軍の攻撃により国土が焦土、留めを刺すかの様にロシアが日本に宣戦を布告。二人は敵のアメリカ軍が長崎に落とした特殊爆弾に巻き込まれて、真霜たちは戦争が無い世界に飛来してきたのであった。

 

それを聞いた真霜たちは信じられないような顔をしていた。

 

 

「………世界大戦……しかも二度も………」

 

 

「日本が……アメリカとイギリス、………再びロシアと戦争だなんて……」

 

 

平賀と福内は信じられない表情をしていた。彼女たち世界の住人にしてはおとぎ話かSFの類いの話し、そして新一郎と幸吉の愛機の航空機も空想の産物になる。

 

二人は簡単に信じて貰うとは思わなかった。もし、逆の立場なら同じ表情をしていたのかも知れない。

 

 

するとー

 

 

「ねぇ、沖田さん…私の目を見て下さい」

 

 

「え?」

 

 

真霜は新一郎の目を見つめていた。新一郎から見た真霜は思った以上に、天女の様に美しく、麗しい女性であった。そして、真霜が夢で見た鳶を思い出した。

 

 

「…///」

 

 

「あの…///えっと…宗谷さん…顔が赤いですよ…///」

 

 

「あっ!…失礼しました…!それとですね…この飛行物体…いえ、この飛行機の写真は分かりますか?」

 

 

真霜はもう一度ダブレットを開き、別の画像写真を二人に見せた。

 

 

「なに!?…これは、二式水戦……!?」

 

 

「…にしき…すいせん…?」

 

 

「新一郎さん!これは、この機体の垂直尾翼の虎マーク……虎雄さんの…」

 

 

「あぁ、これは!…大賀虎雄だ、……虎雄の二式水上戦闘機だ!!あいつめ、シンガポールのマラッカ海峡で戦死したと聞いたがこの世界に来ていやがったのか!!」

 

 

「宗谷さん!この水上飛行機は…?これに乗っていたパイロットはどこに…?」

 

 

気まずそうな顔をしていた真霜は、窓の海を見つめていた。

 

 

「ごめんなさい、…この飛行機を撮ったのは10年前、横須賀なのよ…」

 

 

「…10年前……そんな……その機体はどこに……?」

 

 

「空の彼方に飛んで、消えました。…ごめんなさい…」

 

 

「いえ、…宗谷さんが謝ることはありません。」

 

 

「そうですよ。空に消えたってことは、まだ虎雄さんは生きている証拠です!」

 

 

しょぼんと落ち込む真霜を見た新一郎と幸吉は、彼女を励ました。

 

 

「ねぇ沖田さん!この飛行機はあなたたちの世界でいつ作られた産物なの?」

 

 

飛行機に興味を持った平賀が新一郎に尋ねた。

 

 

「ん…?そうだな。確か…航空学校の練習生時代に教官の授業で習ったが、日露戦争以前にアメリカのライト兄弟が人類史上初の有人飛行機を発明した。その後、第1次欧州大戦で航空機が活躍し始めそして、我々が戦った大戦では航空機が主に。」

 

 

「そして、空の戦いが中心に成りました…」

 

 

「でも、私達の世界のアメリカでライト兄弟という兄弟は聞いたこともない。恐らくその人達は飛行機を発明出来なかったのでしょうね。それに第1次と第2次大戦も起きていないから、沖田さんと金城さんの言う飛行機は登場せず、私達の世界は気球と飛行船しか存在しないと言う訳ね…」

 

 

「そう言うことになりますね。でも、俺にとっては平和でいいと思います。日露戦争以降、この世界の日本は…いや、世界中はどこも戦争なんてしてないですから…」

 

 

新一郎は寂しそうに呟いた。この世界は人と人の血み泥の悲惨な戦争が無く平和そのもの

であり、羨ましく思った。

 

 

「…新一郎さん…」

 

 

「沖田さん…そうね、私の世界は恵まれているかも知れないわね。」

 

 

「確かに、海洋学生の艦艇も民間に転用されたから…」

 

 

「しかも、この世界では海賊が商船を襲うことがあるから…厄介ですな……」

 

 

幸吉が嘆いた時、互いの状況確認を終えた後、真霜は新一郎と幸吉の今後についての交渉を始めた。

 

 

「さて、ここから本題だけど…あなた方はこれからどうするのですか?」

 

 

真霜は新一郎達にどうするのか問う。

 

 

「我々は大日本帝国海軍の所属だが、最早指揮系統を失った今はどうすることはできない…今は漂流者となった俺は残った愛機と仲間を守る義務がある!」

 

 

それに対して、新一郎は、指揮系統を失った以上、これからどうするかは分からないが、例え異世界に飛ばされても自分の愛機と仲間を守る義務を新一郎は、果たすと告げる。

 

 

「なら、私達の海上安全整備局に所属して臨時隊員はいかがでしょうか?」

 

 

「何!?」

 

 

対して、真霜は、自分と同じ海上安全整備局に入り、臨時隊員になるか提案で新一郎は驚き。

 

 

「そうしたらあなた達の事は、全力で守ります。何よりは、あなた達と機体は守れるでしょ…」

 

 

それを聞いた新一郎は困惑する。

 

 

「悪くない話しだが……何か条件がお有りそうだな?」

 

 

真霜の提案に何か条件があると新一郎は睨みつけた。

 

 

「えぇ、私達が持つ技術とあなた達の飛行機の技術を交換したいの!!」

 

 

「!?」

 

 

「何だって!?…オラ達の愛機の技術を!!」

 

 

真霜の言葉に幸吉は動揺した。

 

 

「沖田大尉、金城一等飛行兵曹。あなた達の元の世界に戻るのは事実上不可能だと判断します!…ですから、どうか宗谷監督官の提案を呑んで下さい!!」

 

 

真霜の側にいた平賀がサポートしながら何とか彼女を呑ませようと頼んだ。だが

 

 

「ん……平賀さんの言うことに異論はない、だが、俺たちは元の世界の戦争で戦った兵士です。幾つかの戦場で敵を…人を…殺し、多くの味方や民間人を見殺してしまった。…俺たちは、血に染められた手でその組織にいる資格があるのか……」

 

 

「…………」

 

 

苦しみながら新一郎はそう言う。それを聞いた真霜たちも海の平和を守るブルーマーメイドの仕事に就いて、戦闘の経験もまして人を殺した事など一度もない。

 

 

海上安全整備局が使用する武器はテロリストや海賊、暴漢などを捕獲するテーザーガンや麻酔弾を使用している。もし、自分たちも二人がいた世界のようにどこかの国の戦争で武器を持って相手を殺すことになれば、考えると真霜たちはその引き金を躊躇なく引く事が出来るのかと思うとゾッとした。

 

 

「…そんな…」

 

 

「オラも同じです。後部座席の電信員でも、情報一つで敵の艦艇を沈めたり、機銃で敵機を落としたりした…」

 

 

新一郎と同じく幸吉の瞳は暗くなり、病室も暗く哀しい雰囲気に包まれた。

 

 

「沖田さん、…あなたの心を否定してでも、生きて!生きてください!!生きることが、戦争で死んだ人達の分も生きるこそことが、あなたの罪滅ぼしです!!」

 

 

「…くっ…しかし………」

 

 

「………ぬちどぅ………たから……」

 

 

「「「 えっ? 」」」

 

 

幸吉の一言で真霜たちは注視した。

 

 

「ぬちどぅ宝!!………宗谷さんの言う通り……オラたちは………生きなければなりません!でなければ、厚木隊長に怒られますよ!新一郎さん!」

 

 

「……十三……」

 

 

新一郎は思い出した。

 

海軍士官学校の同期である厚木十三は初陣の日華事変から戦ってきた生粋の飛行機乗りであり、人一倍に飛行機に執着していた。43年にラバウルで再会して当地でラバウル6勇士を結成。1945年2月、フィリピン決戦で戦死するまで戦った。

 

そして、幸吉が述べていた『ぬちどぅ宝』。ラバウル6勇士の訓辞の一つだった。

 

 

「そうだな、…戦死した十三に笑われる…」

 

 

新一郎は目を閉じてゆっくり考えた。

 

 

「……日本海軍大尉、沖田新一郎。」

 

 

「日本海軍一等飛行兵曹、金城幸吉。」

 

 

「これより両名はブルーマーメイドの臨時隊員として命ぜられました!!」

 

 

新一郎、幸吉の両名はベッドから立ち上がり、ブルーマーメイドの宗谷真霜、平賀倫子、福内典子に対して敬礼した。

 

 

「改めてさせて、よろしくお願いします!沖田さん、金城さん。」

 

 

「あの、あなた達の所持していた拳銃とクロスボウ、短剣をお返しします…っ!?」

 

 

福内倫子が二人が所持していた南武14年式、94式拳銃とC96拳銃、クロスボウと短剣を持って来たが、真霜は左手で制止した。

 

 

「約束してください、…これで人を殺めないと……」

 

 

「わかった。但し、緊急時になった場合、個人の判断で使用します。」

 

 

「えぇ、…両名は明日、みくらに乗艦して呉から横須賀に移送しますので、ゆっくりして下さい。」

 

 

「わかりました。平賀さん、我々の零観はどこにあるのですか…?」

 

 

「えぇ、呉ブルーマーメイドの施設の格納庫に保管しています」

 

 

「今すぐ案内をして下さい!パイロットとして愛機の点検する義務があります。」

 

 

「わ、わかったわ。服を着てついて下さい。」

 

 

「おっ、オラも行きます!」

 

 

二人は飛行服を着用して、平賀の案内で格納庫に到着した。中にはやや翼が黒く焦げた零式水上観測機が駐機していた。

 

 

「おぉ、無事だったか愛機よ…」

 

 

「あなた達か、宗谷監督官が言っていたこの飛行物体の人材は?」

 

 

格納庫の影の当区画から、研究白衣を着た女性研究員が現れた。

 

 

「あなたは?」

 

 

「私が名乗る前にあなた達の紹介が先じゃないの?」

 

 

「あぁ、日本海軍大尉、沖田新一郎です。」

 

 

「金城幸吉一飛曹です。」

 

 

「私はブルマーの設備研究課の主任研究員の浦賀鈴留です。しかし、あの飛行物体、さっきから興奮が止まらないわ!」

 

 

「ははは…そうですか…」

 

 

彼女の目は子供の様に輝かせ、零観を触っていた。

 

 

「沖田さん、浦賀鈴留さんはブルーマーメイドで指折りの凄腕メカニックマンです。数々のスキッパーや艦艇、飛行船のメンテナンスをやり込みます」

 

 

「へぇ~整備のエキスパートかぁ~(整備班長の秋山トチローさんとトチコさんみたいだな…)」

 

 

付き添いの平賀が解説。心の中で新一郎は感心した。すると浦賀鈴留が新一郎に近づいた。

 

 

「ねぇ、沖田さん!この飛行機って言うのどんな構造なの?またあとで宗谷監督官に報告書類を書かねばならないから!」

 

 

「あぁ、わかった!」

 

 

 

新一郎は鈴留に零観の簡素な解説をした。

名称零式観測機。エンジン800馬力、最高速度390km。航続距離1070キロ、上昇限度9440メートル。武装が機首に九七式7.7ミリ機銃2門、九二式7.7機銃(後方旋回式)1門。30、60キロ爆弾×2

 

 

 

「…凄い……飛行船より高性能…」

 

 

「…しかも…スキッパーの速度より速い」

 

 

「零観の本体の骨組みに穴が開けられてるどころか、…ネジ自体も軽量化…。それにフロート自体が燃料タンクになっているなんて…翼が折り畳み式なのは?」

 

 

「これは軽巡洋艦から戦艦までに搭載可能な機体だから」

 

 

「艦艇でも搭載可能ですって!?」

 

 

「…この零観の武装が無ければ、純粋な工業製品だがな…」

 

 

平賀と鈴留が舌を巻くほど絶賛した。

 

 

翌日、新一郎と幸吉はブルーマーメイドのみくらに乗艦。零観は後部甲板の飛行船格納庫に収納、ブルーマーメイド本部の横須賀に向けて進路を執った。

 

 

みくら 後部甲板ー

 

 

「呉が…いや…日本が水没して…人工のフロート都市になっているなんて……」

 

 

「あぁ、まっこと…魂消たもんだ...! …さっき宗谷さんから聞いたが、地底にメタンハイドレードっちゅう資源の採掘で地盤沈下したらしい」

 

 

「どの時代でも、自然との戦いですね。…おぉ…連合艦隊だ…」

 

 

二人は呉、柱島付近に停泊する航洋艦艇を眺めて圧巻した。

 

 

「しかし、開戦以降に戦った艦艇が……女子海洋学生さんが航洋実習として扱っているとは…戦争がない世界が羨ましいな…」

 

 

新一郎は呟いた。1941年12月8日の開戦から末期まで、幾度の海戦で戦った艦艇は米英軍により戦没した。この世界の連合艦隊の艦艇はあの戦争がなく、民間に転用した艦艇は女性が扱うことに驚愕した。

 

 

「新一郎さん!大和です!!」

 

 

「…戦艦大和…まさか、この世界でもう一度見られるとは……」

 

 

青のカラーラインで描かれた超大型直教艦大和を目の当たりにした。

 

二人は戦艦大和に深い思い出がある。1944年3月トラック諸島でラバウル六勇士が解散後、皆はそれぞれの原隊に復帰後、戦艦大和に配属。

 

マリアナ沖海戦でアメリカ機動部隊の偵察、フィリピン決戦で二式水上戦闘機の大賀虎雄と共に大和以下の艦隊を護衛、敵艦隊の観測飛行。

 

沖縄の水上特攻の際に零戦の桜井洋介と弟の沖田進次郎と共に沈没するまで護衛した。

 

 

「やはり……巡洋艦以上の艦艇に……カタパルトがない……」

 

 

「…そうだな……宗谷さん達の言う通り、…航空機がない証拠だ………各艦艇よ…どうか、この世界で生きてくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新一郎と幸吉は戦艦大和を始め、各艦艇に向けて敬礼した。

そして格納庫の影である女性が、二人を覗いていた。

 

 

1735時、駿河湾近海。みくら食堂ー

 

 

「あ~旨かった~…♪」

 

 

「ホントですねぇ〜♪異世界と言えども未来の日本の食事がこんなに旨いとは。厚木隊長や虎雄さん、洋介さんと進次郎さん、トチローさんとトチコさんにも食わせてやりたいですよ~」

 

 

「はっはっはっ!気の毒なことは言うな、しんみりするだろ。」

 

 

「あい、すみません「あっはっはっはっ」」

 

 

二人はみくらの艦内食堂にて食事を堪能していた。食事を終えて、泊まり部屋に戻ろうとした時ー

 

 

「…現在は駿河湾近海……え…今すぐ横須賀へ…?」

 

 

声が気になった新一郎は通路に足を運ぶと、真霜がスマートフォンで通話をしているところを目撃した。

 

 

「…ダメよ……今はお客の保護を兼ねて航行しているから…それに……」

 

 

「宗谷さん!」

 

 

「ごめん、ちょっと待って………沖田さん…金城さん…?」

 

 

真霜の背後に新一郎と幸吉が立っていた。

 

 

「話しの内容は分からんが、一刻も横須賀へ早急に行きたいのですか!?」

 

 

「えぇ、そうですが……まさか…!?」

 

 

「俺が愛機の零観で、試験飛行を兼ねて宗谷監督官を横須賀へ空輸させますがいかがか…?」

 

 

新一郎の考案で真霜をみくらから横須賀まで空輸することを述べていた。

 

 

「私は横須賀へ…?でも、ダメよ!あなた達の飛行機を飛ばせることは民間は愚か、同じブルーマーメイドやホワイトドルフィンに晒させることはできないわ…」

 

 

真霜は新一郎の考案に反対であった。新一郎の愛機、零観は海洋安全整備局にとってトップシークレットであった。

 

 

「飛行航路としては、海上の上空を飛行します。それに、俺たちはあなたたちブルーマーメイドに助けられた恩がある。俺は日本海軍軍人と土佐出身としての仁義が許さん!どうか」

 

 

新一郎は真霜の前で頭を下げて直訴した。

 

 

「……わかりました…飛行に関して任せます。」

 

 

「はっ!」

 

 

新一郎は真霜の前で感謝の意を表し、海軍式の敬礼をした。

 

1755時、みくらは航行を停止、幸吉とブルーマーの鈴留達メカニックマンが格納庫から零観を出して、折り畳まれた翼を伸ばして整えた。

 

そして、飛行服と航空装備、白いマフラーと飛行帽を整えた新一郎が出てきた。

 

 

「よし、浦賀さん。零観の調子は?」

 

 

「はいっ!流石は零観、艦艇に載せるこの折り畳み式は凄い構造ね!」

 

 

「まぁな、…しかし、カタパルトがあれば…一発で飛ばせるのだが…」

 

 

「カタパルト…?」

 

 

「沖田さ~ん!」

 

 

「っ!?はぁーい!あ…」

 

 

そして、艦内から重要書類を入れたバックと、外套を羽織った真霜が出てきた。彼女の外套はブルマー指定の外套でありながら新一郎の目に見とれていた。

 

 

「………美しい…………///」

 

 

「沖田さん…?」

 

 

「新一郎さん…新一郎さん!」

 

 

「……あぁ、幸吉か…なんだ…?」

 

 

「なんだってないですよ!もうすぐ零観をクレーンで降ろすから搭乗して下さい!」

 

 

「あぁ、すまんが今回の幸吉は…このみくらで待機を頼む。」

 

 

「はっ!…オラの待機は久しいですが、宗谷さんと空のデートとは…♪」

 

 

「…喧しい…、…その前に宗谷さんを後部座席に乗せねば。」

 

 

新一郎は真霜の前に手を差し伸べ、その姿を見た真霜は赤面した。

 

 

「……沖田さん、お願いします……///」

 

 

「はっ!ん…?…宗谷さん……この格好は悪くはないが、今は1月。空は寒過ぎるからこれをお貸しします。」

 

 

新一郎は自身の飛行帽とマフラーを脱ぎ出して、真霜に被せた。

 

 

「…あっ!…ありがとうございます……………暖かい……///」

 

 

新一郎と真霜は零観に搭乗、クレーンで海上に降ろして着水してワイヤーフックを外してエンジンを発動、プロペラを回した。

 

 

「エンジンよし、燃料よし、伝声管よし、油圧よし、プロペラよし、コンターク!!発進します!!」

 

 

新一郎の扱う零観は海上を走り蹴り、進路を横須賀に向けて大空へ羽ばたいた。

 

みくらから見ていたみくらの乗員達は唖然とした顔で闇夜の大空を飛び、赤緑の誘導灯だけを見とれていた。

 

 

「凄い、本当に飛んだよ!!」

 

 

「しかも凄い速いですね…」

 

 

「(新一郎さん、どうかご無事で)」

 

 

甲板にいた鈴留と平賀は驚き、闇夜の中を飛行する零観の誘導灯が見えなくなるまで空を眺めた。そして、幸吉は内心で祈り敬礼した。

 

 

この闇夜、世界でただ1機しかない飛行機が飛ぶ中、新一郎が操縦する零観の後部座席に座っていた真霜は空から見た夜の景色に興奮していた。

 

 

「凄い…!!…私は空を…空を飛んでいるのね…!」

 

 

「そうか、この世界は飛行船か気球があっても人が乗ることはあまり無いんだな……宗谷さんが、この世界で初めて空を飛んだ青い人魚になる。……この夜の街景色、…灯火管制がない…戦時とは大違いだな…」

 

 

新一郎は改めて未来、異世界の日本に来た事を実感した。

 

 

「ねぇ、沖田さん…あなたは元の世界に帰りたいと思わないの?」

 

 

操縦桿を握る新一郎は、伝声管から真霜の声を聴く中、彼女からある質問が聞かれた。

 

 

「ん…?…そうですね…さっき呉にいた頃の俺はそう思っていたな………今考えれば忘れたくても忘れられない地獄の世界だった……俺の戦友達が戦死して……仲間と弟は……あの戦火の戦場で戦っているのかどうか……その一人はこの世界に彷徨っている……」

 

 

「…っ!?沖田さん、弟さんがいるの?しかも戦場で……」

 

 

「あぁ、弟と同じ飛行機乗りのパイロット、飛行機を落とす専門の戦闘機パイロットです。宗谷さん、あなたの家族は?」

 

 

「え…えぇ、私の家族は代々名門ブルーマーメイドの関係者。母は現役を退き横須賀女子海洋学校の校長を勤めています。妹が二人、一人はブルーマーメイドの艦長。末は横須賀女子海洋学校の受験で励んでいます」

 

 

「名門の校長と艦長…受験生か……こりゃまた大変な時期にきたもんだ……俺もパイロットになるまで必死に勉強したからな…」

 

 

「沖田さんの家族は?」

 

 

「俺の実家は高知の四万十村の貧しい漁師だ。両親と6人兄妹の長男、さっき言った次男も戦闘機パイロットだ。そして、戦争に突入した戦場で俺と幸吉、弟も戦った。」

 

 

「その戦況の最中、飛行機ごとこの世界に迷い込んだ……私はあなたにできることはないかしら……し………新一郎……」

 

 

「…し…新一郎......!?///...あ…」

 

 

新一郎は赤面仕掛けた時、三浦半島上空を通過。そして、すぐに横須賀上空に到達して旋回飛行した。

 

 

「横須賀上空に到達しましたよ…えっと…宗谷さん…」

 

 

「新一郎、真霜で…良いわよ……///。…それに、1時間も掛からないなんて……これが横須賀の灯なのね……」

 

 

「あ…あぁ!…この零観を着水する場所はどこに!?」

 

 

「あそこでお願いします!私が通っていた母校へ!」

 

 

横須賀の夜景を観て感動する中で、真霜が指差す方向は、海上のフロート学園。横須賀女子海洋学校であった。

 

彼女の母校の波止場にイルミネーションに灯された艦艇が続出して停泊していた。

 

 

「でも、真霜はいいのか?俺の愛機はどの水上に着水できることは問題ないが、この零観はブルーマーメイドの管轄で極秘じゃ…」

 

 

「今のところは問題はないわ。私達ブルーマーメイドは守秘に関して硬いから!」

 

 

「なら安心した。掴まれ!」

 

 

「きゃっ!…」

 

 

新一郎は操縦桿を倒して、機体を横女へ向けて飛行した。高度を下げて、速度を徐々に減速して水上に着水した。

 

エンジンを止めずに水上を学園の波止場まで走行、他のブルーマーメイドの各艦艇の乗組員はさっきまで空を飛行して水上に着水した零観を珍獣を見物をしている目で見ていた。

 

 

「あれが異世界からきた飛行物体…!」

 

 

「……速い!」

 

 

「スキッパーの様に小回りが効き、空を飛び、水上を走っている!」

 

 

「あれには宗谷監督官が搭乗しているのね!!」

 

 

「へ~いいなぁ~…スキッパー乗りのわたしも扱ってみたいなぁ~」

 

 

「あの飛行物体を操縦している人はどんな人かしら…」

 

 

着水した零観は水上の走行中に一艇のスキッパーに接近する。

 

 

「ん…あれは…?」

 

 

「ブルーマーメイドの保安観測部隊の岸間菫です!」

 

 

「日本海軍大尉、沖田新一郎です!!貴部隊のブルーマーメイド所属、宗谷真霜一等監督官を移送しました!!」

 

 

「みくらからの報告通り御苦労様です!!私が波止場の桟橋へ誘導します!!」

 

 

「感謝します!!」

 

 

「岸間さん、ありがとう!」

 

 

真霜は手を振り、新一郎は操縦席から岸間に敬礼して、対する岸間も応える様にハンドサインを返した。零観が横女の学園の桟橋に到着後、新一郎が操縦席からロープを持って先に桟橋に降りて留め具に繋いだ。

 

 

「これでよし。次は、…///…ま…真霜の番だ……///」

 

 

「あっ!…うん……///…きゃっ…」

 

 

新一郎が手を差し伸べた時、真霜が足を滑らせて落ちた。

 

 

「あっ危ない!!…ぎゃっ…」

 

 

新一郎は真霜を受け止めたものの、彼女の下敷きになった。

 

 

「…だ…大丈夫、新一郎……」

 

 

「あ…あぁ、こんなものは……あの戦場に比べてどうってことはない……///」

 

 

新一郎は赤面しながら夜空を見上げた。

 

 

「あの、あなたの帽子とマフラー……ありがとう…///」

 

 

真霜が新一郎の飛行帽とマフラーを返した時、学園の通用口から黒い制服の女性が出てきた。それに気づいた真霜はその女性のキリッと前に立った。

 

 

「ブルーマーメイド横須賀所属、一等保安監督官、宗谷真霜。ただ今帰還しました!」

 

 

「うん、呉の出張お疲れ様ね真霜。想像以上に早い到着ねぇ」

 

 

「えぇ」

 

 

真霜が笑みを浮かばせた時、彼女の母の宗谷真雪が、新一郎と零観の方に顔を向けた。

 

 

「へぇ、あなたの報告通りこれが70年前の…異世界の空飛ぶ船、ひこうき…」

 

 

真雪が新一郎の元に近づいた時、新一郎は敬礼した。

 

 

「あなた、この…空飛ぶひこうき…扱うのにどの位の期間が必要なのですか?」

 

 

「はっ! だいたい4、5年ってところです!」

 

 

真雪は零観の胴体と翼を接触しながら確認した。

 

 

「凄い…確かにこの世界の製品ではないわね。私達の世界では空想の産物なのに、別の世界で人類はこんな飛行物体を造っていたなんて未だに信じられない……」

 

 

「この飛行機に乗った時の大空の旅が忘れられない…、鳥になった気分よお母さん!またお母さんも乗ってみたら?」

 

 

「ふふふ、そうね~また機会があれば…」

 

 

二人の会話の中で、新一郎はある言葉に気になった。

 

 

「(…お母さん…?…この人が…真霜の……お母さん!?)」

 

 

新一郎はこの女性が宗谷真霜の母親だと聞いて、硬直した。

 

 

その後、零観はブルーマーメイドにより回収、当施設に移された。幸吉が乗艦するみくらも横須賀女子海洋学校に到着。新一郎と幸吉は当学校の校長室に免れた。

 

 

「遠い呉からよく来てくださいました。私が横須賀女子海洋学校の校長にして宗谷真霜の母、宗谷真雪です。」

 

 

「宗谷監督官、貴下に救助、並びに当学校の校長室に免れて大変恐縮です。私は日本海軍大尉、海軍鹿屋基地所属。零観のパイロット、沖田新一郎です!」

 

 

「同じく私は零観の観測と電信員の金城幸吉、海軍一等飛行兵曹です!」

 

 

「取り敢えず、ここのソファに座って下さい。」

 

 

「「はっ!」」

 

 

二人は校長室の応接の応接ソファに座り沖田新一郎と金城幸吉のペア、宗谷真雪と真霜の親子の会談が始まった。

 

 

「娘から…真霜からあなた達二人のことを聞きました。この度は色々と70年前の戦時の世界で大変でしたね…」

 

 

「いえ、…この世界に来た事は我々の悪運が強かったかも知れないです」

 

 

「我らが結成された部隊でも、地獄の戦場をくぐり抜けて戦い生還しました」

 

 

「あなた達の事は、私達ブルーマーメイドが面倒を看るから、安心してください」

 

 

「心使い感謝します!」

 

 

新一郎はホッとして安心した。

 

 

「あの、…宗谷校長……我々が宿泊するところは」

 

 

幸吉は宿泊に関しておどおどしていた。すると真雪が

 

 

「それなら安心してください。私の家で寝泊まりしてください。」

 

 

「「 えぇっ!? 」」

 

 

「ちょっと、お母さん…!///」

 

 

真霜と新一郎、幸吉は真雪の発言に驚愕した。

 

 

「ブルーマーメイドの隊員宿舎に関してですが、今年度の女子海洋学校卒業生が来年度に入隊する予定でいっぱいですので空き部屋は困難でしょう。私、宗谷真雪が責任を持って保護します」

 

 

「は…はぁ…」

 

 

その後、新一郎と幸吉は宗谷真雪、真霜と共に横女から本土までフェリーで移動、本土に到着して宗谷家の自宅までリムジンで移動して到着した。

 

到着して二人は宗谷真雪、真霜の自宅の豪邸をみて驚愕した。

 

 

「へぇ~ここが真霜さんのご自宅かぁ~」

 

 

「オラの村の実家より凄い…」

 

 

「俺もだ、……流石は代々ブルーマーメイドを輩出した名家だ…我々の様な身分が入っていいのか……」

 

 

二人は宗谷の敷地に入ることを恐れ、躊躇っていた。

 

 

「構いませんわよ沖田さん、金城さん。あなた達はブルーマーメイドと宗谷家の特別なゲストです。」

 

 

 

 

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