ハイスクール・フリート   ~空を翔る鳶と海虎~   作:鷹と狼

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第4話 移転した漂流者たち

 

 

 

 

 

 

 

「「 …パッ…パパ!! 」」

 

 

「んん……?エミリ…?エマ…?」

 

 

「「 よかったー!! 」」

 

 

誰かに呼ばれる声が聞こえ、ウィリアム・J・スパロウが目を醒ました場所は海岸の砂丘、双子の愛娘が涙を流しながら彼に抱きついた。

 

「…エミリー……エマ……どういうことだ…!?」

 

 

「どういうこととは何……ウィル……?」

 

 

「…キャサリン……?」

 

 

ウィリアムが後ろをゆっくり振り向くと、愛妻のキャサリン・スパロウが立っていた。

 

彼は幽霊を見たかのように、涙を流しながら驚愕していた。

 

 

「………………………」

 

 

「……どうしたの……ウィル……?」

 

 

「……パパ……なんで泣いているの……?」

 

 

「…………そんな………君たちは……日本軍の不発弾で…死んだんじゃ………」

 

 

「……死んだ?……あたし達が………?」

 

 

「「 パパッ!あたしたちはこの通り元気だよ~♪ 」」

 

 

キャサリンは何かあったのか首を傾げ、エミリーとエマはウィリアムの両手を掴んだ。彼は魂が抜けたように膝をついて砂丘に着いた。

 

 

「………ここは……天国か……?」 

 

 

 ガキイィン

   

 

突如、ウィリアムの頭部に金属音が鳴った。

 

 

「痛てえぇー!!…だが、夢じゃない…誰だ!?」

 

 

「何いつまでぼさっとしているんでぃ!」 

 

 

後頭部を殴ったのは、スパナ等の工具を所持し、江戸っ子口調の日本人だった。

 

 

「何者だ……ジャップ!?」

 

 

「俺っちは、日本海軍兵曹長の秋山敏郎、通称トチロー。整備士だ!が…………戦争が終結して第2解員として任務に就いていた。」

 

 

「解員………?……復員兵か……なんでここに……?……いや……ここは何処だ!?」

 

 

「はっきり言って分からん!!分からんからこそ、これをあんたのカタリナからこれを持ってきたんだ、べらぼうめ!」

 

 

「…六分儀……ありがとう。私はウィリアムだからウィルと呼んでくれトチロー!」

 

 

「おぅ、相棒!俺っちはウィルのカタリナを整備してくらあ!」

 

 

「なに!?カタリナが…あぁ…愛機よ……まぁ…バラバラになるよりマシか……」

 

 

ウィリアムが振り向くとカタリナ海岸に打ち上げられていた。

 

トチローは自前のスパナでエンジンエンジンを弄くり、ウィルは六分儀で上空の大陽と星の位置を観測した時だった。

 

 

「「 ウィリアム機長~! 」」

 

 

「……トム、シャルロット!無事だったか!?」

 

 

「機長も無事でなによりです!」

 

 

「トチローさんから六分儀を渡されたってことは……ここがどこかわかりましたか…?」

 

 

「馬鹿、今観測中だ。シャルロット無線連絡は?」

 

 

「無線機は先程トチローさんに修理をして貰いましたが、発信ができても受信ができません…」

 

 

「発信ができただけでも十分だ。トム、カタリナはどうだ?」

 

 

「今、トチローさんと僕がカタリナをメンテナンスをしていますが、在り合わせの物資だけでも飛行不能です……」

 

 

「そうか……助けが来るまでカタリナで寝泊まり………ん!?」

 

 

「どうしたのですか…機長…?」

 

 

六分儀に集中したウィルが、なにかに気付き笑みを浮かばせていた。

 

 

「……ここは…小笠原諸島の海域だ!」

 

 

「「…小笠原…!?」」

 

 

「……小笠原……日本の近くか…こりゃ安心でぃ…」

 

 

油まみれの手を手拭いで拭いているトチローが戻ってきた。

 

 

「トチローさん、残念ですが小笠原はアメリカ軍が支配する占領区域ですのよ…」

 

 

「あぁ…そうだった……」

 

 

トチローは片手に手を抱え、砂地に頓挫した。小笠原諸島は半年前の戦争時に硫黄島をアメリカ軍が占領して以降、制海権を奪われた上に支配区域に指定されていた。

 

 

「そう言えばトチローさん、いつからこの小島に滞在していたのですか…?」

 

 

「あぁ…それはだな…ん……影…?」

 

 

「「 パパッママッ…お空に気球だよ! 」」

 

 

「なに!?」

 

 

彼らの足元に影が被った時、上空から騒音の少ない機械音が鳴った。空を見上げると飛行船がウィリアムたちの上空で空中待機。

 

 

「飛行船だ……」

 

 

「助かったぞ~!!」

 

 

「……青い…人魚……?」

 

 

キャサリンは飛行船のロゴマークに気付き呟いた。

 

 

夕陽が水平線に沈んだ頃、ウィリアムたち7人は焚き火に囲まれて救助を待ちながら、この小島に来た経緯を語り合った。

 

 

「復員艦の乗艦時に海に落ちたんだって…!?」

 

 

「そうなんだってんでぃ!………復員兵の馬鹿どもが、いくら長い航海で空腹に負けて、飯盒を用意した。ところがどっこい重油タンクのそば、俺っちは火を起こすのを妹と止めようとした時に重油に引火して海に落下した……って訳でぃ!」

 

 

「そうなんだ……妹さんと辛い目に合ったんだな…」

 

 

トチローの経緯を聞いたウィリアムは気を落としたが、トチローは不思議な経験を追及した。

 

 

「……あの世に行き掻けた時……変な閻魔に会ったんでぃ!」

 

 

「……変な閻魔…?」

 

 

「……ジジイになったり、ガキになったり…訳の分からん閻魔でぃ……確か……おー……でん……って言ったかなあいつは……」

 

 

トチローの言葉にキャサリンが反応した。

 

 

「…っ!?…もしやオーディン…じゃないのトチローさん!」

 

 

「……オーディン……?なんでぃそいつは…?」

 

 

「…その方は…北欧神話の神様ですのよトチローさん」

 

 

シャルロットがキャサリンを助言して解説し、トチローは納得したがキャサリンがいることに言及した。

 

 

「だけどウィル、…あたしたちも……この島の海岸で目を覚めるまでそれらしき人物に会ったわ……」

 

 

「なんだって!?」

 

 

 

 

 

キャサリンは僅かな見た記憶を、みんなに語った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってことなの……」

 

 

キャサリンは膝元で眠っている双子の頭を撫でながら呟いた。

 

 

「………なんだか、胡散臭せぇなぁ~」

 

 

「だがトチローさん、それ以上に戦中と終戦以降、時間と場所、国籍と人種のバラバラだった僕たちがなんで、この島に募ったのか……オーディンがやっていることが……疑問に残りますよ……」

 

 

「それに、トチローさんは流暢に英語を話されてますわね」

 

 

 

「英語…?いや、おれっちはアルファベットを学ぶだけでも精一杯ってんでぃ…おめぇらウィルたちも、日本語がうめぇな…」

 

 

「なに…?日系のトムはおろか、僕とキャサリン、シャルロットが日本語だって…!?」

 

 

 

ヴォオオオー

 

 

「…?…汽笛だっ…船だ!」

 

 

それから沖の方から船の汽笛が鳴った時、みんなは振り向いた。

 

 

「船だっ、助かった!」

 

 

「安心するのはまだ早い、トムとシャルは無線機で救難信号を!手の余った者は焚き火を絶さずに燃やし続けろ!」

 

 

「「 了解! 」」

 

 

「合点承知!!」

 

 

トムとシャルロットはウィリアムの指示でPBYカタリナ無線機で救難信号を発信、トチローとキャサリンは海岸に打ち上げられた漂流物を回収して焚き火の燃料として燃やし、灯りを灯した。

 

 

暗い海の中、彼らの視点から見た事がない黒い艦艇が接近、その船から内火艇が降ろされてウィリアムたちがいる海岸に接近した。

 

 

「なぁウィル、あの艦艇はアメリカ軍の新型艦か……?」

 

 

トチローの言葉でウィリアムの首は横に振った。

 

 

「……いや、知らない……トチローの日本海軍の艦艇じゃないんか…?」

 

 

「……いや、知らん…ん…女……?」

 

 

その内火艇に乗挺していたのが水中服と紺色の戦闘服を着用した女性たちであった。

 

 

「お待たせしました!我々、ブルーマーメイドが救助に着ました!!」

 

 

「(……ブルー……マーメイド………?)」

 

 

ウィリアムたち7人は謎の艦艇と乗員に救助、彼は女性たち集団にも疑問に思った。その中から黒い制服の女性艦長がウィリアムの前に赴いた。

 

 

「あたしはブルーマーメイド所属、『べんてん』艦長の宗谷真冬だ。」

 

 

「アメリカ海軍少佐、PBYカタリナ機長ウィリアム・J・スパロウだ!」

 

 

「PBY……?…あんたらを救助しに来たからには、安心して大船に乗ったつもりでいてくれ!」

 

 

「感謝する!(…艦長が日本人女性……?)」

 

 

「しかし、あんたらは外国人なのに、日本語が話せるなんて助かった~♪」

 

 

「(我々が日本語…彼女からも流暢な英語に聞こえるんだが…)」

 

 

ウィリアムは真冬に対してアメリカ海軍式で敬礼したにも関わらず、互いに発声の問題はなく幸いした。

 

そして、彼女はある物体を注視した。

 

 

「おぉ!これがアメリカ使用のひこうきかぁ~でけぇなぁ~♪」

 

 

「え…?」

 

 

「何だと…?(あれだけの超近代装備の艦艇を備えながら……飛行機を知らないみたいな言葉だ……)」

 

 

 

ウィリアムとトチローは疑問に感じつつも7人全員『べんてん』に乗艦、ウィリアムの愛機PBYカタリナは本艦の乗員により回収しつつも後部甲板に載せられない為に、艦尾から綱で結び着け、常備していた機銃とウィリアムとトムのM-1カービンとM-1ガーランド、ナイフは回収されて艦長室に保管、そして横須賀に向けて曳航し出港した。

 

 

 

べんてん 後部甲板 0200時ーウィリアムとトムが所持している拳銃を隠しながら搭乗機のカタリナを見張っていた。

 

 

「ウィリアム、トム!この時間で見張りでお疲れだなぁ~」

 

 

「トチローさん、カタリナのパイロットとして見張ることは当然です!」

 

 

「トチロー、キャサリンとエミリー、エマはどうしているか…?」

 

 

「あぁ、ウィルのキャサリンさんと双子、シャルロットはグッスリ眠っている。」

 

 

「そうか……」

 

 

「まぁ、あの島に来てから色々あって、どっと疲れて眠っているのでしょう。先程、宗谷艦長から横須賀に向けて航海しています」

 

 

「横須賀か……着けば何かが解るかも知れないな……」

 

 

すると一人のブルーマー隊員が3人の元に訪問した。

 

 

「失礼します!あなたたちの隠し持っている拳銃を回収しに来ました。」

 

 

「何!?なんで僕たちが持っていることが…?」

 

 

「このべんてん艦長の指示です!」

 

 

その光景でウィリアムは黙り、そしてー

 

 

「……艦長の指示なら仕方がないな、それまで預かってくれよ!」

 

 

「はい!」

 

 

2人は拳銃が入ったホルスターごと隊員に渡した。

 

 

べんてん 管理室

 

 

「あっはっはっはっ!!後部甲板の格納庫上部に監視カメラがあることにあいつらは気付いていないな!」

 

 

「そうですね。」

 

 

そう、管理室で隊員たちはウィリアムたちの同行を監視カメラで探っていた。もし、彼らがおかしな行動をすれば、直ちに駆けつけるのであった。そして、カメラをカタリナに向けた。

 

 

「しかし、あの大型ひこうきはいいなぁ~新一郎の零観より多くの人材と物資を空中輸送が出来るなぁ~♪」

 

 

真冬はそう逞りながら微笑んだ。時間が進み、横須賀0800時。べんてんは横須賀、ブルーマーメイド基地に到着した。

 

 

「横須賀だ、とうとう日本に帰ってきたぜ~!」

 

 

トチローは横須賀の出身であり、終戦から1年弱は復員輸送艦に勤務していたため、故郷に帰投したことに感激した。

 

 

「へぇ〜ここが日本。あれが富士山、いい国ねぇ~♪」

 

 

「「 やった~♪とうとうついた~♪ 」」

 

 

キャサリンとエミリー、エマはまるで旅行気分で下艦。するとウィリアムとトム、シャルロットは何か違和感を感じた。

 

 

「横須賀か……アメリカ軍の艦載機の空襲で損害を受けたと聞いたが……」

 

 

「……確かにここは日本だが、少し違う……」

 

 

すると、べんてんが寄航した波止場にブルーマーメイド仕様の軽車輌パジェロが走行、ウィリアムたち7人の前に停車、降りてきたのは宗谷真霜であった。

 

 

「小笠原諸島で遭難した皆様、私はブルーマーメイド一等監督官の宗谷真霜です。異世界、そして70年前の戦時の暮らし…以下同文ー」

 

 

「(…異世界…?…70年前…?)」

 

 

「(ここは日本であって……日本じゃない……!?)」

 

 

真霜の言葉にウィリアムたちは内心驚愕した。シャルロットはある言葉を言及した。

 

 

「…もしかして…パラレルワールドじゃないかしら……」

 

 

「…パラレルワールド…?」

 

 

「その娘の言う通り、俺たちはパラレルワールドに彷徨ってしまったんだ!」

 

 

「「 え…? 」」

 

 

「その声は…?」

 

 

パジェロの運転席と助手席から飛行衣服と飛行帽を着用した人物がやって来た。

 

 

 

 

 

 

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