前世の記憶を取り戻したら、原作開始前に死亡する予定のラスボスの妻になっていた件について   作:しらたま大福

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お久しぶりです!体調不良から何とか回復してきたので、更新を再開したいと思います。少々仕事が立て込んで大変ですが、しばらくの間は出来る範囲での更新を目標に頑張りたいと思います。
(活動報告でもちらっと載せたのですが、そのうちラスボス妻を同人誌にする予定です。詳しい情報はそのうちTwitterと支部にてお知らせしたいと思います)


罪悪感

 前回のあらすじ。うっかり尾形くんにプロポーズ紛いをしてしまった。

 ち、違うんです!! 私は尾形くんと結婚したいだなんて1ミリも思ってないので浮気じゃないです!! それに尾形くんを異性として(そんな目)で見た事ありません!! 本当です! 信じてください!?

 

「その、さっきの言葉の意味は尾形くんと結婚したいという意味ではなくて、私の養子にならないかってことなの!!」

「……は?」

 

 私の言葉を聞いた尾形くんは、ぽかんとその口を開けた。まぁそれもそうだよね、尾形くんって多分実際の年齢は私の弟とそんなに変わらないくらいだと思うし。実際に私は尾形くんを産むのは年の差的に厳しいものがあるから、突然息子みたいと言われても納得するのは難しいと思うよ。

 それでも、私にとって尾形くんを祝福してあげたいと言う気持ちになったのは本当のことなんだけどね。

 

「私は尾形くんのことをオリガと同等に、自分の子供のように感じているの」

「……俺がユキコと同じだと? 血の繋がりもないのにか?」

「私は血のつながりだけが全てじゃ無いと思ってる。確かに自分が命をかけて産んだ子は何割増しにも可愛く見える現象があるのは肯定するよ。でも必ずしも家族の絆に血縁が不可欠だとは思わないわ」

 

 私のその言葉に、尾形くんは真っ黒な瞳でじっとこちらを見るのみ。その瞳からはなんの感情も読み取れなかった。……まぁ、私がいくら卓上論を話したとしてもきっと尾形くんは納得してくれないだろうと言うことは分かっている。

 

「まぁ尾形くんはきっと私の気持ちを信じてくれな絲思うけど。私はただ……尾形百之助と言う存在を”祝福したい”。ただそれだけなの」

「……祝福、だと?」

 

 私の「祝福」という言葉に、尾形くんはピクリと反応した。

 

「私は――尾形百之助の過去を、そして罪を知っている」

 

 私が転生者(わたし)であるが故に知っている知識。そして、彼の心の奥底にある罪悪感を自覚させるために私はそれを突きつける。

 

「あなたは実の母親に殺鼠剤を盛った、そして腹違いの異母兄弟を撃ち、父親を自殺に見せかけて殺した。そうでしょ」

 

 目の前に立つ尾形くんは私のその言葉に小さく「ハッ」と笑った後、ニヒルな笑みを浮かべながら前髪を後ろへなでつけた。

 

「よく知ってるな。そうだ、俺がこの手で殺した。まさかクレハがその事実を知ってるだなんて思わなかった! ハッ、オリガか? あいつがお前に言ったのか?」

「いいえ、オリガは何も知らないわ」

 

 多分オリガは尾形くんの件に関しては何も知らないはず。もしかしたら、花沢幸次郎の事件は知っているかもしれないけど、花沢勇作と母親のことは尾形くんが話していない限りきっと知らないはず……。

 私がこの事を知っているのは、原作で読んだから。普通の人間だったら知らないはず。

 

「これは、私だけが持っている"知識"だから」

「……知識だと?」

 

「あのね、私には前世の記憶があるの。そして、この世界の未来を知っている」

「前世の記憶……未来?」

 

 顔をしかめる尾形くんの表情は、いつの日かのオリガを彷彿とさせた。まぁ普通に生きていれば、前世の記憶持ちですとか言う気の触れた人間に触れ合うことも無いだろうし、未来を知っていると言う頭の可笑しい人間に会うことも無いでしょう。

 

「まぁ簡単に言うと、私は頭の可笑しい人間か、バケモノってところね」

 

 私がそれを証明する手筈もないし、信じられなくたってしょうがない。私の前世の記憶(それ)をあっさり信じたオリガの方が特殊なのだから。

 

「尾形くん、どうしてあなたの目の前に花沢勇作が現れるか分かる?」

「……悪霊が俺の邪魔をしているからだろ」

「いいえ、それはきっとあなたが〝それ”から無意識に目をそらそうとしてきたからよ」

「何の……話だ?」

「あなたの目に映る花沢勇作は――あなたが目をそらしていた罪悪感よ」

「――は? ……俺の、罪悪感?」

 

 尾形くんは、いつの日か花沢勇作に向かって「殺した相手に対する罪悪感ですか? そんなものみんなありませんよ」と言いきった。でも実際に尾形百之助は心の奥底で"それ"を感じていた。

 

 

「人は罪悪感に押しつぶされそうなとき、無意識のうちにそれから逃げてしまう。だってそうしなきゃ人の心は脆いから耐えられない。だから尾形くんは罪悪感(それ)に気づかないように蓋をした」

「……やめろッ、俺に罪悪感など存在しない!!」

 

 尾形くんは自分に暗示をかけることで自分の心を守ってきた。『祝福されなかった自分は欠けた人間である。欠けた人間は真っ当な幸せなんて掴めない、だから自分は愛されることは無い』と自分を納得させようとした。

 いつしかその自己防衛は、本当の愛すらも疑う事に繋がると知れずに。

 

「花沢勇作は尾形百之助を愛してくれた」

 

 「兄様」と呼び、心から尾形くんを慕っていた異母兄弟の勇作。その愛は本物だった。

 

「それが紛れもない事実であることを……本当は分かっているんでしょ?」

「ちがう、あいつは俺のことを愛してなんか――」

 

 私は尾形くんの顔へと手を伸ばす。その頬を包み込み、目が合うように覗き込む。尾形くんのガラス玉のような瞳が揺れた。

 

「尾形くん、目をそらしちゃ駄目だよ。今その罪悪感から目をそらしたとしても……いつかそれは抑えきれなくなってあなたの心を飲み込むから」

 

 原作の尾形百之助は、最後にその罪悪感に耐えきれず自害の道を選んだ。あのエンディングは……例え幻影だったとしても、自分を愛してくれた勇作に祝福された最期だった。きっと彼にとって救いのある最期だったのだと思う。

 でも――私は尾形くんを死なせたくはない。これは私のエゴだ。自分勝手な我が儘で私は尾形百之助の死亡フラグを折ると決めたのだ。だから、彼には早々に罪悪感(それ)に向き合って貰う。

 

 この世界線はもう既に原作を逸脱した世界。死亡するはずだったフィーナ(わたし)が生きているのだ。原作から離れてしまった世界線だったら、何も原作通りに全てを進めなくてもいいじゃないか。

 だって、この世界は私にとっての現実だから。好きなように足掻いて、原作(みらい)を変える。この世界の未来はまだ確定していないのだから。

 

 

「俺にはそんなものなんかない!!」

「いいえ、尾形くんはただ目を逸らしているだけ。あなたの心の奥にはずっと罪悪感があるの」

「俺は信じない!! 欠けた人間がそんなもんを持ってるわけがねえ!!」

「あなたは欠けた人間なんかじゃない」

「……――ッ、やめろ!!」

 

 尾形くんは一際大きな声を出した。そしてそのまま私の手を振り払う。パシッという乾いた音と、ジンとした手のしびれ。「あっ」と思った時には――既に遅かった。

 

「――っ!」

 

 尾形くんの大きな手が、私の首を絞めたのだ。

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