目が覚めたらIF世界ドイツ総統(美女)になってたので、少しでもマシな戦後を目指す 作:夜叉烏
さてさて始まりましたよクソ企画!
正直原作開始まで続くか分からないけどやってやるぜ!
You tubeやってます。執筆に影響しないよう努力しますが、予期せず投稿が遅れる可能性もございますので、ご了承ください。
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「……ん。…さん。…姉さん。…姉さん!」
肩を揺さぶられる感触と、必死の呼びかけによって強制的に覚醒した俺は、差し込む光を眩しく感じながら目を開ける。
(母さん…違う…婆ちゃんでもない…?誰だ?…それに姉さんって…)
年甲斐もなく、偶に母親や祖母に起こしてもらうことがある俺――しがない理系のミリオタ大学生である――だが、この声音は2人に当てはまらない。
もっと若い女性の声だ。
そもそも、口調から分かる通り俺は男だ。姉さんなどと呼ばれる筋合いはないし、家は一人っ子である。
ぼんやりしていた視界がはっきりしてくる。
寝床であるベッドに敷かれた白のシーツが視界に映るはずだが、見えるのはダークブラウンのフローリングだ。俺の部屋は畳にカーペット敷いてその上に家具を置いているのだが…。
俺は何とかフローリングに手を付くと、それを支えに起き上がろうとしたが、腕に力が戻っていないらしく叶わなかった。
「姉さん!私が分かる!?」
先ほどから俺を呼んでいる女性が抱き起してくれたのだが、その際に彼女の顔を見ることができた。
(うわ…凄い美人…)
艶やかな銀髪のロングヘアに、白を基調とした軍服らしききっちりした衣装と軍帽。この美女は、どうやらかなり高い地位にいるらしかった。
そして、自分の身に起こった変化にも気付いた。
(え!?お…お…おっぱ…!)
普段は絶対に着ないローブを纏っていることも意味不明だったのだが、それを押し上げる立派な胸の膨らみと、股間に感じる違和感は、それ以上に訳が分からなかった。
彼女いない歴=年齢なミリオタ大学生からすれば、直接見る己の胸部装甲は、随分と刺激的であった。
つまり、私――女なら"私"って言った方がいいだろう――は女性になってしまったわけだ。先ほどまでのやり取りから、目の前にいる女性は"今の"私の妹だということが確定した。
…親の再婚で急に妹ができたエロゲ主人公の気持ちが、少しわかった気がする。
やけに落ち着いているように思われるだろうが、脳内はパニック祭りだ。それから、なぜか後頭部が疼くような痛みを感じた。
取り敢えず、私は今どのような状況に置かれているのかを把握しなくてはならない。異世界転生ものの常識だ。
やっと動くようになった口で、怪しまれない程度に質問する。私にとって初対面の人物に女口調で話すのはかなり難しかった。
「…少し、記憶が混乱してるわ。確認だけど、今は西暦何年何月?ここはどこ?貴女は誰?私は誰?」
私の言葉に彼女は一瞬だけ目を見開いたが、直ぐに切れ長の目を元に戻し、真面目に応えてくれた。
「今は西暦1935年4月16日。ここはドイツ国首都ベルリンの総統官邸。私は貴女の妹のヴィリエル・フォン・シュライヤー主席秘書官。貴女はドイツ国総統リリア・フォン・シュライヤー…思い出してくれたかしら、姉さん…姉さん?」
「…」
彼女――ヴィリエルが何を言っているのか理解できなかったのは、言うまでもなかった。
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『姉さんは働きすぎ。予定が逼迫しているわけではないのだから、今日くらい休んで頂戴』
現状に驚くあまりよく覚えていないが、そのようなことを言われたのは何とか理解できたため、私はお言葉に甘え、本日は休憩且つ情報収集に徹することとした。
目が覚めたら女体化していて、更に一国――それも長くない内に亡国の末路を辿る戦前ドイツの主になっていたのだ。
これ以上最悪なことはないだろう。
幸い、リリアという人物になった影響なのか、ドイツ語が理解でき、経験や知識が手に取るように分かった。
・シュライヤー姉妹は1892年に"この世界の"プロイセンの貴族の元に生まれた双子である。姉妹揃って頭が良く運動も得意で、文武両道を具現化したような存在だったようだ。
・両親は他界済みで、亡き2人の反対を押し切り、1916年に私とヴィリエルは貴族のコネを使い看護兵として軍へ入隊(記憶の限り、私たちは人一倍愛国心が強かったようだ)。
・時には男性社会である軍の洗礼を受けつつも、第一次世界大戦中は後方で負傷軍人の看護に当たった。
・その際、負傷者収容区画にて敵弾が炸裂し、破片が私とヴィリエルの後頭部を直撃。その他の人員は全滅しており、たった2人で後方まで撤退することとなる(先に後頭部へ感じた鈍痛はこの時の傷が疼いたらしい)。
・途中、手負いの上官を発見し、彼を担いで必死の後退を行い、命からがら味方陣地まで戻ることに成功。その後、2人して病院のベッドで終戦を迎える。
・戦後、傷だらけの身で長距離を徒歩で移動し、上官を担いで後退した武勇伝が全世界に広まり、私たちは一躍時の人となる。妹共々、フリードリヒ・エーベルト大統領より鉄十字勲章(1914年章)、儀礼剣を授与される。この出来事は、世の女性たちにかなりの希望を与えたようだ。
・軍除隊後は、この名声と元貴族のコネで政界へ進出。史実のヒトラーと同様、国家社会主義ドイツ労働者党(NSDAP)を設立し、政治家としての地位を確固たるものとする。
・1932年のドイツ国会選挙にてシュライヤー内閣が誕生し、初のドイツ国女性首相として私が就任した(ヴィリエルは私の側近兼秘書となった)。記者団の取材には、前大戦でガタガタになった経済の立て直し、女性の社会進出、完全雇用の達成による失業者救済や農業改革、将来的に一家が最低一台自動車を持てるようにするのが目標…等の考えを述べ、民衆の好感を集める。なお、この2日後に共産主義者集団による国会議事堂放火事件が発生し、共産主義について警戒が深まるようになる。
・ヒンデンブルク大統領が在任中に死去。1934年8月9日の国民投票にて、私が94.3パーセントという高支持率を得て後任となった。ヒトラー同様、ヒンデンブルク大統領に敬意を称し、"大統領"ではなく"総統"と名乗るようになる。
・そして1935年3月16日、周辺大国への対抗を目的にドイツの再軍備を宣言。現在はそれから丁度一か月後である…。
史実と違うのは、国会議事堂の放火事件が複数の共産主義者による計画的犯行だったこと、ナチスに対し否定的な政治仇を非合法手段で粛清した『長いナイフの夜』も起こっていないこと。
そして何より…私ことリリアは、史実ヒトラーのような生粋のアーリア人至上主義者ではなく、ユダヤ人を大々的に迫害したりなどはしていない。
正直、これはありがたかった。
連合国が第二次大戦介入を決意する大義名分の過半がなくなったわけであるし、近隣諸国とやり取りがし易くなる。
それに、アメリカはモンロー主義を通している。
ニューディール政策である程度景気が回復しつつあるが、戦時経済に移行すれば完全にその問題は解決され、失業者も減る。
それを狙って軍事介入する可能性もあるが、国民が首を縦に振らなければ戦争はできない。
その場合、軍を用いて枢軸側を挑発して攻撃を誘ったりする等で、自国へ都合のいいような状況を作り出すだろうが。
目下、脅威となるのは共産主義国のソ連、次いで力を取り戻しつつあるドイツに不快感を募らせている英仏、その次にアメリカだと頭の中で考えた。
「…しかし、頭を打って見た目が変わらなくなったとは…。しかも姉妹仲良く」
リリアの記憶では、第一次世界大戦で後頭部を強打した時以来、私とヴィリエルは身体的変化が止まっているらしい。
頭を強く打ち、それから身体的な成長が止まってしまう事例は、"前世"でも少しだけテレビで見たことがある。といっても、よく起こるような病ではないようだが。
まさか、それが姉妹同時に起こるとは…仲がいい証拠なのだろうか。
備え付けの鏡を見る。
女性に似合わない長身と背中まで届くサラサラのブロンド、若干幼さが残るが凛々しく整った顔立ちに大きく丸い青目、そして良好なスタイル。典型的な欧州美人と言えるものだ。
自分で言うのも何だが、可愛い。
死ぬまでこの姿…まぁ、不老になったわけではない。衰えないのは見た目だけだ。
見た目は22歳、実年齢は35歳の美女。
「…」
ローブ越しに浮き上がる豊かな双丘を見、中身童貞ミリオタ大学生は三度赤面しつつ、総統執務室の棚から引っ張り出した書籍をベッドに放った。
(総統、ねぇ…)
正直言って、これからやっていけるか自信がない。こちとら、昨日までただの大学生である。
そう遠くない内に激動の時代がやってくるが、この国を少しでもマシな方向へ導けるのか…。
壁に掛けてある私の服や剣と共に、拳銃のホルスターがある。ナチス高官が好んで所持していたとされる、金メッキで紋様が描かれたルガーP08だと思われた。
これで自らの頭を撃ち抜けば、一大学生に不相応の責任から逃れられるだろう。
だが…まだ悲観するような状況ではない。
一応独裁政権だが、史実ほど強力なものではなく、ヒトラーよりも高い支持率――ヒトラーは国民投票で88.9%の票を得た――で総統に就任している。
他種族を弾圧・迫害しているわけでもないため、今のところ表立ってドイツを非難する国もない。…各国首脳が心中でどう思っているかは別として。
そして…。
自分のことを姉と呼んだヴィリエルの顔が脳裏によぎる。もし私がこの世からいなくなったら、彼女はどうなるのか…。
「ちっ…。俺はこんなにお人よしだったか…?」
見ず知らずの女性に対し妙な心情が湧き出てしまい、中々自決の決心ができない。
…仕方がない。
史実のヒトラー本人に憑依しなかっただけ、儲けものだと考えるしかない。
戦争に負けた原因はちょび髭が軍事に口出ししすぎたせいもあるし、作戦の方針を大まかに立てて、細かいところは名高い将軍たちに丸投げしようと思う。
無論撤退の権限も与え、陣地死守の命令はなるべく出さない。
また、"リリア"は憑依する以前に、対独接近の主張が出始めている日本へ対し、艦艇及び艦本式ギヤード・タービンの設計図供与、イタリアへ地中海一帯への重工業地帯建設要請の交渉を持ちかけていた。
あまり知られていないかもしれないが、ドイツはタービンの製造技術が各国に比べて遅れており、折角のワグナー高圧缶の高性能が上手く発揮できなかったとされる。
艦本式タービンは、殆どの日本艦船にも使われていた傑作だ。少なくとも、国産のものよりはマシになるはずだ。
無論タダではなく、日本向けに部品の工業規格標準化や生産技術の改善をはじめとした生産管理指導、イタリアに対し工業地帯建設に際しては全面的に支援すること、更に両国へ高度な冶金、電気溶接、光学技術の提供を約束している。
この要請に対し、自国の重工業の発展の遅さを痛感しているムッソリーニは快く応じてくれたのだが、日本に対する海軍艦艇の設計書供与要求は上手くいっていない。
要求の中には、長門型戦艦、最上型軽巡洋艦といった有力な戦闘艦艇の図面があったため、日本側も躊躇しているのであろう。
イタリアは比較的こちらの要求に応えてくれる――女好きなイタリア人のことだし、私の頼みというのも影響している…かもしれない――ため、そちらから艦艇設計図を供与してもらおうとも考えたが、航続距離の短い同国海軍艦艇は、ドイツ海軍の運用思想に合わない。
私としても、日本艦艇の図面は欲しい。
もう少しこちらが出すものを増やすか?無線電話機とか、ワグナー高圧缶、潜水艦関連の技術も出そうかねぇ…。
対潜戦闘の技術指導や狼群戦法の指南もやらせてもらおうかな?
二流海軍国とて、潜水艦戦術には一日の長がある。
航空機用のエンジンも、後ほど贈らせていただこう。
『総統、失礼いたします』
『失礼いたします!』
色々と頭の中で考えていると、ドア越しにヴィリエル、次いで若い男性の声も聞こえたため、私は入室を許可した。
両開きの立派なドアが開けられ、ヴィリエルと黒い軍服を纏った女性が入ってくる。
後者が着ているのは親衛隊の制服だ。リリアから受け継いだ記憶では、親衛隊は一般警察では対処できない事案への介入や、災害時に同組織と協力して民間人の避難誘導、相手国へのスパイ活動を行うのが主任務とのことだ。
また、史実での親衛隊は人種的な採用基準が厳しく、知的能力については何の基準も存在しなかった。
この世界では他の人種を見下すような風潮はなく、無論人種委員会などというふざけた組織も存在しないため、知的能力が基準を満たし、且つ国家に忠誠を誓っている人物であれば、基本的に人種を問うことはない。
自身の私兵と言ってもいい親衛隊を、リリアは必要ないと言っていたらしいが、共産主義者をはじめとした襲撃が少なからずあったことを棚に上げ、ヴィリエルやヒムラー親衛隊長官らが私に直訴。
仕方なく、リリアは護衛の随行を認めた。
さて、そんな親衛隊員の彼女の肩には、スリングで掛けられた短機関銃。間違いなく本物だ。
木製のライフル型銃床に、本体の左脇から突き出た箱型マガジン…MP18かMP28に違いない。
スゲー、本物のドイツ製サブマシンガンだー!…などと(心中で)喜んでいる私に向かい、二人は右手を高く上げる。
例のナチス式敬礼だ。…なんか恥ずかしい。
「総統閣下、午前中の会議の資料をお持ちいたしました。御気分はいかがですか?」
隣に従兵がいるせいか、姉妹ではなく総統と主席秘書官の関係としての言葉遣いだった。
「…問題ないわ。昼食を摂り次第、午後の政務には出る。これ以上予定を先延ばしにはできない」
慣れない女言葉に苦労しつつ、答礼して応えた。
起きたのが朝9時頃だが、いつの間にか12時を過ぎていた。
…なってしまったものは仕方がない。
現状、前世に戻る方法が分からず、この世界で暫く総統として生きていかねばならぬのであれば、これからやってくるであろう激動の時代を生き抜き、少しでもマシな戦後へドイツを導いてやる。
「…やってやるぜこの野郎」
「総統閣下?」
「い、いや。何でもない…」
閲覧ありがとうございました。
どうにか原作敵キャラがちびる描写まで続かせたいものです。
フランスにどうやって攻め込む?
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史実ルート:アルデンヌの森を通る
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マジノ線ルート:マジノ線を正面突破