目が覚めたらIF世界ドイツ総統(美女)になってたので、少しでもマシな戦後を目指す   作:夜叉烏

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 夜叉烏です。

 ドイツ製工作機械と薬品は良い商売道具です。

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独伊蜜月

 

 日本からの遣独艦隊が到着するのが2か月後と決まり、その準備も続く中、私は休暇も兼ねてイタリアへ赴いていた。

 

 「これはこれは、麗しきフューラー。お会いできて光栄です」

 

 満面の笑みで手を差し伸べてきた男。

 彼は姿勢を低くすると、突然私の手を取り、手の甲へキスしてきた。…前世男の私からすれば、あまりいい気分はしない。

 イタリアの男とは、やはりこんなものなのか…。

 

 「ど、どうも…」

 

 どもりながらも、改めて差し出された彼の手を力強く握った。

 

 私がいるのは、イタリア北東部の街トリエステ。

 第一次世界大戦まで長らくオーストリア=ハンガリー帝国の統治下にあった街だ。

 

 良港を多く抱えるイタリアからすれば、それほど重要な都市ではないが、鉄道路線が張り巡らされた豊かな街並みと、造船所が建ち並ぶ沿岸部、それらに加え、風光明媚なアドリア海との対比が美しい。

 それに、この街にも製鉄や原油をはじめとした工業地域がある。重要ではないまでも、無視できるほど価値がない都市ではないだろう。

 

 「この度は私の我儘を聞いて下さり、感謝いたします」

 

 「なんのなんの。フューラーのためならば、この程度は朝飯前です」

 

 そんなトリエステにあるミラマーレ城を、私は会談の場としてリクエストした。

 オーストリアの建築家によって、アドリア海を望む岸壁に建てられた、あらゆる建築様式が雑然と取り入れられた城だ。中国や日本の部屋もあるらしいし、後で見せてもらえるか聞いてみよう。

 こういう古城ってテンション上がるんだよな。

 

 庭園の一角――木々や草花に囲まれた、簡素なテーブルと椅子が2つだけ設置された小さな東屋――に案内され、私と男は向かい合うように座る。

 机上には、エスプレッソが入った魔法瓶と、華美なデザインのカップが置かれている。

 

 「こちらへ来るまでに、貴国の諸都市を見させていただきました。我がドイツと同等以上の発展ぶりで、感服しております」

 

 「いやはや…これも、フューラーの御英断と貴国の支援のお陰です」

 

 決して嘘ではない私の言葉に、目の前で魔法瓶を傾ける男――ベニート・ムッソリーニは、にこやかな笑みを浮かべながら、そう応えた。

 

 

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 今史におけるイタリアは、前世と比べてはならないと判断した方がいい。

 

 「ここへ来るまでに、貴国の諸都市を見させていただきました。貴国の道路は自動車で埋め尽くされ、まさに足の踏み場もありません。我がドイツでも、大衆向けの自動車が行き渡りつつありますが、ベルリンやハンブルク、ミュンヘンでのことです。全国民が自動車を買えるようになるには、まだまだ時間が掛かりそうです」

 

 「…失礼ながら、嘗ての大戦からの貴国は…見る影もないものだった。我が国もそんなことを言える立場ではないが…。しかし、貴女が総統の座に就いてからというもの、そんなことは覚えてないと言わんばかりではないですか。そして何より、貴国の技術力には目を見張るものがある。我々はそれに、幾度となく助けられた。リビアの件がなければ、この状況はありえなかった」

 

 遠巻きに見える市街地に目をやりながら応えるムッソリーニ。

 

 (オイルマネーがイタリアンチートの根源…か)

 

 この世界におけるイタリアは、史実では絶対にありえないチートを1つ持っている。

 それこそ、1925年における『リビア油田の開発成功』だ。

 史実だと、リビアの石油調査が始まるのは1955年だから、30年ほど早い。

 

 第一次大戦後、下手すればドイツよりも貧乏で悲惨な状況となり、なりふり構っていられなかったイタリアは、自国領となったリビアの資源調査を開始した。

 

 油田の存在を知ったイタリアは、内戦による国力消耗を嫌い、リビアの現地勢力へ融和的に接したのだが、彼らをも利用することで油田の調査が上手く進んだようだ。

 当時のムッソリーニは、現地民の支配権などよりも、油田のみが目当てだったらしい。なお、石油を掘り当てる際に、おまけで深層地下水も見つけている。

 湾港と砂漠しかないリビアだったが、その価値が爆上がりした形であった。

 

 しかし、油田開発には相応のノウハウが必要且つ、リスクも生じるものだ。

 そこで、イタリア王立石油開発機構がその総力を結集、アメリカの石油資本の協力も受け、何とか技術と資金の捻出に成功した。

 

 そういうわけで、1930年代初頭にはリビアの油田が操業を開始。リビアの他、イタリア本土の主用都市にもコンビナートが次々と建てられた。

 更に、深層地下水を使った灌漑農業もリビアで始まり、食料のみならず、煙草葉や油ヤシ、そしてゴムの生産も開始された。

 

 すっかり産油国の仲間入りを果たしたイタリアは、大量の原油をチラつかせ、地中海での経済における覇者となったのだ。今現在、ヨーロッパで一番儲かっている国家なのは間違いない。

 ここに来るまでに見たイタリアの道路を埋め尽くすフィアット製の自動車が、イタリア国民の生活の豊かさを物語っている。

 

 しかも、このオイルマネーの存在のお陰で、世界恐慌の影響もあまり受けることがないまま経済成長を迎えることとなった。

 

 『リビア油田は、神が我らに齎した素晴らしいことこの上なき贈り物である。偉大なる我らローマ帝国の末裔は、フィアットの自動車を好きなだけ乗り回し、リビアの葉巻を好きなだけ吸い、良質且つ十分な量の食事に好きなだけ舌鼓を打つ、世界有数の豊かな生活を送ることが可能となるであろう!』

 

 高らかに宣言するムッソリーニに、貧困に喘いでいたイタリア国民は歓喜に沸いた。

 明らかに向上した生活水準に、失業者の大量減少――本土とリビア間を行き来するタンカーや輸送船の建造や造船所、コンビナート、軍需・民需工場増設のため、とにかく人手が必要になった――…この状況に、国民は挙ってムッソリーニらファシストを賞賛した。

 

 これに目を付けたリリア(憑依前)も、隣国からの原油を欲したため、高性能工作機械や薬品を格安で大量に売りに出し、イタリアとの関係を濃厚なものとしていった。

 イタリアにとっても、これらを安く仕入れられるのは嬉しいことだったらしく、石油製品を他国よりも多くドイツへ輸出してくれた。

 

 「工業地帯はどうでしょうか?」

 

 「うむ。本土やリビアの他、シチリアやサルデーニャにも建設する予定だが、少々現地のマフィアが五月蠅い。まぁ、陸軍を派遣してやったら、呆気なく静かになりましたが」

 

 「随分と派手なことを…」

 

 そこは警察で良くね?と思った。まさかマフィア鎮圧に正規軍を差し向けるとは思わなんだ。

 まぁ、いつか大規模な工業地帯が建ち並ぶこととなる土地だ。不穏分子を確実に排除するのに越したことはない。

 

 因みに、リリアがこの工業地帯建設を望んだのは、イタリアの近代化が目的だった。リビアの原油で潤っているとはいえ、軍はまだまだ前時代的なイタリア軍。

 簡単に言えば、「弱い同盟国など要らない。弱ければ強くなってもらう」理論である。

 

 「この程度は当然のことです。フランスやギリシアが妙な動きを見せておりますし…。嘗ての大戦で、私はこの国の工業力の低さを、痛いほど感じました。列強の一員に数えられながら、何て貧乏なのだと…」

 

 現在、隣国フランス、バルカンでの影響力を強めたいギリシアが武力を用いた牽制を開始し、リビアや本土間のシーレーン防衛のための海上戦力が必要とされている時期だ。

 それに加え、アフリカのイギリス軍、アルジェリアに陣取るフランス軍を相手取るべく、強力な陸軍戦力――特に、戦車等の機甲戦力――の充実化も急務であったイタリア軍は、リビアの石油によって多大な富を得ているのをいいことに、それを利用した軍拡も行っている。

 

 地中海沿岸への大規模工業地帯建設が完了した暁には、その軍拡により勢いが付くことだろう。史実のような体たらくは、心配することはない…と思いたい。

 まぁ、この世界のイタリアは豊かだ。軍人に対する社会保障が充実していること、女性の軍人も積極的に雇用しているためか、イタリア軍の士気は高い。

 

 イタリアの男は酒と食事と女がいると人が変わるって、前世じゃよく言われていたが、ホントのことだったんだなぁ…。

 というか、ムッソリーニがその特性をよく理解し、兵がやる気になれるよう裏で手を回している…?

 

 「…それで、麗しきフューラーは単なる休暇で我がイタリアを訪れたのですかな?」

 

 「…それもありますが、率直に言わせていただきますと、貴国のあるものが欲しいのです」

 

 この世界のイタリアが、軍拡と並んで力を入れているものだ。

 

 「貴国の医療技術を、我がドイツへ供与していただきたいのです」

 

 ――従軍経験のあるムッソリーニは、戦場の生々しさをその目で見てきた。

 傷口に蛆が湧き、痛みに悶えながら死にゆく者、即刻治療が必要なのにも拘わらず、粗雑に包帯を巻かれただけで放置される者、戦死者が山積みにされた、不衛生極まりない野戦病院…。

 

 『嘗ての従軍時、余はこの目で幾度も目にした!戦場で倒れた兵が真面な治療を受けること叶わず斃れていき、過酷な環境へ放置され、戦傷に苦しむ光景を!戦地へ赴き、祖国のため戦う彼らのためにも、医療を含む後方支援体制の構築は必須である!無論、この技術は民間にも還元される。我がイタリアは地中海の覇者であると同時に、全ての国民が最新の治療を受けられる世界有数の医療大国として、その名を轟かせるのだ!』

 

 政権の座に就いたムッソリーニは、リビア油田の開発と軍拡と共に、医療技術の発展に力を入れていた。具体的には、ペニシリン系抗生物質、結核・腫瘍・スペイン風邪用抗生物質、衛生概念の研究だ。

 オイルマネーで潤うイタリアの経済は、医療研究に必要な経費を全て賄うことができた。

 

 働き口がどこにでもあり、生活必需品がどの商店の棚にも並び、具合が悪くなれば、とにかく病院に駆け込めば治療が受けられる。

 …いや、豊かにも程があるわ!世界恐慌の影響から抜け出せていない国家も多い今、こんな豊かな国はイタリアの他はアメリカ位じゃなかろうか。

 

 その最新医療技術を手にできれば、我がドイツもその豊かな国の内に入れるのだが…。

 

 「…流石に、ただで供与するとは言えませんな」

 

 むぅ…。予想はしていたが、ガードは固いな。

 イタリアは何を望む?

 

 「我が陸軍は、急速に近代化を遂げつつある。戦車や装甲車を中心とした高機動装甲師団が、その中核を成すことだろう。だが、近代化はまだ始まって間もない。…貴国の陸軍との戦術交換、我が軍に足りない機材の輸出…お願いできますかな?」

 

 なるほど…。

 ここで決められることではないな。一旦持ち帰って、陸軍とも話し合わなければ。

 私としては、それで最新の医療技術が手に入るのであれば、悪い気はしないが。

 

 「…私個人としては賛成ですが、一旦持ち帰って皆と話し合いたいですね。それと、軍事同盟の件も併せて協議しておきます」

 

 「良い御返事を期待しておりますぞ」

 

 兵士が前線で適切かつ衛生的な治療を受けられるとすれば、陸軍も納得するだろう。

 

 因みに軍事同盟とは、史実だと1939年5月に締結される"鋼鉄協約"に相当するものだ。共産主義に対する牽制、軍事・経済的協力を目的とする。

 これに関して、ドイツの中枢は肯定的な意見が殆どを占めており、持ち帰って随時協議するとはいっても、最早決まったも同然だろうな。

 

 「そういえば、貴国もよく踏みとどまりましたね。あの事件の後、私は貴国とエチオピアが戦争へ突入すると思っていましたから」

 

 「経済が潤っている今、エチオピアを攻める理由もありませんしなぁ…。正直、リビアがあれば他の土地はどうでもいいと言った具合です。本土から離れた場所へ植民地を持つのも考え物ですし…。あの国は、我が国よりも遥かに弱体な軍しか保有しませんが、攻めるに難い地形で、こちらにも相応の損害を出すことになっていたでしょう」

 

 あの事件…とは、ワルワル事件だ。史実と同じ1932年、イタリア領ソマリランドとエチオピアの国境で生起した武力衝突であり、第一次エチオピア戦争で燻っていたイタリアの対エチオピア感情が一気に悪化した原因とされる。

 

 「しかし、国際会議場でイギリス・フランスをこき下ろした手腕は、見事と言う他ありませんでした」

 

 「えぇ。国王陛下と軍部も、戦争には反対だったことですし。とはいえ、彼方からの先制攻撃によって人的被害が出ていますから、あの程度の抗議は許されるでしょう。…曲がりなりにも列強の一員である我々が、エチオピアに土を付けられたままというのも、少々癪ですからな」

 

 史実通り、領土問題で揉めていたエチオピア帝国との間で生起したワルワル事件後、アフリカには不干渉の立場だった英仏は、対エチオピア感情が最悪なイタリアへ接触。

 国境線の変更を認める代わり、エチオピア侵攻を取り止める宥和案を出したが、エチオピア側からの不意打ち同然な攻撃で人的被害を出したイタリアからすれば、それだけで納得できる筈がなかった。

 

 すると今度は、英仏がポーランド、トルコ、スペインを巻き込み五国委員会を結成、イタリアへ圧力をかけ始めた。

 改めて彼らは「エチオピアの独立を連盟が保障するかわりに指導下に置き、イタリアが望む国境線変更を行う代わりとして、イギリス・フランス領ソマリランドから若干の領土をエチオピアに割譲する」という内容を送り付けたのだ。

 

 地中海における経済を牛耳り、更なる軍拡も実施しているイタリアは、英仏からすれば目障りに映ったようだ。徹底的に牽制するチャンスだと思ったに違いない。

 

 イギリスとの戦争を懸念していた国王と軍部、議会と同様、"この世界の"ムッソリーニも、エチオピア侵攻に反対していた。

 20万の軍隊を東アフリカへ態々派遣したというのに…とムッソリーニは思ったらしいが、『まぁ、大規模派兵・行軍訓練にはなったしいいか』と考え直したようだ。

 

 しかし、イタリア国民はそう簡単に納得しなかった。エチオピア側からの先制攻撃で被害が出たわけであるし、当然と言えば当然だ。

 議会や軍部も戦争に反対しながら、内心ではそう思っていた。

 

 そんな彼らの不満を一心に背負い、国内の反対意見を捻じ伏せたムッソリーニは、なんと国際連盟の本会議場に自ら乗り込んだ。

 一国のトップが会議場に現れた驚愕にその場が支配される中、彼はワルワル事件におけるエチオピア軍の使用武器を証拠として提示し、こう言った。

 

 『これを見てほしい。先の我が国領ソマリランドとエチオピア国境で生起した武力衝突において、エチオピア軍より鹵獲した小銃及び弾薬である。なお、弾薬に関しては我が国兵士の肉体から摘出されたものもある』

 

 厳重な管理の元持ち込まれた小銃本体と弾薬、イタリア兵の肉体から摘出した弾薬を提示したムッソリーニは、周囲を一度見渡してから続けた。

 

 『見ての通り、この弾薬はダムダム弾である!ハーグ陸戦条約第23条において、使用が国際的に禁止されている弾丸だ!兵士の肉体に命中するや否や変形し、激痛に苦しみ悶えた末の死を与える、非人道この上ない代物である!あろうことか、エチオピア軍の小銃すべてにこの弾薬が装填されていたのだ!』

 

 出席していたエチオピア代表が表情を青褪めさせる様がはっきり分かったと、ドイツ外務省より報告が上がっていた。

 史実でも、第二次エチオピア戦争でエチオピア軍はダムダム弾を使用し、その報復としてイタリア軍は毒ガスを使っている。

 

 『我がイタリアは、ハーグ陸戦条約に違反したエチオピアをこの場にて告発する!そして、ハーグ陸戦規定違反を犯し、未だに奴隷制や封建制が残る国家を擁護した五国委員会に対し、強く抗議するものであるっ!!』

 

 ムッソリーニの発言に、会場は騒然となった。

 五か国――とりわけ英仏は完全に面目を潰されてしまったが、ムッソリーニの告発は極めて正当なものであるため、反論する余地がない。

 

 『先に五国委員会から出された調停案は呑ませてもらう。我がイタリアはエチオピアに侵攻することはないと約束しよう。しかし、我々は今回の出来事は決して忘れない。貴国らがハーグ陸戦条約に違反した国家に対し、正当な処罰を与えることを望む。さもなくば、我々はエチオピアに対し、何時でも制裁措置を加える用意がある』

 

 つまり、『五国委員会が相応の措置を行えないのであれば、イタリアは何時でも第二次エチオピア戦争を仕掛ける用意がある』ということだ。

 

 前述の通り、ムッソリーニの告発は正当だ。徹底的にこき下ろそうとした相手から逆にやり返され、英仏の代表は悔しさに震えたが、反論することは叶わず、エチオピアに対する非難決議に移らざるを得なかった。

 自国民に「条約を守らず、非人道極まりない武器を標準装備している国家を擁護した」という印象を持たれてはたまらないのだろう。

 

 肝心のエチオピアに対する措置に関してだが、甘い処分で済ませればイタリアがどう出てくるか分からない。

 

 結局、五国委員会はエチオピアを「懲罰対象国」と見なし、五国の監視下に置くこととなった。イタリアが望む通りの国境線の移動を余儀なくされただけでなく、エチオピア軍が使用するすべての小銃・弾薬が破棄され、エチオピアは事実上の無武装地帯となったのだった。

 

 エチオピア王が「我がエチオピアが外部勢力に侵攻されたらどうやって身を守れというのだ」と嘆いていたというが、真相の程は不明である。

 

 まぁ、この時エチオピアを攻める可能性がある国と言えばイタリアだが、そのイタリアもリビアにしか目を向けておらず、大した資源もないエチオピアなど眼中にないため、侵略される心配は皆無に等しいが。

 それに、イタリアにとってリビアは、現在所有しているどの植民地よりも遥かに重要度が高い土地であり、それらをさっさと独立させて手の空いた植民地軍をリビアに――工業地帯が建設されるシチリア島やサルディーニャ島にも――配置し、防衛力の強化を実施すべきとの意見も上がっているとのこと。

 

 ともかく、これは軍部・民間問わずイタリア国内でのムッソリーニの株が上がりに上がった出来事であり、姑息な英仏の目論見を巧みに掻い潜り、カウンターパンチを喰らわしたと、イタリアの新聞社が誇らしげに報じている。

 

 

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 (こいつ…できるな…)

 

 民族主義的な考えに囚われることなく、騙し討ち的な先制攻撃で自国兵士が死亡しても感情的になることなく、逆に英仏を手玉に取っている。

 

 私の知るイタリアと、この世界のムッソリーニが率いるイタリアは一味も二味も違う。寧ろ頼りになるという言葉すら烏滸がましい国かもしれない…。

 これは、仲良くしておいた方が身のためだな…。

 

 「…我々も、海軍の再建に力を入れている最中です。その際は貴国を頼るかもしれませんが」

 

 「私としては、我が海軍が貴国の力になるのは誇らしいことですな。…まぁ、それなりの対価を期待しておりますよ。我らも、慈善事業で国家運営をするわけにはいきませんからなぁ」

 

 ちゃっかりしてやがる…。

 独伊の蜜月は30年後半から続いているのだが、海軍力が貧弱なドイツにとって、英仏以外で距離が近く、比較的纏まった海軍力を保持するイタリアと、協力関係を築きたかった。

 だが、イタリアは本土~リビア間のシーレーン防衛を主任務としているため、航続距離が短い艦艇が殆どを占める。大西洋への進出も視野に入れているドイツ海軍とは馬が合わない。

 

 リリア(憑依前)及びドイツ海軍上層部は、イタリアに対して、有事の際は両国海軍共同で敵国艦隊に対処する考え、大西洋での作戦行動を共にするべく、航続性能を向上させた艦艇の建造要請を伝えた。

 

 地中海を抑えたいだけのイタリアは当初渋ったが、軍艦の測距儀に使用されるレンズ技術、航空機搭載型の高性能無線電話機、艦艇のスクリュー研磨技術を与えたこと、工作機械をはじめとした工業製品の輸出量を増やしたことで気を良くし、此方の要求を呑んでくれた。

 これにより、33年度以降に計画された新鋭戦艦・巡洋艦は、地中海のみならず、大西洋での作戦行動に相応しい航続性能を得ることになるようだ。

 

 こっちの海軍も負けてはいられないな。

 

 「そういえば、休暇も兼ねての我が国訪問とのことでしたな。いかがでしょう?数々の芸術が集うローマを案内させますが」

 

 「お願いします」

 

 エスプレッソのカップに口付けながら、一時の休息を噛み締める私だった。

 明後日にはベルリンへ戻って――ドイツ製急行列車SVT877、イタリア製急行列車ALb80による、ベルリン~ローマ間の国際高速路線が整備されている。現時点で世界一速い路線らしい――その足で政務に励まなければならない。

 

 副総統のヘスが総統職を代行しているが、それでも私の判断が必要な事案もあるだろう。彼も一児の父だし、家族の時間を大事にしてほしいものだ。

 

 まったく、やっぱり一国の独裁者って忙しいなぁ(小並感)。

 

 





 英仏を掌で躍らすイタリア、違和感しかないのは作者だけ?

フランスにどうやって攻め込む?

  • 史実ルート:アルデンヌの森を通る
  • マジノ線ルート:マジノ線を正面突破
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