目が覚めたらIF世界ドイツ総統(美女)になってたので、少しでもマシな戦後を目指す   作:夜叉烏

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 こんにちは。夜叉烏です。

 日本の皆様に陸軍の演習風景を見学してもらいます。

 作者のYouTube
 https://www.youtube.com/channel/UCUn4CBwIg1kM4rdr-AkW3Cg/videos


日本、思い知る(中編)

 

 先ほどの車両行進も騒がしいことこの上ないものだったが、今の状況はそれ以上だ。

 演習場の一角に大量の火砲が並べられ、景気よく砲弾を撃ちまくっているのだ。砲兵を"戦場の女神"と称すソ連赤軍ばりに。

 

 30口径15センチ榴弾砲sFH18が断続的に砲撃を開始してから5分後――実戦では最低でも1時間以上は行う。今回は観客を退屈させないよう、5分に留めた――、砲兵隊の圧倒的な火力支援の下、戦車部隊が動き出す。

 実戦ならもっと大量の火砲を揃え、最低でも一時間は事前砲撃を行うと聞かされ、自軍が1年間に使う砲弾全てを一度の砲撃で使い切るのではないか…とでも言いたげになっている日本視察団。『一撃必中』がモットーの日本軍からすれば、このような面制圧は衝撃だろう。

 そんな彼らだったが、機甲部隊の登場を聞きつけ、漸く驚きから立ち直って其方に目をやる。

 

 史実よりも早めに量産化にこぎつけたⅡ号戦車――ただし、搭載しているのは50ミリ砲で、外観はⅢ号戦車のE型にそっくり――と、Sd.kfz.251装甲ハーフトラック。我が陸軍自慢の機甲部隊だ。

 

 本来ならここで空軍の爆撃機も参加する手筈なのだが、今のドイツ空軍に爆撃機はない。

 いや、正確にはいくつかあるが、まだ量産できていないのだ。それでも、開発速度は史実よりも早いが。 

 

 「あちらの車両はⅡ号戦車で、45口径50ミリ戦車砲を主砲とした軽戦車になります。後継の車両が配備されるまでのストップギャップでして、あまり大規模な量産はしない予定です」

 

 史実では、50ミリ対戦車砲Pak38が1938年に開発されるが、この世界では1935年に量産化が始まっている――なので、名称はPak35となっている。ついでに言うと砲身長が地味に長い――。

 この時期の戦車相手なら十分通用する代物だ。

 案内役の士官の言葉に、日本陸軍から派遣された将校たちは唸り声を上げる。

 

 確か、この時期の日本の主力戦車は八九式か。九〇式18口径57ミリ砲を主砲としている中戦車だ。

 口径だけならⅡ号より大きいが、短砲身であるため装甲貫徹力は低く、専ら歩兵支援にしか使えない。

 後継車両の九七式も同じ口径の砲で、後に一式48口径47ミリ戦車砲に換装されるが、驚異的な速度で戦車が進化していくことを考えると、然程強力とは言えない。

 

 「装甲厚、速度はどれ程ですか?」

 

 視察団の1人――後の硫黄島にて壮烈な戦死を遂げる運命にある栗林忠道が、案内役に質問した。

 

 (栗林中将…いや、今は陸軍省軍務局員か。少し前までは騎兵連隊の連隊長をやってたんだっけ)

 

 前世で見た資料に記されていた内容を思い出していると、質問を受けた士官と、同席している技官がフリッチュに目線をやっていた。

 軍機に当たるかどうか、判断しかねているようだった。

 

 「総統はいかがお考えでしょうか?私としましては、問題ないと考えます」

 

 フリッチュが、小声でこちらに判断を求めてくる。

 ふむ…。まぁ、Ⅱ号のスペックを漏らしたところで大勢に影響はないな。既に後継車両の開発は始まっている。

 話しても構わないという意を込めて、私は頷いてみせた。

 

 「新たに開発した空冷ディーゼルエンジンを搭載しておりまして、最高時速47キロを達成しております。装甲は、砲塔と車体の前面がそれぞれ35ミリです」

 

 搭載砲以外に史実と違う点といえば、搭載しているのがディーゼルエンジンだということ。

 ガソリンエンジンは燃費が悪い、被弾時に炎上しやすいという問題がある。それを重視した私と陸軍上層部の訴えにより、ディーゼルエンジンの研究が史実以上に進められていた。

 最初に試作されたダイムラーベンツ製のV12気筒ディーゼルエンジン35型(出力170馬力)はⅡ号へと搭載され、上記の問題が解決され、機動力にも殆ど影響を及ぼさなかった。

 満足した陸軍は、35型エンジン搭載型Ⅱ号戦車の配備を歓迎し、量産が開始。

 これから先のドイツ戦車は、総じてディーゼルエンジンを搭載するようになるだろう。

 

 「ほう、八九式以上の装甲厚でこの機動力か…」

 

 「これは凄い」

 

 感嘆の声が漏れる日本の皆様。どうだろう、もしかしたらⅡ号は売れるかな…と思ったけど、流石にⅡ号じゃ先行き短いな。

 購入したとして、BT-7やM3軽戦車には対抗できるだろうが、その内登場するであろうT-34、M4シャーマンに蹂躙されてしまう。

 Ⅱ号で感嘆しているようではまだまだだぞ、日本軍。

 

 「こちらの戦車はあくまで繋ぎであるとのことですが、貴軍は将来的にどのような戦車を配備するのですか?」

 

 質問したのは、池田末男騎兵少佐だ。立場的に上の人物が多くいるためか、少々緊張気味である。

 私の記憶が正しければ、今の彼は教官職を転々としており、後に戦車学校の教官となるはず。まぁ、視察団に選ばれるのもわかるな。

 またまた機密関係で悩んでいるのか、こちらを見てくる案内役。

 

 「フリッチュ。口径、砲身長、装甲厚、速度等大まかな情報の開示はOKってことで。仮にこの情報を与えても、今の日本に性能面で上回る戦車が作れるとは思えないわ。更に後継の車両も開発段階にあるのもサラッと話しましょう」

 

 「…賛成ですな。日本には、奮起していただきませんと」

 

 私の言葉に、フリッチュも賛成の意を示す。私と彼にとっての日本は、自動車後進国であり戦車の開発能力も低いという意見で一致している。

 

 実際にⅣ号クラスの戦車を日本独力で開発・配備できるとは思えないし、できたとしてもその頃のドイツ陸軍にはより強力な戦車が配備されているだろう。

 フリッチュの伝言が伝えられ、案内役に連れられたクルップ社の技術者が池田の質問に答える。

 

 「時期主力戦車はⅡ号の拡大発展型というコンセプトでして、最大装甲は車体・砲塔共に50ミリ、最高時速40キロ以上が予定されております。なお、50口径を目安にしたより長砲身の75ミリ砲への換装も考慮しており、将来的には対戦車戦闘・歩兵支援双方をこなせる車両となるでしょう」

 

 自軍の八九式との性能差に、思わず顔を青ざめさせる視察団。

 まぁ、ノモンハン事件でソ連戦車の怖さを味わう前だ。日本製戦車が如何に力不足なのかを思い知ったことだろう。

 

 「なお、更に後継の車両も鋭意計画中です。こちらは…1942年から43年を目処に配備される予定になっております」

 

 「そこまで先を見据えて技術開発をしているのか…」

 

 日本陸軍技術本部の職員が唸り声を上げる。

 

 「戦車に限らず、どんな兵器も配備された瞬間から旧式化が始まります。仮想敵国も、次から次へと新型戦車を送り出してくることでしょう。新兵器の開発には一歩、いや二歩も三歩も先を見越していかなくてはならないと、我がクルップのみならず、兵器開発に携わる企業全てがそう考えております」

 

 「…恐れ入りました」

 

 心から敬服したように、質問した職員はそう返した。

 自分たちなどより遥かに先を見据えているドイツ企業の先見性に、言葉が出ない様子だ。

 

 ――さて、話している間にも演習は進行している。

 軽快な機動で地を駆けるⅡ号戦車が、咽頭マイクを用いた指揮の下、停止・発砲を繰り返す。

 

 流石は陸戦に定評のあるドイツ陸軍と言うべきか、外れ弾なく標的へ着弾させていく。

 まぁ、演習の標的は撃ち返してはこないし、動かない。実戦の雰囲気ではこうはいかないだろう。

 

 そして、停止したSd.kfz.251の後部キャビンドアから、完全装備の歩兵1個分隊13名が躍り出る。

 本来、この車両は10名が定員なのだが、この世界のSd.kfz.251は全長6.20メートルと大型化しており、その分多くの兵員が乗れるようになっている。そして、手榴弾を兵員室に投げ込まれないよう、金網式の天蓋が標準装備されている。

 対空射撃も可能なMG34機関銃の連装銃架装備型が基本だが、全周旋回可能の20ミリ機関砲KwK30を1門搭載した歩兵戦闘車型も混じっている。

 

 降車した歩兵は車両の左右に伏せると、小銃を発砲する。

 こちらは、Gew98の代替えを目的に開発された小銃。チェコスロバキアのZH-29や、スイス経由でメキシコから購入したモンドラゴンM1908小銃を基に開発したドイツ初のセミオートライフル"Gew34"である。

 その他、分隊支援用火器としてブルーノZB26を輸入し、7.92×57ミリモーゼル弾の30発入弾倉、迅速な着脱が可能な銃身などの改良を加えたMG28軽機関銃を持っている。

 汎用機関銃として著名なMG34、後に開発されるであろうMG42だが、そちらは機関銃部隊へ配備されている。

 アメリカ陸軍と同じような部隊編成だ。

 

 さて、このGew34は全長1020ミリと比較的短く、7.92×57ミリモーゼル弾が10発入るマガジン式のガス圧作動半自動小銃だ。

 外観は、戦後フランスで開発されたMAS49/56半自動小銃に酷似している。

 取り回しが良く、重量も4.1キロと軽めであり、部隊からは好評である。

 開発直後は降下猟兵部隊への配備が優先されていたが、今では一般の部隊にもかなり浸透している装備だ。

 

 「貴国の歩兵は、全員が半自動小銃を装備しているのですか?」

 

 「はい。Gew34半自動小銃は昨年から部隊配備が始まった最新の小銃でして、それまで主力だったGew98等を置き換えていく予定です」

 

 知っている者も多いだろうが、日本軍にも四式自動小銃と呼ばれるセミオートライフルがあった。

 色々あって実戦でそれを撃つ機会はなかったが…。

 

 低い工業力による部品・弾薬の供給問題、技術的課題・コスト問題などから、自動小銃の開発はもたついていたんだっけ?

 

 「半自動小銃の開発は元々意見が出ていたのですが、私も口添えをさせていただきました。戦争は開けた場所ばかりでするものではありません。森林、市街地、室内…あらゆる場所で行われますからね。その場合、従来の小銃では即応性に欠けますから」

 

 私も、そのように口を添えた。

 アメリカやソ連に比べて自動火器が遅れているため、M1ガーランドに比肩するような得物を全軍に行き渡らせなければ。

 因みに、Kar98kも新型のボルトアクション"狙撃銃"として開発・採用され、狙撃兵に多数配備されている。

 

 「情報によりますと、ソ連軍はこのような自動小銃の開発に力を注いでいるとのことです。それに遅れることがないようにしなければなりません」

 

 日本陸軍の仮想敵はソ連。

 このままだと撃ち負けるぞ、使節団の諸君…いや、広大な満州の平原辺りなら三八式でもワンチャン…?

 

 「ソ連が、ですか…」

 

 「国防軍諜報部は優秀です。間違いないでしょう」

 

 自国より進んだ仮想敵の技術を聞き、表情を引き締める日本サイド。

 上層部に伝えてくれ、まずは国力の増強に励むようにとな。悪戯に軍拡しているようではだめだ。

 

 ――そんなことを話し合いながら、本格的な演習の風景を眺める。

 ハーフトラックから降車した歩兵が敵の銃火から逃れるため伏せ、Sd.kfz.251に据え付けられている連装式のMG34と20ミリ機関砲が彼らを援護すべく火を噴く。

 歩兵分隊のMG28、機関銃分隊に配備されているMG34と共に援護射撃を浴びせ、敵へ頭を上げさせない。

 

 8cm sGrW 34中迫撃砲を載せて自走化したSd.kfz.251、Ⅱ号戦車の援護射撃も加わり、各歩兵分隊が前進を再開。同時に戦闘工兵部隊も前進し、トーチカや機関銃陣地を模した目標を爆破し、歩兵が敵陣地へ手榴弾を投げ込んで侵入し、制圧していく。

 梱包爆薬やワルサー・カンプピストルの榴弾の爆発、火炎放射器から放たれた火の点いた燃料の奔流。演習とはいえ、中々派手だ。

 

 1つ1つ敵の火点を潰し、地道ながらも味方の損害を抑えながら確実に前進していく。

 これからは真面な爆撃機を保有することになるし、近接航空支援も行うことを予想すれば、もっと早い段階で片付くだろう。

 

 日本サイドにはどう映るかな?

 個人的に、日本陸軍は軍刀と三八式片手に吶喊し、敵の防御陣地を強引に乗り越えていくイメージしかないんだが。

 お前等もっとドイツ陸軍見て強くなれ。欲を言わせてもらうならもっとドイツ製兵器買え。

 

 (…あ、陸海の仲も取り持ってあげる必要があるかな?全く、やることが多い)

 

 手のかかる同盟国(祖国)――滅茶苦茶優秀なイタリアを見てしまった身からすれば、日本は今現在枢軸で一番頼りない国である――に辟易しながら、今の日本の問題点をドイツ総統の立場で何とかできないか考えるのだった。

 





 次は空軍編。

フランスにどうやって攻め込む?

  • 史実ルート:アルデンヌの森を通る
  • マジノ線ルート:マジノ線を正面突破
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