アーネンエルベの兎   作:二ベル

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ダンまち・・・新巻・・・・『店舗特典』・・・『とらのあな』・・・住んでるところにねぇ!!


唐突ですまないがアルフィアママはもう退場


はじまり⑤。

 

 

 メレンでの休暇より、季節は秋を跨いで冬に差し掛かり肌寒くなるそんなとある日。

特段、これと言って大きなイベントは発生してはいない。

夏の終わりごろには、『挽歌祭(エレジア)』が行われたり、秋となれば『女神祭』が行われたりだ。英雄や冒険者を哀悼し、過去を想った後、豊穣を祝って明るい未来を信じる。オラリオにおいて『二大祭』と呼ばれる催しがあったくらいだろう。

 アルフィアはメレンでの休暇以降、【アストレア・ファミリア】に手ほどきの一切はしなくなり、それについてアリーゼ達は『地獄の合宿(しょうえんせい)』でちょっともめてしまって、そのせいで失望されてしまったのかと勘違いしてしまったが、これはアルフィアの言葉足らずが原因であった。

実のところは、アルフィアは自分に残された時間をベルのために使っていただけであった。親子2人で『挽歌祭(エレジア)』にいっては顔も知らないベルの実母に祈りを捧げて見たり、『女神祭』では収穫物を一緒に食べてはベルが迷子になってしまったりだ。

 

そんな、もう少しで1年が終わるという頃。

アルフィアの命の灯火は終わりを告げた。

 

 

享年24歳である。

 

 

 

「はぁ・・・・皆、ちゃんと休んだ?」

 

「団長こそ・・・顔が汚いぞ」

 

「輝夜こそ、目元が真っ赤よ」

 

「私の眼の色はいつものことだ」

 

 

 窓から見える空を見上げれば、ぽつりぽつりと白い雪が降っているのが見えた。

都市内でも「そろそろ初雪かも」と言われ『聖夜祭』もいよいよかと賑わっているほどだ。

けれど【アストレア・ファミリア】は今日この時に限っては、どんよりと気落ちしていた。アルフィアが持病であることは勿論知ってはいたが、11人の眷族達を相手に涼しい顔をして戦う彼女の化物性にとても不治の病を患っている女だとは思えず、「死ぬわけがない」とさえ誰もが思っていたくらいだ。

 

 

「・・・クラネルさんは?」

 

「ベル君は泣き疲れてアストレア様の部屋で眠ってる」

 

 

 

 

×   ×   ×

今朝のこと。

 

 

 最初に気づいたのは、勿論アストレアだ。

目が覚めた時、『恩恵』が1つ減っていることに気づいたのだ。「嗚呼、この時が来てしまったのか」と思った彼女はベルとアルフィアの部屋に行くと藻掻くように呻くベルとそんなベルを抱きしめて幸せそうな顔で眠るアルフィアがいたのだ。文字通り、永遠の眠りについたというやつだ。

 

「ベル、大丈夫?」

 

「ア、アストレア様ぁ・・・お義母さん、くるしい・・・」

 

「あらあら・・・」

 

アルフィアより先に目が覚めていたベルが、「一度お義母さんに捕まるとね、二度と逃げられないんだよ」というほどでLv.7の拘束力は確からしい―――とベルはそんなことを思っているようで今抱きしめている義母が既に亡くなっていることなど知りもしない。部屋に入ってきたアストレアの顔を見てパァァと表情を明るくして手を伸ばしてくるほどだ。アストレアは努めて微笑を浮かべてベルの頭を撫でるとアルフィアの腕の中からベルを救出し彼女の手を胸の前で組ませた。

 

「・・・・ベル?」

 

「んぅー・・・?」

 

「アルフィアは・・・その・・・」

 

「今日はお義母さんと【ゴブニュ・ファミリア】の工房を見に行くんです!」

 

「・・・へ?」

 

「昨日寝るときに、明日はそこへ行ってみようって」

 

「・・・そう」

 

「でもお義母さん、今日は起きるの遅くて・・・疲れてるのかな」

 

「・・・・」

 

 メレンでの休暇以降は、よくベルと都市内を散策してまわっていた彼女。

どうやら昨晩、眠る前に明日の予定を話していたらしい。それでも持病を持っていることは知っていたベルは最近あちこち行ってたから疲れて寝坊しているんだと思い込んでしまっている。今日の予定を楽しそうに言うベルに、「お義母さんはもう起きないわ」とはアストレアは言えなかった。口を引き結んで、深呼吸をした後にアストレアはベルと目線を合わせるようにすると頬を撫でながら微笑みを浮かべて口を開く。

 

「アリーゼ達を呼んできてくれる?」

 

「アリーゼさん?」

 

「そう・・・もう起きて朝食を用意しているだろうから」

 

「くあぁ・・・わかりましたっ」

 

一度大きな欠伸をしてアストレアの手にくすぐったそうな仕草をするベルに、また笑みを浮かべてベルに先に朝食を食べていなさいと言って送り出す。ベルが部屋から出て行って少しするとアリーゼ達――ベルとアルフィアを除いた眷族11人が部屋にやってくる。全員が入るにはさすがに狭く、中に入っているのは数名だ。綺麗な寝顔を晒すアルフィアに「へぇアルフィアってやっぱり美人ね」という反応を見せる眷族達に、アストレアは再び深呼吸をしてからその口から告げた。

 

 

「―――目が覚めたら、『恩恵』が減っていました。この意味が、わかりますね?」

 

 

しん、と少女達が静まり返る。

「誰の?」と言うようにあたりを見渡して、全員いることを確認する者さえいるほどだ。なるほど、やはりアルフィアの強さからしてとても死ぬようには思えなかったか『病を克服するスキル』が発現したとでも思っていたのだろう。団長のアリーゼがアストレアの瞳をじっと見て冗談で言っているわけじゃないのだと理解すると、それでも信じたくないのか恐る恐るアルフィアの首元に触れて、手首に触れて最後に胸に耳を当てて心音がないことを確認する。そして、事実アルフィアがその生を終わらせていることがわかってその緑の瞳から涙を零し始めた。集まった眷族達もそれを理解したのだろう、わなわなと小刻みに体を震わせていたり、拳を強く握っていたり、それぞれの反応を見せた。

 

「私、まだ貴方に勝ててないわ・・・勝ち逃げされたみたいじゃない、やめてよ・・・!」

 

「おい起きろクソババァ、まだ私は貴様に一本も取れていないぞッ!」

 

「輝夜、『クソババァ』はいくらなんでも失礼だ・・・いくらなんでも、かの、じょ、が・・・ッ」

 

「怒って目覚めてくれれば万々歳だ、なぁクソババァ!」

 

「・・・ぽっくり逝ってんじゃねぇよ」

 

 

 

三者三様。

悔しいと言っていたり、怒らせようと挑発したり、それを止めようとして言葉に詰まらせたり、とても死人には見えないアルフィアの姿に「冗談はやめてくれ」とばかりに首を振っていたり。部屋にはいつしか少女達のすすり泣く音が響いていて、アストレアは思う。

 

 

彼女は不器用だし我が儘だけれど、なんだかんだで眷族(アリーゼ)達に好かれてはいたらしい――と。

 

 やがて場の空気にあてられて泣き始めたベルが部屋の外にいて、皆が振り返る。朝食を食べ終えても誰も戻ってこず気になってやって来てしまったようだった。そしてアストレアに抱きしめられ泣き疲れて眠ってしまうまで、もう母親(アルフィア)はいないのだと少なからず察して泣きわめいていた。

 

 

これが今朝の出来事だ。

 

 

 

 

×   ×   ×

現在。

 

 

ずっとあのままアルフィアの周りにいるわけにもいかず、けれど何かをする気にもならなかった彼女達はリビングで静まり返っていた。あるいは、顔を突っ伏して無の境地に至っていた。

 

 

「団長、『管理機関(ギルド)』はどうだった・・・?」

 

「ん-・・・・とりあえず『遠征』の日程は改めてってことになったわ。良かったぁー社会貢献してて」

 

「アリーゼ、いやな言い方をしないでください・・・まるで私達が見返りを求めて都市の秩序を守っていたみたいではないですか」

 

「・・・・・てへぺろ。で、輝夜そっちは?」

 

「【ガネーシャ・ファミリア】も快く今日の活動は私達抜きでやってくれるそうだ。気にせず数日休めと言われたが、そもそも私達は連携しているだけだからな・・・」

 

「かと言って何日も休んでたら癖になっちゃうからねぇ・・・みんながニートになったら仲良く『野草と塩のひっどい汁』を飲み続けるしかなくなってくるわ!」

 

「「「おい馬鹿やめろ」」」

 

今朝から現在は昼をすぎている頃。

団長であるアリーゼは『管理機関(ギルド)』に『遠征』の延期の報告を、副団長の輝夜は治安維持の活動をする上で連携を取っている【ガネーシャ・ファミリア】に今日1日活動を休むことをアルフィアの死去も合わせて伝えに行っていた。今は蒸しタオルを目元に置いて天井を見上げている。

 

そう、彼女達は今現在―――何もする気にもならない状態にあった。

 

何よりアリーゼ達は悩んでいた。何にと言われれば、それはベルについて。

こういった肉親を亡くした場合の対処法がわからないのだ。勿論自分達にだって肉親はいたが、アリーゼやリューは故郷を飛び出しているし、ライラや輝夜については語れないハードな人生を歩んでいたともいうから全員が全員、状況が違うのだ。

ただでさえ相手は『派閥(ファミリア)』内で初めての異性で、何より年が離れている。可愛がってはいるが、どうしたらいいのかわからない時もある。かといって女神に任せっぱなしというのもどうかと思い彼女達なりに思考を巡らせるもやはり考えは出てこない。

 

「攻略本が欲しいわ」

 

「『兎の慰め方』でございますか? あったら苦労いたしませんねぇ」

 

「よくクラネルさんには言って聞かせているのを私も聞いたことはあるが、実際に血の繋がった家族の死など・・・いえ、恐らく彼は人の死というものすら経験がないのでしょうが」

 

「はぁー・・・ま、『冒険者』やってるあたし等からしたら、あんなふうに眠って死ぬってのは幸せなことなんだろうなって思うぜ?」

 

「・・・ライラ、やめてください」

 

「事実だろリオン。あたし達『冒険者』は、下手すりゃ今日死ぬかもしれないんだ。一緒に笑って飯食ってた奴が、数時間後には化物共に食われていたりな・・・生きていたって手足がなくなってたり、それこそ取り返しのつかねぇ傷を負っていたりもする。死体を地上に持って帰るなんて稀なことだ。」

 

 天井を見上げながら言うライラの言葉は確かなことだ。

実際、『冒険者墓地』に存在する冒険者達の墓の下に遺体はないのがほとんどで、あくまでも『墓』という『形』をとっているだけだ。ましてや神々が墓参りをするのは下界の風習に倣っているからというのが強い。神々にとって死は終わりではなく、いずれまた再会できるものであるというその死生観が下界の住人とは少しばかり異なっている。だからライラが言うように、アルフィアのように眠って天に昇るというのは、『冒険者』にとっては一番幸せな死に方なのかもしれない。

 

 

 少女達は考える。

数日はベルは落ち込むはずだ。そんなベルをいかにして元気になってもらうかを。

 

「輝夜、男の子を元気にする方法とか知らないの?」

 

「・・・・・答えにくい質問をしないでいただけますか? 状況が状況だけにボケている余裕はないのですが」

 

「ん? 輝夜・・・何故、答えにくいと?」

 

「おーよちよち、生娘(おぼこ)は黙っていてくださいませ」

 

「・・・・・貴方だって生娘だろうに」

 

「・・・・チッ」

 

「こういう時は温かくて美味しいご飯とかじゃないかしら?」

 

「イスカ・・・そう、そうよ! 温かくて美味しいご飯! よし、私、作るわ!!」

 

「「「座ってろ」」」

 

「・・・・はい」

 

 

【アストレア・ファミリア】団長、アリーゼ・ローヴェル。

彼女は派閥内で『台所に立ってはいけない女』の1人である。作る料理全てが赤くなってしまうのだ。

彼女曰く「え、どうして赤いのかですって? 情熱の赤って大切よね! バーニングよ!」であり、食べた少女達は総じて倒れ、味覚を粉砕爆砕大爆砕され、辛うじて感想を口にした者は「辛いを通り越して痛い・・・痔になるわ」と言葉を残している。

 

「・・・・なら、私が」

 

「「「卵焼きを炭に錬金するエルフも座ってて」」」

 

「くっ・・・・」

 

【アストレア・ファミリア】、リュー・リオン。

彼女も同じく料理の腕はからっきし。

「サンドイッチを作ってみました」と言った彼女がベルの前に差し出したのは、辛うじて四角い形をしているだけの炭だった。好敵手の輝夜に「試しに卵焼きを作ってみろ」と言われた彼女は「舐めるな、それくらいできる」とやってみたところレンガのような炭が出来上がっていた。

毒味をした輝夜は腹を下し、リューに拳を叩き込んでいた。この時、リュー・リオンもまた『台所に立ってはいけない女』の称号を授与されたのだ。

 

「じゃあ・・・輝夜が作る?」

 

「何故私が作る前提なんだ・・・食べに行けばいいでしょうに。そうしょっちゅう外食するわけでもないのだから構わないでしょう?」

 

「じゃあ皆で食べに行くとしてー・・・・」

 

「申し訳ないけど、日中はアストレア様に見ててもらうしかないわ。その分、本拠ではあの子を可愛がってあげる。でも・・・うん、たぶんこういう時はいつも通りがいいのよきっと」

 

「というと?」

 

「変に気を遣うんじゃなくて、ベルの中で整理がつくのを待ってあげるってこと。うまく言えないけど・・・・・・とりあえず」

 

「・・・とりあえず?」

 

「気が付けばもう外が暗いので夕飯にしない? 私、『管理機関(ギルド)』に行ったりしていたからお腹空いちゃって・・・」

 

 

平常運転でいくアリーゼに、全員が溜息をついた。

全員が全員暗くなっているわけにもいかないからあえてそうしているのだろうことは、彼女の目元を見れば明らかではあったが、なんともしまらない残念な団長に、仲間達は苦笑と共にやはり溜息をついた。

 

 

×   ×   ×

『星屑の庭』、神室。

 

「あの子達・・・もう少し静かにはできないのかしら」

 

五月蠅いと言うほどではないが、会話の内容が気になってしまう。

彼女たちなりに考えているのだろうが・・・と、アストレアはベッドで眠るベルの目元を拭って溜息をつく。

 

「少し・・・寂しくなるわね」

 

アストレアはふと、思い出す。

アルフィアがいきなりメレンに別荘を購入してまで休暇に連れ出した時のことを。もっと言えばメレンへ行く前だ。敵対派閥の罠に嵌った時に遭遇した『抹殺の使徒(ジャガーノート)』なるモンスターの一件が彼女の体を蝕んだのだろう。全員が大怪我こそすれ帰還していたが、その一件の後アルフィアはアリーゼ達に『地獄の合宿(しょうえんせい)』で少女達を徹底的に痛めつけて根を上げてしまって以降、面倒を見なくなった。

 

 

 

「アルフィア、何を焦っているの?」

 

「・・・・そう見えるのか?」

 

「ええ、すごく。死んでは元も子もないのよ? あの子達を育ててくれるのは助かるけれど、壊してしまうのは違うでしょう? 時間は有限とは言うけれど、だからといって詰め込めばいいという話でもないわ」

 

「・・・・そうか、そうだな。だが、私が小娘共の面倒を見るのはもう終わりだ」

 

「どうして? 失望してしまったの?」

 

 

違う、違うんだと彼女は首を振る。

どこかその表情は悲し気で、影があった。彼女は言う、もう以前のように戦うことが難しいのだと。【ディアンケヒト・ファミリア】の少女から貰っている薬がいよいよ効果を感じなくなってきたことを。

 

「だから、残りの時間をベルのために使うと決めた。」

 

「どうにも、ならないの?」

 

「ああ、どうにもならない・・・ステイタスを更新してもスキルが発現していないことが何よりの証拠だろう?」

 

「・・・・・・」

 

「小娘共は、あの27階層に怯えてしまっている・・・だが、大丈夫だ、きっとすぐに乗り越える。なんのきっかけもなしにな」

 

「理由は?」

 

「『理不尽(ジャガーノート)』をその身を以て知った。あの日、あの時、あの場所で、小娘たちは一度死んだ。私がいたから生きていただけだ。ならば、あの時、小娘たちは恐怖に飲まれて死んだんだ。あれほどまでの理不尽を・・・未知を知ったあの娘達は誰よりも強くあれるはずだ。私は言うぞ、あんなもの黒竜よりマシだと・・・『未知』は既に『既知』に変わっている。対処法もわかっているはずだ・・・まぁもっとも、あんなものに日常的に遭遇することはないだろうが。」

 

「認めてはくれているのね、アリーゼ達のことを」

 

「・・・・ベルを託したんだ、認めるしかないだろう。それに、あんなことがあったというのに私を倒す気だけは一丁前にあるのだからな」

 

「そう・・・では、残りの時間を貴方はベルとの思い出を作るのね?」

 

「私は母親らしいことが何かを知らん。だから、思い出になるかはわからないが・・・・・・そうだな、あの子が【ゼウス】と【ヘラ】の遺産だからとプレッシャーを感じても私といたことを思い出して知ったことかと立ち上がってくれるようであれば私も救われる」

 

ベルはたまに「英雄にならなきゃいけない」と言う。

それは自分が2つの派閥の最後だと自覚しているからなのか、変な夢を見たからなのか、本人が言わないからアストレアにはわからないけれど母親のアルフィアからしてみれば義務感のように言われるのは嫌なのだろう。何より、アルフィアはベルに平穏に生きてほしいと願っている。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・アルフィア?」

 

いきなり無言になるものだから、アストレアは怖くなって彼女の肩に触れて声をかけた。

すると彼女は居眠りしていたかのようにピクリと肩を跳ねさせて「すまない」と唇を動かした。

 

「あの一件以降・・・『明日は来ないかもしれない』『ベルを抱きしめるのはこれで最後かもしれない』と・・・それがとても怖いと思うようになった」

 

珍しく彼女は、弱音を吐きだした。

そこには決して、元【ヘラ・ファミリア】の【静寂】はおらず、ただのたった1人の血の繋がった子供を置いていってしまう親の顔をするアルフィアがいた。唇を引き結んで、額に手を当てて吐露する。

 

「朝、目が覚めた時に何度・・・これが奇跡だと思ったことか。眠ることが怖いとさえ思うほど、私は弱っていたらしい。さっさと役割を終えて(メーテリア)の元へ行くはずだったのに・・・・とんだ寄り道だ」

 

「・・・・ベルにはまだ、貴方が必要でしょう? 私もなんとかできないかディアンケヒトと・・・ミアハに掛け合うわ」

 

「・・・・いい、不要だ。『大聖樹の枝』を煎じた物以上に上等な薬など存在しない。これ以上、私の時間を遅らせることはできない」

 

「・・・・・ベルには、伝えるの?」

 

「口酸っぱく言っている。私達は永遠に一緒にいてやることはできないと・・・・」

 

彼女はそれ以上は何も語らず深い深呼吸をした後に立ち上がり、部屋を後にする。

去り際、振り返って苦笑するような表情でアルフィアは言う。

 

「・・・ベルが幸せなら、もう相手は女神でも構わん。あの子を、よろしく頼む」

 

 

 

 

 

深く息を吐いて、アストレアは窓の外の景色を見た。

いつの間にか夜になっていて、ノックの音がしたので返事をすると眷族が「夕食はどうされますか?」と言うので「用意してくれたのにごめんなさい、今日はいいわ」と断る。ベルのことを心配そうに見つめていたけれど、彼女はペコリと首を垂れるとそのまま部屋を離れていった。彼女達は彼女達で『派閥』としての活動があるため、恐らく明日からは通常通りに戻るだろうし、いつまでも泣いていたらそれこそアルフィアに蹴り飛ばされかねない。

 

「ベル・・・寂しいけれど、頑張りましょうね」

 

「・・・・・ぐすっ」

 

 小さい体を丸くするようにもぞもぞと動くベルの目元はまた濡れていて、それをアストレアは拭う。

初めての男の眷族で扱いに悩みもするが、懐いてくれているし何よりアルフィアに託されたのだ安易に手放しはしない。

 

「・・・・ステイタス、更新してみようかしら」

 

ふと、思うそんなことを。

眷族(アリーゼ)達と違ってベルは『恩恵』を授かっているだけで特別訓練をしているわけでもない。せいぜい走り回っているくらいだから敏捷は上がっているだろうが、それも微々たるものだろう。けれど神としての勘だろうか、或いはアルフィアの魂がそう告げたのかおもむろにアストレアはベルのステイタスを更新してみることにした。

 

 

 

ベル・クラネル

所属【アストレア・ファミリア】

Lv.1

力:I 0

耐久:I 0

器用:I 1

敏捷:I 10

魔力:I 0

 

■スキル

雷冠血統(ユピテル・クレス)

・早熟する。

・効果は持続する。

・追慕の丈に応じ効果は向上する。

 

■魔法

【アーネンエルベ】

 【我等に残されし、栄華の残滓。 暴君と雷霆の末路に産まれし落とし(愛し)子よ。】

 【示せ、晒せ、轟かせ、我等の輝きを見せつけろ。】

 【お前こそ、我等が唯一の希望なり】

 【愛せ、出逢え、見つけ、尽くせ、拭え、我等が悲願を成し遂げろ。】

 【喪いし理想を背負い、駆け抜けろ、雷霆の欠片、暴君の血筋、その身を以て我等が全てを証明しろ】

 【忘れるな、我等はお前と共にあることを】

 

・雷属性

自律(オート)による魔法行使者の守護

他律(コマンド)による支援




「素敵な人に出逢いなさい」
「好きなものを見つけなさい」
「愛せる誰かに尽くしなさい」
「誰かの涙を拭ってあげなさい」
「忘れないで、私達はいつだって貴方と共にある」


アーネンエルベ:意味=「祖先の遺産」
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