アーネンエルベの兎   作:二ベル

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進めていきます


階層主討伐編
超越界律①


「来週、27階層へ向かうわ」

 

星屑の庭、その団欒室にてアリーゼが言う。

身を清め、夕食を済ませて、眠る前に…と全員を招集した派閥の団長からの伝令である。

 

 

「え、いきなり!?」

 

なんて言う者はいない。

前以て伝えてあった予定だったことであるため全員がそれぞれに装備を始めとして道具類の調達及び整備などの準備をしていた。

 

「……その、すまないが何かあるのか? 遠征というわけではなさそうだが」

 

しかし、知らない者が1人だけいた。

ひょんなことから優男風の男神から正義の女神の下へ出荷されてしまった憐れな妖精(ローリエ)である。まだ水気を残した金の長髪をタオルで拭きながら首を傾げ、遠慮気味に手をあげて問うた。アリーゼはそんなローリエを見て、口元を微笑ませて改めて今後の予定を言う。

 

 

「階層主、『アンフィス・バエナ』の討伐よ!」

 

 

それは二頭の首を持つ『竜』にして、27階層にて生まれ落ちる『迷宮の孤王(モンスターレックス)』の名。20M(メドル)を超える体躯に、全身を白亜の鱗に包まれた体はその大きさも相まって一種の荘厳さを感じさせる怪物だ。

 

「ちょうど、次産期間(インターバル)が終わるはずだからな」

 

「とはいえ、『ゴライアス』みたいにそこらの冒険者達で徒党を組んで相手できる敵ってわけでもない」

 

「場所が場所ですからね」

 

「有力派閥に任せたいってのが、宿場街(リヴィラ)連中だったりギルドの本音だったりするのよ」

 

「だけど【フレイヤ・ファミリア】と【ロキ・ファミリア】はこれを断ってるの」

 

「断る? 何故だ? 力ある派閥が……【フレイヤ・ファミリア】はともかく、【ロキ・ファミリア】が……?」

 

ライラ、イスカ、セルティ、リャーナ、マリューの順で言葉を紡ぎ、ローリエは【フレイヤ・ファミリア】が断るのはまあなんとなくわかるとしながらも、やはり首を傾げた。都市の双璧などと言われている有力も有力の派閥が断る……戦闘するにあたって面倒だというのは知識としては分かるが、倒した際に得られる経験値やドロップアイテムを考えれば、断る理由はないのではないかというのがローリエの考えだった。それを同胞のリューが春姫が淹れてくれた紅茶で喉を潤して、言う。

 

「近々、『闇派閥(イヴィルス)』の住処へ強襲を仕掛ける。その中心となっているのが【ロキ・ファミリア】。そしてかの派閥はその作戦後、遠征の時期が迫ってきているため……その、金銭面が火の車とのことで……」

 

「ろ、【ロキ・ファミリア】が……金銭に困るなんてことがあるのか!?」

 

「「「「遠征次第だよねえ」」」」

 

個人の貯金は別として、派閥の活動費として溜め込んでいたものは遠征などでごっそりと減る。以前は59階層まで向かったが異常事態などに襲われ無事帰還するも主神を含めて首脳陣が「赤字だ」と嘆く結果となった。なお、個人の貯金では常にマイナスをいっている者もいる。彼女は今日も……元気いっぱいだ。

 

「で、私達はほぼ管理機関(ギルド)からの強制任務(ミッション)ってことで請け負うことになったのよ。まあ、最近、武装した怪物だとか黒いミノタウロスだとか、ボロボロにされたわけだし……ふふっ、この際、階層主にフラストレーションぶつけてランクアップしてやろうかなって思ってまぁす」

 

「「「アリーゼちゃんは、もうランクアップしたから無理でぇす♡」」」

 

武装した怪物達の一件では、アリーゼ達はあまりこれといった見せ場はなかった。18階層では全滅させられ、地上に戻って来ることが出来はしたが、ほとんど邪竜を討伐した勇者だとかミノタウロスと戦った白兎だとかに観衆の目は行き、正義のお姉さん達は影が薄くなっていた。少し影がある笑みを浮かべたアリーゼへ仲間達がツッコミを入れる。ぽんぽんランクアップするのはベルだけであり、あの子がおかしいだけなのだと。

 

「ま、まぁ、その、今年中に全員第一級冒険者になるくらいしてみましょ?」

 

治療師のマリューや小人族のライラ、そして新参の春姫やローリエは別として他は全員が第一級冒険者になってもおかしくないと言われているほどの実力者。アリーゼや輝夜達が既にランクアップし第一級冒険者の仲間入りをしたのだから、年内中になっちゃいましょ! とアリーゼは目標を掲げた。それについては仲間達も素直に頷いた。

 

「もうベルに追いつかれる……」

 

「ベルに追いつかれた……」

 

「この間、あの子を押し倒そうとしたら抱き留められたの。どうしたの、ノインさんって言われちゃった……ショック」

 

「もうよわよわ兎さんじゃないんだ……」

 

そんな危機感も若干あった、お姉さん達である。

何せ冒険者になったばかりの弟分が、今まで押し倒したり抱きしめたり抱きかかえたり、力で勝っていたのがあっという間にLv.4。追いつかれた者からしてみれば、押し倒そうとすれば押し倒されるくらいにはショッキングなことであったのだ。

 

「そう危機感を感じても仕方がないでしょうに……むしろ力で勝っていたところで、『ゴリラ』女などと思われるだけではございませんか? 女はむしろしおらしい方が―――」

 

「「「躾けられた女がなんか言ってんなよ!?」」」

 

「なっ!?」

 

「女だよ? 女だけどさ……可愛がってた子にさ、力負けする? って意外とショックだからね!?」

 

「そりゃあ、神様達の言う『壁どぅーん』とか『顎くい』とかに憧れないわけじゃないよ!? でも、こう……ベルの場合は、違うんだよ!?」

 

「ベルはね、襲う側より襲われる側が似合うんだよ!? 輝夜、あんたのは解釈違いだよ!」

 

「な……そんなわけあるか! どうせ貴様等もベッドの上ではあられもなく喘いでいいようにされているんだろう!?」

 

「「「それとこれは別なんだよ!?」」」

 

「ええい、面倒な……!!」

 

きゃんきゃん吠える乙女達。

青筋を立てる極東美人(ヒューマン)

ぽかーんとするローリエ。

そしてメイド服ではなく寝間着浴衣姿の春姫がひょこっと手を上げてアリーゼに問う。

 

「その……『いう゛ぃるす』というもの作戦に、【アストレア・ファミリア】は参加しなくてもよろしいのでしょうか?」

 

「うーん……よろしいわけではないけど……」

 

アリーゼは部屋を見渡して、ベルがいないことを確認。

改めて口を開いた。

 

「ベルには純粋に、『冒険』をしてほしい……人間同士の、黒い部分を見せたくない、関わらせたくない……っていうのもあってパスさせてもらってるわ。だからこそ、階層主を倒して来いってことになったんだけど」

 

故郷を奪われた。

愛する者を奪われた。

理由は様々あれど、純粋に『未知の世界』へ焦がれるベルのような冒険者は珍しい。だからこそ、アリーゼ達は『暗黒期』とは違う今という平和な時期に人間同士の争いごとにベルが足を踏み入るのは嫌だったのだ。

 

人造迷宮(クノッソス)攻略については【ロキ・ファミリア】を中心にってのは変わらない。他にも【ヘファイストス・ファミリア】や【ガネーシャ・ファミリア】も参加するみたいだし、私達が抜けても問題ないだろうって」

 

「まあ……懸念はあるが」

 

「懸念……?」

 

 

×   ×   ×

少し前

 

 

神会(デナトゥス)の会場として利用されている場所に、各派閥の首脳陣が集まっていた。【アストレア・ファミリア】をはじめ【ガネーシャ】【ヘファイストス】【ロキ】【フレイヤ】等々…何も知らない者が見れば、戦争を始める会議でもしているのかと勘違いしかねない妙な緊張感がそこにはあった。

 

「【紅の正花(スカーレットハーネル)】、てめぇ、ガキの御守もできねえのか?」

 

「あら【女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】、いきなり噛みついてきてどうしたの、発情期かしら? 私達があれこれ言う必要なんてないわ、だってベルは子供じゃないもの。大丈夫よ安心して、今日も貴方の妹さんは元気に歌っているわ」

 

「あぁ!?」

 

「団長、開幕から戦場を広げるようなことをしてくれるな……疲れる」

 

「【女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】、もう遅い時間なんだ、大声を出すな。近所迷惑だ」

 

「近所もクソもねえ、ここは地上から離れてるだろうが」

 

「ねえ【猛者】、ベルがそっちに行ってるらしいんだけど……何してるか聞いてもいいかしら?」

 

「………………」

 

「昨日、ギルドから苦情が来たの、何で都市内で兎と猪と剣の姫が全力の殺し合いをしているんだって。もうやめましょうよこんなこと! 命が、もったいない!! ってあのロイマンが泣きついてきたの」

 

「……………フレイヤ様がお許しになった。それだけだ」

 

「答えになってないわよ? 一応聞いておくけど、フレイヤ様がベルに手を出してたりしたら……焼くわよ?」

 

「手など出さん。出したのは兎の種だ」

 

「上手いこと言った斬り込むべきか!?」

 

「お主等ぁ、殺気を振りまかねばまともに会話もできんのか!?」

 

ピリピリした空気の中、喧嘩という言葉が可愛く思えてしまうような会話が繰り広げられた。フィンは苦笑を浮かべ、リヴェリアは頭痛を堪えるように眉間を摘まみ、ガレスは拳を卓に叩きつけて破損させた。まさか自分達のアイズまで【フレイヤ・ファミリア】の本拠に行っているとは知りもせず、変な手紙を送ってきたのだから余計に頭が痛い。何をやっとるんだ、あの子達は……というやつである。この場に【ディアンケヒト・ファミリア】の団長として出席しているアミッドも瞼を閉じて静かにしていたが、眉や口端はぴくっと反応していた。

 

「コホン……いい加減、本題に入ろうか」

 

わざとらしい咳払いをして、フィンが言った。

舌打ちをする者達がようやく腰を下ろし、フィンは息を吐いて言の葉を紡ぐ。

 

都市の破壊者(エニュオ)は本当にもういないのか?」

 

フィンの言葉に、場は静まる。

悪の巣窟たる『人造迷宮』の情報などこの場に知らない者はいない。『都市の破壊者(エニュオ)』と名乗る神についても同じく。腕を組む椿に思案するように拳に顎を乗せるシャクティ。アレンやオッタルは当然というべきか興味もなさげ。

 

「神エレボスこそが、エニュオ……ということではないのですか?」

 

「であればいいんだけどね……あの神は言ったらしい()()()()()()()なんてことを」

 

はっきりとした答えは口にしていない。

だから、妙な引っかかりはある。

それに何より、今更、名を変える必要があるのかという疑問もあった。そんなことしなくてもあの神であれば、大胆に、かつ、徹底的にオラリオを苦しめたはずだと。

 

「送還された複数の神々の中にいた一柱(ひとり)の中に真犯人がいたってこともあり得るのでしょうか?」

 

「ああ、十分あり得る」

 

「であれば、犯人のいない犯人捜しなど……疲れるだけでございませんかぁ?」

 

瞼を閉じたまま言う輝夜にリヴェリアが返し、輝夜が肩を竦めた。暗黒期の再開だとか言われていた騒動はエレボスの手腕によるもの。多くのアマゾネスは虐殺され、複数の神々が送還され、闇派閥の残党が、武装した怪物が、赤髪の怪人が、様々なものが都市に混乱をもたらした。送還された神がどの派閥の主神なのかは神々によって周知されたし、その眷族達は恩恵を失ったことで、それは目に見える形で混乱と困惑と悲鳴で知らしめられたわけだが、その中に真犯人(エニュオ)はいたのか? という疑問だけは解決されていない。

 

「知っている神々がいればよかったが……何せ暇を持て余した者(デウスデア)達のことだ、適当なことを言って僕達の頭を疲れさせる可能性の方が高い」

 

「ならわざわざ集まってするような話でもねえだろ。誰が都市の破壊者(エニュオ)だろうが関係ねえ」

 

そう、誰が真犯人だろうがどうでもいい。

女神が望めば、命じれば、動く。それが【フレイヤ・ファミリア】であり『女神の勇士(エインヘリヤル)』なのだ。オッタルもアレンと同じ意見なのか、錆色の瞳で静かにフィンを見据え、そしてやがて口を開いた。

 

「本題はそれか?」

 

「…………」

 

「…………」

 

多くを語らない武人。

彼がその瞳に何を映しているのかはわからないが、フィンは苦笑を浮かべて、そんなにアイズ達の相手をするのが楽しいのかい? と少し揶揄い気味に言ってもう一度口を開いた。

 

「近々、人造迷宮(クノッソス)へ進攻する。エニュオがいない、或いはエニュオの手札が大幅に損失した状態への攻略……言わば、後始末だ」

 

勿論、簡単なことではないことは承知している。

赤髪の怪人は倒せなかった。

穢れた精霊(デミ・スピリット)のこともある。

神タナトスや悪派閥の残党もきっといる。

 

「だがあの日、姿を現した邪竜(せいれい)だけはもういない」

 

リヴェリアの言葉にフィンが頷く。

あれがもしも、切り札であったとするならばその脅威はないということ。

 

「油断もしない、慢心もしない。けれど、叩ける内に叩ききる」

 

「勇者の名を汚されたと聞きましたが……少々変わりましたか?」

 

「【大和竜胆】……否定はしないよ。僕を信頼して付いてきている者達がいる。なら僕はその信頼に応える。それに……変わったのは君もだろう?」

 

「………チッ、未婚なのは変わらんだろう」

 

「今そういうの厳しいから、ほどほどにね?」

 

「ハラスメントという言葉を増やせば気分が良くなる層など知らん」

 

悪態をつく輝夜にフィンは困ったように返すが、心境の変化というか精神的な面で色々あったのはお互い様で、それを突かれた輝夜は面白くなかった。戦争遊戯で生中継で唇を奪われたことを思い出して、顔まで熱くなってしまうのだから。

 

「はぁ……ともかく、人造迷宮の攻略は行う」

 

「いつ?」

 

「近々」

 

「【アストレア・ファミリア(わたしたち)】はパスしてもいいのかしら? ギルドから強制任務(ミッション)が出てるのよ。たぶん、被るわ」

 

「ああ、それについては僕達も把握しているから構わない、健闘を祈るよ。ちなみにどういった作戦なのか聞いてもいいかい?」

 

「「戦争遊戯の時にやった戦法」」

 

「なるほど」

 

「私共【ディアンケヒト・ファミリア】は人造迷宮の攻略に参加します。治療薬を始めとした道具(アイテム)類は、先日の騒動より現在も続いて製作を行っております。呪術(カース)対策も合わせて潤沢かと。【アストレア・ファミリア】の皆さんの分も用意しておりますので、後日受け取りに来てください」

 

「「「「さすが聖女(アミッド)」」」」

 

「な、なんですか、おやめください……最近、周囲の目が揶揄いが混じっているように感じます……っ」

 

「仲が良いのはいいことだと思うよ」

 

「ああ、アイズにも見習ってほしいものだ。あの娘はいつもいつも剣を振るうことばかり……」

 

「まあそう心配するでないわリヴェリア。あれでも坊主には興味を示すんじゃ、儂らの知らんところで上手いことやっとるだろ」

 

「……………いや、それはそれでどうなんだ」

 

「お前はどうしてほしいんじゃ、堅物(ハイエルフ)

ハイエルフ)

 

 

人造迷宮への進行(アタック)から階層主討伐。

それぞれに情報を交換、共有しつつ、時折関係のない話をする。王族(ハイエルフ)は娘のような存在の将来を憂い、土の民(ドワーフ)は放っておけと溜息を吐き、勇者は極東美人に相手はいないのか、いるだろうライラがと圧迫され憲兵の頭であるシャクティは妹のことで頭を痛め、それをアリーゼに揶揄われて「気になる相手とかいないの?」と言われて若干イラァっとしたり、そんなやり取りを見てアレンが帰りたそうに貧乏ゆすりをし、オッタルは無表情を貫いた。結局のところ都市の破壊者(エニュオ)とは誰なのか? もういないのか? という疑問については、曖昧なままに終わった。

 

 

「エレボスではない。だが、いない保証はない」

 

そう言った具合にしか、解答を出せないでいた。

だから懸念とは、エニュオがいた場合において冒険者達に対してどのような手札(カード)を切って来るのかということだ。

 

 

×   ×   ×

 

 

 

「ローリエさん達は参加するんですかアリーゼさん」

 

団欒室の扉が開き、アストレアとベルが入室する。

ベルの手には羊皮紙が握られていてる。

ステイタスの更新をしていたらしい。

 

「まさか、派閥に加わってすぐ『ゴライアス』じゃなくて『アンフィス・バエナ』と戦わせるなんて……死ねって言うようなものよ? させないわ」

 

「ゴライアスと戦わせるのは死ねって言うようなものではないんだ……」

 

「参加人数が違うからねえ」

 

「ああ、それから春姫は……どうする? 妖術のこともあるから、参加させるかさせないかはイマイチ判断しづらいのよね」

 

「今後、私達と一緒に迷宮を探索するつもりなら遅かれ早かれ経験はする。だが、派閥に加わってそう長いわけでもない、戦闘能力に秀でているわけでもない。だから先達としては参加させないつもりだ」

 

「……だが『階位昇華(レベルブースト)』なんて反則(チート)。あるに越したことはねえからな」

 

ベルからステイタスの写しを受け取ったアリーゼは表情を強張らせ、「まじですか?」とアストレアへ振り返って「まじよ」と苦笑を返されて唇をピクピクさせた。春姫の扱いにイマイチ迷っている仲間達もアリーゼの反応が気になったのか寄ってきて、中身を見て、そしてベルを見て言葉を重ねる。

 

「「「「変態」」」」

 

「えっ」

 

「なんで既にCとかBとかあるのよ」

 

「【猛者】と【剣姫】と何してたのよ」

 

「しゅ、修行……?」

 

「「「「馬鹿言わないで、正座しなさい」」」」

 

「えぅ」

 

 

―ベル・クラネル―

【アストレア・ファミリア】

Lv.4

ステイタス

力: I 0→C633

耐久: I 0→B701

器用: I 0→B722

敏捷: I 0→B777

魔力: I 0→C677

幸運: G

治療: H

魔防: I

 

■スキル

雷冠血統(ユピテル・クレス)

・早熟する。

・効果は持続する。

・追慕の丈に応じ効果は向上する。

 

灰鐘福音(シルバリオ・ゴスペル)

・戦闘時、発展アビリティ『魔導』の一時発現。

・戦闘時、発展アビリティ『精癒』の一時発現。

・戦闘時、修得発展アビリティの全強化。

 

月華星影(ミセス・ムーンライト)

破邪の加護(アルテミス・ディパル)

・夜間発動。

一定周期変動(ナイト・コール)

 

明星簒奪(スイングバイ)

任意発動(アクティブトリガー)

・一定範囲内に存在する全眷族からの能力(ステイタス)加算。

・簒奪した運動エネルギーによる加減速に超域補正。

・対象の運動エネルギーによる回避行動に高補正。

・対象の運動エネルギーによる高速攻撃に高補正。

・加算値は階位(レベル)反映。

 

英雄賛歌(アメイジング・グレイス)

・能動的行動に対するチャージ実行権。

 

■魔法

 

【アーネンエルベ】

・雷属性

自律(オート)による魔法行使者の守護。

他律(コマンド)による支援。

 

 

【ビューティフルジャーニー】

・自動治癒。

・光翼展開。

・魔法捕食。

・魔法無効化。

 

【アストラル・ボルト】

・速攻魔法

 

 

 

目を離した隙にランクアップしてもおかしくない状態に至っていた。そのことにお姉さん達は頭を痛めた。何してんの? また無茶してる? 勝手に階層主倒しに行ってないよね? そんな危ないことするくらいなら、女の子に手を出してくれていたほうがまだマシよ? といった具合だ。まさか【剣姫】との距離がぐっと短くなっていたなんて知りもしない。美神の派閥の本拠がある位置から風が吹き荒れたり、雷がピシャピシャ光ったり、星炎が撃ち上ったり、ギルド長の悲鳴が上がったりしていたのをお姉さん達も聞いていたがまさかここまでになるとは思わない。

 

「信じて送り出した弟が」

 

「えっ」

 

「変態兎さんになっちゃったぁ」

 

「えっ」

 

「「アルフィア(まま)ぁ、たしゅけてぇ」」

 

「ま、ママぁ!?」

 

「……それでベル、【英雄賛歌(スキル)】の使い方はわかったの?」

 

嘆く姉達に困惑するベル。

逃がさないように前後左右から抱き着き拘束し、むぎゅむぎゅと女の身体を最大限利用して押さえつけてベルの顔を真っ赤に染めていく。彼女達は揃いも揃って風呂上りだ。だから余計に良い香りがベルを襲った。うぅ~と悶えるベルに無表情のアリーゼが問うてきて、ベルは「今聞くぅ!?」と悲鳴をあげた。

 

「な、なんの成果も得られませんでしたぁ」

 

「「「嘘つけぇ!!」」」

 

「むぎゅっ!?」

 

「こんだけ経験値稼いどいて、成果なかったら……私達なんなの!?」

 

「そうよ、ベルで成果がないなら私達もうただベルを気持ちよくするだけの肉の穴じゃない!!」

 

「肉の穴って言うのやめろぉ!?」

 

「ごめんなさぁい……っ」

 

むぎゅむぎゅとおしくらまんじゅう状態のベル。

あっという間に追いつかれるどころか置いていかれそうになっていることにますます危機感を感じる姉達が「わーん」と右に左にベルを引っ張った。

 

「ア、アストレア様ぁ……助けてくださぁい」

 

「………ふふ、皆、仲が良いのね」

 

「アストレア様ぁ!?」

 

助けを求めたベルを、眷族達を見守っていた女神が微笑ましそうにそう言ってベルに手を振った。崖から蹴落とされたようにベルはノイン、リャーナ、ネーゼに押し倒されはだけた衣装の中に手を突っ込まれコショコショと襲われた。やがて本拠に響くのは白兎の悲鳴の混じった笑い声であった。

 

 

「おやすみー」

 

「おやすみなさい」

 

「アストレア様、おやすみなさい」

 

「ベル君、おやすみ」

 

 

そう言って団欒室を退室していく。

団欒室に残ったのは、ベルが折檻されているのを見ていた春姫とローリエ、そしてアストレアだ。春姫とローリエについては時折見えていたベルの肌に頬を染め、今も床でピクピク震えているのをチラチラと見ていた。

 

「ベル、もう一度シャワーを浴びてきなさい。それから寝ましょう」

 

「ひゃ、ひゃい……っ」

 

酷い、女神様、助けてくれないなんて……! そんな非難めいた視線を向けどもアストレアは「仕方ないじゃない、あっという間に追い抜いて行っちゃうんだもの。皆、悔しがるわ」とベルの頬を突いてあの子たちは無罪でーすと笑みを浮かべた。

 

「ベ、ベル様、私でよければお背中を……っ!」

 

「ベ、ベル君、た、立てるか!? その、なんだ……手を貸そうか!?」

 

ぷにぷにと頬を女神に突かれるベルに春姫とローリエが「私のターンが来た」とばかりに自己主張。若干、鼻息を荒くしているが、どちらにせよ少年に奉仕しようとする淫乱メイドに距離を縮めようとする下心丸出し妖精はぐいぐいと迫る。そんな2人をベルは瞳に映して、そして頬を突いている女神を映して女神に抱き着く形で立ち上がった。

 

「「あっ………」」

 

「あら?」

 

ぷるぷると生まれたての小鹿――いや、子兎のようにして立ち上がる。ネグリジェ姿のアストレア、その悩ましい胸に少し埋もれてようやく立ち上がったベルはフラフラとした足取りで団欒室を後にする。

 

「「え、えぇー………」」

 

イエスともノーとも言わず、置いていかれてしまった2人はしょんぼりと肩を落とす。アストレアは苦笑してベルの後を追いかける。

 

「2人とも、風邪をひかないようにね? おやすみなさい」

 

スタスタと立ち去っていく女神に挨拶を返して2人は肩を落としながら自室へ姿を消していく。若干、あの麗しい正義の女神様と深夜にお風呂でしっぽり……なんてことを妄想する2人だが、すぐに頭を振ってその光景を吹き飛ばす。彼は汗を流しに行っただけ。きっと女神様は着替えを取りに行っただけだ。自分達に命じてくれればいいのに……。事実、それは正解でアストレアはベルの着替えを取りに行っただけであった。決してあーんなことやこーんなことは起こらなかった。しかしそれを知らない2人は脳内であーんなことやこーんなことが起こっている光景を再生してしまい眠るに眠れないのであった。汗を流したベルは女神の手で髪を乾かされ、手を引かれてベッドへ誘われるとそのまま抱き枕にされる。

 

「階層主……頑張ってね」

 

「………ぁぃ」

 

目が合うと微笑まれて、助けてもらえなかったことに不貞腐れるベルは悩ましい胸に顔を埋めるようにして瞼を閉じる。それでも女神の背中に腕を回しているのだから女神はクスっと笑わずにはいられない。慰めるように頭を撫でてやると、もぞもぞと呼吸しやすい位置を見つけるように頭を動かした後、寝息を立てはじめる。谷間を通る呼気がくすぐったいが、愛しいお気に入りの子の寝顔は堪らないもので、女神は足を絡めるようにさらに抱き着いて眠りについたのだった。




今話の前くらいにケヒトの湯とかアミッド、アイズと温泉旅行とかフォールグファングとかあったりした感じ。
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