「ベル、待ちなさぁああああいっ!」
「いいぃぃぃいぃやぁあああぁぁですぅぅうううっ!」
バタバタ、バタバタ、と赤髪の少女と白髪の少年が追いかけっこをしていた。これが屋外であればアリーゼの圧勝で当然のように捕まっていたことだろうが、追いかけっこの舞台は『星屑の庭』内であった。アリーゼは全力疾走などできるはずもなく、かと言ってベルは子供故に加減など考えもせず時に体を滑らせてテーブルの下をくぐったり、お茶を飲みのんびりと『遠征』の疲れをとる姉達の足元を滑りぬけたり、はたまた台所にいた姉の背後にぴったりとくっついて隠れたりと小さな体でできることを遺憾なく発揮していた。アリーゼは「ダンジョンよりも疲れる・・・」とぜぇぜぇ。
先日、アリーゼ率いる【アストレア・ファミリア】は『遠征』から帰還していた。帰還したその日はそれはもうベルは歓び庭駆け回り、満面の笑みで一緒に留守番をしていたアーディ、アストレアと「おかえりなさい、ご飯にする? お風呂にする?」をしたのだ。姉たちは疲れてへとへとになっていても帰りを待ってくれていたベルにほっこり。その日はさすがにベルの相手をしてやることはできず皆、入浴を済ませ簡単な食事を取るとすぐに就寝してしまった。なお、全員の部屋に見回りに行こうとしたベルはアストレアに「ダメよ?」と神室に連行された。
「アリーゼちゃんはどうしてベル君を追いかけているの?」
「うーん・・・情報誌に載っていたのを見てからはじまったから・・・うん」
そして現在。
アリーゼ達の知らぬ間に、ベルがしれっとオラリオの歴史に名を刻んだ?―――刻んだ一件について、壮絶な追いかけっこへと発展してしまっていたのだ。アリーゼの手にはぎゅっと握られた情報誌。そこには『神聖浴場にかの大神を越える
「こら、待ちなさいってば!」
「ぴぃいいいいいっ!?」
「こ、このっ、すばしっこい! 小さい体が羨ましい! ライラ、手伝って!」
「あ? 小さい体を今馬鹿にしたか? したよな!?
「してないわよ!?」
「ていうか本拠の中で走り回ってんじゃねえよ!? 危ねぇだろ!」
「し、仕方ないじゃない、ベルが逃げるんだから!」
巻き込むんじゃねえとばかりにライラが怒声を飛ばし、それにビビったアリーゼは弁明し、その隙を逃さずベルは「うるさいぞ・・・何事だ・・・」と寝起きの頭を掻きながらリビングにやってきた輝夜の着物の裾を捲り上げそのまま中に入り込んで隠れた。そのあまりの出来事に、近くにいた少女達含めて輝夜は虚を突かれたようにフリーズ。「お、おい・・・」と自らの着物の膨らみに手を当てるも中ではベルがぷるぷると震えていて、輝夜は思わずその何とも言えないこそばゆさに変な声を漏らした。
「んっ・・・な、なん・・・なん、だ!?」
「・・・・・・・・・」
「か、輝夜・・・無事?」
「あ、ああ・・・大丈夫だ、問題な・・・んんっ、動く、なっ!?」
そんな若干頬を桜色に染める輝夜へとぐりんっと首を回したアリーゼはいそいそと迫る。そして、勢いよくまるでスカート捲りのように着物の裾を開いた。御開帳である。
「!?」
「!?」
「膨らみでバレッバレなんですけど!」
「ひぃぃぃぃぃぃぃいいいっ!?」
開かれた着物の中からは、輝夜の色白の肌に、黒の下着が露わになり、そしてかがんで隠れたつもりになっていたベルが住穴に天敵が現れた小動物のように涙目でぷるぷると震えていた。伸びてくる手に体をびくっと揺らし輝夜の背後へ行くようにアリーゼに背を向けて脱出。しかし捕まえる動きの方が早く輝夜の股の間でベルを捕まえるために伸ばされるアリーゼの腕。寝起きであれやこれやと目まぐるしく変わる状況についていけない輝夜は微笑を引き攣らせ固まる。
「ほら、観念しなさい」
「びゃーーーーっ!?」
「びゃーじゃないわよ!? 事情聴取するだけだから! 外で「さすが【最凶】の派閥に母親がいるだけのことはあるぜ・・・まさか大神の偉業をあの歳で越えるなんてよ・・・」って男神様達が言ってたから何のことかと思ったら・・・」
「僕悪くない!」
「だから、ちゃんと話を聞かせなさいって言って――――ぎゃふんっ!?」
「いつまで人の股座で顔を見合わせて会話をしている!? 一番恥ずかしいのは私なんだが!?」
御開帳され下着を晒され、自らの股座で攻防するなと輝夜はアリーゼに拳骨を落した。ドゴォ!とでも音が鳴ったかのようなその一撃にアリーゼは一瞬意識を飛ばし、その隙にベルは「ありがとう輝夜さん! 大好きー!」と逃走。今度は「貴方達・・・本拠の中で走り回っては危ないわよ」とさすがに騒ぎを聞きつけたのかアストレアのもとへ。イスカ、マリューがアストレアのもとへ駆け寄るベルを見て「勝ったな・・・」「ああ・・・」などと良い声で言っているが、もういっぱいいっぱいで涙目なベルは両手を広げて待ち受けるアストレアの床につきそうなほど丈のあるロングスカートの中へと滑り込んだ。これには少女達も絶句。さすがにアストレアに怒られるのでは?と。しかし仕方がない、アリーゼが叫びあがって追いかけまわすのが悪いのだ。
「うぅぅ・・・痛い・・・ひどいわ輝夜」
「大人げないぞ団長」
「で、でも・・・神聖浴場よ!? 女神様達のすっぽんぽんを見たってことでしょ!? もうあの子の目に私達の裸なんてその辺の石ころレベルにしか映ってないはずよ!?」
「いやそれはないだろう・・・第一、ベル本人の意志ではないと書かれていただろうに。どこぞの美神に迫られて身の危険を感じたのだろう」
「でも・・・でもぉ・・・とにかく詳しい話を聞きたいだけなのよ?」
「それならそうと言えばいいでしょうに・・・大声で追いかけまわして・・・しようもない」
「うぐっ・・・ってあれ、ベルは?」
「さぁ? 団長様が怖くてアーディのところにでも逃げたのではございませんか?」
「え・・・どうしよ、私ベルを探しに行ってくるわ・・・」
「うぅ、違うのよベル・・・話を聞きたかっただけなの・・・デメテル様の重力無視おっぱいについてとか・・・」とブツブツ言ってアリーゼは本拠の外に出て行った。それを見届けた輝夜は、頬を桜色に染めて時折ピクッと体を跳ねさせモジモジするアストレアのロングスカートに向かって口を開いた。「はぁ」と溜息をついて。
「ベル、アストレア様に失礼だ。いい加減出てこい・・・というか、どこでそんな破廉恥極まりない技を覚えた」
「・・・怒らない?」
「そんなことでアストレア様がお怒りになると? ・・・・そもそもアストレア様がお前に怒っているところ見たことがないんだが」
正直お前の髪質が良くて筆で愛撫されているかのようだぞ。と悶えさせられた件について恨み言を吐く輝夜。
「・・・」
「・・・・えいっ」
「むぎゅっ!?」
フリーズしていたアストレアは、足を内側に力を入れそれによってベルの顔は挟まれ潰れたような無様な悲鳴がスカートの中から漏れ出る。「女神のスカートの中に入る子はどこの誰かしら―?」と怒ってはいないがちょっとはやり返しているつもりのアストレア。やがて「ギ、ギブゥ」とペチペチ足を叩いて、もぞもぞとスカートの中から四つん這いで出てきたベルはアストレアに「ごめんなさい」と謝罪。アストレアは胸に手を当て大きく深呼吸をした後ベルの額に軽くデコピンをしてから「いいのよ」と微笑んだ。ベルの顔も真っ赤でへとへとなのが目に見えて分かっていて、これ以上追いかけまわすようなことをしても疲れるだけだと追及するのはやめにしたのだ。 条件反射のように逃げたベルもベルだが、大声を上げて追いかけまわすアリーゼもアリーゼなのだ。マリューから水を受け取ると、それをくぴくぴ喉を鳴らせて飲み干してそのまま『ダメになるソファ』へとダイブした。どうやらお疲れらしい。
「大丈夫、ベル?」
「・・・・
「ごめんなさいベル、うつ伏せのまま喋られると何を言っているのかわからないわ」
アミッドお手製でたんまりとビーズの詰まったクッションにうつ伏せになって沈み、その品名の如く『ダメになる』子兎。アストレアに言われ顔を横に向けたベルの表情は、それはもう不満たらたらだ。ムスッとしていて、再び「フレイヤ様が悪いんだ」と言って続ける。やれ「あらアストレアと一緒に来たの? 待っていてもつまらないでしょう?」だの「私もたまにはと思ってきたのだけれど・・・ふふ、こういうこともあるのなら・・・ええ、せっかくだし一緒に入ってみたらいいんじゃないかしら?」だの「大丈夫よ、私が
「
「「「あれ、今までフレイヤ様が悪いって言ってなかったっけ!?」」」
なんでも、フレイヤから逃げ出したベルは出入口がわからなくなり、入った場所には生まれたままの姿の女神達。「子兎が紛れ込んでおるぞ」とどこかの女神が気付いたとたんに、他の女神達も瞳を輝かせ、気が付けば取り囲まれていた。その際ベルの目の前に現れ、膝に手を乗せ前かがみになっていたのが、デメテルその神である。蜂蜜色の髪に、「おい重力仕事しろよ」と言いたくなるような豊満すぎる凶器。それでいてキュッと絞られた腰のくびれ。「やーん、アストレアの
「僕の頭より大きかった・・・リューさんが可哀そう」
「クラネルさん、表に出なさい」
「泣くなよリオン、大丈夫だって。お前にはマシュマロみてえに柔らかい尻があるじゃねえか」
「ひっ!? わ、私の尻に触れるな、ライラ!?」
「デ、デメテルだって苦労しているのよ、ベル?」
「・・・・・僕、アストレア様のがいい」
「そ、そう・・・ありがとう・・・ありがとう?」
お礼を言うことなのだろうか、と首を傾げるアストレア。なんともいえない空気が『星屑の庭』に漂っていた。1時間後、ジト目をしたアリーゼが「アーディのところにベルいなかったんだけど」と言いながら帰ってきて「嘘に決まっているでしょう?」と涼しい顔をした輝夜に言われてガクリと項垂れた。
× × ×
数日後のこと。
冬の厳しい寒さも和らぎ、温かな春へと移り変わりつつも油断すると寒さに襲われるそんな中間地点な季節。
「ベル、貴方は8歳になったわ」
「ん」
『星屑の庭』ではその夜、ちょっとしたパーティが催された。『誕生日パーティ』というやつだ。
普段より少し豪華な食事をテーブルに並べて、女神の隣で『本日の主役』と
「で、ベルは何か欲しい物とかあるかしら?」
「欲しい物?」
「そ。何かプレゼントをって思ったんだけど・・・ベルくらいの歳の子に何をあげたらいいんだろうって思って」
【アストレア・ファミリア】はベルを除いて女性のみで構成されている。別に男子禁制というルールがあるわけでもないが、恐らくは今更男性団員が入ることはないだろう。『女の園』に足を踏み入れられるほど、オラリオ男子の心は大きくはない。そうとは知らず女所帯で可愛がられているのがベルだ。少女達を代表してアリーゼが口を開いて『欲しい物』を聞く。理由は簡単、女所帯だからこそベルの歳の子が何を欲しがるのかイマイチわからないのだ。同性であればまだどうにかなったろう。可愛い洋服が欲しいとか、気になるアクセサリーがあるとか、欲しいけど自分の小遣いでは手が届きそうにない玩具があるとか。しかし今相手にしているのは異性であるからして、少女達は選ぶに選べなかったのだ。きっとベルは少女達が何を渡そうが「ありがとう」と喜んでくれるだろうが、どうせなら本人が本当に欲しいものを与えたいというのが彼女達の想いだ。
「うーん・・・」
ベルは唸る。アストレアの顔や姉達の顔をチラっと見るも彼女達は頬杖をついたりしながらニコニコ。
「富」
「名声」
「力」
「この世の全て」
「―――を与えることは流石にできないけれど」
ライラ、ネーゼ、輝夜、アリーゼ、そしてアストレアがまるで打ち合わせたかのように言い、「え、え?」という反応をするベルを見てクスクス。
「ベル君は欲しい物ないの?」
「う、うーん」
「無欲な男はつまんねーぞ?」
「お金ならあるわ! 底なしではないけど!」
既に酒が入ったか火照ったように頬を染める少女達は意外なことに無欲だったベルに「バッチコイ」と要求を待つもベルは唸りまくる。そしてクピクピ、クピクピ、クピクピと乾いた喉を潤すように
「うーん・・・ベルって意外と無欲だったのね・・・それとも今が幸せすぎてこれ以上欲しいものがわからないパターン?」
「これでは私達はただクラネルさんの空腹を満たしただけだ・・・」
「まぁアリーゼちゃんとリオンも何もしてないけどね」
「「くっ・・・!」」
「・・・・」
「どうしたよ輝夜、手元が寂しそうに泳いでるぜ?」
「いや・・・酒を飲もうとしたらグラスがなく・・・な・・・って・・・」
「あん?」
料理禁止令が出ているアリーゼとリューは悔しそうに呻き、グラスを取ろうとしたが空を取っただけの輝夜の手にライラが訝しげな顔をして。「まさか」と引き攣った笑みをした輝夜が自らの右隣に座っているベルを見て絶句。ベルはぽや~と顔を赤くさせ、夢心地のようなトロンとした目をしてアストレアに寄りかかって頬ずりするかのように身を捩っていた。
「ふふ、ベル、くすぐったいわ」
「んぅうぅ・・・」
体を捻って隣にいるアストレアに抱き着いてその豊満な乳房に耳を当てて「けぷっ」と可愛らしいゲップ音。それを見た輝夜、ライラが「あ、こいつ飲みやがったな」と察し、それは徐々に仲間達も気づき始めて「大丈夫なの?」と心配しはじめる。
「貴方達、どうしたの?」
「い、いえ・・・アストレアの胸に頬ずりなんて、なんて羨ましいとか思ってませんよ決して」
「ネーゼ、本音がダダ漏れだ」
「あー・・・・兎って酒飲んだことは?」
「知らん、少なくとも私は見たことがない」
「大丈夫でしょうか・・・クラネルさん、クラネルさん?」
「んぅ・・・」
「・・・滅茶苦茶アストレア様に甘えている・・・羨ましい・・・!」
「恩恵持ちは成人扱いされるから大丈夫でしょうけれど・・・輝夜、このお酒は?」
「ええっと・・・割とキツイものにございます。果実水と混ぜて割っていたので飲みやすくはなっているでしょうが・・・」
「あ、あらら・・・・半分以上も飲んでしまって・・・ベル、平気?」
「ん・・・ふふ、アストレア様あったかぁい・・・おかあさんみたい・・・」
「え、えーっと・・・どうしましょう」
苦笑と共に小さな背中をぽんぽんとリズムよく子供を寝かしつけるように叩くアストレア。もう食事も終えているしいい加減お開きにしてベルだけでも寝かせてあげましょうか・・・とベルの細い人差し指で唇をなぞられながらそんなことを考える。
「べ、ベル~~~欲しいものとか、あるかなー?」
「ア、アリーゼ何故いまっ!?」
「いやほら、酔った時は本音が出るって聞いたことがあるし・・・眠っちゃう前に・・・ね?」
「んーー・・・・・あすとれあ、様」
「「「「ん?」」」」
今この子なんて言った? そう思った少女達だったが時すでに遅し。理性を酒で吹き飛ばされ夢と現実を彷徨う子兎は次の瞬間には女神の唇を奪っていた。触れ合う唇に誰もが絶句。カチコチカチコチ、ゴーン・・・ゴーン・・・という時計の音色だけがやけに喧しく耳朶を叩く。アストレアは自らの唇にベルの小さな唇があることに、まさかこんな不意打ちがくるとは思わなかったからこそ、いやまぁ? ベルが眠っている時に何度かベルの唇をぷにぴにと突いたりしていたこともあったが、眷族達が見ている時にされるとは完全に思わっておらずフリーズ。
「や、やりやがった・・・・」
「ベ、ベルの初めてはアストレア様・・・」
「舌は? 舌は!?」
「マリュー落ち着いて!?」
「こいつらこの後交尾するんだ!」
「「「交尾言うなぁ!?」」」
「ア、アストレア様・・・ご無事ですか!?」
「無事なもんか! 見ろ、完全に沈黙してる!」
キャーキャーする少女達は「アストレア様、キスってどんな味がするんですか!?」と騒ぎ出すもアストレアはただただ沈黙。抱き着いて接吻してきたベルが後ろに転倒しないように背中に腕を回しているだけで動きもしない。やがて「ぷはっ」と唇を離したベルはそのままアストレアの乳房を枕に寝息をたててしまう。じわじわと自分の身に起きたことを理解したアストレアは酒が入っている体をさらに赤く染めさせベルを抱きかかえたまま神室に行こうと立ち上がった。
「ア、アストレア様ッ!?」
「だ、ダメですアストレア様、ベルはまだ・・・ッ!?」
「いくらなんでも早すぎます、手を出すのはまだ駄目ですよ!?」
「せめて出る物が出てからでも―――ッッ!?」
「で、出る物・・・・・」
「おこちゃまリオンは大人しくケーキでも食ってろよ。ほら、兎は甘いの苦手だろ? 『べるきゅん、しゅきしゅきだいしゅき』って書かれた板チョコやるから」
「な、ば、馬鹿にするな! 第一、なぜこんなデコレーションにした!?」
「おもしろいからに決まってるだろ。現に今、あいつは女神の唇を奪うって偉業を果たしちまったんだ。大神越えるぜ?」
「やめろぉ!?」
「あ、貴方達も・・・その、ほどほどにして・・・明日も早いのだし・・・お、おやすみなさい・・・おほほ」
「「「おほほ!?」」」
明らかにぶっ壊れたアストレアは、どこか艶めかしかったと後に眷族達はベルに語って悶絶させたという。なお、ベルを抱きかかえて神室に向かったアストレアはベルの火照った小さな体を綺麗に拭いてやり着替えさせてやり、自分自身も寝間着に着替えてドッドッドッと暴れまわる心の臓を必死に抑え、自身の唇に一度触れてから、ベルの腹に顔を埋めて眠りについた。翌朝、初めて感じる体の異変に声にならない悲鳴を上げるベルに気づいて一日中付きっきりで世話を焼く。
「ベル、大丈夫?」
「あい・・・ごめんなざい・・・僕、アストレア様に・・・うぅ」
「お、覚えているの・・・?」
「・・・・きゅぅぅ」
酔っている間の出来事を、朧気ながらに覚えているベルは頭を撫でてくれるアストレアの手を握って悶絶。そんな仕草にクスリと笑みを零して「いいのよ」とだけ言う。
「コ、コホン・・・まぁ誕生日プレゼントということにしておきましょう。――――ね?」
「・・・・ん」
「そ、それより・・・ベル、7歳になった時にも聞いたと思うけれど・・・今、いいかしら?」
「?」
互いに顔を赤くしつつも、なんとか話題を変えようとするアストレアにベルは首を傾げる。それは、7歳の誕生日にアルフィアがした問いかけ。まだ聞くには早いかもしれない
「ベルは、何かなりたいものやしたいことはある?」
それは『大きくなったら何になりたい?』といった大人から子供にする質問だ。ベルはアストレアの手に触れながら何度も瞬きを繰り返して口を開いたり、閉じたり。やがて、外からゴーンという鐘楼の音が聞こえてきてようやくベルは口を開く。
「ぼ、くは――――――」