ベル・クラネル
所属【アストレア・ファミリア】
Lv.1
力:B 712
耐久:A 833
器用:B 721
敏捷:SS 1049
魔力:G 202
■スキル
【
・早熟する。
・効果は持続する。
・追慕の丈に応じ効果は向上する。
■魔法
【アーネンエルベ】
【我等に残されし、栄華の残滓。 暴君と雷霆の末路に産まれし
【示せ、晒せ、轟かせ、我等の輝きを見せつけろ。】
【お前こそ、我等が唯一の希望なり】
【愛せ、出逢え、見つけ、尽くせ、拭え、我等が悲願を成し遂げろ。】
【喪いし理想を背負い、駆け抜けろ、雷霆の欠片、暴君の血筋、その身を以て我等が全てを証明しろ】
【忘れるな、我等はお前と共にあることを】
・雷属性
・
・
『星屑の庭』。
普段、皆が集まって食事をする円卓を囲んで一枚の羊皮紙を、女性冒険者達が眺めていた。
主神たるアストレアがベルのステイタスを更新したそのついでに、隠していた『魔法』について知りたいがためだった。見目麗しい『正義』のお姉さん達は、ベルのアビリティの数値を見て「いやいやいやいや」と有り得ないものを見る目をして、表情を引き攣らせている。
「こんな時・・・どんな顔をすればいいのかしら?」
「笑えば・・・いいのではございませんか?」
「「「ハハッ♪」」」
『恩恵』を受けて約7年目にして、ランクアップ可能となったベル。
しかし、護身を覚えさせるための鍛錬こそすれ、モンスターと戦ったことなど碌にないし、まさかベルがミノタウロスとあそこまで死闘を演じることができるとは誰一人として思いもしなかった。というか、『SS』とか意味が分からなさ過ぎて「アストレア様、手元が狂ってますよ? ほら、SSって。誤字か何かですか? やっぱりまだお疲れなんじゃ・・・」と誰かが言ったくらいには皆、自分の眼を疑った。
「えーっと・・・まぁランクアップ可能なのはいいとして、どうしてランクアップさせていないんですか?」
団長のアリーゼは、笑おうとして笑えていない引き攣った顔でアストレアに向けて疑問を投げかける。主神のアストレアといえば、『魔法』を隠していたことについて罪悪感でもあるのか、脚を内側に力を入れ、その間に両手を挟み込みモジモジ。「アストレア様が可愛い・・・くっ」と眷族が悶えさせるそんな主神は、若干上目遣いになりながら「まだ伸びるから」と小さく呟いた。
「まだ・・・伸びる・・・?」
「そう・・・だから、どうせなら全アビリティ、オールSにしたいなぁっと思って」
「「「伸びしろですねぇ!」」」
「やめろイスカ、マリュー、セルティ! 神々の真似事をするな。あと、古い!」
× × ×
『星屑の庭』リビング
「ハァハァ・・・手こずらせてイケない子だねえ・・・」
「う・・・うう・・・ぐずっ・・・」
姉達がベルのステイタスを眺めながら戦慄したような顔をしている中、
アーディはベルの頭側に背を向け、華奢な体同様に細いベルの足へと手を伸ばすと、ぐいぐいっと細指を何度も喰い込ませ始めた。
「ふふっ、ベル君がまともに動けないって本当だったんだ・・・・・・良い玩具だよ・・・ぐへへ」
ぐへへとか言っちゃうアーディは男神や女神が、所謂『ショタ』や『ロリ』に心を掴まれ魅了される意味がわかった気がした。
「ひぎっ!?」
「大丈夫、安心して・・・じきに良くなってくるから・・・ふふっ、お姉ちゃんで練習しておいて良かった」
ベルの体は今、まともに動ける状態になかった。
理由は『魔法』の反動だ。Lv.1に似合わない戦闘行為を可能にした『魔法』は効果が解除されると共に負荷が襲い掛かってくることになるのだ。意識が回復し退院を許された今でこそ、その負荷は既に無くなっているに等しいがそれでも動くたびに体中が悲鳴を上げてしまうため悲しいことに往来を女神におんぶされる形で治療院から『星屑の庭』に帰還することとなった。初めての激しい戦闘行為にベルの華奢な体には今、筋肉痛と呼ばれるものが襲い掛かっていた。
「神様達が言ってたよぉ・・・ベル君の魔法のこと・・・
ぐっ、ぐっ、と細指がベルのふくらはぎ、腿、足裏を刺激する。
痛みに悶え涙を浮かべていたベルは徐々に頬を桜色に染め、気持ちの良さそうな吐息を漏らす。
「ふっ・・・んっ・・・ううっ!」
「ふふ、痛いのは最初だけってホントだね・・・」
「ど、どこでこんな・・・技、を覚えて・・・?」
「ん-・・・・書店にあったよ?」
じゃあちょっと強めにするよーと軽い調子で言うと、アーディは指にさらに力を入れた。
「うっ、に゛!?」
「ベル君もランクアップできるっぽいし一緒にダンジョン探索できるかもって思うと私、楽しみだなー」
「いっ・・・・痛っ!? いたたたたた!? や、やめっ!?」
「ふひっ・・・痛いのは最初だけだから! ね! ツボが痛いのは疲労が溜まってる証拠って書いてあったから! 大丈夫! お姉ちゃんも「気持ちいい」って言ってくれたから!」
「壊れるぅ!?」
「壊れない! お姉ちゃんも「いい・・・」って言ってたから!」
悶えるベルが逃げないように、両足の内側に力を入れてホールド。
足裏をぐいぐいぐいぐいと刺激し、ベルの口から悲鳴と嬌声をあげさせる。
年下の少年の悶えように、アーディは嗜虐心でも刺激されたか、むふーっと満足気だ。
「う゛う゛う゛う゛~~~~・・・・! きっ・・・気持ちいいっ! 気持ちいいからぁっ・・・!」
「おっ! よしじゃあもうちょっと強めにやっても大丈夫だね」
「・・・・へっ・・・!? やっあっ・・・・あああああああ~~~~~~~~っ!?」
ベルはこの日、祖父の口から聞いた「美女にマッサージされるとマジ極楽」という言葉を理解した。「気持ちいいと痛いは表裏一体」も理解した。
――お祖父ちゃん・・・女の人ってしゅごい・・・
「ベル君のお尻柔らかーいっ」
「ふぇあっ!? 待って、何で揉むんですか!?」
「そこにお尻があるからだよ」
「意味が分からない!?」
「君だってお姉さん達の胸触り放題でしょ・・・ってあれ、ベル君大変!」
「ひいいいぃぃぃ!?」
「ベル君の股の間に何か硬いものが!? ダメだよズボンの中に刃物を入れたりしたら! 怪我したらどうするの!?」
「ぎゃ~~~~~~っ!? 触らないで、ダメ、ダメェ!?」
× × ×
『星屑の庭』円卓
ベルの「いやぁぁぁぁ!?」という悲鳴を聞かなかったことにして、アリーゼ達はアストレアから『魔法』についての話を聞いていた。
「『魔法』を発現したのはいつですか、アストレア様」
【アストレア・ファミリア】は非常にアットホームな派閥である。
「アルフィアが亡くなって少ししたくらい」
円卓に集う眷族達の視線は女神ただ一柱にのみ注がれる。
彼女の前には小型のスタンドライトが設置され、優し気な光が、彼女の前面を照らす。
「どうして黙っていたんですか?」
そう。
事情聴取である。
両の肘を突き、指を顔の前で交差させるアリーゼ。
申し訳なさそうに、もじもじとしながら上目遣いをするアストレア。
両者ともにノリノリであった。
「まず一つ。『魔法』が発現したとき、ベルはまだ幼かったから教えるわけにはいかなかった。治癒や支援系の『魔法』ならまだしも、この『魔法』は攻撃。分かっていても好奇心が幼い子供心を刺激した結果どうなると思う?」
「場所も考えずに詠唱しちゃったりして」
「解放しちゃったりして」
「本拠が吹っ飛んで」
「本拠にアストレア様がいたらアストレア様送還されてましたでしょうねえ」
「・・・・だから教えられなかったのよ」
アストレアの発言は眷族達も予想していたことであった。
ベルのことだ、きっと「ダメよ」と言われていても、「こっそりやれば大丈夫」と子供ながらの思考で詠唱し、『怪物祭』であったように落雷が『星屑の庭』を『塵屑の庭』に変えていたことだろう。もしその時、アストレアがいれば最悪気が付いたら天界にいましたなんてことにもなりかねない。
「そしてもう一つ。今言ったことと大して変わらないのだけれど、貴方達の口から漏れてベルに知られる可能性があった」
「「「漏れないとは言い切れない・・・」」」
誰の口が柔らかいだとか疑うようなことはしないが。
「団長、気を付けてくださいませ」
「えっ、私!?」
誰の口が堅いとかいう話ではないが。
ふとした拍子にバレる可能性は十分にある。
例えば、ベルとアストレアが寝た後に真夜中に乙女達だけで夜更かししていたところに、寝ぼけたベルがやって来てしまった場合だとか。
例えば、湯船に浸かりながらベルの『魔法』の話をしていたところにベルが入ってきてしまったりとか。可能性は考えれば考えるだけあるのだ。
「だから・・・」
アストレアは、ふとベルの方に目線を向ける。
――ずるい。
「アストレア様?」
「っ! な、なんでもないわ・・・だから、ベルが冒険者にならないのなら教えない方がいいと思ったのよ。でもあの子、不幸体質かもしれなくて・・・『
「ええ、まぁ・・・数年前から【ディアンケヒト・ファミリア】で販売されているやつですよね?」
「あれ、ベルが関わってるの」
× × ×
時は数年ほど遡り、セオロの密林
オラリオから真っ直ぐ東に進んだ先に連なったアルブ山脈、その麓に広がる大森林。
森を構成する樹木は総じて樹高が凄まじく、幹も太い。野花や苔を始めとした植物の隆盛も顕著で、緑の王国などという言葉が相応しいと言える。
「ねぇ、ミアハ・・・聞きたいことがあるのだけれど」
「お、落ち着くのだアストレアよ」
そんな場所に。
二柱の女神と三人の『恩恵』持ちがいた。
「ねぇ、
「せ、【戦姫】ッ、何してるのっ!? それは蝶々じゃない・・・!」
「そうね・・・ここが花畑で、あの子が追いかけているのが蝶々だったなら、どれほど素敵だったことか・・・」
物陰に隠れ、森の中で起きている惨状を藍色の瞳に映して頬に汗を垂らし、ミアハとその眷族ナァーザに冷ややかな圧力をかける。【ミアハ・ファミリア】の主神と眷族はアストレアを直視できずにいる。
「私達・・・・『卵』の採取に来たのよね? 確かこう言っていたわよね?
「ち、違うのだアストレア・・・どうか神威を抑えて欲しい・・・・ナァーザが怯える・・・っ」
「違うんですアストレア様・・・だってまだ寒いし、雪も残ってるし、まだ冬眠していると思ってたのは本当なんです・・・! まさか元気な上に思ってたより多いだなんて予想外なんです」
冬も終わりが近いかという頃。
それでもまだ雪は都市内でもチラホラ残っており、冬眠に入っている生物もきっと大人しいはずだと判断した【ミアハ・ファミリア】はベルと都市内を散歩していたアストレアに声をかけた。採取を手伝っては貰えないだろうか、と。無論、護衛にアストレアの眷族が来てくれれば心強いという考えもあったが、ミアハ達の話を聞いてアルフィアを喪って元気のなかったベルを「たまには外の世界を見せてあげるのも良い刺激になるかもしれない」と判断したアストレアは危険はないと判断して承諾した。そこに偶然にもアイズ・ヴァレンシュタインと出会い彼女に護衛を依頼。保護者にも了承を得た。
しかしこの時、アイズは護衛の役割を一切果たしてはいなかった。
「フーッ、フーッ!!」
『オギャアアアアアアアアアアッ!?』
『ジュピィイイイイイイイイイイイッ!?』
金髪金眼の少女は、どうあがいても
風を纏った彼女は竜種のモンスターをバッサバッサと斬り捌くという惨劇の舞台を作り上げ、緑色の森に赤い絨毯を敷いていく。
「私もそこまで考えていなかったのも悪いとは思うのだけれど・・・そもそもブラッドサウルスは冬眠するものなの!? モンスターよ!?」
「爬虫類は冬眠するんです! ブラッドサウルスは恐竜ですし・・・きっと冬眠します!」
「きっと!? そんな願掛けみたいな理由で私達に声をかけたの!? ミアハ、貴方の眷族、大丈夫なの!?」
「大丈夫なものか・・・いつだって私の派閥は火の車・・・ッ! 毎日必死なのだ・・・ッ!」
「暖炉の火を眺めながら毛布に包まって眠りにつきたい・・・ッ!」
「・・・・もうっ!」
【ミアハ・ファミリア】が落ちぶれてしまった件をアストレアは知らないわけではない。眷族に見限られて今や主神と眷族一人の派閥というのはあまりにも寂しいとは思うし、自分も同じ立場になった時どうなってしまうのかなんて想像もできない。今回の採取についても、借金がやばいとか支払期限がやばいとか、ここらで一発新薬を作れば
「私はもっとこう・・・花を摘むみたいな、のほほんとしたのをイメージしていたのだけれど?」
「理想と現実とはいつもかけ離れているものだぞ、アストレアよ」
「そう、そうね・・・いい勉強になったわミアハ。
「うむ、そうであるな・・・・」
「悪いと思っているの?」
「「ごめんなさい」」
返り血で金の髪を赤く汚してしまっている【
少し離れたところでは、器用に木の上に登ったらしいベルは泣きじゃくって助けを求めている。今は亡きアルフィアに。アストレアだってアルフィアに助けを求めた。でもいないのだ、彼女はもう。
「この件が片付いたら、話があります」
「ど、どうかミアハ様を送還するのだけは・・・!」
顔面蒼白させるナァーザにアストレアはなんだか胸がチクチクした。
ポーチから念のために、もしもの時のために持ってきていたベルのステイタスを記した羊皮紙を広げベルへと声をかけたアストレアは自分が言ったことを復唱しなさいと命じ、ベルに『詠唱』させた。
「「【アーネンエルベ】」」
これが、ベルが初めて魔法を使った時の出来事の詳細である。
魔法の完成と共に足を滑らせたベルはブラッドサウルスに丸のみ。次いで落雷がベルを飲み込んだブラッドサウルスに落ちると、その死体から体液塗れで気絶しているベルが人の形をとった雷に引きずり出されるような形で地に寝かされた。
その後は酷いの一言で片づけた方が早いだろう。
ベルを守るようにして佇む人の形をした雷は、「うちの子を可愛がってくれおったな?」「おおん? 覚悟しとんのかワレェ?」「やんのかごるぁ!?」とメンチを切っているかのようで、ブラッドサウルス達に襲い掛かったのだ。体を貫く雷にブラッドサウルス達は悲鳴を上げ、一体、また一体と討伐されていき、最後には「ついでだ」とばかりにアイズの脳天に
× × ×
現在、星屑の庭
「ということがあって、ベルの『魔法』のお陰でブラッドサウルスは撃退。素材を集めることが出来たわ」
「一歩間違えたらベル死んでたじゃないですかアストレア様ぁ!?」
「ライラ、火薬の量はこれくらいで?」
「いや、どうせなら火薬は少量にして粉末状にした辛子とかいれようぜ?」
「それでいいのですか?」
「むしろキツイからこれでいいんだ」
「ちょっとリオン、ライラ、やめなさい。数年前のことで【ミアハ・ファミリア】を強襲する準備しないで」
今更ながらの報告に眷族達は頭を抱えた。
そういえば過去の抗争で
「そ、それで・・・どう解決したんですか?」
「私達ですらその話を知らない・・・いや、たぶん本人達には直接謝罪というか、青の薬舗に行くと何故か割引されるのなんでだろうなーって思ってましたけど・・・アストレア様からの報告はなかった気がするってことは大事にはならなかったってことですよね?」
アリーゼと、リャーナが問う。
アストレアは、アーディに遊ばれていたベルが疲れ果てて眠っているのを見てから眷族達に向き直り口を開く。
「私もどうしようか迷ったのよ? 送還はさすがに・・・って思うし、かといって金銭による賠償となると【ミアハ・ファミリア】が支払えるとは到底思えない。だから、ベルにどうする?って聞いてみたのよ」
その時のアストレアは一番の被害者であるベルに、どうして欲しいかと聞くことにした。ベルは『青の薬舗』の商品棚をじぃーっと見つめていて興味津々でアストレアに聞かれてから、うーんうーんと唸ってから、もじもじと恥ずかしそうにしてから言ったのだ。
「『ぽーしょん』、飲んでみたいです」
と。
『冒険者』ではない以上、ジュース感覚で飲めるようなものでもない。ベルは、アリーゼ達が準備している時に見かけて気にはなっていたが「飲みたい!」とは言えなかったのだろう。まさかの要求にミアハもナァーザも「それでいいの!?」という反応。
「というわけでベルは数本の『
ちなみに。
護衛の役割を果たせなかったどころか、竜種のモンスターの蹂躙に夢中になっていたアイズは帰還後にリヴェリアに雷を落されたり、夢の中で灰色の髪の美女に追いかけまわされる夢を見たのだという。