アーネンエルベの兎   作:二ベル

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輝夜、春姫のステイタス更新は戦争遊戯中と戦争遊戯後で2回あります。


水天日光㉕

 太陽落ちる茜色の光と夜の訪れ報せる月光が差す海上で、侵略者たる怪物を倒さんと、神の眷族達が破壊痕激しい氷上の上を駆けていた。幾度となく人智の魔法は行使され、その証拠に海を凍らせて作り上げた極寒の世界は氷山が崩れていくかのように足場が失われつつあった。

 

「ぉおおおおおおおおおおおッ!」

 

1人の女戦士(アマゾネス)が吠える。

身に纏うのは鎧などではなく、下着と言っても同然な種族(アマゾネス)らしい装束。豊満な胸が揺れることも気にせず、(ブーツ)すら履かない裸足で、構うことなく迫り来る巨牛と女の怪物に肉薄、全身を猛毒の鎧で覆いつくし、紙一重で怪物の肉体に取りついた。肉が焼けるような音と共に皮膚と肉が腐敗し異臭を放つ。ともすれば怪物は苦悶を浮かべ悲鳴を上げた。

 

「カァアアアアアアリマァアアアアアアア!」

 

もう1人の女戦士(アマゾネス)が猛る。

彼女もまた毒の鎧を纏う女戦士(アマゾネス)と同じく防具など身に付けていない。容姿ともに似ていることから、双子なのだろう。彼女は、獰猛な笑みで口を裂き、まさに狂戦士という言葉が相応しいように驀進。片割れの血飛沫をチロリと舐め取ると己の能力を増幅させた。

 

【カーリマー】。

恩恵(ファルナ)』を得た者の血を吸った分だけ、能力値(アビリティ)を上昇させる『呪詛(カース)』にして『血潮吸収(ブラッドドレイン)』。代償として『耐久』が激減するが、()()()()()()()()()()()()()()()()()とばかりに彼女は死へ飛び込む。

 

「――ぁ、あああああああああああああッ!」

 

白髪を揺らし、少年は走る。

己の性能限界を超えたその速度は()()()()()()にさえ届くほどで、双子の女戦士(アマゾネス)に置いていかれることは決してない。紅の長剣は沈みゆく太陽の光を帯びて茜色の軌跡を描き、左手から放たれる星炎は夜空を彩る様はまるで『太陽と月のデュオ』の様だ。

 

『!? !? !? !?』

 

怪物の顔は混乱に染まっていた。

壊したというのに、まだ……まだ、立ち上がる。どころか、さっきよりも壮絶で、自分を傷付けてくる。訳が分からない。皮膚が溶かされ肉が腐る。熱病の如き痛みに苛まれ、かと思えば素手で身体を破壊しにやってくる。更には星炎が視界を奔り、こちらからの反撃を牽制してくる。挙句―――。

 

 

「ゲゲゲ、何もさせやしないよぉおおおおおおおお!!」

 

後脚に突き刺さったままの『捕鯨銛』から伸びる鎖を引っ張り、動きを阻害する巨女だ。怪物は思う、なんだこのおぞましい存在は…と。

 

『ゥ、ァーーーーァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』

 

鬱陶しい、と怪物は叫ぶ。下半身の巨牛さえも叫びあがり、暴れまわる。勢いよく巨牛が身体を捻り、釣り糸のように巨女を引き寄せる。しがみついて離れない双子の女戦士など無視して、まずは瞠目する巨女をそのまま(ハエ)でもはたき落すかのように手を振るった。

 

「ぎっっ……!?」

 

氷の大地に、巨女が陥没する。

続いて、怪物は詠唱する。人智を超えた詠唱速度を以てして行使する魔法で、双子を()()()()()

 

『【ウォータージェイル】!』

 

「「!?」」

 

巨大な水の球体が2つ。

双子のアマゾネスを閉じ込めた。

彼女達が脱出しようと藻掻くが、球体はただ、たぷんと波打つだけ。

 

(出られん……!)

 

(手が、足ない……!)

 

動きを封じられた双子を両手で叩き潰そうと、怪物は体勢を整えて両腕を拡げた。そのまま怒りのままに肉薄。

 

「させ、ない!」

 

『ギッ!?』

 

それを邪魔するのは、巨女(フリュネ)が握っていた鎖を掴んで引っ張る小柄な土の民(ドワーフ)。全身鎧を身に纏う前衛壁役(アスタ)だ。そして、雷に撃たれ焼かれボロボロの身で立ち上がった正義の戦乙女達と美神の眷族達が『綱引き』の様に引っ張り、動きを止めた。

 

「【魔炎の持物(イリヴュート)】!」

 

「【ルミノス・ウィンド】!」

 

「【アガリス・アルヴェシンス】!」

 

『ィイイヤァアアアアアアアアアアアアアア!?』

 

両手を、リャーナの魔炎とリューの緑風が吹き飛ばし、炎を纏ったアリーゼが顔面から胸へと縦に剣を一閃、爆炎が爆ぜた。

怪物の魔法が解除され、双子が水の牢獄から脱出。もう動けないと思っていたはずの人間がボロクズになってなお眦を裂く様子に怪物は戦慄する。着地し、氷上の上で洗い呼吸を繰り返す神の眷族達。怪物は吹き飛んだ両腕を再生させながら、苦痛に顔を歪めながら目の前にいる人間達を『有象無象』より『脅威』に認識を変えた。

 

 

2秒。

それがこの決戦における束の間の静寂。

それを終わらせたのは、頭上より降り注いだ光塊だ。

 

 

「「「「ッッ!?」」」」

 

 

身体に確かに現れた『力が湧く』感覚と、身体を覆う黄金色の光に、神の眷族達は目をあらん限りに開き、瞳を震わせた。

 

「…………どうなってんだいぃ!?」

 

巨女は、フリュネは顔を歪ませてまで驚きを隠さない。

その光の正体など分かり切っている。

春姫の『階位昇華(レベルブースト)』だ。それも、()()()()。フリュネ自身とアリーゼ、リュー、ベルの4人が今、その妖術の恩恵を受けていたのだ。

 

 

×   ×   ×

 

 魔法は先天系と後天系の2つに大別することができる。

先天系とは言わずもがな対象の素質、種族の根底に関わるものを指す。(いにしえ)より、魔法種族(マジックユーザー)はその潜在的長所から修行・儀式による魔法の早期習得が見込め、属性には偏りが見られる分、総じて強力かつ規模の効果が多い。

 

後天系は『神の恩恵(ファルナ)』を媒介にして芽吹く可能性、自己実現である。規則性は皆無、無限の岐路がそこにはある。【経験値(エクセリア)】に依るところが大きい。

 

「あの小僧がお前に見せたのは紛れもなく『魔導書(グリモア)』。それも随分質の良い代物だ」

 

魔法とは興味である。

後天系にこと限って言えばこの要素は肝要だ。何事に関心を抱き、認め、憎み、憧れ、嘆き、崇め、誓い、渇望するか。引き(がね)は常に己の中に介在する。『神の恩恵(ファルナ)』は常に己の心を白日のもとに抉り出す。

 

「あの小僧がお前の元に現れてから、お前は変わった。なら、()()()()()()()()

 

一粒の血が滴り落ち、波紋を起こした。

光の波紋を起こした後、神血(イコル)を浴びた瑞々しい少女の肌は水面のように震える。たちまち漆黒の文字群が肌の上を踊った。ぎゅっと瞼を閉じる春姫は着物を脱いでおり、とは言われ『鏡』を通して少女の裸体が数多の視線に凌辱されぬように前は着物で隠している。イシュタルは目を細めて指を走らせていた。それをアイシャはあり得ない物を光景を見るようにして立ち竦んでいた。

 

 

(これで……イシュタル様の計画は破綻した。もう、『殺生石』の儀式はできなくなった)

 

魔導書(グリモア)を読ませたことで、イシュタルは春姫の中で眠る『未知』に興味を引かれてしまう。しかし、仮にステイタスを更新し魔法を発現させてしまえば、それで『殺生石』の儀式はできなくなる。正確にはできなくはないが、封印された狐人(ルナール)が2つ以上『魔法』を覚えていた場合、砕けた『殺生石』は一方の力しか使えない。【レベル・ブースト】に固執していたイシュタルは、だからこそそれを良しとしなかった。

 

 

サンジョウノ・春姫

Lv.1

力 :I 8

耐久:I 32

器用 :I 15

敏捷 :I 23

魔力 :E 403

 

《魔法》

【ウチデノコヅチ】

 ・階位昇華(レベル・ブースト)

 ・発動対象は1人限定。

 ・発動後、一定時間の要間隔(インターバル)

 ・術者本人には使用不可。

 

【ココノエ】

 ・付与魔法。

 ・詠唱連結。

 ・連結対象の魔法効果を装填。最大発動数は九。

 

 

 

 

「…………フン」

 

鼻を鳴らす女神は、静かに眷族の着物を戻し肌を隠してやった。それがステイタスの更新を終わらせたのだと理解するのに時間はいらなかった。耳をぺたりと畳んで俯く春姫は恐る恐る振り返る。アイシャもまた、イシュタルのその面白くなさそうな表情に片眉を上げる。

 

「春姫」

 

「?」

 

「自分の『恋』は自分で守れ。女ならばできて当然のことだ。でなければ、お前が全てを差し出してまで教えて欲しいと私に言った『愛』など得られん。見ろ、あそこでお前の『雄』がお前の叫びを聞いて立ち上がり、吠えているぞ? お前はこのまま、ここで待っているだけでいいのか?」

 

見つめ合うイシュタルと春姫。

どこか優し気な眼差しを向けてくる主神に、眷族は頬をわずかに染めて再び、俯いた。そんな眷族に溜息を吐いて、腕を引いて立ち上がらせた。

 

 

「歌え、春姫。お前にはそれしかない」

 

「………」

 

春姫に戦闘娼婦(バーベラ)のような戦闘能力はない。

春姫は、歌う事しかできない。

震える瞳を、真っ直ぐ、金の瞳が見つめる。

自分の大きく育った胸に手を当てトクントクンと震える鼓動を感じて、姉貴分なアイシャを見て、そして怪物と戦う冒険者、その中にいる愛しい少年の『炎』を見て、春姫は、臆病な小娘は、新たに得た『妖術』、その『魔法名』の宣言を始めに口ずさんだ。

 

「――――【ココノエ】」

 

女神の神意がわからないアイシャは、腰に手を当てて女神の横顔を見た。まったくもって面白くなさそうな顔だし、何かこう、宝物を手放したような喪失感さえ感じさせられる。アイシャの視線を感じたのか、イシュタルは歌う春姫を見たまま唇を動かした。

 

「私が春姫を見つけた時、見て分かるほどに絶望した顔をしていた。それこそ、捨てられた子犬のような顔だ」

 

どういう経緯で狐人(ルナール)がオラリオにやってきたのか。そんなことに興味はないが、その価値を知らない商人達には心底嘲笑したのはイシュタルだ。妖精とも違い、けれど魔法種族(マジックユーザー)である狐人(ルナール)には強力な妖術なんて言われるものが発現すると言われているのに。親に勘当され、モンスターに襲われ見捨てられ、盗賊たちに助けられ、生娘であることを確認されて、こうして売り払われた。良い家の生まれだったのだろう小娘からしてみればその精神的ダメージは計り知れないものだ。

 

「春姫には『愛』が分からないという欠陥が存在する。それはお前達も見抜いているだろう? 暗示をかけていたのだから」

 

――『ここから出るんじゃないよ』

 

それは暗示。

その正体は、『自己暗示』。

自分を叱責する父親に怯えた小娘が、父親を怒らせないようになってしまった結果。春姫の記憶の中に、母親の愛というものは存在しないし父親の愛というのも存在しない。友人と呼べる者に出会い、屋敷を抜け出して遊んだ楽しかった思い出はあるが、その結果、父親を怒らせてしまった。怒る父の顔しか、春姫は知らないのだ。

 

「『愛』を教えてください……それが、春姫が私の眷族になった時に言った言葉だ」

 

「……それと『殺生石』の儀式、どう関係があるっていうんだい?」

 

「神に意見するなら、対価を支払え」

 

「?」

 

「私は春姫に『愛』を教える。なら、お前は何を差し出すのか……春姫は『全て』と答えた。迷うことなくな。まあ全て失っていたようなものなのだから、失うことに恐れなどなかったのだろう」

 

「待て」

 

春姫の歌声が遠い。

紡がれる呪文と並行して彼女の身体に変化が起こり発散された『魔力』が無数の光粒になって収束し、臀部へ集まっていく。しゃらんと鈴をまろばすような音が鳴り響くとともに、彼女の毛並みの色と同じ5本の『光の尻尾』を生み出した。もとの尻尾と合わせれば計6本。金色に光り輝く狐の尾。その御姿に、まさに巫女のように祝詞を口ずさむ少女の姿に、『鏡』を通して神も人も美神に魅了されるがごとく見惚れてしまう。

 

「なら、儀式はあいつの意志ってことかい? 私はそんな馬鹿を救い出そうと『殺生石』を破壊しようとしていたってのかい?」

 

「それは違う」

 

春姫の額に玉の汗が浮かぶ。

身体の内から精神力(マインド)がガリガリと削られているのだろう。それでも春姫は歌い続ける。

 

「『殺生石の儀式』は私が企てたものだ。春姫が『全て』を差し出すと言ったのだ、なら、春姫の『全て』をどのように扱うかは私次第というわけだ。文句など言わせん。私は春姫に確かに質の良い『衣』を与え、『食』を与え今日までああも育たせ、雨風に凍えることのない『住』も与えてやった。『愛』を得る機会もくれてやった」

 

「それが……娼婦」

 

「そうだ。古来より男の獣性を沈めるのは女の役目だ。決して醜いものではないし故にこそお前達は『()』を得るのだ」

 

光の尾を生やした春姫は続けて、歌う。

それはイシュタルが固執していた【階位昇華(レベル・ブースト)】の魔法。

 

「私は与えるものは与えた。なら、あとは春姫が差し出す番だ。違うか?」

 

「………それで、春姫は知れたのかい?」

 

「そんなわけないだろう? 私がどれだけ手を尽くしても、説いてやっても、機会を与えてやっても、あいつの貞操観念が邪魔をした。そして春姫自身が、全てを諦めた。だが、そんなこと知ったことではない」

 

大きくなれ、と歌う春姫に大きな溜息をつくアイシャを誰が責められようか。あとで拳骨の一つでもくれてやる、とそう思うアイシャにイシュタルは独白するように言葉を紡ぐ。それこそ、複数人を一斉階位昇華(ランクアップ)できる力を手に入れた春姫に対して。

 

 

「――――変態め」

 

「【ウチデノコヅチ】!」

 

高い音響を放って光の槌が割れる。

燦然と輝く光鎚の破片は光の尾に吸い込まれ、同等の輝きを放ち―――。

 

「【舞い踊れ】!」

 

イシュタルの指示の下、それぞれの神の眷族達へと階位昇華は付与されたのだ。

 

 

×   ×   ×

時は現在に戻る。

 

完成した【ウチデノコヅチ】が怪物と戦う4人の神の眷族達に付与された。そして最後に、氷上を駆けるアイシャが光に覆われて怪物へと接敵した。

 

 

「くそったれがぁ!」

 

『ギィッ!?』

 

まるで八つ当たりの如く、上半身にある女体の顔に蹴りがぶち込まれる。大朴刀を握り締めるアイシャが血走った目をそのままに暴力を振るう。『愛』が知りたかっただけでここまで面倒なことになるのか、とそんな小娘を私は守っていたのかと癇癪を起して制御できずにいるように力任せに刃を走らせる。

 

『~~~~~~~~ッッ!!』

 

暴れる女体から飛び退き、アリーゼ達と肩を並べる。

 

「何、これ、私達今、どうなってるの!?」

 

「わからない……わからないが、力が湧く……少し、精神と器のズレのようなものを感じるが……まさか、これは……」

 

「アイシャぁ! イシュタル様は勝手に何をしたっていうんだぃ!?」

 

ぴーぴーわーわー言う姦しい2人の乙女達―と1体―にアイシャは更にイラァして叫びあがった。

 

階位昇華(ランクアップ)したんだよ!!」

 

 

×   ×   ×

摩天楼施設(バベル)30階

 

 

「「「「「えぇええええええええええええええええええ!?」」」」」

 

 

神々が驚倒する。

下界の『未知』凄まじく、まさしく『異常事態(イレギュラー)』。可愛いお狐ちゃんはなんと驚くなかれ、九尾の妖狐(レベルアッパー)さんであったのだ。

 

「ま、魔法で眷族の階位を上げるとかありかって思ったけど!?」

 

「まさかの複数!?」

 

「【疾風】もランクアップしたってことは、第一級があそこには5人ってこと!?」

 

「ほ、欲しい! 春姫ちゅぁあああん、僕の子になってぇええええ!!」

 

「おい馬鹿、【探索者(ボイジャー)】に【終滅の天刑(ヘヴンズ・カタストロフ)】されるぞ!?」

 

「「「「……そうだあいつ、魔法の効果ぶんどる盾持ってても第一級の【男殺し(アンドロクトノス)】倒してんだよなあ」」」」

 

階位昇華(レベル・ブースト)に驚かされるが、ベルのやらかしも記憶に新しく、欲しいけど……けどぉ!とまるで商品棚で買うかどうか迷う売人のような気持ちの揺れに神々は襲われた。

 

 

×   ×   ×

黄昏の館

 

 

「行けぇ、バーチェェ!」

 

ティオナが拳をあげて『鏡』に叫びあがる。

先程まで「援軍いったらダメ? は?」とキレていたことは記憶の彼方だ。『鏡』には毒の鎧を纏ったアマゾネスだとか、炎の鎧を纏ったヒューマンだとか緑風で空を飛ぶ妖精だとか星炎を打ち上げる少年だとかが映っているが、その光景はまさしく星灯りのように眩い。怪物は逆境を覆し始めた人間達の命の輝きに戦慄し、蹈鞴を踏んでいるほどだ。

 

「第一級が5枚……!」

 

「Lv.6が3枚、それも【男殺し(アンドロクトノス)】を中心に『精霊の分身(デミ・スピリット)』の動きを阻害しておる……! 【アストレア・ファミリア】の同族もそうじゃが、力では勝っておるか!?」

 

「状況としては遠征の時の我々と同じにはなったのか……?」

 

「第一級冒険者が複数という意味では、恐らくは……でも、あの時よりも今回の方が手数が多いです」

 

「うん、地上だからアマゾネスの人達が沢山いるの、わかる」

 

フィン、ガレス、リヴェリアと続きレフィーヤとアイズが口を開く。アリーゼやベル達の他に『鏡』には、倒れていたアマゾネス達が極寒の大地を駆け、自分達よりも遥かに巨大な怪物に飛び掛かっては吹っ飛ばされてを繰り返し、拳、蹴り、剣、槍と武器という武器を振るっているのが映っていた。

 

「頑張れ……ベル」

 

アイズは膝の上の自分の拳を握り締め、『鏡』に映る幼馴染に応援した。それに応えたかのように、彼の背中がチカチカと発光した。

 

 

×   ×   ×

 

 

『【 ̄ ̄ ̄、―――、___、 ̄―_― ̄ ̄】!!』

 

 

身体を傷だらけにされた怪物は怒りの形相そのままに歌を紡いだ。両腕で胸と顔を守りながら、人智を超えた魔力と詠唱速度を以て人間達を屠る魔法を紡ぎ出す。最早、氷の大地が砕け散ってしまうことなど、構わないとばかりに。

 

「また何かしてくる!!」

 

「形勢は逆転しつつあるのに……まだ、足りない!」

 

アリーゼが怪物が魔法を繰り出してくると叫びをあげ、リューは唇を噛む。天秤は自分達に傾きつつある。あるのに、まだ、足りない。まだ一手、足りない。あの怪物がどのような魔法を行使してくるのかわからないが、喰らえばきっと、また自分達は倒れてしまうだろうことは分かり切っていた。

 

「そこの胸の大きい、まだ理性が残ってる方のアマゾネスの人!」

 

そこに、ベルの声が耳朶を震わせる。

名前がわからないからだろう、身体の特徴だとかを言って毒の鎧を纏っている『闘国(テルスキュラ)』の女戦士―バーチェ―のことを呼んでいた。自分のことか?と訝しげな顔をする女戦士はベルが自分のもとに猛スピードで接近しているのを見て身構えた。

 

()()()()()()()()()!」

 

「!?」

 

短い要求。

何を考えているのか分からないが咄嗟に、そう、かつて鍛えていたティオナから「何かやらかす子がいるんだよ」と聞いていたバーチェはバレーボールをするように両膝を折り、腕を股の間に組んで、毒の鎧を腕の部分だけ解除する。そこへベルが飛び乗るとLv.6の膂力で一気に真上へと打ち上げた。

 

明星簒奪(スイングバイ)】によってベルはバーチェに打ち上げられた速度をそのまま自分の速度に変換して、宙を跳んだ。一気に、一気に、怪物の上を越えて遥か上空。怪物も目の前から消え失せた『白い変なの』が飛んで行った方を見上げたが、それが彼女の命運を分ける岐路となった。

 

 

「――【狂い咲け】」

 

氷の上を音もなく駆ける剣客が1人、参戦していた。心酔する女神にステイタスを更新され、新たに発現した()()を歌う。

 

「【浅ましく求むるは】」

 

まるで『俳句』でも読むかのように、()()()3()()口ずさむ。仲間達の背後からすれ違い、「やっと来た」「遅い」と笑みを浮かばせる仲間達を置き去りにして彼女は歌う。

 

「【今際の死桜(はな)】」

 

かつての主神の手から離れているのに、忌まわしいと唾棄する一族の技を使う自分は、過去を斬り捨てきれない自分はなんとも浅ましい存在なのだろう。そう自嘲し歌い上げた彼女は、抜刀と共に魔法を解き放つ。

 

「――【サクヤノハナ】」

 

鞘から抜けていく刀が桜色に染まっていく。

思い出したくもない神の名を冠するその魔法に彼女は僅かに躊躇を見せて、塗り替えるように居合の名を口にした。

 

「居合の太刀」

 

不可視(見えざる)の太刀。

 

「【零戦】」

 

抜刀する。

瞬間、刀の奔る空間が歪んだ。

それこそ、陽炎のように。

不可視に近いそれに、何が起こったのか誰も理解できなかったが、その効果はすぐに()()した。

 

『―――ヒッィイイイイイイイヤァアアアアアアアアアア!?』

 

詠唱していた怪物は突如悲鳴を上げたのだ。

となれば魔力の制御を手放してしまえば起こるのは『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』。しかし、本来起こるはずのその現象は別の現象となって怪物を襲っていた。

 

「桜の……木?」

 

 

×   ×   ×

 

 

「行きなさい輝夜」

 

胸に手を当ててアストレアは昇っていく月を瞳に映す。

視界の奥を1隻の漁船が男神を連れて奔っていったが、まあいいかと気にしない。自分もこうして危険地帯に足を運んだわけだし、他神(ひと)のことは言えないからだ。彼女の手には、一枚の羊皮紙があり夜風にぱたぱたと揺れていた。

 

 

 

ゴジョウノ・輝夜

Lv.4

 

《スキル》

殺剣血統(カイナ・ブラッド)

 

一光血閃(サキベニ)

 

《魔法》

【ゴコウ】

詠唱【禍つ彼岸の花】

 

【サクヤノハナ】

詠唱【狂い咲け】【浅ましく求むるは】【今際の死桜(はな)

 

 

 

「貴方が発現させた魔法は、()()()()()()を生み出す。けれどその魔法の真価はその後にある」

 

その魔法は、相手の魔力を喰らい成長する死桜(はな)の魔法。彼岸の花しか咲かすことのできぬ一族が、まさしく求めていた満開の桜。それでいて輝夜が一生かけたとしても『五条』の女であることは決して拭えないのだと示す魔法。

 

 

「輝夜、戦える?」

 

輝夜が戦場に旅立つ前に問うたアストレアに、輝夜は間をおいて答えた。

 

「………『貴方は悪くない』と言ってくれた子が、目の前にいた」

 

唇にそっと指を添わせ、わずかに微笑んで次には眦を裂いて声を荒げる。

 

「その事実だけで、私は戦える……! 血にまみれたこの命を賭ける価値があるっ!」

 

そこに悪神に心を揺さぶられた輝夜はいない。

迷いはなくなったように、彼女は水を吸った着物を雑に絞って氷の大地を駆けていったのだ。

 

 

×   ×   ×

 

 

御神木、というのが極東にはある。

『特別に神聖視される樹木』とされ、 極東古来から伝承される自然に神が宿るという信仰の中で、樹木、岩、山、滝が神の依り代として崇められてきたものだ。それが今、戦場の中で開花していた。

 

 

『イィ………ィィィイイイイイイイイイイッ!?』

 

藻掻く怪物は、玉のような汗を浮かばせ下半身の巨牛さえ荒い呼吸を繰り返す唾液を氷の大地に落と続けている。上半身の女体は何を見ているのか恐怖の色を浮かばせていた。

 

『【 ̄ ̄―――_―― ̄ ̄】!!』

 

紅蓮の魔法円(マジックサークル)が展開される。それと同じく火の粉が怪物の周囲を覆いだした。紡いだ魔法を行使しようとしているのだろう。しかし、次には輝夜の魔法が魔力を喰らい桜の大樹を成長させた。

 

『ゥウウウウウウウウウウウウウウ!?』

 

「魔法を……妨害してる!?」

 

対魔力魔法(アンチマジック)?」

 

 

魔力(たね)が人智を超えているからこそ、だろう。魔力を喰らって成長する死桜(それ)はまさに『御神木』と言っても差し支えないほどに成長し、怪物の行動を奪っていた。身体中に根が這い、枝が生え、桜が咲いていく。魔法を歌い脱出を試みようとすればすぐに養分を吸われて苦しめられる。魔力残滓を回収して精神力を回復しても、また同じ。

 

1人の剣客によって、怪物は完封されてしまったのだ。

そんな剣客―輝夜―は仲間達の美神と殺戮の神の眷族達の視線を一身に浴びながら、怪物に届かぬ言葉を吐く。

 

「お前に何が見えているか知らんが……美しいだろう? ()()は」

 

その言葉の後、怪物は大絶叫を上げた。

全身を覆う大木を軋ませながら、必死の抵抗を繰り返す。怪物の目はあらん限りに開かれ、瞳は彷徨うように泳ぐ。まるで、何かに怯えるように。真実、怪物の瞳と人間達の瞳では()()()()()()()()()()

 

『ヒッ、ヒィイイイイイイイイイイ!?』

 

彼女の瞳には、()()()がいた。

黒い髪に常に閉じられた瞼。生まれたままの姿の彼女達は、例外なく全て同じ顔。女神の身姿を模倣した『画一化の究極』と言っても過言ではない天女も霞む美女達が怪物の身体に奉仕するように這っているのだ。1人や2人なんてものではなく、()()()()()()()()()()()()()。そのゴジョウノハーレムに怪物は本能的に恐怖し、絶叫を上げていた。

 

 

「―――すまん」

 

俯いて、小さな声で短く謝罪する輝夜に仲間達は「お、おう」と魔法の迫力に気圧されまともな返事もままならない。ただ1人だけ、喜色満面に赤髪を揺らしてアリーゼだけは違った。

 

 

「大丈夫よ、輝夜! 全然、心配なんてしてないから! 今まで一緒に一つ屋根の下で暮らしていたのに年甲斐もなく24歳の女が14歳の男の子にヤキモチを妬いて癇癪起こしてぶった切ったり、面倒なことにしておいてこのまま逃げ出したなんて私はこれっっっぽっちも思ってなかったから! あ、きっと生理なのね!って思ってただけだから!」

 

 

「…………」

 

「え、ちょっと、ツッコミは!?」

 

「返す言葉がない……私は、なんて恥ずかしい女なんだ……」

 

「え、あの、ちょっと……?」

 

「「「「アリーゼが輝夜を泣かしたー、アストレア様に言っちゃおー」」」」

 

「ま、待って皆!? おかしいわ、ここは皆、私側に立っているはずでしょう!?」

 

 

ツッコミすらくれないどころか、ドンヨリと沈む輝夜にアリーゼがオロオロ。仲間達は「あーあー泣かせたー」な感じでアリーゼはまさかの事態に「私が悪いの!?」とドキドキ。リューは輝夜の肩に手を乗せ、振り返った彼女にトドメを刺した。

 

 

「…………ドンマイ」

 

「ぐっ、うぅぅ……!!」

 

 

別にリューは追い打ちをかけるつもりなんてなかった。励ましになるとも思わなかったが、言葉が思いつかず、出た言葉がそれで、でも、それが輝夜の胸にグサリと突き刺さった。未熟者などと言っていた輝夜が、まるで「貴方の方が未熟者だ」と言われているかのような錯覚が、彼女にはあったのだ。

 

『フーーッ、フーーーーッ!!』

 

苦悶の怪物に、神の眷族達は顔色を真剣なものに戻す。戻って来た輝夜についてはとりあえず後回し。あとでイジるだけイジろう、と心の中に誓って空の上でベルが何かやらかそうとしているのを察していた彼女達は、改めて武器を構えた。

 

「「「「おおおおおおおおおおおおおっ!!」」」」

 

身動きが碌にできない怪物に、神の眷族達が総攻撃を開始する。今まで散々いたぶってくれた礼を込めて徹底的に。魔法を撃ち、剣で斬り、拳を叩きつける。

 

『【閃光(センコウ)ヨ駆ケ抜ケヨ(ヤミ)ヲ切リ裂ケ代行者タル我ガ名ハ光精霊(ルクス)(ヒカリ)ノ化身(ヒカリ)女王(オウ)】!』

 

悶える怪物は魔力を奪われながら必死に歌を紡ぎ、襲い掛かる人間達を破壊しようと反撃の呪文を歌い上げる。魔力を奪われながら行使しているのか、展開された魔法円(マジックサークル)は明滅を繰り返している。

 

「お前等ぁ! 魔法にビビるんじゃないよォ!! もうあのブサイクは虫の息、大した威力なんて出せやしなよぉ!!」

 

仮にも第一級冒険者。

そこに至るまでの経験か、フリュネは怪物が次に放つ魔法に()()()()()()()()()()と踏み自分よりも美しくない同胞達を鼓舞した。アマゾネス達はそんなフリュネに応えるわけではないが、猛り声をあげ襲い掛かる。

 

『【ライト・バースト】!』

 

繰り出されたのは短文詠唱からなる、閃光の砲撃魔法。神の眷族達を呑み込まんと閃光が全てを覆おうとした、その時―――。

 

 

『―――――ェ?』

 

 

閃光を突破してトスン、と谷間に何かが突き刺さる感覚が怪物に訪れた。ゆっくりと怪物は自分の胸元に視線を落とすとそこには、三叉銛が突き刺さっていた。そして飛んできた方角は正面、人間達より後方に浮かぶ1隻の漁船。

 

 

「さすがに冒険者のようにはいかないか……」

 

『魔石』には届いていないことを悔やむように、投擲後の姿勢から戻し肩を回すのは、『海神』の一柱であるニョルズだ。

 

「でもまあ、これくらいはしないとロキ達に迷惑をかけたからな……易々と港町(メレン)がなくなったら何を言われるかわかったもんじゃない………詳しくは、『コミックス』を読んでくれよな!」

 

「誰に言ってるんですかニョルズ様ぁ!?」

 

眷族にメタなこと言わないでくださいとツッコミを入れられてはにかむ男神は、遥か空の上でチカチカと光を目を細める。

 

(おれ)の手では討伐できなかった……が、これくらいの介入はいいだろ。どうせあの怪物も、どっかの神がやらかした結果なんだろうしな。おあいこだ。……避雷針替わりにはなるだろ、あとは託したぞ……大神の孫(ベル)!」

 

 

×   ×   ×

遥か上空

 

 

そこは誰もいない虚空だ。

星と星外の境界線にベルはいた。

空気は薄く、呼吸は苦しい、世界は丸みを帯びている。

音がない静寂の世界だが、このままここにいれば正しく絶命するだろうことは確かだった。しかし、ベルは今この時、誰も踏み込んだことのない『前人未踏の領域』に確かに到達していた。例え()()()()をしたところで邪魔する者はいないだろう。そこから、潜水するのと同じように身体を捻り、戦場へと降下を開始。

 

 

「―――っっ!」

 

血液が沸騰し、血管が破れ血が溢れる。

追従する光翼が数枚、ベルの前に移動し大気による燃焼で肉体が滅ぶのを防ぐ。星に飛来する流星が燃え尽きるのと同じように、熱が身体を蝕む。

 

(あの人が助けてって言ってた)

 

戦争遊戯で彼女の姿を見るとは思わなかった。

 

(お義母さんならきっとあの怪物だって倒せる)

 

偉大な英雄の残した『偉業』を海の底で確かに見た。

 

(僕だって……僕だって……!)

 

胸の中で疼いて燻ぶるのは、まだ言葉にできない『願望』。

 

「すぅー………はぁー………っ!」

 

深呼吸を1つ。

そして眦を裂いて、歌う。

女神を殺したあの日から、仮に偽物であったとしても()()()()()()()()()()()()と使うことを止めていた魔法を使う。

 

「【我等に残されし、栄華の残滓。 暴君と雷霆の末路に産まれし落とし子よ】」

 

地上から一点、上空から一条。

天空を引き裂いて、惹かれ合うようにその場所を目指すベルはまさしく一本の矢だ。

 

「【示せ、晒せ、轟かせ、我等の輝きを見せつけろ】」

 

《頑張れ》

 

《負けるな》

 

《勝って》

 

《助けて》

 

《託したぞ》

 

そんな声が、どこから聞こえた気がして。

背中が熱を帯びて発光。

 

「【お前こそ、我等が唯一の希望なり】」

 

真っ直ぐ降下し、時折軌道を修正して、徐々に近づくにつれて戦う姉達や神の眷族達の輝きが迷彩に見えるようになってくる。冷たい空気の壁に何度も身体を叩きつけられ破壊されようともベルは止まらない。

 

「【愛せ、出逢え、見つけ、尽くせ、拭え、我等が悲願を成し遂げろ】」

 

姿さえ知らない家族たちからのメッセージのような魔法の呪文を、紡いでいく。展開される魔法円(マジックサークル)が高速で降下する主についていく。

 

「【喪いし理想を背負い、駆け抜けろ、雷霆の欠片、暴君の血筋、その身を以て我等が全てを証明しろ】」

 

多くの冒険者達が命を賭した。

倒れても次の誰かに一縷の希望を託し続けた。

それは決して自棄などではなく、自分達よりも前を走ろうとする仲間達を信じるが故に。降下するちっぽけな光は、その身を星の熱によって焦がし、けれど、その場にいない者達の想いさえ『鏡』を通して受信した器は、その想いに、願いに殉じるように怪物を討ち取るにたる一撃を生み出す。

 

「【忘れるな、我等はお前と共にあることを】」

 

 

桜の花を咲かせる大樹が見えた。

雷を発しながら、ベルは完成した魔法を解放する。

 

「【アーネンエルベ】」

 

落雷の如き轟音。

視界を埋め尽くす白光。

大神の眷族達の姿はなく、あくまでも纏うは雷のみ。

そんなベルへ、怪物を討伐する武器が地上より贈られた。

 

 

×   ×   ×

 

 

氷の大地から空を見上げれば、雷光を放つ何かが飛来してきているのがわかった。アイシャはまるで合わせるようにして魔法を詠唱。フリュネは怪物の尾にあった刃を見つけると、それを上空……ベルに目がけて()()()。ただの武器じゃすぐに得物がダメになる。なら、怪物の身体の一部であった尾であったなら? 巨女であり暴力の化身のようなフリュネだからこそ投げ渡すことができたその刃。何をするのかなんてわからないのに、この時、派閥など関係なく神の眷族達の意志は1つとなった。

 

「くたばれ!」

 

輝夜の斬撃が怪物の硬い皮膚を裂き肉を絶った。怪物が無理矢理に後退させられる。

 

「燃えなさい!」

 

アリーゼが爆炎を伴って怪物を襲う。さらに後退。

 

「吹き飛べ!」

 

リューが砲撃し、桜の大樹に束縛される怪物をさらにさらに後退。

 

「あばよ」

 

怪物の正体を知る美神の側近である青年を懲らしめたらしいライラが飛去来刃(ブーメラン)を投げ、魔法(バクダン)を起爆させた。爆風を伴ってさらに後退。ついには怪物が乗っていた巨大な船の上へと押し返した。そして正義の戦乙女達は空を見上げて叫びあげた。

 

「「「「「いっけぇええええええええええ!!」」」」」

 

 

怪物は斬られ焼かれ撃たれ爆ぜられ、巨牛の下半身も女体の下半身も見るも無残な傷痕を生んでいた。胸に刺さった銛は抜くことができず、それどころかうつ伏せに倒れたせいで銛がさらに深く食い込んだ。強烈な一撃一撃が見舞われるたびに銛は『魔石』へと確実に近づいていく。迫り来る死に恐怖した怪物は藻掻くが、魔法を使っての反撃も寄生木(ヤドリギ)の如き死桜(おんなたち)が邪魔をする。身動きなど、取れなくなっていた。

 

『ヒィッヒッヒッ……!?』

 

 

想いを託すその意志に、器は呼応する。

背中の恩恵が熱を帯び発光し、性能限界を超えた領域に進出する。

 

「はぁああああああああああああああ!」

 

『イヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?』

 

第一宇宙速度、侵攻(テイクオフ)

領域外侵略(パラダイム・インベーダー)

全身が白に染まり、飛んできた巨大な刃を受け取り轟雷で覆いつくす。全身を弓なりに仰け反らせ()()()()()()()怪力を以てして怪物の延髄へと、星の重力さえ味方に付けてして振り落とす。

 

 

必殺、正義執行。

汝、裁き下す雷霆(ボワ・ド・ジャスティス)

 

 

 

絶殺。

轟雷断頭。

 

 

延髄から切り落とされた女体の頭部が宙を舞い、回転し、海へと落ちて飛沫を上げる。船内から打ち上げられた紅蓮の斬撃が巨牛の頭部を破壊し、二つの魔法が船をも真っ二つに斬り裂き、雷が胸に刺さった銛に触れ、魔石を破壊。氷の大地さえ爆砕した。




ボワ・ド・ジャスティス=ギロチン。


春姫の魔法は3つ目は考え付いています。
2つ目の【ココノエ】については発現タイミングが違うだけです。

輝夜の魔法のイメージは、ヴェルフの【ウィル・ウォ・ウィスプ】とモスヒュージのヤドリギが合わさったような感じ。
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