アーネンエルベの兎   作:二ベル

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やるゲームが多すぎてやれないゲームが増えていく。時間がない。


英雄賛歌③

19階層 大樹の迷宮

 

 

「そういえば、炎鳥(ファイアーバード)の討伐の時に助けたという女性冒険者の方とは再会できたのですか?」

 

草を踏むような足音を立てて、春姫が言う。

ベルは静かに頭を振る。

 

「それが、顔も姿も結局よく見たわけじゃないですから……仲間とはぐれたっぽいし、あの後すぐに姿を消したから……再会できてたらいいんですけど」

 

「訳ありな方というのは冒険者では割とよくあることだと、ボールス殿も仰っていましたから、気にすることではないのでしょうが……助けた相手が振り返るといなくなっているというのはスッキリしませんね」

 

炎鳥(ファイアーバード)と戦った時とは違い、大樹の迷宮は元の姿を見せてくれている。火の海だったあの景色が嘘のようだ。

 

「………そういえばベル、俺達と集合する前に何かあったのか?」

 

「んー……ちょっと、アイズさんに『バイト先の責任者の顔が見てみたいから』とかなんとか変な理由で連行……けほん、連れ出されて」

 

「一緒だ、一緒」

 

「それでもベル殿は、ついて行ってあげたのですね」

 

「いえ、あれは誰がどう見ても……レベル差を利用した誘拐だったかと」

 

手首を掴んであ~れ~といった具合でございました、と春姫が狐の耳をぺたりと畳んで言う。パーティは前衛に桜花とヴェルフ、中衛にベル、命、サポーターに春姫で幅広の通路を2人横に並ぶような形で進んでいる。樹皮に覆われた迷宮はまさに巨大樹の内部を探検しているかのようで、通路は複雑に枝分かれしているかと思えば、頭上が10M(メドル)以上裂けた縦長の樹道が現れる。(こぶ)のように盛り上がった木の根を階段代わりにするなど、19階層はその広大さの他にも高低差が目立つ。

 

「そもそも【剣姫】殿は、バイト先の責任者の顔を知らないというのがおかしいと思うのですが」

 

冒険者依頼(クエスト)だったなら、ギルドが仲介役になっているから顔を知らないというのはあり得ない話ではないが……」

 

「アイズさんが言うには、今年? 知り合った人? らしくて……59階層に行くときもアイテムを持っていくように他所の派閥の人を介して渡してきたらしくて……えっと、遠征の前にも依頼を受けたことがあったらしいんですよ」

 

「怪しい」

 

「怪しいな」

 

「怪しい以外のなにものでもありませんね」

 

「【剣姫】様は妖しい方の言うことを聞いてはいけないということを教えられてはいないのでしょうか?」

 

「それで、雇用主には会えたのか?」

 

ベルは瞼を閉じ、その時のことを思い返す。

怪しい屋敷だった。

いかにも、出そうだなと思った。

事実、ヴェルフ達とダンジョンに行く前にギルドの掲示板(クエストボード)を見てみれば、『屋敷に住み着いている幽霊退治』なる依頼が張り付けられていた。なんてところでバイトをしているんだとベルは当然、思った。空から轟然と鳴り響く雷鳴にアイズはベルの腕にしがみついてビビり、LV.6の腕で締め上げた。LV.3のベルの身体から悲鳴を上げさせたのだ。鼠が廊下を横切れば超速で反応し、物音を察知すれば剣を構え、再び雷鳴が轟けばまた腕にしがみつく。ベルは命の危機を感じながらも思った。なんでこんなところでバイトをしていたんだこの人は、と。

 

 

「……会えなかったどころか、お化けでも出そうな屋敷で、変な音が鳴って、アイズさんが悲鳴上げて逃げるはめになって……さすがにちょっとイラっとしました」

 

「お前の幼馴染なんだろう? ガツンと言っておくべきじゃあないのか?」

 

「そうだな、幼馴染なら言う権利はあるだろ」

 

「ただでさえアイズさん、恥ずかしい恰好に着替えて……バイトの制服とか言ってたけど、こっちは困惑してたのに……というか、魔力抜かれたし……」

 

更にはアイズは、「これ、制服、なんだ……似合う、かな?」などと言いながら、恐らくは恐怖心に震える心を、微妙な空気となっている状況をなんとか切り替えようとしていたのだろう。着替えて、その姿をベルに見せていた。1人だけ廊下に立たされて、着替えを待たされていたベルは非常に不機嫌だった。ベルだって怖いわけではなかったからだ。別にアイズの生まれたままの姿(すっぽんぽん)が見たかったからじゃない。着替えを終えたアイズの姿は、あちらこちらが露出されているものだった。ハイレグというのだろうか、股に食い込むような特殊な布地に、ブーツのような物を履いており、胸元は『◇』の形で布を切り取られていて、谷間が見えている。普段の格好も異性からすればドキッとするような恰好ではあるが、この状況である。ベルは頭が馬鹿になりそうだった。実際、寝起きで連れ出されたベルは馬鹿になりかけていた。そして、アイズに1度きりとはいえバイト先というか、何をしていたか教えるねなどと言われて特殊な装置で魔力を抜かれたのだ。そして、影からこちらを覗いていた黒い襤褸。マネキンかと思っていたそれからは白骨した骨らしきものが見え……アイズの声にならない声と共に腕を引っ張られ、身体が浮いた状態で脱出。ベルは流石に怒った。

 

「「おいベル、ちょっと詳しく」」

 

「いや、詳しくも何も……アイズさんにイラっとしたってだけで……」

 

「「何をヌかれたんだ!?」」

 

「いや、魔力……」

 

男衆2人はベルの肩に腕を乗せて、男同士の語らいだとばかりに少女2人から遠ざかりコソコソ。ベルの周りには年上女子しかいないことなど、そこそこ付き合いの長い2人からしてみれば当然わかっている。だからこそ、どんなドスケベイベントがあったのか、彼等だって年頃、興味津々なのだ。酒の肴にしたいくらいには。

 

「【剣姫】は恥ずかしい恰好で【ロキ・ファミリア】の本拠まで帰ったのか!?」

 

「着替え取りに行かされたよ?」

 

「なんて勿体ない……そこは、ローブだけだろう!? 裸のような恰好の上からローブだけを羽織り、見つからないかいつも以上に慎重になりつつ、自室に戻る……どうして着替えさせたんだ!」

 

「勿体ない!」

 

「でるぞ、お化けが!」

 

「ナンデ!?」

 

熊獣(バグベアー)大甲虫(マッドピートル)が前方、左右からやってくる。素の潜在能力(ポテンシャル)が高い。モンスターの接近を探知した(みこと)の声が3人の男衆に届けば、切り替え、戦闘行動に移る。

 

「――ぉおおおおおおっ!」

 

『ガァーーーー!』

 

桜花が振り下ろそうとする腕を大斧で受け止めると、その後ろからヴェルフが大刀で斬りかかり、ベルが左方向から迫るモンスターの頭上へと跳躍し斬り込むと、左手で猟銃(ディープスロート)を構え、右方向に向かう命を援護するように狙撃。

 

『――――ギィッ!?』

 

『ギャッ!?』

 

巨大な昆虫のモンスターに嫌悪するような短い声を漏らす春姫の元へベルが向かうと、頭上高く飛び交っている複数の狙撃鯖蛉(ガン・リベルラ)へと右手を突き出すようにして、砲声。

 

「――【アストラルボルト】!」

 

星空を閉じ込めたような炎が、春姫の瞳に移る。

ベルの右腕を砲身に、右手から吹き出すようにしてジグザグに空間を刻み、景色を染めあげる。

 

『――――――ッ!?』

 

星炎に飲まれた蜻蛉(トンボ)達は、断末魔にもならない悲鳴をあげて絶命。燃え滓が少女を汚さないように精霊の護符(サラマンダーウール)で払えば、またヴェルフ達のいる前線へと走り出す。それと入れ替わるようにして、ベルとアイコンタクトをした命が春姫の護衛を務める。

 

「ベル、蜥蜴人(リザードマン)だ、流石に2人じゃ抑えきれねえ!」

 

ヴェルフの声を聞けば、ベルは魔法の詠唱を開始。走行しながらの詠唱だ。行使する魔法は1つ目の魔法。足元で展開された魔法円がバチバチと雷を発し、完成と共に解放される。

 

「【アーネンエルベ】」

 

現れるのは人の形をした雷の集団。

妖精、土の民、獣人、女戦士、只人。種族様々な彼等彼女等はベルの周りから現れ、雷の軌跡を残しながら、モンスター達へと接敵、自爆さえ利用しながら討伐していった。その中に雷を帯びたベルもまたいる。モンスターへと斬りかかる際に【アストラルボルト】と呟いては斬撃に星炎を乗せて、見る者を釘付けにするような軌跡を描いた。やがて、轟雷が響くと、周囲は静かになった。戦闘終了である。

 

 

「で、どうなったんだ?」

 

「何が?」

 

一息ついて、ヴェルフがベルに歩み寄ってくる。パーティの後方では、散らばっている怪物達の死骸から、魔石や遺品(ドロップアイテム)を春姫が回収しては背負っていたバックパックへと詰めている。移動するにはまだ時間はかかると踏んだのだろう。

 

「【剣姫】の生着替えがあったんだろう?」

 

「桜花さんまで……いや、ありましたけど、あっちむいててって言われたから、見てないですよ」

 

背中越しにアイズの着替えの音は聞こえたけれど、それくらいだ。後ろではお日様の下、幼馴染の女の子が生まれたままの姿になって下着を履いていつもの戦闘衣装に着替えているくらいなのだ。

 

「お前、相手は【剣姫】だぞ!? 覗かないでどうする!?」

 

「いやでも……」

 

「覗きは男の浪漫なんだ、わからないのか?」

 

「そう言われても……」

 

彼等は忘れているのだろうか、僕が女所帯で暮らしているということを…とベルは思った。一々、幼馴染の裸でドキドキするような硝子の心ではないのだ。

 

「じゃあ、本当に何もなかったのか? お前、【剣姫】と【戦場の聖女(デア・セイント)】と幼馴染なんだろ?」

 

しゃがみ込んで、土をザクザクと弄りながら話す。そもそもこの日、ベル達が中層へとやってきていたのは、ナァーザから……というよりも【ミアハ・ファミリア】から採取関連の冒険者依頼(クエスト)があったからだ。樹皮や苔以外の草花を採取しつつ、年上の男2人は弟分と言ってもいいようなベルを逃がすかと話を続けていた。

 

「あー………」

 

面倒だなあと呻いたベルは、天井を仰ぎ、やがて諦めたように口を開いた。

 

「なんでもする、だから、許して? ごめんなさい……って言われたから」

 

「「言われたから?」」

 

「春姫さんやヴェルフ達と集合するまで3時間は余裕があったし、2時間くらい、アイズさんのお胸を揉んでやりました」

 

「「握手してくれ、ベル……いや、ベルサン!」」

 

「だから、ナンデ!?」

 

アイズ・ヴァレンシュタインのたわわな胸部は、年齢からして今後も成長するだろう。そう、美巨乳に。そしてその胸部は、以前、ベルが馬鹿みたいな額で購入した部位だ。つまりベルが何しようが所持品を弄るようなものなのだ。

 

<――アイズさんのお胸は、僕のなんです>

 

<――そう、なの?>

 

<――この間、アイズさんにお金、払いました、そういうことです>

 

<――でも、あれは、えと、その……デスペr―――>

 

<――リヴェリアさんも好きにしろって言ってました>

 

<――う、う? えと、えと……痛いのは、いや、だよ?>

 

優しく、やさしーく、揉みしだかれる2時間。

大人しく、後ろから、されるがままに、抵抗しなかった幼馴染のお姉さんは、弱り切ったモンスターのようにビクンビクン。ベルはその光景を思い出して、拳を握った。勝利だ、ついに、勝利したのだ。アイズ・ヴァレンシュタインに。

 

「僕、やっと、どうしても苦手意識を拭えなかったアイズさんに勝てたんです!」

 

その顔はあまりにも誇らしげで、ヴェルフと桜花は、「すげぇ、これがゼウス……!」と心の中で声を1つにした。そして、有無を言わせず、ベルと握手。

 

「これが【剣姫】の胸を揉んだ手か……」

 

「何かご利益があるかもしれんな」

 

「どうだったんだ、その、幼馴染の胸は」

 

「…………悔しいけど、育ってた。柔らかかった」

 

「くそ、なんでお前ばっか……!」

 

「ヘファイストス様に揉ませてもらったことないの、ヴェルフ?」

 

「うるせぇ、お前じゃねえんだからあるわけないだろ」

 

「何だ、ベルの方が進んでいるわけか」

 

「う、うるせぇ、お前はさっさと同じ派閥のやつに手を出してやれよ」

 

「……誰のことだ?」

 

「マジかお前」

 

「お三方はいったい何を話しておられるのか……」

 

そこに、命と春姫が合流。

魔石、ドロップアイテムの回収を終えたらしい。春姫がベルの肩に手を乗せ、「いけません、それはいけませんベル様、なんとご無体な」と頭を振り、命がヴェルフと桜花へ目を向けながら、大きな溜息をついた。

 

「採取物は取れたのですか?」

 

「おう、バッチリだ」

 

「命さん、近くにモンスターの反応は?」

 

「ちょっとお待ちを………いませんね、帰還するなら、今の内かと」

 

「なら帰るか? 18階層で野営して一晩過ごしてからにするか、そのまま地上を目指すか……」

 

「命さんと春姫さん……女の子がいるんですし、野営の方がいいんじゃないですか? 水浴びしたいでしょうし」

 

「………それもそうか、どうだ、2人とも?」

 

「「是非」」

 

周囲に回収漏れはないか確認し、来た道を戻るように歩を進める。ベルの2歩後ろを春姫が歩き、「臭くはないでしょうか?」と気にしては己の身体をスンスンと嗅ぎ、命が「大丈夫ですよ、春姫殿」と苦笑。桜花がそんな春姫を見て、ベルに声をかける。

 

「春姫とはうまくやれているのか?」

 

「まだ教えてもらいながら……みたいですけど、色々してくれますよ。アリーゼさん達も新しい妹だーって可愛がってますし。本拠内のことって、えと、掃除とか……前までは僕がしてたから、任せきりじゃないけど負担減らせられるって助かってるみたいです」

 

「………そうか」

 

昔馴染みだからか、少しほっとした表情を浮かべる桜花。きっと命も似たような表情をしているだろう。

 

「は、春姫としては……その、ベル様に許嫁の女性がいるというのは衝撃でしたが、許されるのであれば、お情けの一滴を頂ければと……」

 

はらり、と頭上から金に一部青がかかった色の羽が舞い落ちてくる。それを摘まみ上げて、ベルは頭上を仰いだが、なんてことはない。モンスターの影などそこにはなかった。

 

「え、僕……許嫁がいるんですか!?」

 

シン、と静まり返るパーティ。

その静まりを壊すように、苔を、草花を踏みしめるような複数の足音が進行方向から近づいてくる。僅かに警戒し、いつでも武器を出せるように手をかけて構える。命は非戦闘員の春姫を背に守るようにしている。

 

「5人組の冒険者パーティ?」

 

現れたのは集団だ。

中でも目を引くのは、奇妙な赤い槍を構えた眼装(ゴーグル)を装着したヒューマンの男。別段珍しくない同業者達とすれ違うが、やはり緊張してしまう。ピリピリとしたような空気の後、ある程度距離が空くと、春姫、命が溜めていた息を吐いた。

 

「―――――()()()()()()()()()

 

振り返りながら、ベルが呟いたのを兄貴分たちは聞き逃さなかった。意外と顔の広いベルが、()()()()のだ。目を見開き、警戒度を最大に、集団の姿が見えなくなるまで武器の柄を握った手は離さない。

 

「新参か?」

 

「腕の立つ冒険者の派閥が都市外からやってきた……というのは否定しないが、それでもいきなりここまで来るとは思えないぞ、自殺行為だ」

 

「……確かにな」

 

「ねえ、ヴェルフ」

 

「……なんだ、ベル、何か分かったのか?」

 

緊張が増したそんな中で、ベルがまた口を開いた。こんなんでも【アストレア・ファミリア】の一員、ひょっとすれば『ヤバイ奴リスト』とかに載ってて思い出したのかもしれねえ……なんてヴェルフは思った。それくらいには、ベルの声音は真剣だった。

 

「あの眼装(ゴーグル)、かっこよくない!? 僕、付けた方がいいのかなって、だって高い所とかもいけちゃうし!」

 

「くそぁ、俺達の真面目を返しやがれ! 何をドライアイの心配してんだ!」

 

 

 

×   ×   ×

大樹の迷宮

 

 

『アレは……』

 

少女は驚きと共に、また彼の姿をその瞳に映せたことに歓喜で胸を跳ねさせた。雷の兵隊、噴き出す星の炎、すばしっこい脚。目を見開いて彼等の戦闘に釘付けになっていた少女は、外套(フーデッドローブ)で全身を覆って、眼下で暴れまわる幼顔の少年冒険者を見ては、頬を綻ばせ、桜色に染めた。

 

『彼の実力ヲ考エレバ、Lv.4……リドとドチラが強いデショウカ? シカシ、素晴らしい連携……アーデがあそこに加ワレバ……イエ、無理、ナノデショウネ』

 

仲間と彼が戦うことがないことを願うばかりであるが、そればかりは運だろう。自分達の存在を見てくれるもの好きな人間など、それこそ有り得ない。俯き、落ち込み、少年たちが踵を返した時、奥から別の冒険者集団の姿を確認し、それが自分達を狙っている者共であるとわかった途端、彼女は本能に従うように木の枝から飛び立ち、姿を消した。

 

 

×   ×   ×

大樹の迷宮

 

ベル達が立ち去っていく。

それを背後に感じていた冒険者集団は、戦闘を歩くディックスが立ち止まったことで歩みを止めた。

 

「どうした?」

 

坊主(スキンヘッド)の男が、赤い槍を持つディックスへと声をかける。仲間達はモンスターでも見つけたのかと周囲を警戒するが、気配はない。ここに来るまでの道中、雷でも落ちたような音が聞こえたし、それに怯えて姿でも消したのだろうと結論付ける。

 

「いや……なんでもねえ」

 

そう呟いて、ディックスは再び歩みを再開する。獲物の巣が中層にあるはずだ、というのはディックスの見解で、前回『喋るモンスター』達を取り逃したのも中層、ということで彼等は『喋るモンスター』の巣を探すべく、大樹の迷宮へと訪れていた。そこで、探索をしていただろうベル達とすれ違ったのだ。

 

<――あの眼装(ゴーグル)、かっこよくない!?>

 

聞こえてきたベルの声に、ディックスの口元が思わず笑みを浮かばせた。わかってんじゃねえか…というやつだ。妙に歩む足だって跳ねてしまう。仲間達の視線が痛いが、仕方ない。

 

「さっきの【アストレア・ファミリア】の【探索者(ボイジャー)】だよな……もうこんなところまで来てんのか」

 

「正義の女共と一緒ならともかく……あいつ、冒険者になったの最近って話じゃなかったか?」

 

単純に感心しつつも、おかしくね?と違和感に首を傾げる仲間達。あの正義の眷族の中でも最年少のベルが表舞台に上がったのは『怪物祭』からだったはずだ。それくらいは彼等だって知っていた。

 

「テメェら、行くぞ」

 

「お、おう」

 

「待ってくれよディックス!」

 

「なんでちょっと笑ってんだ?」

 

「良いことでもあったのか?」

 

「うるせぇ、行くぞ」

 

集団は、どこかへと姿を消していった。




春姫の【アストレア・ファミリア】内での役割。
・ベルの身の回りの世話(ベルが連れてきたようなものなので)。
 ※ベルは自分でやろうとするので基本やることがない。
・家事炊事(任せきりというわけじゃない)。
・各種道具類の備蓄のチェック(期限切れor間近のポーション等ないかの確認)。


ベル君、アルフィアが亡くなる前にオラリオをあちこち連れまわしていたので、顔が広いです。他派閥の冒険者やら神々に気に入られていたり顔、名前を知られているのは幼少期の接触があったためです。戦姫してた頃のアイズさんと比べられてたんでしょうね。
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