火花が散っている。
甲高い音がリズムよく鳴り響いている。
硬い素材が赤く変色し、それを鍛冶師が打ち付けていた。頭部を覆うのはバンダナで、青年は1人、鎚を振り上げては下ろしてを繰り返していた。
「や、やってるかーい?」
「…………」
そこへ主神とは違う別の声が飛んできたが集中している彼の手は止まることを知らない。いや、気づかれてすらいないだろう。こう集中してるときって声かけづらいんだよなーでも、黙って立ってたらイラつかれるかもだしー困ったなーなんて呟くのは声の主。
「おいパイ食わねえか」
「食いませんよ…どうしたっていうんですヘスティア様?」
「即答で答えてくれてありがとうヴェルフ君。僕は嬉しくて涙が……うっ」
「や、やめてくださいヘスティア様。女の涙は厄災の呼び声だ。いやほんと」
「ん? ヘファイストスと何かあったのかい?」
「いえ、何もありませんでしたよ?」
「ああ……何もなかったからなのかあ」
「だから違いますって! どっかの猫被ってる極東美人が末恐ろしいってだけです! 見てくれはいいのに口は汚ねぇ……大和撫子ってのはどいつもこいつもああなのか!? コホン、そんなことよりどうしたんですヘスティア様がわざわざ俺の工房に足を運ばれるなんて。ヘファイストス様に何か言伝でも預かっているとか?」
「いや……あー……うーん……まあ、差し入れを渡してきて欲しいとは言われてるけど。ほら、サンドイッチ」
「おお」
作業の手をやめたヴェルフはヘスティアから受け取ったバスケットを開けサンドイッチを齧る。女神の優しさが染みる一品であった。うめうめとサンドイッチを食べるヴェルフを他所にヘスティアは工房をぐるりと見て回る。どこか曰く付きと感じさせる騎士を思わせる全身鎧に、差し込む光に照らされて黄金色に輝く剣、神からしてみれば大したことはないが長い年月を経たのか錆びて古びた大剣といった完成されているものだとか、まだ手をつけていないものだとかが並んでいる。
「あれは全部、ベル君のなのかい?」
「? ええ、まあ、そうですよ。あいつ、周りの姉貴分のせいなのか時々口が悪かったりたまに殴ってやろうかって思ってしまうこともありますけど、根は良い奴ですし、もう長い付き合いですし……俺としても珍しい素材を触れるのはいい経験ですからね。納期を迫ってくるわけでもないですし、俺が拘らせてほしいと言えばそうさせてくれるからとことんやれる。でもまあ、鎧はちょっと素材が素材なもんでヘファイストス様に手を借りたりです。そこの錆びてるやつは、まだ手を出せてませんね。何にするべきか……決めあぐねています」
「ベル君から
「……『任せた』とだけですね」
「へ、へぇー」
なんだその「晩御飯何がいい?」と言われて「なんでも」と答えるレベルのやつは。ヘスティアは口をひくつかせた。意外とあの子は雑なんだなあなんて思いつつも、そろそろ雑談を切って本題に入るべきだと深呼吸。再び口を開く。
「あの錆びた大剣は何にするんだい?」
「あれは……まあ、かつては第一級冒険者が使っていた業物ですからね。素材としては文句はありません。あいつの手に馴染む
「何にしようか決めかねてるってところかい?」
「ええ。武器に関しては十分すぎるほど持ってますからね。
ヴェルフは大剣を見つめながら、腕を組んでは、頭をガシガシを掻きむしる。それは職人として、友人として新たな持ち主の手にどう収まるのがいいのか真剣に悩んでいるものがあった。
「じゃ、じゃあ、ナイフなんてどうだい?」
「ナイフですか……」
候補になかったわけじゃない。とヴェルフは目を細める。
「素材は『大剣』、椿の手を借りて一度砕いて加工しやすくして……炉にいれて本格的に打ち直す……『死の砂漠』から回収したものだから、新しい武器に生まれ変わらせてやれれば、縁起物としても申し分ないはずだ……」
ブツブツと呟き考え出したヴェルフを見て、ヘスティアは口元を綻ばせ、邪魔にならないようにとそっと立ち上がり工房を後にする。太陽の位置は真上よりも少しだけ傾いていて、熱の籠っていた工房にいたせいか、肌を撫でる風がやけに冷たく感じた。微笑みを浮かべていたヘスティアは扉が閉まると一変、表情を暗いものに変え、そこにはいない男神の名を口にした。
「―――これでいいのかい、エレボス」
× × ×
都市北西
ベルとレイは大精堂の中にいた。
その建造物は、中ほどに建つ大鐘楼を含めれば、高さ100
「―――――」
中央の身廊と左右の側廊を合わせれば、幅は60
「もう少し中に入れれば、『精遺物』を見ることもできたんですけど……何かのお祭りでもないと解放されることはないんです」
「『精遺物』、ですか?」
「棺の中に『精霊』の遺骸が納められているそうなんです。美しいままの精霊の女の子が眠ってるとか、無数の結晶に砕け散ってるとか、武器化して精霊の剣と化しているとか……いろいろ言われています。硬く閉じられてるから、開けることはできないんですけど……何千年も前の
ステンドグラスに照らされながら、棺のある方をじっと見つめる。ベルは別に、英雄譚をレイが知らないからといってどうこうの言うつもりはない。でも、まるでオラリオのことを知らない彼女に見せてあげたいと思っただけだ。長椅子に腰を下ろして、その英雄譚の話をする。悲劇寄りの物語で、だけどレイはそれを噛み締めるようにじっとして、最後まで聞いていた。
「『水と光のフルランド』……」
「童話なんかだと、騎士と精霊が力を合わせて、地から這い出る魔物と戦って最後に結ばれるんですけど……今話したのが、真実、らしいです」
静かに語っていても、ベルの声は精堂内によく響く。
ぎゅっと胸を締め付けてきて、レイは精霊に自分を重ねて想像してみて悲し気に目を細める。ここ最近、いろんなところを案内してもらっている。これが逢瀬だったら嬉しいものだが、そう思っているのはレイだけなのだろうことは彼女自身わかっている。そもそも自分は人間ではなく、怪物で、姿を偽る……嘘で身を包んでいる存在だ。正体が露見したとき、彼の態度がどう豹変してしまうのか。刃を向けられてしまうのか、それがレイには恐ろしくてたまらなかった。精霊の女の子は愛に狂ったそうだが、最後には命を捧げて騎士を救ったそうが、自分は彼に何か返すことができるのだろうかと悶々として、重い空気が漂う。つい先日にも、とある冒険者の女性に「貴方、本当に人間?」なんて言われたばかりだ。フェルズの言う通り勘の良い人間はいるようで、でも、レイはまたベルに会いに来てしまっていた。レイからしてみても、ベルは優しかった。顔も広い。レイが妖精の姿をしているだけとはいえ、安易に触れるようなことはしないから正体がバレることもない。話している彼の横顔をついつい見てしまって、視線に気づかれて見つめられると顔が熱くなるような気さえした。いけないことだというのに、このずるずるとした時間がずっと続けばいいのにと思ってしまう。
「もう、日が暮れますね」
「え?」
ステンドグラスから差し込む光が変わっていて、それが夕日の光を意味するものになっていた。もう帰らなくてはいけない時間が近くなっていた。暗くなっていたレイを気遣ってか笑みを浮かべるベルに釣られてレイを微笑を浮かべ、立ち上がった。ストリートを歩いて、適当なところで別れの挨拶をして、解散する。ベルの姿が見えなくなるまで見つめて、それからレイも迷宮へと向って行く。ほんのり寂しいと感じる自分がいて、恩人であるベルにどう恩を返せばいいだろうかと自問自答を繰り返す。答えなど出ず、溜息が出てしまう。
「フェルズやローリエに聞けば、答えはでるでしょうカ……」
迷宮の中、誰もいないことを確かめて
× × ×
別日、黄昏の館
「ベル………」
「ア、アイズさん……」
やっぱりキツく言いすぎてしまったらしい、とベルは動揺と共に頬を引くつかせた。場所は食堂で、アイズは食事が喉を通らないのか落ち込み俯いていた。ベルはこの日、いつもの訓練をしている場所に現れないアイズを迎えに来ていた。【ロキ・ファミリア】の団員に連れられて来てみれば、お通夜もいいところなアイズがそこにいたのだ。この間、ついカッとなって言いすぎてしまったのだと反省せざるを得ないというか、ぶっちゃけていえば、言いすぎてしまったと気にしていた。アストレアやアリーゼ達に話を聞いてもらいにいくくらいには。
<会いに行ってごらんなさいな、ベル>
<でも……>
<本気で嫌ってるわけじゃないんでしょ? ならちゃんと会いに行って、仲直りしたほうがいいわ>
<………はい>
書類仕事をしていたアリーゼは、片手間にベルに助言をくれた。だから明日の朝、訓練の日だし、その時に謝ろう。そう思っていた。でもそこにアイズは来なかったのだ。だからこうして訪れてみたのだが……どうやら、手遅れだったらしい。
「ほらアイズ、しっかりなさい!」
「アイズさぁん、ベルが来てますよぉ」
「アイズ、ほら、仲直りするチャンスだよ!」
とティオネ、レフィーヤ、ティオナが言っている。
もう幼子ではない2人のことだ、保護者も余程のことでなければ自分で解決することを推奨としているだろう。リヴェリアは朝食を口にしながらチラチラと2人の様子を見ているが、間に入ろうとはしない。怒鳴ったりもしたが、お前ならできるとリヴェリアママは信じていた。
「ベル……えと、あ、あのね……」
ごくり、と喉が鳴る。
それはアイズのものでもあり、ベルのものでもあり、食堂にいる全ての者達のものだった。公開処刑もいいところだ。せめて2人きりになったほうがいいんじゃとも思ったが、気になって席を立つこともできない。あのベートでさえ知らん顔しているのに聞き耳を立てているのだ。誰も食堂から出られなかった。
「その、この間は、ごめん、なさい」
「え、や、えと、その、僕のほうこs――――」
「だから抱いて」
「え?」
「は?」
「あ?」
「ん?」
「ふぁっ?」
股の間に両腕を挟んでモジモジとしていたアイズ。
戦闘衣装に納められた胸が強調され形を歪めているが、そんなこと気にもしないアイズは俯いて、それで意を決したようにベルを見上げて、言った。ベルに嫌われるのがよほど嫌だったのだろう。その瞳は潤んでいて、ベルは胸をぎゅっと握られるような感じさえした。周囲の視線が痛いほどで、でもベルも言いすぎたことを謝ろうと言葉を紡いだが、言い終える前にアイズの口から放たれた言葉が遮った。その言葉に食堂の時は止まり、誰もが素っ頓狂な声を漏らす。
(ぼくは、いま、なにを、いわれたんだろう……?)
ベルは周囲に視線を巡らせる。
周囲もまた、アイズが何を言ったのかわかってない風だった。アイズ本人はいたって真剣で、ベルが返事してくれないことがショックだったのか瞳を潤ませて勢いよく立ち上がった。
「き、君は、私のこと、嫌い、になっちゃった……?」
「へ、いや、だから、あの……」
「私、君を傷付けたりしないから」
「お、落ち着いてくださいアイズさん!? 話を、話を聞いてください!?」
「君を嫌な気分にさせたぶん、君が満足するまで、やり返していいから……っ」
「あの、あの違うんですレフィーヤさん! 魔力、魔力を押さえて!?」
「離してくださいティオナさん、そこの兎殺せない!」
「ダメだってレフィーヤぁ!?」
「ぐちょぐちょのドロドロに……?」
「!? !? !?」
両腕を広げてにじりよるアイズから一歩、また一歩と後退するベル。
魔力を溢れさせるレフィーヤ。
羽交い締めにして取り押さえるティオナ。
どうしてこうなるのよと痛む頭を抱えるティオネ。
固まったまま動かないリヴェリア。
どこか遠い所を見ているように微笑むフィンとガレス。
「わぁ、お空、きれぇ~」と現実逃避をするロキ。
血反吐を吐く3秒前なベート。
とにかく仲直りしようと、ティオネに言われた通りに実践しようとして何か間違えているがいっぱいいっぱいなせいで何が間違っているのか気付いていないアイズ。
(抱いて? 抱いてって……抱きしめる方の、ハグの意味の抱く? それとも、えっちな方の抱く? どっち……?)
ベルは正面からじりじり迫ってくるアイズを見た。
アイズの瞳は潤んでいて、思わず可愛いと思ってしまうほどだった。
(いやだから、どっち!?)
迫ってくる金髪の美少女に、ベルは困惑し、そしてぐるんっと背を向けて逃走することにした。
「ご、ごめんなさぁあああああああああああああいっ!!」
「あ、ま、待って、待ってベルっ! 私、君がいないと……!」
顔を真っ赤にして逃走する子兎を負う少女。
食堂はまるで嵐が去ったかのような様子で、そして、爆発するように、いや、爆発した。
「「「アイズさんからお誘いだとぉおおおおおおおおおおお!?」」」
「いやぁああああああああああああ!? アイズさんがふしだらな女にぃいいいいいいいいい!?」
「リヴェリア様、リヴェリア様、しっかり!?」
「アリシア、リヴェリア様が息していません!?」
「どうしてああなるまで放っておいたんじゃ……」
「お互い、守るものが多くなったね……」
「ちょっとティオネ、アイズに何を吹き込んだのさ!?」
「わ、私のせいにしないでくれる!? アイズはどう見てもあの子に『ほ』の字なのよ!? アイズから抱いてとか言われたら断る男がいるわけないじゃない! いたら病気よ!?」
「ていうか今の見てた!? アイズがむしろ食べに行ってたけど!? ダメだよ、みんなのアイズ・ヴァレンシュタイン像が崩れちゃうよ!?」
「まさかこんなみんなが見ている前で言うなんて思わないじゃない! つまり、私は悪くないわ! ていうかアイズは意味をわかってなかったってこと!? リヴェリア、あんた保護者でしょ!? あの子に子作りの仕方とか教えてなかったわけ!? まさかとは思うけど、聖樹の根元を流れる清流から赤ん坊はやってくるとかアホなこと教えたんじゃないでしょうね!?」
「リ、リヴェリア様にそんな、は、はしたないことを教えさせるつもりですか!?」
「長命のエルフって子供できにくいんでしょ!? 数こなさなきゃいけないんでしょう!? 知識が他種族より豊富でも疑問に思わないわよ! 妖精の娼婦は人気だって聞いたことだってあるんだから! ねぇ、男ども?」
「「「ひぅ………!?」」」
「や、やめなさい! そんなはしたない……!! 数撃てば当たるみたいなことを言わないで!? こ、子作りはし、神聖な儀式なのですよ!? それをそんな……お、教えるだなんて……!?」
「そういうけどアリシア、あんただって中々男好きのする身体してるじゃない。本当にエルフなの? その胸でエルフは無理でしょ」
「アリシア、もう黙ってなさい、あんたには分が悪いわ」
「くぅ……! 乳房の大きさは関係ありません!」
「いいえあるわ、男はね女の胸に帰るのよ。それが必然なのよ。『嘆きの平原』や『平たい胸族』よりも大きい方がいいのよ。アリシア、あんただって身に覚えがないとは言わせないわよ?」
「なっ!?」
「ねぇなんで今、私のこと見たのか聞いていい?」
阿鼻叫喚な【ロキ・ファミリア】の食堂は、それはもう
× × ×
バベル下
太陽が傾いて、茜色の空が徐々に近づいてくる。
ぜぇぜぇと息を切らすのはベルで、そんなベルを後ろから抱きしめているのはアイズだ。
「どうして……逃げるの?」
アイズはショックだった。
ぎゅっと抱きしめ合えば、仲良くなれる。そうティオネは言っていたはずだ。ぐちょぐちょのドロドロに溶けあうくらいに抱きしめ合えば、きっと仲直りもできるはずだと。だから実践しようと思った。みんなの前で……と今更になって恥ずかしいことをしたなとも思うけれど、今はとにかくベルに嫌われたままなのは嫌だったアイズからしてみれば仕方のないことだった。だが、逃げられた。非常にショックである。ベルが逃げないようにぎゅっと、それこそぬいぐるみにするように後ろから抱きしめるとベルは硬直する。
「あ、アイズさんが追いかけてくるから……っ!」
ベルは訳が分からなかった。
そりゃアイズの乳房はベルの所有物だ。好きにしていい部位だ。それはアイズが金を求めてきた結果なのだが、それでも、まさかあんなみんなが見ている前で「抱いて」なんて言われるとはベルだって思ってはいなかった。アイズは綺麗だ。美人さんだ。容姿も美しい。逃げ癖がついてしまっているベルでもドキリとしないでもない。訓練中の足技を出してくる時、たまにスパッツが食い込んでいるがそれは指摘するべきなのか迷うこともある。出会い方が違ってさえいれば惚れていた可能性すらある。それに、アイズのこれからも成長するだろう柔い果実はとても柔らかかった。弾力も申し分ない。終わった時にはトロンとしていた目を今でもしっかり思い出せる。初めて勝利を感じられた瞬間でもあった。というかアイズの「抱いて」発言。意味をわかっているのだろうかと疑問に思えて仕方がない。これが輝夜あたりだったならば意味もわかってくる。だが、相手はアイズなのだ。
「ベル、顔真っ赤……大丈夫?」
「だ、だいじょばないです!」
顔が真っ赤になるのも仕方がない。
全力で走っていたのはベルだし、アイズに追いつかれまいと必死だったのだ。なのに今、こうして捕まって、ぬいぐるみのように抱きしめられている。背中にはアイズの柔らかな乳房が形を歪めて押しあたっているせいで弾力と温もりが確かに感じられる。顔を赤くするなと言う方が無理がある。ベルだってお年頃なのだ。異性の身体を気にしないそんな仙人ではないのだ。きっとこの日、都市に住まう人々の話題は『兎を追いかける金髪の少女』で持ちきりだろう。それくらいにはベルは視線を浴びた気がした。
「は、離してくださいっ!?」
「いや」
「ナンデ!?」
「もう…君を離したくない」
「だからナンデ!?」
藻掻くも離れることのないアイズ。
Lv.6の力はそれほどまでに強く、ベルは男でありながら力負けしていることに少なからずショックを受けた。いやまあ姉達に小脇に抱えられたり、抱きかかえられたりした時、はたまた抱き枕にされている時だって抜け出せなかったし、力の差というかレベルの差というか……女の子って強いなあと思わないでもないけれど、なんだかショックだった。なにより、藻掻けば藻掻くほど、女の子の柔らかさが押しあたってしまって余計に意識してしまう。
「すまない、そこのTPOもお構いなしにイチャつく
そんなすったもんだしている所へ、女性の声。
逆光からかベルには良く見えなかったが、尖った耳と細いシルエットから相手は
「こ、これがイチャついているように見えますか!?」
「ああ、とてもな」
「イチャついてません!」
「そう、です。仲良くしているんです」
「そうか、いいと思うぞ。そういうの」
「待って、おねがい、待って!?」
僅かに浮いているベルの足がバタバタと暴れるが、アイズはお構いなし。もふもふふわふわの白髪を後でじっくり撫でさせてもらおうと思う所存だし、膝枕してあげればきっと大人しくなるはずだ。ティオネの言っていた通り、こうして抱いて、ぐちょぐちょのドロドロになっていけば仲直りも目前に違いない。そうアイズは考えて身体を密着させるのを止めない。次第にアイズの感触にベルはがくり、と諦め頭を垂れた。
「もう……いいです、早くしてもらえますか?」
トホホ、と諦観を表情を浮かべるベル。
妖精の少女は咳払いをしてから、アイズを見て、頷いたのを確認すると羊皮紙を束ねたバインダーを片手に口を開く。
「では……すまない、少々内容に戸惑うかもしれないが、もしも、という前提で頼む」
言って深呼吸してからもう一度彼女は口を開く。
「