数日後
今日も今日とて、御坂美琴に絡まれていると、白い光線が空へと発射される。方向は小萌先生の家の方面である。
「
「なによ?」
「急用ができた」
スリングリングを開きながら御坂美琴へ言い、リングをくぐる。
「あたしも行くわよ」
「まだお前は関わらない方がいい」
「なんでよ!!」
「簡単だ、この先にまだお前には理解できないものがあるからだ」
「はぁ!?あんたの魔術ってやつを理解し始めてるじゃない!!」
「それでもまだ早い、まだお前は科学のみの世界で生きているんだ」
「ちょっ!!待っ」
リングを閉じて小萌の家を見ると、屋根に大穴が空いている。どうやら、見事禁書目録にかかっていた魔術を上条が解いたようだ。だが。
「問題発生か・・・」
浮遊マントの力で飛び小萌宅へ入ると、そこには、禁書目録が魔術を行使していた。
「ストレンジ!!」
「ああ、来てやったぞ」
どうやら、禁書目録へかけられていた魔術、首輪には破壊されたと同時に
ラガドールのルビーリングを片手に展開し、竜の殺息を防ぐ。
「お前、それ片手で受け止められるのかよ!?」
「あぁ、まぁ私だからな」
禁書目録の前に自動書記の術式が展開され、術式の間から何かがこちらを見ている。位相の中の怪物か、それとも多元宇宙の脅威か?何者か知らないが、この世界に入らせるつもりはない。
「当麻、あの術式を破壊しろ。自動書記の効果によって妙なやつがこの世界に入り込んできそうだ」
「破壊しろって、どうやって近づくんだよ!!」
「私に任せろ」
イコンの形像を発動し、分身にルビーリングを抑えさせると、私はアガモットの目を開き、パワー・ストーンの魔術、オーブの魔法円を腕に展開する。そして、自身を分身と重ねると、分身は消滅。ルビーリングはオレンジから紫色へと変化し、竜王の殺息を侵食し始める。
「ついてくるんだ」
「了解!」
竜王の殺息を押し返し、徐々に禁書目録のもとへ近づいていく。竜王の殺息から、純白の羽が吹き出し、近づいていく我々に降り掛かってくるが、ルビーリングに収まりきらなかったパワー・ストーンの力を操り、それを破壊していく。そしてついに、禁書目録のもとへ到達。
私は、パワー・ストーンを持って竜王の殺息を相殺する。
「今だ当麻!!」
「うぉぉおおおお!!!」
上条は右手を突き出しながら怯んでいる禁書目録へ駆け出す。幻想殺しが術式を破壊し、怪物の気配が消える。気絶している禁書目録を受け止め、その場に座り込む上条。私も安心して帰ろうと、リングを開く。しかし、ひらひらと何かが穴が空いた天井から落ちてくるのが見え、振り返ると、竜王の殺息の余波である羽が上条と禁書目録のもとへ落ちてきていた。
「まずい」
エルドリッチウィップを展開し、羽を弾こうと振るうが、羽はスルリとウィップを避けてしまう。上条がそれを見て幻想殺しで羽を消そうと右手を羽へと近づけていくが、またも羽はスルリとかわし、上条の頭に直撃。それがまるで運命だったかのように。
「当麻!!」
私は倒れた上条に駆け寄る。アガモットの目を開き、タイム・ストーンの力でなんとかできないかと考えたが、人体への行使は行ったことなどなく、さらに、上条当麻という存在が消えてしまう可能性、そして、上条当麻が自然の法則を犯せば、一体どんな規模の脅威が彼の目に現れるのか想像がつかなかったため、行使を断念した。
「なんでやめたのですか!?」
神裂が声を上げる。
「これを使えば、当麻自身が自然の法則を犯したことになる。そうなれば、一体どんな規模の脅威が当麻に降りかかるかわからないからだ。それに、上条当麻という存在が消えてしまうかもしれない。使いたくても使えないんだ。良い医者を知ってる。そこへ連れて行く。お前たちはもう帰ったほうがいい。行くぞ、禁書目録」
リングを開き、二人をその場に残し、目を覚ました禁書目録を連れ、
翌日
上条が目を覚ましたという連絡があり、私は冥土返しの病院へと向かった。
「目を覚ましたようだな」
「えっと・・・」
「やはりか、すまなかった。あのとき、私がうまく対処できていればお前がこんなことにはならなかった」
「いやいや、謝る必要がないって、お前何にも悪くねぇって!」
「だが・・・」
「必要な犠牲を払ったんだろ?」
「そういうことになる」
「なら、よかったんじゃね?これで。誰かを助けられたんだろ?」
「ああ」
「なら、それでいいじゃん」
「そうか、お前がそう思うなら。私はお・・・」
「お?」
「いや、私は、ドクター・ストレンジだ。よろしく頼む」
「ああ、何て呼べばいい?」
「ドクターでも、ストレンジでも」
「なら、ストレンジで」
「そうか、では、私はもう行く」
「ああ、お見舞いありがとうな」
私は病室を出た。私の心で覚悟が決まった。転生して以来、私は、この能力が万能であり、この世界で無敵の力を誇ると思ってきた。だが、これでわかった。たとえどんな力であっても、運命というのは、それを突破してきてしまうということが。
これ以上、あのような犠牲は産まない。誰かを救うために誰かが不幸にならなければならない、そんな運命を、私は覆す。彼のような犠牲は、もうこれ以上出さない。
私はドクター・ストレンジ。この名にかけて、私はすべてを救う。