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突然だが、俺は異能ものが大好きだ。
今、世の中には様々な異能登場作品がある。
超能力に魔法、こういった能力が登場する作品を上げだしたら切りがないだろう。
自分でもたまに、こんな能力があったらおもしろそうだなあと妄想を繰り広げることもある。
だがしかし、俺は決して二次元と三次元を区別できないやばめの中二病ではない。
だから、現実での異能なんてものはほとんど信じてはいないし、ましてや自分がそんな能力に目覚めるだなんてこれっぽっちも考えてはいなかった。
しかし、現実というものは存外奇天烈らしい.....
キンコンカンコーン
本日最後の授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
「はい、じゃあホームルームを終わります。」
担任がそう言い終わると、あっという間に教室は騒がしくなった。
みんなが家や部活に向かう中、俺は友達に別れの挨拶を済ませつつ颯爽と教室を出てある一室へと向かう。
行先はいつもの場所。俺の学校生活の、楽しみの一つといっても過言ではない。
俺は目的の教室にたどり着くと「ガラッ」と音を立て扉を開けた。
「こんにちはーーー!ってあれ、今日はまだ先輩しか来てないんですか?」
そう言いながら教室に入った俺の目の前には、一人の女子生徒が座っていた。
「うん。そうなんだよ。他のメンバーは用事があるみたいでね。今日は私と八重樫君の二人だけだよ。」
そう俺に微笑みかけてくれたこの人は、生徒会所属の二年生。
月影葵先輩。
俺の憧れにして絶賛恋してるお方だ。
どこか不思議な雰囲気を纏ったショートカットが素敵な月影先輩は、今日も輝いて見える。
「それにしても、八重樫君はいつも生徒会室に来るのが早いね。ちゃんと最後までホームルーム出てるの?」
「当たり前じゃないですか。生徒会の一員として、爆速で教室抜け出してるだけですよ。」
「あははっ。それならいいんだけどね。おぬしは熱心な後輩よの~。」
「ふっふふー。なんせ先輩の後輩ですからね。」
そんな軽口を言い合いながら、慣れた動作で席に座る。ここで、「俺が早く教室に来る一番の理由は、先輩に合うためですよ☆」なんてキザなセリフを言えないのも、通常運転だ。
それにしても、今日は完全下校まで先輩と二人きりだなんて...
最高すぎるだろおい!今日はそれだけで最高の日といえるだろう。
そんなくだらないことを考えつつ、先輩と協力して仕事を片付けていく。
............
「なんやかんやで、もうすぐ完全下校の時間ですね。」
俺が見た時、時計の針は六時半を過ぎていた。
「ほんとだー。よし!今日やりたかった仕事はもう終わったし、八重樫君は先に帰っちゃっていいよ。」
「ええ!?いやいや、先輩が残るなら自分も最後まで残りますよ。」
「だいじょぶだいじょぶ。そんなに気を使わなくていいよ。」
「でも、...。」
「あははっ。君は本当に熱心だね。でも、ほんとに大丈夫だから。そんなに気になるなら、今度は最後まで思う存分手伝ってもらうっていうことで。ね。」
「.....わかりました。じゃあ、先輩。また月曜日会いましょう。お疲れさまでした。」
「うん。お疲れ。またね。」
こうして、俺が密かに期待していた「ドキドキ!先輩との二人っきり下校!」作戦は思わぬ形で失敗となったのだった。
そのまま教室を出ようとしたとき、先輩が急に声をかけてきた。
「八重樫君。」
「何ですか?」
「最近、不審者が出没してるの知ってる?」
「ああ!切り裂き魔とかいうやつですか。でもあれ、噂ですよね。都市伝説みたいなレベルの。実際に姿を見た人はいないらしいですし。
そう。この町では最近、不思議な事件が起きている。らしい。
というのも、俺も噂で聞いた程度の知識しかないからだ。
曰く、通りを歩いていると突然手や足といった体の一部に切り傷ができているとかいないとか。
「うん。そうなんだけどね。でも、私が聞いた話によると、どうやらただの噂でもないらしいんだよね。それに、被害者っていうのもだんだんと増えてきているみたいで。警察も動き出したとか。」
「えっ!そうなんですか!全然知りませんでした。」
「だからさ、夜中に外を出歩くことがないよう気を付けてね。あと、学校の周りも危険らしいから、間違っても夜中に近づかないでね。」
先輩のその言葉に「わかりました。」と返事をし、今度こそ教室をあとにした。
「にしても先輩、なんであんなに詳しかったんだろう。」
靴箱に向かいながら、俺は考える。今日の先輩の様子はどこか気になるところがあった。
本当なら、先輩が何と言おうとも嫌そうな様子がない限り最後まで残るつもりだったのだが....
「なんか今日の先輩、有無を言わせぬ謎の気迫があったんだよなぁ。」
俺はそう独り言ちながら、家に向かって歩き出した。
...............
「あっ!!」
後数分で家に着くというタイミングで、俺は重要なことを思い出した。
「体育館に宿題おきっぱじゃん。めんどくせ~。」
着替えの時に、移動教室の関係で数学だけ持ち歩いてたんだよな~。
平日ならまだしも、土日を挟むときの宿題は量が多い。特に今回は、厳しいことで有名な数学教師が課した課題がある。
「取りに帰るか~。」
そう決めた俺は、学校に向けて出発しようとした。
が、そこであることに気づく。
「この時間だと生徒はみんな帰ってるよな。てか、そもそも体育館閉まってるし。この状況なら、「
俺は、ちょっとわくわくし出していた。その特異性も相まって、普段使うことができない俺の隠し玉。
「いや、もはやこのタイミングで使わなければいつ使うというのだろうか!ええ!きっと、神が使えって言っているんだ!」
俺は、誰に向けたわけでもない演説によって自分を納得させ、自身の中に眠っている、ある力を行使する。
「異能 解放」
その瞬間、俺はその場から消え去った。
その時の俺は、いつにも増して興奮していた。だからだろう、月影先輩の忠告は、すっかり頭の中から抜け落ちてしまっていた。
................
「さてと。人払いも済んだし、博士から拝借した結界も正常に起動したし。準備万端ってやつかな。」
私はそう独り言ちる。
右手にあるのは、私の相棒。今日もその刃は、美しく輝いている。
「絶好調だ。」
私は自身の装備である刀を改めて点検した後、ターゲットが現れるであろう学校の中庭へと向かう。
「出てきたらどう?噂の切裂き魔さん。いや、風の異能力者、風間海。」
私がそう言い放つと、一際強い風が吹く。そして、件の人物が現れた。
「へぇ。僕のこと、もうそんなにばれてたんだ。有名になるっていうのは、慣れてなくてね。なんだかはずかしいなぁ。ふふっ。」
「安心して。これから、二度と有名になんてなれないようにしっかり指導してあげるから。」
そう。私の今日の任務は、能力に溺れたこの勘違いサイコ野郎をボコボコにして機関に回収してもらうこと。
こいつは、だんだんと凶暴性を増してきている。ここで止めておかないと、大変なことになってしまう。
「ふふふ。あはははっ!僕を指導するだって?そいつは、大層なお仕事じゃないですか。生徒会さ~ん。でも残念。僕って、最強なんだ。」
その言葉を最後に、私たちは自身の力を開放する。
「「異能 解放」」
............
「あった!俺の愛しの教科書よ~。」
体育館へと
「よし!じゃあ、サクッと戻りますか。」
そうして、また力を使おうとしたとき日常生活では決して聞かないような奇妙な音を耳にした。
「なんだこの音。えっと、中庭の方から聞こえるのかな?」
そして俺は、好奇心のままに中庭に顔を出す。
その瞬間、俺は息をのんだ。
そこには、俺がこれまで妄想してきたような「異能バトル」が繰り広げられていたのだ。
一方は、どうやら風を操り刃のようにして何本も飛ばしている。
もう一方は、到底その華奢な体からは出せないような力で刀を振るい、時には斬撃を飛ばしてるようだ。
ん?てか、あの刀使いって...
「月影先輩!?」
俺はハッとするも、思わず叫んでしまっていた。
「え!?八重樫君!?なんでここに!?てか、危ない!」
その時、俺の方に風の刃が飛んできた。
「死ねーー!」
と、同時に先輩が俺の方に飛び込んできた。
「ぐっ!」
俺を庇った先輩の右腕から、鮮血が飛び散った。
「!?先輩!」
「八重樫君!じっとしてて!廊下に逃げ込むよ。」
先輩はそういい放つと、窓を破り俺を抱えて廊下に転がり込んだ。
「せ、せんぱい。これは何がどうなって...。」
「いい、八重樫君。聞きたいことはいっぱいあると思うけど、今は見ての通り時間がないの。だから、私があいつを引き付けている間にこれをもって逃げて。」
そういうと、先輩は携帯を渡してきた。
「学校の外に出たら、その携帯を使って誰でもいいから電話をして。そしたら、必ず助けてくれるから。」
「ちょっ、ちょっと待ってください。先輩はどうするんですか。その傷で、刀を振れるんですか。」
そういうと、先輩は凛とした顔で俺に言った。
「私は大丈夫。必ず何とかして見せる。だから、迷わず逃げて。」
そこには、覚悟を決めた一人の少女がいた。
俺は、一体何をやっているんだろう。
ふと、そう思った。
憧れの先輩に、こんな顔をさせて。
このまま一人だけ逃げ出してしまっていいのか。
俺は、二次元と三次元を分けられる男だ。
仮に特別な力を授かったとしても、闘いになんか巻き込まれたくないし痛いのも嫌だ。
できることなら、死ぬまで平和でいたい。
でも、......
「生徒会様はっけ~ん。あはははっ!」
追いついてきた。それに対して先輩は、苦しそうに、けれども迷いなく刀を向ける。
「八重樫君!早く逃げて!」
それに対して、俺は....
「先輩。知ってますか?できる男っていうのは、隠し玉持ってんすよ。」
「え?」
あいつは今、男子トイレをちょうど過ぎたくらいの位置にいる。それは、まさしく俺の
「異能 解放」
次の瞬間、俺はやつの背後に現れる。
「な!?おい!あの男はどこに...」
「
「何!?」
奴が慌てて振り向くが、この距離まで来たならば俺が触れる方が速い!
「さあ、見せてやるよ。俺の異能をなあああーー!」
俺は奴に触ると同時に、異能を発動させる。
「な!?ここは、トイれ...ぐぅぇ!?」
俺は公園のトイレに移動した次の瞬間、奴を思いっきり殴り、そのまままた異能を使う。
「くぅぅっ!?一体なにが!?あいつはどこに!?ぐわっ!?」
そしてまた、俺は奴を殴りつけ他のトイレへと転移する。
それをただ繰り返す。
俺の異能。
それは、腹を下し一歩も動けないほどの激痛に苛まれたある日のこと。
心の底からトイレに行きたいと願ったときに目覚めた。
トイレ限定の瞬間移動。
さらに、トイレに転移した数秒間は認識阻害が発生する。
個室に入るところをなるべく見られたくないのは、当然のことだ。
そして、この俺の能力の特異性を用いて生み出した必殺技。
瞬間移動による相手の異能キャンセルと、認識阻害の合わせ技。
ほぼ無抵抗に相手を殴り続けるハメ技攻撃。
それが、....
「
「くそ、くそ、くそぉーーー!こんなふざけた技で、この俺...ぐぁーーー!?」
「トイレで眠れ、クソ野郎!」
そしてついに、俺の何発目かわからない拳が奴の意識を刈り取った。
「はあ...。はあ...。」
最後の転移で、俺は奴を連れて学校に戻ってきていた。
トイレから出て、廊下で呆然としてた先輩に笑顔を向ける。
「八重樫君!」
「先輩。勝ちましたーーー!」
こうして、俺の初戦闘は無事幕を閉じた。
でもやっぱり......
「決着場所がトイレなんて、カッコつかねぇーーーーー!」
俺は、渾身の雄たけびを上げたのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。少しでも楽しんでもらえたのなら幸いです。