↓なお、「十二国記の戴国メンバーの物語を、日本の平安時代でやってみたらどうなるだろう?」と思ってオリジナル小説を書きました。カクヨムで連載中です。是非お読みいただければ幸いです!!!
「錦濤宮物語 女武人ノ宮仕ヘ或ハ近衛大将ノ大詐術」
https://kakuyomu.jp/works/16816927860647624393
李斎はとても大切な夢を見ていた気がしていた。しかし、目を覚ますとそれは雲散霧消してしまい、そのために黒々とした不安に襲われる。寝覚めが悪い、それも異常なほど。
そして、先ほどから臥牀の上で思うように身を起こせない──。
「……⁈」
上手く起きられない原因に気づいてあ然とする。──自分には右腕がない。
「何故?」
承州の州師将軍として見回りに出たはずだった。そこで凶賊か妖魔にでもやられたか。しかし、その場面がどうしても思い出せない。
それにここはどこだろう? 州城には出入りしていたが、この部屋の設えがさらに上質であることは容易に分かる。州城より格の高い場所と言えば鴻基の白圭宮となるが……なぜ自分が白圭宮で寝ていたのだろうか。
女官が水差しなどを持ってきた。李斎はできるだけ彼女を驚かせないように言う。
「済まぬが教えてもらいたい」
女官は李斎を見ても特に不審そうな顔をしない。では、自分は普段からこの女官に世話になっているのだろう。そんな相手を無駄に驚かせたくはない。
「どうやら私は記憶を失っているらしい……それもまとまった年月の」
「は?」
「申し訳ないが貴女の顔も思い出せないし、それに……なぜ私の右腕がないのかも記憶に無い」
顔をこわばらせる女官を宥めるために、李斎は冗談めかして言った。
「財布くらいなら酔ったついでに落として帰ることもあるかもしれないが、右腕となるとどこかに置き忘れるものではないだろう? どうも私の記憶にいささかの混乱があるようなんだ」
李斎は笑んで見せた。それが奏功したのか、王宮の女官ともなると肝が据わっているのか、若い女官は落ち着きを取り戻し、優雅に一礼した。
「わかりました。誰か相応しい方をお呼びしてまいりましょう」
人を呼びにやっている間に、別の女官が衣類を着せてくれた。右腕のない様子に驚きもしない様子からして、李斎は自分がこの邸の女主公であるのかもしれないとも思った。
そして、ふと感じた人の気配に李斎は身構えながら戸口を振り返る。そんな自分を省みるに、やはり自分は右腕を失っても現役の武人でいるのだろうと思う。
訪れたのは、年貌四十代半ばの思慮深そうな女性だった。卓に向かい合わせに座った彼女は気遣うように切り出した。
「李斎……殿……とお呼びするのがいいでしょうか」
「ええ……。おそらく貴女は私と面識があるのだろうと思われる……ただ、今の私は、貴女が普段どのように私を呼んで下さっているのか分からない……」
女はこだわりなげに首を振り、いくつか質問をした。まずは李斎の知る州候の名前、麾下の名前など。これには李斎もすぐに答えることができた。
しかし花影と名乗る落ち着いた物腰の女性は、李斎には奇妙に聞こえる質問をし、李斎は首をかしげるよりほかにない。
「慶? 虚海を隔てた慶東国? そこへ私が赴いた? いったいなぜ?」
花影は苦い気持ちでそれを聞いたが、その質問は後でしかるべき人がまとめて答えるだろうと返した。
「……それでは……李斎殿、昇山されたご記憶は?」
「いや……ない。ええと、それでは麒麟旗があがったのか?」
李斎はここで目を見開き、左手で口を覆った。
「まさかと思うが……。私が昇山して……白圭宮にいるなら……ひょっとして……」
これについては、花影はすぐに否定できた。
「いえいえ。貴女は女王となられたわけではありません。でも、この王朝が安定するために貴女の果たした功績はとても大きい……。この白圭宮の者は皆貴女を尊敬しているのですよ」
李斎は少しほっとした表情を浮かべた。
「この牀榻を見ていても、私が随分厚遇されていることが分かる。それに見合う働きをしたのなら少し気持ちも軽くなるな……」
花影は泣きたい気持ちで思わず、李斎の中身のない右の片袖を見た。花影の視線に李斎も気づく。
「どうやら私の右腕も関係するらしい……」
李斎は大らかに笑った。
「国の大事に己の右腕を失くすとは……私はやはり不調法な人間だったのだな。……どうされた? 花影殿?」
花影という女性は、李斎との短い遣り取りからでも、穏やかに見えて頭の切れる能吏であることが伺えた。その女性が目頭を押さえ、俯いて嗚咽をこらえている。
「何があったか分からないが……。それはもう昔のことなのでは? 花影殿、少し話しているだけでも貴女は明晰な方だと感じる。これまでのいくつかの質問から、私がどのくらいの記憶を失っているのか既に見当をつけてらっしゃるのではないですか?」
花影は再び顔を上げ、気丈な表情を浮かべた。
「ええ、大体は……。おそらく十余年になろうかと……」
李斎は労わるように目の前の女官吏に微笑んで見せた。
「武人の立場でそれだけ生きていれば、腕の一本くらいなくすこともあります。どうかお心を痛めますな」
花影は泣き笑いのような顔をした。李斎、記憶を失ってご自分だって不安でしょうに……。
「李斎……いえ李斎殿は本当に貴女らしいことをおっしゃる……」
その言葉の語尾は微かに震えていた。
花影が言葉を選ぶ間を空けてから、こう切り出した。
「私がこれから……この邸の主にお話をして参ります」
「この邸の主?」
白圭宮の主という意味では泰王なのだが、花影は少しぼかした言い回しを選んだ。李斎は、ああ、と声を出した。
「女官が私の世話に慣れているので、つい私がここの主かと思ってしまった。そうではなく誰かの客分なのだな。長逗留しているようだが」
ええと……と言葉を探す花影にこれ以上気を使わせなくなくて、李斎は申し出た。
「ぜひ主にお会いしたい。一介の州師将軍を賓客のように遇して下さるお礼を申し上げよう」
花影は何かを言いかけ、しかし何も言わずに寂しそうな笑みを浮かべて辞去していった。
邸の主は午後に訪れた。臥室の扉の前で、若い男の声がする。
「女性の自室に無礼かも知れぬが、邪魔を致す」
折り目正しく言い置いて入ってきた男の容貌を見て、十余年の記憶がない李斎でも知識をもって答えることができた。
「王師の乍将軍でいらっしゃる……? なるほど、私は白圭宮の禁軍左将軍の邸に置いていただいているのですね」
驍宗が李斎に向ける視線には、落ち着いて相手を観察する風があった。客として遇している相手が記憶喪失に陥った、とは花影という女性から聞いているはずだ。それでも冷静沈着であるのは、さすが名高い乍将軍だと李斎は頼もしく思う。
「先ほど花影殿に話を致しました。私には十余年の記憶がないようなのです。頓珍漢なことを申し上げるやもしれませんが、なにとぞお許しをいただきたい」
「……劉将軍は……」
驍宗はここで少しためらった。そこで李斎の方から察せられることを言う。
「李斎、です。乍将軍も普段は李斎とお呼びなのではないですか?」
州師将軍と禁軍将軍とでは身分に雲泥の差がある。どうして面識を得たのか経緯は分からないが、字を呼び捨てにされる方が自然な成り行きだと彼女は思った。
いや、と驍宗は軽く首を振った。
「確かに李斎殿と貴女を呼んでいた時期もあったし、普段は李斎と呼んでいる。だが、肝心の貴女自身に承州の州師であった記憶しかないのなら、劉将軍と呼ぶべきかと思う」
生真面目な方だ、と李斎は少々呆れ気味に思った。噂で聞くよりもずっと堅苦しい方なのかもしれない。その禁軍将軍は、卓についても良いかとわざわざ尋ね、李斎はますますその思いを深くする。
「もちろんでございますとも。ここは貴方の邸と伺っております。私は随分長く住まわせていただいているらしい……」
驍宗は少しだけ困惑気にしながら、卓についた。李斎は椅子を勧められるまで立って待っていたが、相手は李斎が自分の指示を待っていると気づくのに少しの間が要るようだった。
「蓬山の記憶もないとか……」
「ええ、しかし、何故、私は乍将軍もいらっしゃるというのに、のこのこと昇山などしたのでしょう?」
「貴女は情に厚い優れた将軍として高名だった。貴女が最初から昇山に行かないのも民に対して無責任にあたろう」
李斎はここで大事なことを見落としていたことに気づく。麒麟から天啓を受ける可能性が最も高いのは、ほかならぬ乍将軍であったはずだ。
「あの……乍将軍は……。ええと、将軍とお呼びしてよろしかったのでしょうか?」
驍宗は李斎から視線を外し、窓の外を見た。萩の花がいくつか咲いているのが目に止まる。彼の麒麟が、この女将軍の献身により常世に還ってきたときに最初に目にしたのが萩の花だったという。
彼の顔に暗い影が差す。そんな細かな思い出も分け持てなくなるのかという事実に突き当たったせいだった。一方、彼の顔色を見ていた李斎の方は、あたふたとせわしなく視線を泳がせた後、悄然とした面もちで尋ねた。
「ひょっとして大変無礼なことを申し上げたでしょうか」
驍宗は笑んだ。
「いや、いっこうに……」
だが、そこで驍宗が零したため息が李斎をさらに勘違いさせたらしい。彼にとって、そして白圭宮の誰にとっても蓬山での天啓の有無など遠い過去の話だった。彼のため息は、これからそれを李斎に説明するなら相当に長くなりそうだと思えての嘆息だった。だが、彼女にそれは分からない。李斎が懸命に何か言葉を探し始めるのを見て、驍宗は言った。
「劉将軍、その心配は無用だ。私は確かに天啓を受けて登極し、王として玉座にある」
しかし、これはこれで李斎を別の理由で動揺させる。
「……!」
李斎は急いで椅子から降りようとした。一国の王と州師将軍が卓を囲んで差し向かいなど不敬に過ぎる。だが、卓にある李斎の左手の拳は、李斎の動きより早く驍宗に卓上に押しとどめられていた。驍宗は少し面白そうに説明する。
「順を追って説明したかったが、まず今必要なことを言おう。私も王となったが、劉将軍、貴女には私が抜けた後、王師将軍になってもらった。また、私の王朝が今のように落ち着くまで貴女には大変な苦労をさせた。私自身をはじめ、皆が貴女に一目置いている。今現在、貴女の記憶にあるほど、私たちの間に身分の差はない」
彼はぽんぽんと李斎の拳を叩いた。
「落ち着いて座っていて欲しい」
「なれど──」
李斎にとって王は至高の存在だった。自分が王師に抜擢されたというのが事実だとしても──これも彼女には驚きなのだが──やはり、平伏するのが礼儀ではないだろうか。
それなのに、この王はそうはさせてくれないようだった。李斎の左手を相変わらず軽く握ったまま李斎を穏やかに見つめている。李斎が腰を椅子に落ち着かせると、それでいいのだという風に、承州にまで聞こえた深紅の瞳を細めて見せた。その視線のあたたかさに、彼女はどぎまぎとしてしまう。
「あの……」
「……なにか?」
男が心から怪訝そうに問うことに、彼女は一層顔が赤らむ思いがする。
「あの……お手を……」
驍宗は少し面喰った顔をして手を離した。
李斎はすがるような視線を向けた。そして、そんな自分にも驚いていた。女の少ない軍に入って以来、手を握られたり尻を撫でられたりという非礼に悔しい思いをしてきたものだ。そのような輩を李斎は心底軽蔑する。けれども、目の前の男は、麒麟に天意があると選ばれた存在なのだし、そもそもこの部屋に入る時から今に至るまで隙が無いほど紳士的な振る舞いを通していた。ただ、女性である自分の手を握る以外には。
とはいえ、それだって随分と自然な仕草であり、まるで手を繋いでいる方が当然なようだった。それはつまり……。私と、この乍将軍、いや泰王とはよもや……。
そして、なぜ私はそのことを当の相手に問おうとするのだろう? 警戒感が無さすぎるのではないのだろうか? 私の知らない間に、私はこの方とそうまで親しくなったのだろうか? でもどうして? 一国の王、あれほど傑物と音に聞こえた乍将軍と?
驍宗は李斎の表情を見ながら、さまざまに考えを巡らせていた。一体、十余年にも及ぶ時間をどう説明するのが良いのだろうか、と。単に時間が長いだけではなく、彼の麒麟も含めてあまりにも数奇な物語であり、そこには李斎自身が深くかかわっている。
彼は今度は李斎に気づかれぬよう、静かに息を吐いた。
「李斎⁈」
変わった髪の色の少年が部屋に駆け込んできた。
「あ……」
李斎の脳裏に一つの光景が浮かぶ。同じような鋼色の髪の子どもがまろぶように自分に駆け寄ってきたことがなかったか──。
その十数歳に見える少年は李斎の傍に膝をつき、ごく自然な動作で、椅子に座る李斎の膝に両手を載せた。
「李斎の記憶がない、と聞きました。僕のことも覚えていないのですか……」
「申し訳ない……。きっと朗君とはお目にかかっているのだと思うのです……。ひょっとしてお小さい頃にお会いしただろうか?」
その少年は悲しそうではあったが、李斎の話を聞きたそうだった。
「先ほどから何も思い出せないのに、朗君がお小さい頃、私に駆け寄ってきた光景が今よみがえりました。それから……貴方に『李斎』と呼びかけられるのが、とても心にあたたかい。花影という女性にも主上にも、私の記憶が承州州師で止まっていることで気を使わせてしまっているようだ。主上におかれても私をさきほどから劉将軍とお呼びになる……。善意だとは思うのですが……。こうして無邪気に『李斎』と呼ばれると、確かに李斎はここを居場所にしていたのだと分かって落ち着きます」
「主上……?」
少年に顔を向けられた驍宗はほろ苦い顔をした。
「李斎、と呼んでもいいが……。その名にどのような色をのせていいのか分からない。劉将軍と呼ぶのが無難だと思った」
「でも、李斎本人はよそよそしいと思っているようですよ」
「いえ、朗君」と李斎は口をはさんだ。
「私も州師の頃から何がどうなったのか分からないのです。主上はそれを思いやって下さってのこと。有難く存じます。それよりも……あの……貴方の官職が分からない。無礼に当たらなければ教えてくだされば助かります」
王と親しげだが、年齢からするに六官の長とも考えづらい。この少年は一体何者なのだろう?
「蒿里……。李斎の記憶では戴の麒麟が黒麒だとは理解できない。麒麟と言えば金の髪なのだ」
「……! 麒麟? 台輔⁈」
李斎は慌てて椅子から滑り落ちて、泰麒と同じく床に跪いた。泰麒は困惑してしまう。
「李斎? どうか椅子に座って下さい。そんなに僕に対して畏まらないで……」
「蒿里、お前が立ち上がればいい。そうすれば相手も椅子に座りやすい。……私も先ほど王と分かるやいなや椅子から降りて平伏されそうになった」
腰を上げた泰麒に促されるように、李斎は再び椅子に腰かける。それがこの主従の望みであるようだったので。
「王と宰相にこうも気安くしていただけるとは……。今の李斎はとても幸福でいるのですね……」
李斎は晴れがましい思いで、心からの笑みを向けた。それなのに、台輔は悲しげな吐息を漏らし、王もまた静かに沈んだ表情を見せた。
「あの……?」
「劉将軍、貴女には、王師の乍将軍といえばさぞ驍勇で知られているのだろう。しかし、私は貴女を王師に抜擢した後、不甲斐なくも逆賊に宮城を追われて、七年の間ほぼ虜囚のような時間を過ごした。そして、台輔は蓬莱へと逃げざるを得なかった」
泰麒が続ける。
「しかも僕は蓬莱で、戴の麒麟である記憶を喪失してしまっていました。今の李斎のように。だから主上の危機に戻ることもできなかった……」
「それは……最悪の状況だったのでは……?」
「ええ、主上の居場所が分からない。そして、王を探すか、さもなければ選びなおすべき麒麟も生きていながら行方知れずとなった。忠臣だった李斎は本当に心を痛めていた……」
「それは……。いえ、しかし、数ならぬ身とはいえ王師の任にあったのなら、李斎が立たねばならぬところです。私は……王師に取り立てられただけの働きを為しえましたでしょうか? 利き腕もない身であるようですが……」
「李……いや劉将軍の働きは目覚ましかった。慶にご助力を得るため虚海を渡った。深手を負ったにもかかわらず。……右腕はその際に腐り落ちたと聞いている」
「慶……? ……に助力……? ……いったいそれは……?」
「委細を語ると長くなる故、省く。景王は胎果であらせられる。その誼もあって、蓬莱に流された泰麒を、蓬莱に渡ることのできる諸国の麒麟を集めて探し出して下さった」
「あの……?」
「分かり辛かっただろうか?」
「いえ、概略は分かったような……気がいたします。しかし、景王が胎果?」
「おそらく今劉将軍が思い浮かべようとしている景女王とは異なる。劉将軍が金波宮に駆け込む二年ほど前に登極なされた女王だ」
「二年……。慶の王朝にとっても落ち着かぬ頃だったのでは?」
「それでも、満身創痍で駆け込んできて国の窮状を訴える劉将軍の姿に、景女王は心動かして下さった。前例のないことをして下さった景女王に感謝申し上げるしかない。ただ、そのお心を動かしえたのも劉将軍、貴女の為人のなせる業。戴の者はみな有り難いと思っている」
「李斎、本当はこんな簡単な説明では済まないほど色んなことがありました。李斎に怒られても仕方ないことも僕はしてしまいました……」
「そんな! 尊い台輔に怒りを向けるなどと……」
驍宗が笑って言った。
「劉将軍は心優しいゆえ、同じことを言っていた。ただ、私も蒿里も劉将軍には足を向けて眠れない。貴女を大切に遇しているのはこのような経緯があってのことと理解してもらいたい」
李斎は呆けたような声で絞り出した。
「随分と大それたことをしでかしたようです。それなのに……忘れているとは情けのうございます」
「台輔はこちらか?」
李斎にとっては無作法に見える仕草で部屋に入ってきた少女がいた。少々釣り目の、台輔と同じ年の頃、そして機敏そうな少女だった。
「耶利、何か分かりましたか?」
「李斎殿の記憶喪失の原因らしきものを見つけた。これだ」
部屋にいた驍宗たちは立ち上がり、耶利が両手に載せて差し出す小鳩のような何かを覗き込んだ。その小鳩の顔が嬰児の様で李斎はぎょっと驚く。
泰麒が尋ねた。
「耶利、それは……次蟾ですか?」
「似てはいる。しかし、あの時に次蟾はすべて駆除したはずだ。似てはいるが別種の妖魔かと思う。小さな雛の状態で我らが見逃し、今頃成獣となったのかもしれない。麒麟だって成獣になるのに年数がかかるでしょう?」
「それが李斎の記憶喪失と関係すると思うのですか?」
「姿の似た妖魔は似た性質を持つ。李斎殿は受け答えもしっかりしていて、魂魄が抜かれたわけではないようだが……。魂魄を形作るものが過去の記憶なら、次蟾とまでいかずとも同じような禍をもたらす妖魔なのかもしれない」
李斎が怪訝そうに問う。
「次蟾……? 魂魄……?」
「まあ、原因が今のうちに見つかれば大丈夫だろう。李斎殿は少々記憶に欠けたところがあるそうだが、それはあまり思い出したくないからだろう。失ったら失ったで構わないのでは?」
李斎はその少女を見た。
「ええと、貴女は?」
「私は台輔の大僕で耶利という。李斎殿の働きを直接見聞きはしていないが、たいそう苦労されたようだ。忘れていたい記憶なら忘れていてもいいのではないかと思う」
「忘れていたい記憶? それは……国にそれほど大事があったなら、私の人生も苦しいものだったのかもしれないが……。確かに承州の故郷も被害が大きかっただろうし、私のこの腕では乗騎も操れず手放して別れてしまったのかもしれないし……」
李斎が記憶を探ろうとする様子は、他人から見れば視線が虚ろで危うく見えた。泰麒が李斎の袖を引く。
「李斎、飛燕は最後まで李斎を乗せて戦ってくれましたよ」
「飛燕をご存知か?」
「ええ、僕にもとても懐いてくれていた……」
李斎は暫く泰麒を見つめ、肩を落として息を吐いた。
「過去形、なのですね……」
泰麒はしまった……と己の迂闊さに気づく。
「ごめんなさい……」
「いいえ。台輔がお謝りになることではありません。そうですか……最後まで一緒に戦ってくれましたか……」
李斎は少しの間遠い目をしたが、すぐに凛とした武人の貌に戻った。
「私は忘れたいほど悲しかったのかもしれません。しかし、それでは私は飛燕の主とは言えない。飛燕が最後まで私の乗騎でいてくれたのなら、私もずっと飛燕の主であり続けたい。それに、私が何も思い出せないなら、私は身に覚えのない功績で王と台輔に目を掛けられることになる。それは……心苦しい」
李斎の脳裏に一つの言葉が浮かぶ
──過去が現在を作る。
なぜそう思ったのか思い出せない。けれども、今からそう遠く遡らない時期に、心に刻むことがあったのだと感じる。
「今の李斎は、過去があってこその李斎です。私は記憶を取り戻したい」
耶利は目を眇めた。
「李斎殿らしい言いようだ。次蟾への対処と同様に、麒麟と過ごす時間が多ければ事態は好転するかもしれない」
泰麒が顔を輝かせた。
「李斎のために何かをしたいと思っていました。ここで李斎のためになれるのなら、僕も嬉しい。出来るだけ李斎の傍にいましょう」
それでは残りの政務を急いで片づけてきますね。そう言い置いて、泰麒は駆け出して行った。驍宗も一度政務に戻ると言い、部屋を出た。
──自分の部屋で台輔がお休みになるとは……。
泰麒は李斎の部屋に臥牀を持ち込み、そこで眠っている。李斎も夜着に着替えて就寝の支度を整えたものの、所在なく臥牀の傍に立っていた。傍らにこの国の王も夜着姿で佇む──それがあたかも当然であるかのように。
「主上、どうか臥牀でお休みください」
「いや、そこは劉将軍の臥牀だ。そこで休まれるがいい……。私は長椅子で休むゆえ気遣いは要らないが……」
驍宗は苦笑いをして軽く首を振った。李斎が聞きたいことはきっと他にある。彼女の方から聞き辛いのなら、自分の方から口火を切るべきだろう。
「もう劉将軍には察しがついていることと思うが。女官たちは私たちが共に休むことが当然のように支度を整える。つまりは……今の私たちはそのような仲だということだ。さて……どう思われる?」
「ええと……?」
「不快でないなら有り難い」
李斎はいいえと答えた。
「不快などと……。けれど、いきさつが分からないので……。名誉なことだと思うのですが……。ただ、一つお尋ねしたいことはございます」
「何なりと伺おう」
「私が王師将軍の地位を賜ったのは、主上の個人的な寵によるのでしょうか?」
驍宗は即座に否定した。
「いや全く。貴女は、貴女自身の記憶にあるとおり清冽なご気性だ。貴女が王師将軍にふさわしい働きを十分に見せた後、近年になるまで私たちは単なる王と臣下の関係だった」
李斎は安心したようにうなずく。そこを真っ先に気にするのが彼女らしいと彼は思う。
「王師に据えたのには理由があり、結果としても正しかった。貴女は今日、私のことは思い出さなかったが、蒿里の小さい頃のことは思い出した」
「ええ……とても愛らしい、稚いお子でいらっしゃった。そのお姿が断片的に蘇るのです……」
「このような記憶喪失の場面でも貴女は蒿里のことは思い出す。それほど貴女は蒿里に愛情深かったし、蒿里も貴女に良く懐いていた。天啓がなくとも腐らず、仁の獣に懐かれる……私が貴女を王朝に招こうと思った最初の理由はそこにある。さらに、私は蓬山で王師抜擢をほのめかしたが、貴女は情実ではなく実力を見るべきだとこだわりなげに言ってのけた。その為人も好ましかった。私はきちんと貴女の器量を量り、その上で任命した」
「ありがとう存じます」
李斎は二重の意味で礼を言った。過去にしっかりとした理由で抜擢してくれたとことと、そして今、李斎の疑問に厭わず説明を施してくれたことに。
「麒麟に慕われた劉将軍にひきかえ、天啓を受けた私自身は、蒿里を竦ませるばかりで懐かれることが乏しかった」
李斎はふふっと笑みをこぼした。
「主上は、その若さで王師将軍となられ、武人でいらした。そんな強面の年若い独身男性と、あのように稚い子どもでいらした台輔とでは、確かに最初は互いに当惑されたことでしょう」
実際はそんな微笑ましい話で済まなかったが、驍宗は特に説明しなかった。
「貴女を王師としたことは結果としても正しかったと皆が思っている。私はどちらかといえば貴女の温和さを評価したつもりだったが、私が予想した以上に貴女は強く烈しい気性だった。虚海を渡って諸国の助力を取り付け……」
李斎は首を振った。
「それは、私自身も驚きです。今でも、本当にこの李斎がしたことなのかと不思議なくらいです」
これも実際はもっと話の規模が大きい。西王母を言い負かしてきたという事実があるが、これも彼は特に言わなかった。
「貴女が白圭宮にいるのは、貴女自身の実力だ。胸を張って過ごされるがよかろう」
李斎は一礼し、そして今度は別の面から疑問を呈した。
「では……次の質問をお許しください。今の私は主上の寵を得ている……とか……。それは、私に功があり、そして女性の臣下だからでしょうか?」
驍宗は言葉に詰まった。李斎はその様子を見て、悲しげに目を伏せた。
「女性の臣下の功に報いるのに、寵姫の立場が相応しいとお思いになられたのでしょうか」
李斎はここで視線をまっすぐ驍宗に戻し、決然と言った。
「私が何を申したか思い出せませんが、今の私はそのような気遣いはご無用に願いたいと申し上げます」
驍宗は一息ついてから口を開いた。
「逆に問おう。劉将軍には、私がそのような理由で寵姫を置くような主君に見えるのだろうか?」
李斎は目を見開いた。相手はかすかながら不快そうな面持ちをしている。確かにこれは自分が悪いと彼女は思った。
「いえ……それは……そのような……。申し訳ございません。失礼を申し上げました」
李斎が納得いった様子に、彼は安堵の息を漏らしながら苦笑した。
「だからといって、何があったか上手く説明はしづらいものだ。ここで貴女がいかに魅力的な女性であるか、上手く説明できるほど気が利いた男であれば、私も苦労しなかったのだが……」
「苦労……?」
「貴女は物堅く、私は女性を口説くにはあまりに堅苦しい性分だ。そのためか、私と貴女の仲はいっかな深まらなかった」
李斎は静かに笑んだ。
「分かるような気がいたします」
驍宗は面白そうに言う。
「貴女の記憶では、私と貴女は今日が初対面ということになる。今日一日の付き合いでもやはり私は女性に縁の薄い無骨者と思われるものだろうか?」
李斎は声を立てて笑った。
「先ほどから、主上は律儀に私を劉将軍とお呼びになる……。実際には初対面ではなく、しかも話を伺えば伺うほど李斎は主上に近しかったようですのに、それでも主上は私に対する筋をきちんと通される。生真面目な方だと先ほどから思っております」
李斎は首をかしげて見せた。
「私にとっては、傑物と呼ばれた乍将軍と初めてお会いする……。噂にたがわず、清廉な方だと感じます。先ほどは動揺のあまり邪推を致しましたが、臣下が女性だからといって功に報いるのに寵を以ってするような方ではないと分かりました。ましてや、王の権を以って女性をなびかせようという方でもありますまい。一方で、伝聞では覇気にあふれた苛烈な方だとお聞きしておりましたが、想像していたより和やかな印象を受けます」
「ほう? それで?」
「主上は好ましいお人柄に思われます。そのような方にご好意を持たれて、いったい李斎は何が不足でいたのでしょう?」
驍宗は鷹揚に笑った。
「それは私がぜひ聞きたい。まあ、主君として好ましく思うのと、男としてみるのとではまた異なるものがあるのだろう。貴女は私を玉座に取り戻すのに粉骨砕身してくれた。主君としてなら不足はないと思ってもらえたようだ」
「……私の記憶にある私は、主君に忠義を尽くすことはあっても、相手とそれ以上の間柄になるような女ではとうていありませんでした」
全くだ、と彼は再び笑った。
「李斎という字の由来を聞いても構わないだろうか? やはりその清冽な人柄ゆえかな?」
「半ばご推察のように、私も物堅いとはよく人から思われますので……。女と侮られまいと振る舞っていたせいでしょうか。最終的に『李斎』となるまでも、昔から字の一字に『斎』は用いられていたものです」
「なるほど」
貴女らしい、と彼は怜悧な目元を緩めて見せた。
李斎はふと思いついた。
「一度、主上にとっての普段と同じく、『李斎』とお呼びになって下さいますか。そう呼ばれて何か思い出すこともあるやもしれませんから」
それもそうだな、と彼は答えた。彼女の字を呼ぼうとし、そして、それでも唇が動かない。
李斎が記憶を失ったという常ならぬ事態に、彼は冷静にあたろうとしていた。だから今まで自身の感情を封じ込めていたのだ。彼は思い至った。今日、最初に知らせを聞いた時から、自分はとても切ない気がしていたのだ、と──。
初めて腕を組んだ時のことも、悪夢を見る苦しみを零した時も、はじめて抱き合ったその時のことも、今の彼女は覚えていない。二人で過ごした時間はもう戻らないのかもしれない。二人しか知らない時間は、分け持つ相手をこのまま失ってしまうのかもしれない。──それは、とても孤独なことに思われた。
「李斎……」
ようやく唇が紡いだその響きには、彼が思う以上に深い色があった。
「李斎……」
もう一度呼んでも、李斎は驚いた顔のまま無言だった。三度目ははっきり疑問の形で問いかけた。
「李斎?」
「あ……申し訳ありません。いえ……」
李斎はしばらく視線を彷徨わせてから、苦笑して見せた。
「主上が先ほどから私を劉将軍とお呼びだったのは正しかったと存じます。そのような声音で『李斎』と呼びかけられてしまっては……勘違いしてしまいそうになる……」
李斎は片手で胸を押さえていた。そうしなければその高鳴りが収まることが無いように思えてのことだった。
「勘違いではなく、貴女は当の本人なのだが……」
「……私はきっととても幸せだったのでしょう。いささか波乱があったようですが、臣下としてお仕えしがいのある王と麒麟に恵まれ、その王朝を守るに何らかの働きができた。誇ってよいと王たるお方にそう言っていただいた。そして、女性としても、真実愛情を注がれていたのでしょう……『李斎』と呼ばれてみて心からそうだと確信できます」
「劉将軍は幸せだとお思いか?」
李斎は大きく笑んだ。
「ええ、とても」
「もし、私の記憶が戻らなくとも……。しばらくの間で構いませんから、思い出すための時間を与えて下さいますか?」
「それは勿論だ。いつまでも待とう」
「いいえ。先ほど大僕が興味深いことを言っていました。過去の記憶が魂魄を形作るのだ、と。記憶を失った私は、主上がさきほど思いを込めて呼んでくださった『李斎』と異なることもありましょう。いつか主上のお心が離れても、それも理としては正しい。今の私は、主上が愛された『李斎』という女の、いわば影にすぎないのかもしれませんから」
それでも、と李斎は続けた。
「でも、主上との間柄を取り戻すのに、どうにもならなくなるまで、できるかぎり足掻いてみたい……。納得がいくまで」
驍宗は、李斎の赤茶の髪を一房手に取った。
「今の劉将軍も、少しは私という男に恋着をお感じか?」
「ええ……」
「貴女にとって今日初めて出会った乍将軍は、あまり女性に評判が宜しくない。可愛げもなく面白みもないと敬遠されがちだ。私は女性に甘い言葉を囁くのが得手ではないゆえ仕方ない。劉将軍には、いったいなぜ惹かれてくれたのだろう?」
「……うまく言えませんが……。私は、記憶を失う前の私に少し嫉妬をしています。あれほど深い響きでその字を呼ばれる女性が羨ましい……。主上が不器用でいらっしゃるのは何となく分かります。そのような方からあれほど真剣な愛情を傾けられる女性を羨ましいと思うのです」
「だからそれは貴女自身だ」
李斎は目を瞑って首を振った。俯くその目から涙が一筋頬を伝った。
彼女もまた、武人であり人の上に立つ将を務めた人間だった。だから自分の身の上に起こった変事に努めて冷静に対処しようとしていた。だが、朝から張りつめていた神経は、もう限界だった。
「私は、過去の自分を取り戻したい……。さきほど『李斎』と呼ばれた女に戻りたい……」
「李斎」という女が白圭宮にいる理由は分かった。王である男から誠実に愛されていることも。でも、それを知ったら知ったで、かえって自分の足元がおぼつかなく感じる。このままでは、今の自分は過去の自分の影にしか過ぎない。それは、自分が思う以上に心もとなく、不安で、そして寂しくてならない。
彼は、そうっと彼女を抱き寄せた。いくら無骨者でもこの場面でそうしなければならないことくらいは分かる。彼の腕の中で「李斎」という字の女は静かに泣いた。その髪を撫でながら、彼は言った。
「過去の記憶に一部欠落があっても、長い時間に培われた李斎という人間のありようは変わらない。友人に思いやり深く、台輔に愛情深く、飛燕にとって良き主である事実は変わることなどない」
彼は彼女を抱く手に力を込めた。
「貴女の記憶がどうであれ、明日から始まる一日は誰にとっても新しい一日だ。貴女は貴女らしくあればいい。そして私と共に時間を重ねていけばいい。未来はこれから作るもの。貴女と私の間で失われたものは大してありはしない」
──過去が現在を作る。ならば、いまが未来を作るのだ──たとえ繋がりは見えなくても。
李斎は眩暈がした。確かにこう胸に刻んだことがある。とてもとても苦しい思いをした後に。李斎の意識が遠のく。あれは、あの時の思いは、忘れたいほど苦しかったようにも思え、一方で決して手放してはならない記憶でもあるように思えた。
「思い出さなければ……」
そう呟いて、李斎は気を失った。
李斎が目を覚ますと、驍宗と泰麒がそろって彼女の顔を見降ろしていた。李斎は瞬きをする。驍宗は隣で寝ているのが普通だし、こんな時間に台輔が私たちの臥室にお出でになることはない。
李斎は慌てて、慣れた仕草で身を起こした。
「どうされました? お二人とも」
驍宗が真面目な顔で問う。
「今の元号が分かるだろうか?」
「は? 明幟ですが……それが何か? 昨日の夕餉のお話の続きでしょうか?」
李斎の言う明幟が話題に上った夕餉とは、驍宗たちにとっては一昨日のこととなる。今の李斎は通常の記憶があるが、自分が記憶喪失に陥った昨日一日分が丸々抜けているらしい。
念のため、驍宗は重ねて尋ねた。
「明幟について、夕餉の折には何の話をしていたのだったかな?」
「それは……。台輔と私から、とても良い名前を思いつかれたものだと申し上げましたが? 苦しい時期もありましたが墨幟のような民の力もあって、乗り越えることができた。墨幟の名を一文字とりながら、未来が明るいものであるように……そのような願いが込められたとても意義深く美しい名だと……」
泰麒がほほ笑んだ。
「李斎は言っていましたね。『過去が現在をつくり、現在が未来をつくる』と。過去の功績を称え、今後も胸に刻みながら明るい未来をつくる──本当に良い名です。驍宗様にしては珍しく、誰にも素直に受け入れやすい良い名前をお考えになったものだなあと思います」
ここで泰麒は少し悪戯めいた顔をした。
「なにしろ、僕の『蒿里』は死者の住む山の名前、『計都』と『羅睺』も凶星の名。『いっそ不吉で縁起が良い』と主上は仰いますが……。あれほどの苦難の後に、捻った名前の元号はちょっとご遠慮したいと誰もが思ってましたからね。主上の普段の名づけのご趣味から考えると、明るい名前でとーっても良い名づけだと思います」
李斎もくすくす笑う。
そこへ驍宗が李斎の字を呼んだ。
「李斎」
「……はい?」
何かを呼びかけられたのだと思って李斎は続きを待った。だが、驍宗は自身の声を聞いているようだった。
「李斎」
「……?」
不審げな顔の李斎に、驍宗は笑んだ。
「よい字だな」
本当にそれだけが理由のように、彼はなんども「李斎」という字を口に転がしている。
驍宗の凝った趣味からすれば、李斎という字などごく平凡なものに過ぎまい。それも名乗りあって十年近く経つ。今さら、いったい自分の字の何が彼の気にかかるのか李斎には分からない。李斎は当惑した顔を泰麒に向けてみた。
「李斎、主上に『李斎』と呼ばせてあげて下さい」
「それは構いませんが……。李斎、などごく普通の字に過ぎませんのに……」
泰麒は自然な仕草で李斎の手を両手で握った。
「平凡で普通の毎日が続くこと……。当たり前のように思いがちですが、実はとても貴いことなのですね」
李斎には話がよく見えない。その前の文脈から明幟と暦がかわる経緯のことかと思うくらいにしか考えが及ばない。
あの苦難の時は、渦中のことを思い返せば忘れてしまいたいほど辛かった。しかし、乗り越えて前に進むには心のどこかに据えておかねばならないものだった。一国の王にとっても、不吉な名を持ち数奇な運命を生きた麒麟にも、ごく平凡な字の自分にも。それは等しくあてはまる。
李斎は泰麒の手を握り返した。泰麒は何かを言いたげに主を見上げる。驍宗は二人の様子を眺めて静かに笑んだ。
くどくて申し訳ございませんw
2022年現在、十二国記の戴国メンバーをモデルにした、平安ファンタジー小説を投稿中です。
驍宗様はあまりに完璧すぎてキャラとして動かしづらかったので、英章と合体して別キャラになっております。
しかし、李斎や臥信、霜元的なキャラはわりとそのまま登場してます。
後半は、双璧の阿選をモデルとしたキャラのクソデカ感情が炸裂するんですよw
是非お読みいただければ幸いです。
「錦濤宮物語 女武人ノ宮仕ヘ或ハ近衛大将ノ大詐術」
https://kakuyomu.jp/works/16816927860647624393