白い墟からのびる道   作:鷲生

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シリーズ前作が「李斎、記憶を喪失する。」ですが、本作と互いに関連はありません。それぞれに記憶喪失になったら…というベタなネタを考えてみただけですw。シリーズの中では「驍宗、悪夢を見る。」をお読みいただいた方がいいかもしれません。
記憶喪失・驍宗様ver.はなかなか話が動かなくて(驍宗様には記憶を失うような可愛げがないw)。話が動くまで試みにあれこれ書いていました。出来るだけ削りましたが驍李シーンまでが長いですw済みません。やはり驍宗様は先に仕事や麒麟とのことを片付けてから李斎だろうなあ…と。ウチの驍宗様は堅苦しい生真面目無骨男なもので…。それは李斎に対しても、です。私の萌えでしか動かない驍宗様ですが、お許し&お楽しみ頂ければ幸いです。


↓なお、「十二国記の戴国メンバーの物語を、日本の平安時代でやってみたらどうなるだろう?」と思ってオリジナル小説を書きました。カクヨムで連載中です。是非お読みいただければ幸いです!!!
「錦濤宮物語 女武人ノ宮仕ヘ或ハ近衛大将ノ大詐術」
https://kakuyomu.jp/works/16816927860647624393


驍宗、記憶を喪失する。

 英章が出仕の支度をしていると、驍宗から「朝議の前に自室に来るように」と使いが来た。そこで驚くべき事態が待ち受けていたとは、彼は全く知る由もなかった。

 

 人払い済みの驍宗の私室に、英章の声が響く。

「はああ? 主上、覚えていない? ご自身が禁軍将軍のままだと思っていらっしゃる? 昇山も登極も身に覚えがない?」

 英章は、男にしては整っている顔立ちを盛大に歪めた。一方の驍宗は端然とした様子を崩さない。

「目が覚めると見慣れぬ部屋に見慣れぬ女官だ。何が起こったのかを知ろうと、相手に気づかれぬよう誘導尋問をしているうち『英章という禁軍将軍が“せっかち”ゆえ、いつも朝議に真っ先に現れる』という話になった。それでお前を呼んでみたのだが……。お前がそんなに驚くとは。お前の言う通り確かに私は記憶を失っているようだ」

 驍宗の淡々とした口ぶりに英章は脱力する。

「なんでそんなに冷静なんですか……」

「女官が私の身支度をする際、鏡の前に座らされた。鏡に映る自分の容貌を見て、昨日までとは何かが大きく異なることは予想できた」

 驍宗はその途中で女官を帰したらしく、髪はまだ結い上げられぬまま後ろで軽く一つに結わえられているだけだった。そうしていれば純粋に武人だった頃と特に外見上の変化はないように英章には思えた。

「はあ……どこがお変わりになったとお思いなんです?」

「自分が禁軍将軍だった時に比べ身体の線も顎の線も細くなった。それに、鏡に映る男は妙に老成したように見える。だいぶ長い歳月が経過したのだろうと思う」

「なるほど、それで自分が変わったと思われた、と。そうですな、おおよそ十余年の記憶がないことになりますね」

 

 驍宗はその数字を繰り返した。

「十余年? たったの?」

 今度は驍宗の顔の方に大きな驚きの色があった。少なくとも英章は驍宗の緋色の瞳がこれ以上に見開かれたのを見たことはない。

「え、ええ……。まあそうなんですが。あの、主上はもっと長いとお思いだったんですか?」

「五十年、百年単位の話かと思っていた」

 自分の内面の変化を人に説明するのは難しい、と驍宗は思う。昨日までの自分はもっと何か、己の中に己を燃え上がらせるようなものを持っていたはずだ。人が『覇気』と呼び、ある者を魅了し別の者を竦ませる何か。乍驍宗という男を、余人からはっきりと区別させるもの。

 しかし、昨日まで確かにあったそれを、今の自分は持っていない。持っていたという感覚はあるが、それは遠い過去のように思え、思い起こそうとするとほろ苦いものがこみ上げてくる。あたかも老人が若く未熟だった時を振り返るときのように。

 

 英章が嘆息した。

「まあ本当に大変な出来事でしたからねえ。主上が七年ぶりに地下から脱出された後はすっかり和やかにお変わりで、私も驚くやらなんというやら……」

「七年? 地下?」

 英章はぎくりとした。あの七年をどう説明するのが最適なのか素早く頭をめぐらせ、そして彼にとっては忌々しい結論に至る。

「正頼を呼んでまいりましょう」

 驍宗は息を吐いた。

「お前が正頼をあてにするとは……。よほど説明しにくい事情らしい」

「正頼ごときに私が引けを取っているとは思いたくありませんな。ただ彼奴は主上を玉座に据えた台輔の傅相で今は冢宰ですのでね……。私より紙一枚はより適任かと思うだけですよ」

 そして、正頼と英章が語って聞かせた物語は、さすがの驍宗の顔色をも変えさせるに十分だった。

 

 驍宗は険しい目つきで、あの七年を含む話を聞き終えた。無表情を顔に張り付かせているが、床を見つめるその緋色の瞳が激しく小刻みに揺れていることは、正頼にも英章にも見て取れた。しばらく驍宗は彫像のように固まっていたが、両ひざの上に置いた拳をぐっと握ると、口から言葉を絞り出した。「まずは台輔に会おう」と。

 

 驍宗の前で礼を取る変わった髪の色の少年は、正頼から聞いた通り、柔らかいというよりも芯の強さがうかがえた。いくぶん表情が硬いものの、年齢以上に大人びた口上を述べる。

「今の主上にとりましては初めてお目にかかるということになろうかと思います。この国の麒麟、『蒿里』と字を賜った泰麒です」

「思い出せず済まない、と詫びよう」

 それから……と驍宗は続けた。

「苦難を強いたことも心から済まなく思う。一方で、あの阿選と互角に渡り合ったとか。麒麟の本性をねじ伏せてまで、よくやってくれた。既に私は口にしていると思うが罪は王のもの。台輔はその苛烈なまでの強さを誇っていて欲しい」

 偽りの叩頭にも殺傷沙汰にも触れずに、驍宗は彼の麒麟を労わる。記憶が無くとも驍宗らしいその言葉に、泰麒は悲しそうにも嬉しそうにも見える笑みで一礼した。

 

 その台輔の礼に一つ頷くと、驍宗は口元を一度ぐっと引き締めた。そして、次に開かれた口からは、恐ろしいほどの勢いで国政についての質問が繰り出され始める。台輔と冢宰、王師将軍の三人がかりでその矢継ぎ早の質問に応えていく。驍宗自身が禁軍左将軍の頃から国政を知悉していたのだから話が早い。あっという間に戴の現状を飲み込んでいく。

 質問攻めにして納得がいった驍宗は、げっそりと疲れた風の三人に軽く笑って見せた。

「どうやら私が今日明日記憶喪失に陥っても、朝は安泰ではあるようだ」

 正頼も両手を軽く上げて見せた。

「ええ、ええ。主上は五日先の御政務まで先取りされてしまいますのでね。おかげで諸官もついて行くのが大変です。ここで休んで下さった方が皆も喜ぼうというものですとも」

「私の性急さは、阿選の乱後もいっかな変わらなかったということか」

「御政務についてはさようですなあ。でも、それ以外は随分変わられましたよ。白圭宮の皆も主上を尊敬はしていても、竦み上がっているものなどおりませんし。昔は『飢えた虎』のようだった主上も今や満腹してゆったりと寛いでいらっしゃる……」

 

 正頼の言葉が終わる頃、英章が少しわざとらしく咳払いをした。

「まあ、最近の主上は食べるものは食べてますからね」

「おいこら、英章」

「いずれはお耳に入れるべきだろ?」

 驍宗は不審そうな目を英章に向けた。

「何か含むところがありそうな言い方だな。単純に食べ物のことを指しているのではなさそうだ……」

 英章が答えかけたが、泰麒がそっと口をはさんだ。

「主上は私と出会った蓬山のご記憶が無いのでしたね」

 黙って先を促す驍宗に向かい、泰麒は続けた。

「蓬山では、私と主上とだけではなく李斎とも出会ったのです」

 

 驍宗は先ほど聞かされた話から彼女に関する部分を思い起こした。

「李斎とは……承州の劉将軍だな。幼かった台輔が懐き、私が王師将軍を仄めかしてもきっぱり断り、それ故に玉座についた私が王師に抜擢した……。その後、景女王をはじめとする諸国を動かし、西王母を言い負かしたと聞いた。私が不甲斐ないばかりに戴を荒らしてしまったのを李斎が救ってくれたと言えよう。大した女傑だ。礼を言わねばなるまい」

 驍宗はここで苦く笑んだ。

「私も傑物と言われたものだが……。李斎という女将軍は規格外という点では私の上を行くのではないか。昇山したことで相当な器量の人材を見いだすことができたようだ」

 正頼と英章が顔を見合わせた。

「いやまあ、李斎が凄かったのは事実なんですけどね……」

「ですが、我々が言いたのはそうではございませんで……」

 歯切れの悪い二人に代わり、ここでも泰麒が驍宗に声をかけた。

「李斎は温和な女性ですよ。そして今は主上の『想い人』です」

 

「……想い人……?」

 驍宗は発音しづらそうに問い返した。そして、その単語を発した自分自身に戸惑ったような顔をし、そんな彼の表情に英章も正頼も何も言えず黙るよりない。長年仕えていても、驍宗に想い人がいたことはおろか、そんな相手がいる場面を想定したことさえなかったことが思い出される。

「承州師の劉将軍と私とが……」

 そこまで口にして驍宗は続きを言いよどむ。国政について語るのとは対照的に、言葉が出てこない。どんな表情をすればよいのかも分からない様子の奇妙な顔で、軽く口を開けたまま動作が止まる。

 泰麒がそっと尋ねてみた。

「主上がこうもお困りなのは初めて拝見します。私が幼い頃『天啓が無かった』と言い出したときでも主上は狼狽なさいませんでした。なのに、李斎の件は何がそれほど驚きでいらっしゃるのでしょう? 李斎はとても素敵な女性ですから不思議なことではないと思いますよ」

「王であるかどうかは私一人のことだろう? 想い人がいるかどうかは相手のあることだ。気にかかるのは……。ひょっとして……私が王の権を以って彼女に強いたとか……?」

 玉座の方は自分のことに過ぎないと言い、それより女性に強いていないかどうかを気に掛けるとは。驍宗の清廉さの向かう先が、少しおかしくもあり、非常に正しくもあり、やはりこの方はずぬけて何かが違うのだと泰麒を含む三人は感じる。

 問われた泰麒が微笑んでしっかりと首を振った。

「そのようなことは全くありません。ご安心して下さい」

 冢宰は反対の方向から請け負った。

「逆に李斎という女性が主上を誘惑した……なんてことも全くありませんからね」

 英章も言い添えた。

「李斎は男を誘惑する女じゃないし主上は女に誘惑される男じゃない……って、そもそもですな、するしないというより主上に女に惑わされるような可愛げなんぞないでしょう」

「……だから腑に落ちない。しかも、私が聞いたこの十余年の話では、私は彼女に苦労させてばかりだ」

 分からない、と彼は繰り返した。

「私に人望なくとも私の出した結果に皆ついてきてくれる。だが、彼女が私のもとで王師将軍になってわずか半年で私は位を追われた。彼女に対して何も結果を示していないのに……なぜ彼女はそこまで私という主を見込んでくれたのだろう?」

 ああもう、と英章がじれったそうな声を漏らした。

「そこから忘れてるんですか? 七年の洞窟暮らしの後は『天に生かされている』と悟りきったことを言うようになったじゃないですか。結果というより、主上ならば王にふさわしいと惚れこんで皆が麾下になってるんですよ」

「英章……」

 しばらくの間、驍宗は穴のあくほどじっと英章を見つめた。

「英章は随分と素直になった」

 正頼が「ほほほ」と笑う。

「そういえば、一昔前の拗ね者の英章なら到底『惚れ込んだ』なんて素直に言わなかったでしょうな」

 そして驍宗に身を乗り出し、耳打ちするような仕草で告げる。

「英章が主上と七年ぶりに生きて再会した時には、泣き崩れておりましたからね」

「泣き崩れてなんかいない。それは臥信が騙った大嘘だ!」

 この二人が言い争いを始める前に泰麒が、静かに、けれども迫力のある声を出した。

「驍宗様が王です。私は驍宗様を王に選んだことを後悔したことはありません。天啓を言葉にすることは難しい事ですが、けれども、皆が驍宗様を主と仰ぐのは結果より為人への信頼だと大人の私は思います。李斎もまた、自分の意思で驍宗様の元にあることを選んだのです」

 驍宗は、そこにいない相手に礼をするようにゆっくりとした動作で頷く。有難いという気持ちがあり、また、既に起こった事実は引き受けなければならないという気持ちがあった。

「劉将軍……李斎に会ってみよう」

 

 英章を使いに出すと、やがて赤茶の髪の背の高い女が驍宗の部屋にやってきた。彼女が部屋の中に歩み入る前に、英章が戸口で立ち止まって彼女に囁く。

「李斎。想い人に忘れられてしまっているのは辛いかもしれないが……。ただ、だからこそ部外者が見物するようなものではないだろうからね、私たちは席を外すよ。まあ、あの朴念仁に今度という今度は愛想が尽きたら、いくらでも愚痴は聞こう。とりあえず少し話してみることだね」

 正頼と泰麒も李斎と入れ替わるように席を立つ。正頼は片目を眇めて李斎に視線を送り、泰麒もすれ違いざまに声をかけた。

「寂しかったり悲しかったりしたら、後で僕の部屋に来てくださいね」

 李斎は英章から事情を聞かされてはいたものの、心の整理は全くできていなかった。ただ、彼女は誰も心配させたくはないと思う。だから、淡く笑んで三人が部屋を出るのを見送った。

 

 そしてそのまま李斎は部屋の主に向かい合う。驍宗は自席についたまま、彼女を見つめていた。

「……」

 そこにいたのは確かに昨日今日の驍宗ではない。その紅い双眸にかつての苛烈な光がある。

 李斎は生唾を飲み込んだ。自分は今、己の器量を量られているのだ。

 彼女は一息ついて、驍宗の席に近づき、その前で床に跪いた。

「もうお聞き及びかと存じますが、承州師将軍から王師へ抜擢いただいた李斎でございます」

「……李斎……字を呼び慣れぬ口調となってしまっていたら済まない。記憶を失ったことを詫びよう」

 少しの間を空けてから、彼は続けた。

「……公的な間柄だけでなく、李斎とは私的にも親しいはずだった。不実と思われるなら……それについても済まなく思う」

 驍宗は女性から言い寄られた経験ならいくつかあった。どの女も、彼が彼女たちの何かを忘れていればそれぞれに彼を詰ったものだった。しかし、李斎はこだわりなげに笑って済ませる。

「不実どころか……。私的な交際についてもこのように改めて言及されますこと、主上の誠実な為人はお変わりではない。それが分かって李斎は安堵しております」

 落ち着いた声、柔らかな口調。そして、事実を受け入れる力強さを感じさせる、凛とした眼差しだった。

 

 驍宗は李斎を子細に観察する。

 彼の知る承州の劉将軍は人望に篤いことで知られていた。そこから想像できるのは温厚な為人だった。しかし、正頼達の話によれば、この女将軍はそんな枠では収まらない人物のはずだ。彼が聞き知った李斎という女性の行動は、現実味を伴わないほど驚きだった。

 他国に出向いて覿面の罪を唆してでも自分の手に一軍を手に入れようとするなど、あまりに浅ましくも猛々しい。思いとどまってくれたと聞いて胸をなでおろしたが、罪を唆しかけた当の相手、景女王から前代未聞の助力を取り付けることもできたのは一体どういう経緯か。そして、存在することさえにわかに信じられぬ西王母に相対して言い負かしてくるとは、どれほど激情ほとばしる熱い人間なのだろう。

 

 だが、目の前に現れた李斎という女性は、聞かされた話と違って、しごく常識的で穏やかな人間にしか見えない。

「人は見かけによらないものだ」

 驍宗は目元を緩めてみせた。それを見て李斎は自分が緊張していたことに気づく。

「私はよく常人離れした傑物と言われてきた。その私から見ても、李斎の行動は想像の範疇を超えている。それほどの人物なのに、李斎は人を竦ませるようなものがあるわけではなく、温和な為人のように感じる……」

 李斎は軽く笑んで自身の功績を否定した。

「私が何かを成し遂げたというわけではございません。私はただ駄々っ子のように足掻いていただけでございます。しかし、この李斎には援けてくれる手があった。戴を真の意味で救ったのは諸国の方々の御厚情、台輔の胆力、そして戴に住む名もなき民の力です。それに何より主上が生き延びて下さったことで戴は息を吹き返すことができたのです」

 そう聞いた驍宗は、はっきりとした笑みを浮かべた。

「李斎が駄々をこねたことを感謝しよう」

 それから、と彼は続けた。

「私が王師に任じてからわずか半年で李斎には大変な苦労をさせた。右腕の件を心から詫びる」

 李斎は少し悪戯めいた顔を見せた。

「主上は何度も詫びて下さいましたし、私も自分の不調法だと何度も申し上げました。ひょっとしてこのお話も蒸し返さなければなりませんか?」

 相手に笑顔で言われては、驍宗も微笑んで見せるよりない。

「李斎は、強く、優しいのだな」

 李斎は少し面喰った。阿選の乱後、さまざまな賞賛の言葉を浴びたが、ここまで端的で簡潔な表現は意外と聞くことが無かったと思う。

 その言葉を発した当の驍宗は、指の付け根を顎に当てて考える仕草を見せた。やはり率直な態度で、何を飾ろうともせず、彼は己に向けて真摯に問いかける。

「……私が私的にも親しくなったのも故があってのことだろう……。思い出したいものだ」

 

 その言葉に李斎の心は一瞬大きく揺れた。驍宗が記憶を失ったと、そう聞いて頭では理解した。ただ、これまで実感がわかないでいたのだった。

 彼の外見はいつもと変わらないように見える。その顔、その声、そしていつも通りのその誠実さで、彼は忘れてしまったことを惜しんでくれる。

 何もかもが昨日と変わらないのに、今日の彼は今の彼女を覚えていない。

 

 ああ、本当なのだ……。李斎はここでようやく、自分が相手に忘れられてしまっている事実を噛み締めた。心の中が一瞬空洞になり、そこへ吹き上がるような哀しみが襲い掛かる。

 足元が崩れるような気がする……。利き腕が無い自分は、武人としての第一線を後進に譲った。その後も自分が必要とされれば出来ることはしている。下界を旅して民の暮らしを報告したり、他国の使者と面会をしたり。しかし、自分が白圭宮にいる理由の大きなものが、驍宗に求められているからだとも思っていた。自分を必要としてくれたその相手が、もう自分を必要としないかもしれない……。得体のしれない黒々とした感情は寂寥とも悲哀とつかぬ、重たいものだった。

 その衝撃を李斎は軽く目を瞑ってやりすごした。そして意識して唇の両端を上げ、静かな口調で返した。

「天が結ぶご縁があるなら、いずれまた再び始まりましょう」

 

 驍宗は、李斎の表情──口元に笑みを瞳に哀しみを湛えたその顔にしばし見入った。

 驍宗には、自分に恋していると言う女性の気持ちが理解できたことがない。想い人でありながら相手に忘れられてしまうことは、きっと深い哀しみではあろうが彼には想像のつかないことだった。

 だが、李斎という女性に一瞬浮かんだ表情。──不意を突かれたような驚きと、心から何もかもが滑り落ちてしまったかのような虚ろな表情。何かが内面を吹き荒らしていっただろうに、即座にそれを振り落として冷静さを纏って見せた姿。その様子に彼は胸を突かれる。

 

 ゆれ動く感情と、それを自制する力。そこに驍宗は彼女の強さを見る。そのどちらもあるからこそこそ溜め込んだ力も振り切る力も大きいのだと思う。──ああ、そうか。彼には分かるような気がした。驍宗から見ても破格の働きを見せた救国の女将軍と、この目の前の穏やかそうな女性とが同じ人物だということがようやく腑に落ちる。

 

 彼女が蓬山で王師将軍は情けを用いず選ぶべきと言ってのけた場面も、右腕が腐り落ちても自分の不調法だと言いきった場面も、天に食って掛かったという場面も、この人物ならそうすると目に浮かぶ気がする。戴という国やその民のためなら、この女性にとっては自然とそのように振る舞えてしまうのだろう。

 

 自分と彼女は互いに王と臣下という立場を崩すことがなかったのだと、正頼と英章がその物堅さをからかう。確かに自分とこの女性ならそうだろう。それでいながら、自分がいつしか臣下を大切に思う気持ち以外の感情をも抱くようになったのも、分かる気がする。

 

 この女性は、他人のためならば本当に身を投げ出すよう生き方をする……。そのような相手を見ていれば、無私の広い懐に抱かれていたい気にもなるし、危なっかしいその姿を守ってやりたい気にもなるだろう。この女性と向き合っていれば、何かのきっかけで恋に落ちてしまうのは分かるような気がした。

 

 ──このように考えをめぐらせていた驍宗の耳に、不意に窓外から高い音が飛び込んできた。

 

 ちちち……という鳥の鳴き声だった。驍宗は物思いから我に返り、明るくなった空を木々の梢越しに見あげた。そして、部屋の中で自分が彼女をずっと跪拝させていたままであることに気づいた。

「済まない。考え込んでいて長い間跪かせてしまった。立ち上がって欲しい。そうだな、そこの窓の傍の卓で少し話でもしようか」

 李斎は立ち上がろうとした。ただ、彼女はここのところ膝を折って過ごすことが長い間なかった。王は自身の想い人となり、蓬莱育ちの麒麟は人に礼を取られることを厭う。跪拝するのも久しぶりのことだったのだ。

 それに加えて、想い人に忘れられた心の痛みは、本人が葬り去ったつもりでも彼女の内奥に残っていたらしい。

 彼女は普通に立ち上がったつもりだが、自身の人生でも滅多に感じることのなかった立ち眩みを覚えた。腰は上がったものの、そこで上半身の均衡を失う。さらに、よろめいた際に足が官服の裾を踏んだらしく、思う以上に急に大きく姿勢が崩れた。

 転んでしまう……そう思った彼女はほぼ無意識に左手を床に伸ばす。

 ──しかし、彼女のその手はふわりと宙を掴んだ。

 

 驍宗だった。彼は俊敏に席から立ちあがり、立ち上がり損ねた李斎の体を抱き取った。大人の女性一人を支えるのだから、腕だけではその重みに耐えられない。彼は体幹を寄せ、腰を添えて、床に崩れ落ちそうだった彼女を抱きとめる。しっかりと身体を固定された女は驚き、乱れた髪の中から男の顔を振り仰いだ。抱き合った状態の二人の顔は互いにごく間近にあった。

 

 李斎は驚きはしたが、その後ほっとした顔をした。彼女はこれくらいの距離で想い人の顔を見ることに慣れていた。驍宗の方も、上手く彼女を抱き取ったところまでは何とも思わなかったし、顔の傍に女性の顔があっても本来はそれ以上のことは感じない。

 だが、しかし。驍宗の頭に、この女性は自分の想い人だという事実が浮かぶ。そう彼が意識すると、彼女の瞳に不思議と吸い寄せられるものがあるように感じ、彼は思いがけないものを見た驚きを顔に載せた。

 そして、彼が驚く様を見て、李斎は自分がその原因だと気づく。想い人として仰ぎ見ている男は想い人ではない。彼女は気まずく恥ずかしく、顔を赤らめた。だけど──相手のその緋色の瞳から目を逸らす気になれない。思い出して欲しい、という願いを捨て去ることができないのだ。

 

 彼は彼女を抱きかかえたまま、そっと片膝をついた。そして、膝を床に下ろしたものの依然彼の腕の中にある彼女の上半身も、男の腕で起こしてやろうととした。しかし、その途中で彼の動きは止まる。見つめてくる彼女の視線を断ち切ることができなかった。

 

 自分が腕に抱くこの女性はただものではない。衣の右袖の中身がないのはその武勲の証。戴の人間らしい烈しい強さ。その強さに裏付けられた優しさ。彼女は己の器量の全てを以って、彼が手にした国を彼に代わって守り救ってくれた。どれほどにかその存在に感謝する。けれども、彼女は今、彼に抱かれながらどこか心細げに彼を見上げる。何かから自分を救って欲しいというように……。

 

 彼はそっと睫毛を伏せた。紅い瞳は彼女の唇に向けられた。半ば開いた彼女の唇は、今まで彼が感じたことが無い蠱惑的な色をしていた。彼は掠れた声で囁く。

「構わないか?」

 李斎も小声で答えた。

「ええ……」

 彼は、抱きかかえた女に項垂れるように顔を寄せる。その動きに白銀の髪が幾筋かさらりと零れ落ちた。彼の以前より細くなった顎の線が、彼女の乱れ髪に縁どられた頬に、角度を変えて重ね合わされる。ややぎこちなく、けれども包み込むように優しく。

 ただ肌を合わせるだけの口づけは、想い人どうしの口づけにしては簡単に過ぎ、知り合ったばかりの仲どうしのものにしては長すぎた。

 

 彼は唇を離すときに再び視線を上げ、彼女の瞳を覗き込んだ。

「私はいつもこのようなことを?」

 彼女は黙ったまま俯いた。いつもはもっと……とは言えなかった。

 彼は一度彼女の頭を胸に抱きよせ、そして彼女の身を起こして姿勢を整えた。

 李斎はようやく自分の足で立ち上がる。左手で乱れた髪を整えようとするが、そこに男の指が添えられ、彼女は驚いて手を止めた。彼は、彼女が外に出ても怪しまれない程度に、手櫛で髪を梳き、後ろで髪を括る紐も結び直してやった。

 

「すまぬが……。このままこの部屋を引き取ってもらいたい。別に李斎が私を不快にさせたわけではない」

 彼は苦く笑んで見せた。

「私も男だということだ。このまま李斎と二人きりでいては、己が何をして良いのか分からなくなってしまう」

 胸がざわつく思い。身の内からこみ上げるうねるようなもの。相手が自分の想い人だと周囲が言い本人もそう言うのなら、彼女にぶつけてみてもいいのかもしれない。だが──。

「記憶を失う前の私はきっと李斎を大事にしてきたのだろうと思う。そして、いつか必ず私は記憶を取り戻そう。だから……過去の私にも未来の私にも恥じぬ私でいたいと思う」

 李斎は静かに深くうなずいた。

「主上らしいおっしゃりようです」

 彼も口元を緩めた。堅苦しいばかりで面白みもない男が、確かにこの女性は自分の想い人なのだと思える答えだった。

「このまま朝議をこなし、一日が過ぎれば思い出せるかもしれない」

「そうなれば嬉しゅうございます」

 李斎は姿勢を正し、「失礼を致します」と一礼して外に向かった。

 

 扉を開ける前に、李斎は驍宗に振り向いた。

「主上、もし夜に悪夢をご覧になったら李斎をお呼びください」

「……?」

 李斎は武人らしく胸を張った。

「李斎は未だ武人のはしくれのつもりでおりますゆえ、主上の夢の中でも護衛を勤めます」

 驍宗は面白そうな顔をした。

「男女の仲だというのに、李斎はやはり臣下なのか?」

「及ばずながら主上のことは私がお護り申し上げたい、と」

 驍宗は愉しげに頷く。

「これは頼もしい。さすが戴を救っただけのことはある。私のこともきっと助けてくれるだろう」

 李斎は再度頭を下げて部屋を出た。

 

 驍宗は李斎を帰した後、再び女官に鏡の前に座らされた。朝議の前に髪を結う必要があった。鏡に映る己の影は、英章が来る前に鏡で見た貌とも少し違って見えた。彼は鏡に問う。

「お前はお前が思うほどの傑物ではなかった……せめて、己の不甲斐なさから何かを学んでいたのなら少しはましだが……。お前は何を失って何を得た?」

 鏡の中の男は無表情だった。だが、その瞳に困惑と焦りの色が浮かんでいることを、当の本人がよく分かっている。

「何故忘れてなどしてしまったのだ。お前はいったん死んで生き直しているのだろう?」

 その問いの答えは得られず、彼は冠の支度をする女官に気づかれぬよう静かにため息を落とした。

 

 朝議の後、英章が「兵站のことで」と見え透いた理由で、泰麒と共に自室に向かう驍宗についてきた。もちろん早く李斎のことを思い出せ、と言い募るためだ。英章の時間が許す限り、彼は驍宗にあの手この手で記憶を取り戻させようとしたが、叶わなかった。

 英章が帰っても、そばに控えていた泰麒はそのまま驍宗の傍を離れようとせず、驍宗は首を傾げる。

「追い払うつもりは全くないが……。台輔には瑞州候の仕事があるのではないか」

 泰麒は笑んだ。

「私も執務は五日先まで済ませてしまいますので」

「なるほど。私たちは似たもの主従であるらしい」

 ひとしきり二人で笑いあった後、驍宗はゆっくりと瞬きをして表情を改めた。

「台輔はどう思う? 英章の言う通り早く記憶を取り戻さねばと思っているが……」

「そうでございますね……。ええ、私も『蒿里』と呼んでいただきたいと思います」

「済まない。蒿里、だったな」

 泰麒がその年齢以上に大人びた顔つきで遠くを見つめた。

「私は字を賜って嬉しかったんです。子どもの頃の私は確かに驍宗様の覇気に竦んでもいましたが、不器用ながら幼子だった私を慈しんで下さったのが嬉しくもありました」

 仔馬を下さったり、抱き上げて下さったり……と泰麒は思い出を数え上げた。

「私は単に麒麟だからというだけではなく、その驍宗様にこそ玉座に帰還して頂きたいと思いました。いや、強く願っていたと言った方がいいでしょう。そして、私が転変してお救い申し上げることができて嬉しかった……。そうですね、私が主上に特に思い出していただきたいのは、私が主上をお救い申し上げたあの場面です。私が主上のお役に立てた……主上が私を肯定して下さったあの場面……。私が主上を尊崇するように、主上が私を必要だと認めて下った、あの……」

 泰麒は感情が昂り言葉に詰まった。その感情を鎮めるために息を吐き、少し表情を和らげる。

「饕餮を下したときも、驍宗様の『お助け下さい』という一言で奮起できたのを思い出しました。ふふ、とてもお強い方に頼られるのは嬉しいものです」

 驍宗は目を細めた。

「蒿里は優しいばかりではなく、強いのだな」

 泰麒は意外そうな顔を向けた。

「人の役に立ちたい、助けたいという気持ちが大きいのは麒麟ゆえか。しかし、それがただの優しさで収まらないのが並の麒麟とは異なろう。饕餮を下したことも。阿選と渡り合って最終的には転変して私を救い出したことも。本当に強い麒麟だ」

 泰麒は思慮深げにしばし黙って言葉を探した。

「……主上をお助けできて私は嬉しゅうございました。英章などが主上を『可愛げが無かった』と言うように、かつての驍宗様は誰の助けも必要としない方で、それが私には寂しかった気がします。思うに、人は助け助けられることでその本分を発揮するのでしょう。助けを求められて助けることができ、そのことが私自身の心を助けることになったのだと思います」

 そう、最終的に私は主上に助けられたのです──泰麒はそう言ってから驍宗を真正面から見つめ、ここにはいない人物に触れる。

「主上、どうか李斎を思い出してあげて下さい。李斎は人を助けてばかりで、自分が助かろうとあまりしません。李斎が弱音を吐いて誰かに縋ってくれるのなら、私はその相手に心から願います、どうか李斎を助けてあげて下さい、と」

 驍宗はしばらく押し黙った。

「私も是非そうしたい……」

 朝に会った彼女。腕の中から自分を見上げて来たあの瞳。何かから救って欲しいと言いたげだったあの視線。彼女の何かを救えるのなら……と、いつも堅苦しいばかりの自分がつい口づけを落としてしまったあの唇。李斎のように強く烈しい女が、あのような表情を垣間見せたことがたまらなく愛おしかった。

 だが……。

「彼女を助けるのに私が記憶を取り戻すのが第一だとしても。あれほどの女傑に対して何をしてやれるのだろう? 彼女は優しく強い。一人でも凛然と立っていられるように見える。何とかしてやりたいとは思うのだが……」

 泰麒は暫く黙り、少し苦笑して答えた。

「私についても優しくて強いと評価して下さいました。でも、私は主上なしでは在ることができません。私との間にはおそれながら互いを必要とする絆があるのだと存じます」

「……」

 無言の驍宗に対し、泰麒は苦笑をますます強くする。

「李斎との絆がどのようなものなのか、なんて私に聞かないでくださいね。でも、お二人の間に確かにあったはずです。思い出せばお分かりになるでしょう」

 私はお暇いたしましょう、と泰麒は辞去の意を示した。

「男性と女性の間のことは麒麟には分かりかねますから。主上が思い出してあげて下さいね。主上はそうしてあげなくては……」

 けれど、泰麒は途中で違う考えにも行きついた。

「いえ……。もし仮に主上が思い出せなくても、主上と李斎の間にはこれからだって昔と同じ結びつきが生まれるのではないかとも思います」

「そうかもしれぬ」

 驍宗は口づけの感触を思い起こしながら言った。その人間の男らしい胸中を彼の麒麟は知ってか知らずか、にこりと笑んで頷いた。

 

 夜が訪れ、彼は一人牀榻でやすむ。李斎の件以外、王が記憶を失ったからといって特に何の支障もなく一日が終わった。それほどに彼の王朝は順調だった。

 しかしながら……その彼の国を救った女将軍のために、彼は記憶を取り戻してやることができないままだった。彼の麒麟は彼女を助けて欲しいという。そうしてやりたいが……。彼は失った記憶が戻るよう願いながら瞳を閉じた。

 

 彼が眠りに落ちて少しの間が経った頃。

 彼の忘却は白刃に切り裂かれて散り去った。

 

 彼が夢におちいるやいなや、暗闇から閃光が次から次へと彼に襲い掛かってくる。彼は寒玉を手にひたすら防戦を強いられる。あれらの太刀筋、賓満をつけられた赭甲達の……。驍宗が躱しても躱しても、予想できない斬撃が彼を襲う。

 ──ああ、勝てない。敗北を喫した自分はどこかへ落ちていく。それはあの函養山の竪坑の底なのか、それとも絶望という感情の沼なのか。

 

 牀榻の中で驍宗の緋色の瞳が開いた。全身に嫌な汗が噴き出ている。胸板が目に見えるほどはっきりと上下し、はあはあと荒い息が口から吐き出される。彼は腕を額に当てた。そして、天井に向かって呟く。

「なぜ、忘れてなどいられたのだ……」

 己の言葉不足と慢心、見通しの甘さ。それが戴の民を七年にわたって苦しませたのに。李斎の規格外の女傑ぶりも、己が彼女に強いたも同然なのに。

「……済まなかった……」

 あの七年の間に味あわせてしまった苦しみについても。それを忘れてしまった今日についても。

 それから彼はしばらく考え込む。彼の麒麟の言葉を思い起こしながら。

 

 李斎はその夜を窓辺の卓に座って過ごしていた。窓越しに夜空を見るとはなしに見上げていた。月の影にときおり雲がさし、李斎の思考もゆれ動く。

 驍宗はこのまま何もかも忘れていた方が幸せなのではないのだろうか。いや、あの為人では、忘れて幸福になろうとするご自分を許せまい。しかし、だからと言って何をどうすればいいのか誰にも知ることはできない。いったい……。

 

 人の気配がした。彼女は素早く鋭い視線を臥室の戸口に向けた。ただ、相手を認めた彼女の顔つきはすぐに柔らかなものへと変わる。

「主上……」

 驍宗はそっと部屋に滑り込んで足を止めた。その緋色の瞳は、朝に比べて湿り気を帯び、温かくやわらかな感情を映しているように見えた。実際、彼は微笑んで見せた。

「助けて欲しい」

「主上……?」

 彼の表情に苦いものが混じる。

「思い出した。悪夢を見たゆえ助けを求めに来た」

 李斎は目を見開いて立ち上がった。二、三歩動き出したところに、彼が続けた。

「昔は七年待たせた。一日経たずに戻ったことを褒めて欲しい」

 彼女は軽く部屋を駆けた。最後の一歩は床を踏まず、彼の首に腕を回しながら飛びついた。彼もまた、自分に預けられた身体をしっかりと抱き取った。李斎は涙声で言う。

「思い出して下さってありがとう存じます。李斎は助けて欲しい言われることが嬉しゅうございます」

 李斎はつくづく損な性分だ、と彼はため息をついた。自分の首筋に抱き付く女の髪を軽く撫でる。

「夢の中で赭甲達に襲われた。勝てないという絶望がこうも恐ろしく、民を巻き添えにしたことがこうも苦しいとは……。だから、李斎に助けて欲しい」

 彼は眼を伏せ、彼女のうなじに顔を埋めた。

「……そう言える私で、そう言える相手がいて良かった」

 腕の中の女の身体がさらに重くなった。とろけるように彼に身を投げ出してくる。助けを求める男は、助けてくれる女傑をしっかりと支える。

 

 絡み合う二人の首がほどけた。至近距離で互いの瞳をみつめ、やがて唇を重ね合う。

 月は厚い雲に隠れたらしい。灯りもなく暗闇となった部屋に、ひそやかにかすかな水音がした。

 自他共に認める堅苦しいだけで面白みのない男は、ただただ生真面目に女の反応を探っていく。舌の先で、指先で──己の身体をどう使って何をどうすれば彼女の吐息はより熱くなるのだろうか、と。それが彼女を救うことでもあり、彼を救うことでもあった。

 




くどくて申し訳ございませんw

2022年現在、十二国記の戴国メンバーをモデルにした、平安ファンタジー小説を投稿中です。
驍宗様はあまりに完璧すぎてキャラとして動かしづらかったので、英章と合体して別キャラになっております。
しかし、李斎や臥信、霜元的なキャラはわりとそのまま登場してます。
後半は、双璧の阿選をモデルとしたキャラのクソデカ感情が炸裂するんですよw
是非お読みいただければ幸いです。

「錦濤宮物語 女武人ノ宮仕ヘ或ハ近衛大将ノ大詐術」
https://kakuyomu.jp/works/16816927860647624393
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