笹木咲ちゃんのプロセカ配信を見ていると社さんとのエピソードが突然出てきました。
それを聞いていたら、どうしても筆を取りたくなってしまってしまい...。

【ご注意】
○笹木咲×社築の妄想短編小説になりますので、苦手な方は避けてください。
○プロセカに関する笹木咲さんと社築さんの実際のトーク内容を元に創作しましたが、解釈違いやイメージ崩壊など感じる方もいると思いますので、ご注意くださいませ。



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ツタエナイ コトバ

そう簡単な祈りだった端から

 

段々と消える感嘆

 

今から緞帳(どんちょう)が上がるから

 

静かな開場を後に『さよなら

 

 

 寝不足気味の頭を何とか呼び覚ましながら笹木はスタジオへと入って行った。

「おつかれさまでーす。」

笹木が挨拶をしながらドアを開けると中で収録の準備をしていた数名のスタッフが元気に挨拶を返していた。

今日は久し振りに椎名とのスタジオ収録の日だ。椎名とのコラボも、スタジオでの収録も本当に久し振りだった。

笹木はスタジオの隅に用意されていた会議テーブルとパイプ椅子で構成された簡易的な出演者の待機スペースへとまっすぐに進むと、椅子に腰掛けるなり持ち合わせていた少量の荷物の中からタブレットを取り出すと真剣な顔で何かを始めた。

 

 

言いかけていた事が一つ消えてまた増えて

 

背中に後ろめたさが残る

 

従いたい心根(こころね)吐き出さぬように込めて

 

胸の中が(おり)のように濁る

 

 

あの番組(レバガチャ)が最終回を迎えてから社とは暫く会えていなかった。

それはお互いに配信者として認められて忙しい毎日を送っている証拠でもあるから嬉しい悲鳴ではあるのだが、そんな日々の中でフッとあるものが笹木の目に止まったのだ。

「プロジェクトセカイ...か。」

笹木はゲームが大好きだ。楽しくゲームをするために仕事を頑張っているとまで言っても過言ではない。

だが、所謂音ゲーと呼ばれるジャンルには余り手を出していなかった。

別に苦手だとか嫌いと言うわけではないのだが、何となく触れずに来ていたと言う表現が一番しっくり来るかもしれない。

「やしきずが配信でやってるやつやよな。これ。」

笹木は無意識のうちにアプリのダウンロードを始めていたのだった。

数日後、枠を取って配信でプロセカをプレイしてみると、笹木が想像していた以上に面白かった。

「ハイハイチャイナ♪ ちょちょ夢心地♪ 」

思わず口ずさみながらプレイしてしまうほどだ。

何より驚いたのがミュージックビデオのクオリティだ。全曲しっかりとミュージックビデオがついていて、どれも可愛くてクオリティも高い。

「えーちょ! これ全部見たい! 全部見たい! MV全部見たい! 」

こうして笹木はプロセカ沼にずっぽりと嵌まっていったのだった。

 

 

受け止めたいことが自分さえ抱えられず

 

持て余したそれを守っている

 

霞んだ声はからからに喉を焼いて埋め尽くす

 

何を言うべきか分からなくて

 

 

潜在的な音ゲーのセンスなのか、それとも元々笹木自身が持ち合わせていたゲーム『勘』なのかは分からないが、笹木のプロセカの腕前は見る見るうちに上達していった。

プロセカ配信が増えたのは言うまでもないが、プライベートでも、仕事の合間の空き時間でも気が付けばプロセカで遊ぶようになっていたのだ。

「くー...あかんかー! 」

最初にぶつかった壁は楽曲レベル26だった。

「なんか。こー...しっくりこーへんのよなー。」

ここまで来ると小手先の技術ではどうにもならない段階に来ており、笹木は次のステップへと進むためのきっかけとなる一歩を模索していた。

 

 

感じてたものが遠く放たれていた

 

同じ様で違うなんだか違う

 

何時まで行こうか 何処まで行けるか

 

定かじゃないなら何を想うの

 

 

笹木が社と久し振りに顔を合わせたのは、そんな時のことだった。

時期的なものもあって本社のスタジオ内でひっそりとレバガチャの打ち上げが開催された。

「そうだ! 笹木! 」

大好きなお酒を呑んで上機嫌に顔を赤らめた社が話しかけてきたのだ。

「な、な、急になんや? 」

お酒なんて呑んでいないはずなのに、社と同じように頬を赤く染めた笹木は反射的に視線を逸らしてしまった。

「見たぞー。プロセカの配信! 」

「え...マジ? 」

笹木は一度逸らしてしまった視線を社の顔へと戻した。それは少し不安だったからだ。

社と言えば音ゲー。音ゲーと言えば社。と言う程に音ゲーに関してはにじさんじ内でもトップクラスであることは間違いなかった。

そんな社は音ゲー初心者の自分の配信を見てどう思われたのだろう。

「お前。めちゃめちゃ良かったよ! 」

「えっ? 」

「マジで才能あるよ! めちゃめちゃ上手くなる素質あるよ! 」

屈託のない笑みを浮かべながら社は確かにそう言った。

てっきり馬鹿にされたり、笑われたりするものだとばかり思っていた笹木は意外なセリフにポカンと口を開けたまま固まってしまったのだった。

音ゲーをやって来なかった自分が音ゲーの達人に褒められている。それだけでも素直に嬉しかった。

それが社であることが笹木の喜びを何十倍にも増幅させていた。

「それでさ。お前今どんな設定でプレイしてるの? 」

「せ、設定? 」

「そうそう。ライブ設定。判定調整とかさ。」

笹木は慌ててタブレットを取りに行き、アプリを起動させると、自分の今の設定を社へと見せた。

「ふーん。このタイミング調整ってさ、タップして調整した? 」

「あー...うん。せやね。そう書いてあったから。」

「そうか。実はな。これはそれよりマイナスで調整した方が良いんだよ。えーっと。そうだな。」

そう言いながらキョロキョロと辺りを見渡した社は壁際にあったホワイトボードを見つけると「ちょっと来てみ」と言いながら笹木を引き連れてホワイトボードの前へと向かっていった。

一体何が始まるのかと思えば、社はホワイトボードに簡易的なプロセカのレーンの絵を書き始めたのだ。

「そもそもタイミング設定って...。」

スタッフなどが打ち上げを楽しいでいたスタジオの片隅で、突如として社のマンツーマンのプロセカ講座が始まった。

『タイミングはマイナスの方が良い』

『目線は少し上目に固定する』

『使えるタイミングがあれば人差し指も使う』

『譜面やタイミングに癖があるから、そこは数をこなして慣れろ』

独自の攻略でプロセカを進めていた笹木にとっては、どれも初耳のアドバイスばかりだった。

社は真剣に笹木にアドバイスをしてくれていた。

なにより...。

『マジで才能あるよ! 』

さっきの社のセリフが本当に嬉しかった。

難易度が上がって挫けかけていたモチベーションが一気に高まっていた。

そして、この何でもない社との二人だけの時間が幸せだった。

社は酔っぱらっているし、無邪気に好きな音ゲーの話しているだけで、きっと何とも思っていない。

笹木は貴重なアドバイスと社の声と横顔を忘れぬように、しっかりと心に刻み込んだ。

 

 

僕らが離れるなら 僕らが迷うなら

 

その度に何回も繋がれる様に

 

ここに居てくれるなら離さずいられたら

 

まだ誰も知らない感覚で救われていく

 

 

収録スタジオの片隅で真剣な顔でプロセカに勤しんでいた。

「よっしゃ。」

社のアドバイスもあってか、今まで苦戦していた楽曲をクリア出来たことに、思わず笹木の口から小さな歓喜の声が漏れ出ていた。

「へー。案外上手やん。」

「うわっ!!? 」

急に背後から聞こえてきた声に笹木は本気の叫び声を上げながら振り返ると、そこには椎名の姿があった。

画面に集中していて気が付かなかったが、少し前から背後に立って笹木の腕前を眺めていたようだ。

「なんや椎名かぁ。驚かさんとってや。」

「いやいや。声掛けただけやん。にしても、笹木が音ゲーとか珍しいな。あんまやってるイメージなかったわ。」

長年の友であり、パートナーのような存在の椎名からの言葉に一瞬口籠ってしまった。

『プロセカをやりだした理由』

笹木の脳裏に楽しそうに説明をしている誰かさんの横顔が過ぎる。

喉元まで出掛かった名前を笹木は飲み込んだ。

「なんか最近みんなやってるから、うちもやってみよーと思って...。」

「ほーん...あたしもやってみよーかな? 」

「いや! 椎名は止めといた方がいいんちゃうかなー? 」

「えー? なんでなん? 」

いつの間にか笹木の隣の椅子に腰掛けていた椎名は少し頬を膨らませながら答えていた。

「うちより絶対向いへんって。だって『運』要素皆無やで。」

「んなことないって! ちょっと一回やらせてよー。」

そう言って笹木の端末を使ってプレイした椎名は数回遊んだところで、笹木の読み通りに「うん。向いてへんわ」と笑いながらタブレットを返してきだのだった。

「ほらなー。」

とは言ったものの笹木は密かに胸を撫で下ろしていた。

笹木がプロセカを椎名へ勧めなかった本当の理由。

 

それは...

 

 

 




最後まで読んで頂き有難うございました。

作中に挿入してある歌詞はプロセカ内で使用されている『ぬゆり』様の『ロウワー』を引用させて頂いております。
咲ちゃんがプレイしている様子と歌詞の内容、ヤシキズとのトーク内容を聞いていた時に頭の中に出て来たイメージを小説にしてみました。

同じくにじさんじのエデン組をメインにした『AdeN -公安第五課-』も連載中ですので、よかったら目を通して頂けたら嬉しいです。
今回は最後まで読んでいただきまして、本当にありがとうございました!


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