対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい+ 作:槍刀拳
デレッデレッデデッデデッデッ~♪
上原くんを拉致した連中を見つけ出した
爆弾の必要素材を集めた後に、ショッピングモール内で約3時間もデカ太ウンコしにいっていた蛇子ちゃんと付き添いのふうま君から連絡が掛かってくる。なにやら、『青空 日葵の父親』と行動を共にしているらしいが、こちとら平穏な世間話をしている場合じゃない。これからカルティストをぶち殺して、上原くんを助けるってのに。
だから一喝 入れてやろうと思ったのに、ふうまの野郎! アイツ先に電話を切りやがった!
まぁ、いいや。まずはカルティストをぶち殺すことが先決だ。
ただ上原くんが怪我しないようにと、丁寧に計算した思いやりと殺意を乗せた手心爆弾による《爆破》であったため、半数以上のカルティストは半殺し状態になってしまったが…。やっぱりカルティストなので、カルティストの脳みそを千枚通しでかき混ぜて、脳に障害を与えてぶち殺しておいた。
何か上原くんがガタガタ震えているけどカルティストはぶち殺したし。カルティストをぶち殺した
脱出したら外で徘徊しているオーク戦も待っていますし、その先にはホテルINも…。クックックッ…。
「大丈夫ですよ。危険なあのヒトたちは無力化しました。もう大丈夫。私が居ます。ゆっくり落ち着いてください」
「ち……ちが…………て……て……てて……て……に、にげ……逃げて……」
「——!」
わなわなと震える彼の視線は、微笑む私の背後。震えながら突き出した指先も天井を指している。その意味を理解した瞬間……冷汗が背筋を伝う。
背後を振り返らなきゃいけないのに……怖い。でも、後ろにいる。でも振り替えなければ、見えなければ〈回避〉すら許されない。
……だから、それでも、彼を護るために意を決して背後の天井を見上げた。
それは恐らく、私が最初にこの部屋を覗いていた時からいたのだろう。あの時、私が感じ取った“身震いしてしまうようなチリチリと皮膚が炎で炙られた火傷のような違和感”はコイツが存在していることを直感していたことによる不快感であったようだ。
この部屋は非常に薄暗く、光源と言えば床に置かれた蝋燭仕様のランタンばかり。足元しかほのかに照らされない部屋にそのインクのように黒くて透明なゼリー状で無形物の物体が天井に隠れることは実に容易であったのだ。
ソレは常に天井に張り付きながら様々な形状を造りながらも、天井に走った巨大な亀裂から……書道半紙に注がれた墨汁のように想像を絶する漆黒のインク塊が滴る雫のように具現化していた。
バラのような多歯症、二重歯列の口の中のように幾対もの歯を持っていたが、 ループするGif画像のように生えては消失しの繰り返しを行っている。 無形胴体がうねるたびにごぽんごぽんと粘性の液体から空気が爆ぜるような音を響かせていて、 爆ぜた空気からは人間の死体が炎天下の中……腐り落ちていくおぞましい悪臭を噴出していた。 その不定形な塊には、“目”という器官は存在しない筈なのに、 こちらの様子を観察するかのような動きで触手を左右に振るのだ。
私はこれを知っていた。太古の夜の父/偉大な旧き這うものよりは、多少“マシ”かもしれないが出会いたくはなかったし、これがいるということは……対魔忍世界の世界にも関わらず、その他のラヴクラフトの“創造物”は、存在することの裏付けにもなってしまったのだ。
「大喰らいの泥濘……。赤黒き花弁……」
引きつった顔でそれを見上げる。コレと出会うぐらいなら、まだ“
大喰らいの泥濘はこちらの様子を伺いつつも、私がとどめを刺したカルティストや血の付着した道具を舐めとり、分解していく。シェフに切り分けられた肉を、頬張る客のように。その取り留めない食欲で、片っ端から飲み込んで“吸収”して……。取り込まれた肉の外皮が溶けて、半透明の肉体の中で、まるでアメーバーが爆ぜるように分解されていく。眼球が……内臓が……骨が……何一つ残さずに。
黒に赤が混ざって……赤黒い花のように……。
体外に吐き出されたのは肉が付着していない無い道具だけ。排便するように地面へ、べちゃり……という痰が地面に吐き捨てられるような不快な音と共に落ちていく。
「——っ。……上原くん……動け……ますか?」
天井の泥のような塊を可能な限り視線に入れながら、震える呼吸で静かに大きく深呼吸をする。ガチガチとなる歯を抑えて彼を大喰らいの泥濘からが見えないよう庇いながら、一瞬ちらりと振り返った。
……駄目そうだ。彼は激しく震えながら、細かく首を振っている。当然だ。人生の初めてでこれを見て……世界の真実を目の当たりにして、正気を保っていられるほうが異常なのだ。
……できることなら、こんな
「……そうですか……」
詰まるところ。この場で何とかできるのは、また私しかいないようだ。
今度はチラリとペットボトル爆弾で気絶している邪教の親玉に視点を移す。あの雄は、まだ波状のナイフと魔導書を手にした指が痙攣し、胸部が上下に動いている。
泥濘を刺激しないよう取り計らいながら、上原くんを完全に祭壇の真後ろに移動させて泥濘からの射線を切らせる。それから私は、ゆっくりとナメクジより遅い速度で邪教の親玉に近寄り、手にしていた波状のナイフと魔導書を奪う。
恐らく……この書物に目の前の泥濘を消散させる方法があるはずだ。現にあの吸収されていった
だが目の前で悠長に読んでいる暇などあるわけもない。
……だから私が……この場で行ったことは……。
「——上原くん」
「……な……な……な……に……?」
魔導書は背中にナイフはハンカチでくるんでポケットにしまい、またゆっくりと動いて、上原くんに近づき意識をこちらに集中させる。
ガチガチに震えて動けない鹿之助くんに向けて、頑張って“慣れている”ように作り笑いを浮かべながら、彼の手や肩を卵黄を掴むよりも優しく握って、早口になるのを抑えながら ゆっくりとした口調で穏やかに声をかけ始める。
「怖いのは分かります。……ですが、大丈夫です。——今度は私が居ます。私がついています。——私が“必ず”貴方を無事に安全な場所まで送り届けます。約束です。——これから、この消火器で一時的な壁を作り出します。そうしたら大人しく私に担がれてー——私が『大丈夫』というまで私のお気に入りの曲でも聞きながら、耳を塞ぎ 目を瞑っていてください。……お願いしても、良いですか?」
短く言葉を区切ってわかりやすい言葉にしながら、彼にしてほしいことを指示するのだった。
「……うん……。……うん……っ」
「すぐに終わりますからね……任せて」
震えながらも私の励ましによって力強く頷いたのを確認してから、彼にヘッドホンを装着させ鼓膜が破けない程度のヘビィメタル……ではなく、彼が引いてしまわないような気分の上がるハードロックを流し始める。祭壇を隔てた向こう側から二日酔いをしたときのような胸焼けした感覚に苛まれるような啜り咀嚼する音が聞こえてきているが、これで彼はこの音に心を蝕まれることはなくなった。
それから手に持っていた消火器を作動させられるよう静かに安全ピンとホースを抜き取る。いつでも発射可能な消火器のホースを真上に向け我が主への祈りを済ませた。
大丈夫だ。いままでと同じ。慣れてきた作業にしか過ぎない。……そうだ。……恐れる必要なんかない。……この俺に何度も汚ねぇツラ見せやがって、そう“何度も同じ姿で襲ってきたって陳腐にしかならねぇんだよ”クソ
ギラついた笑顔で大喰いの泥濘を睨みつける。心の中で中指を立ててやる。私は何をビビってやがる? 何度も見てきた“陳腐な怪物”なんぞ、恐いことなんて何もねぇだろ? 自分を鼓舞する。……自然と口角がアガって来た。気分もノってきた。俺は、いつも通り殺るだけだ。……やってやる。
……鹿之助くんには何食わぬ澄ました顔でアイコンタクトを送り、向こうも震えを抑えながらも私のヘッドホンを両手で固定し頷き返してくれる。かわいいし、その健気な様子に勇気づけられる。
それから一気に消火器の薬液を天井に浴びせた。吹き出た薬液は、何もいない天井にぶち当たり、一時的ではあるが大喰らいの泥濘と不可視の壁をつくる。
もちろん、生きた獲物が本格的に動いたのだ。満腹を知覚できぬ憐れなヤツも黙ってはいなかった。一本鞭のようなしなやかな触肢が、消火器で遮られた煙を避けながら私を狙う。だがこちらは『新クトゥルフ神話TRPG』の選択ルール:『完璧な遮蔽』123頁が発動しているのだ。加えて『新クトゥルフ神話TRPG』の数的不利(104頁)が発動していようとも、初撃の2回攻撃は当たらない。こちらも外した攻撃に対して わざわざ居場所を教えてしまうような〈応戦〉行為は行わない。反撃したって、現状 コイツには“効果がない”のだ。
腰が抜け、立ち上がって逃げ出すことの出来ない上原くんを火事場の馬鹿力で首に抱える。徒手搬送法の
私の説明書には、前世のヨミハラで遭遇した対魔忍『
また現在、鹿之助くんを抑える反対の片手には
大喰らいの泥濘による またもや2連撃の攻撃。だがこちらも抜かりはない。そのための
荒業、そのイチぃッ! 『クトゥルフ神話TRPG系統』では装甲は重量に含まれない!
初撃で肉壁の胸が引き裂かれ、鮮血が周囲へと車に撥ねられた泥水のようにまき散らされる。激痛ではね起きたときの絶叫が響くが私には関係ない。お前は
生暖かい血が私達に降り注ぎ、上原くんの身体が一層強張るが、こちらとして一切の問題はない。何か固いものが頬にあたっているが、そのスティック♥ペロペロキャンディをもっと押し当てたって私は一向にかまわん! 子孫を残すという本能がきっと刺激されているのだろう。生理的現象だ。これは仕方がない。不可抗力だ。そう、仕方がないんだ!!! 合法だッ!!!
今度は扉から逃げようとする私達に大きな人の歯が生えた口で噛みつこうと襲い掛かってくるが、まだ肉装甲は使える。その怪物の口の中に
肉壁装甲をなくした私達を、大喰らいの泥濘はまだ追いかけてきている。しかし、ヤツが口の中に放り込まれている人肉に興味を引かれ、動きが鈍っていることはその緩やかに伸びていく触肢の動きを見れば火を見るより明らかだ。まぁ、あれくらいの図体のでかさともなると、触手の射程も30mぐらい伸びたっておかしくはない。
目前の視界は薄暗く、足元は見にくい。だが転んでしまえば……ヤツに追いつかれることは間違いなかったし、上原くんに不要な怪我をさせてしまう。だからこそ、転ばないよう足元に注意を払いながら可能な限り最速を保ちながら通路を走り抜ける。
その間にこの薄暗い通路の出口は目の前だった。残り僅か数mの位置に明るい蛍光灯に照らされた従業員専用の搬入口がある……!
「あともう少し——ッ!!!」
しかし、私達が通路の外に出るのよりも先にリュックサックと胸部に鋭い衝撃と、背中にじんわりとした生暖かい感覚。テロリストに撃たれたときのような熱が襲ってくる。
「ッッッッッ?!」
視線を下ろせば、黒い鋭利でしなるようなタケノコのようなものが胸から肺を貫通して生えていて、熱されたアイロンを内蔵から押し当てられて、内側から溶かされているような激痛が胸部に奔った。
「ッ——グ……ゥゥゥゥッ! ——(アイツ! 槍のように突き刺して……ッ!!!)」
……
絶叫を上げて意識が暗転しそうになるが『鹿之助くんを“怖がらせずに”安全地帯へ絶対に送り届けるのが私の使命だ』と自身を鼓舞し、歯が欠けてしまうほどに食いしばり声を抑える。自分を奮い立たせて、前進し続ける。槍が引き抜かれ、開いた穴からボタボタと血が床に落ちるのを感じる。引き抜かれるときに槍が蛇のようにしなって、内臓を抉っていく。私の鮮血が飛び散る。足が止まり、膝が笑いはじめる。息をするのが苦しい。膝をつきそうになる。痛い。苦しい。熱い。息が出来ない。
——それでも。私の〈幸運〉を使い切ったとしても。
——鹿之助くん“だけ”は助けるという固い決意だけは変わることはない。
(あのクソ牧師……! 一般人枠希望の私にどれだけ無茶させるつもりなんだ…! 私は、私は……! 対魔忍じゃねえんだぞ……ッ!)
心の中で悪態を付いて 痛みと窒息による狂いそうなストレスを発散させる。
ギリギリ、ビキビキと嚙みしめる歯音を立て。口から一含み分の血が零れ落ちながらも、従業員以外立ち入り禁止の搬入口の扉も越える。光が私を包み、それでも大喰らい泥濘の触肢は執拗な追撃してこようとするが……不意にそれは止まった。光に一瞬怯んだかと思ったが……アレは違う。突然、触肢が毒物でも浴びたかのように、のたうちまわり、通路の壁を破壊して、従業員休憩室の方へと引っ込めていく。
そう……だった……アイツには、火や化学製品が効くんだったっけ……。
……へっ……サンキューマッマ……。クソ安い洗剤があいつには致命的だったみたいだ……。
………
……
…
私が最後の意識として覚えているのは……途中にあったトイレ付近の通路で、鹿之助くんをゆっくり下ろして……。リュックサックを抱え傷口を隠してから……ヘッドホンをはずさせて『大丈夫』であることを伝えて……。白い壁に背中を預けながら“少しだけ休む”私に彼が、何かを必死に叫びながら……泣いている顔だった。あぁ……そんな顔もかわいい……。
……あぁ。
良かった……無事で……。
ほんとうに……よかっ……た……。
~あとがき〜
…『秋山 凜子』に対して行なった荒業にについては、まだ知らない方がいいですよ。でも現状言えることは、神葬は『荒業その1』は『秋山 凜子』に対して行っていません。重量(STRとSIZの対抗判定)を無視できる『荒業 その2』での運用はしました。
また とんでもねぇことをやらかしたんだろうなぁと思った閲覧者兄貴姉貴達へ。
少なくとも“探索者ムーブ”の中では、クトゥルフ神話TRPG(6版)のルールに基づいた普遍的な平常運転なので安心してください。
~今回 解説なしで使用したルール~
『新クトゥルフ神話TRPG』選択ルール:『幸運を消費して意識を保つ』121頁
~追記~
評価の際に必要な文字数を定めていましたが、今回を期にまた0に戻しました。