対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい+ 作:槍刀拳
しばらくの間ですが、本編で日葵(神葬)と鹿之助くんがちょくちょく話していたふうま君と蛇子ちゃんが、何処でどんなお花摘みをしていたのかについての話の風呂敷を広げたいと思います。
Episode-Insideでは、『青空 日葵(釘貫 神葬)』視点ではなく『ふうま小太郎』視点で物語が進んでいきます。(
Episode-Inside4-1+ 『ふうまと蛇子のお花摘み』
「さてと……事件のあった倉庫は駅前から少し離れた郊外だったな。駅のロータリに送迎の車両が来ているらしいが……」
「確か五車町に在住している警察官の人が蛇子達を現場に連れて行ってくれるんだよね?」
「あぁ。確実に魔族の息のかかっていない安心できる相手だとはアサギ先生からは聞いている」
サイゼリアでの昼食を済ませた後。
俺達は鹿之助と青空さんと別れ、2人からは見つからないようにショッピングモールを出て、別件での集合地点であるまえさき駅前のロータリへ足を運んでいた。
「それにしても、ふうまちゃん。蛇子が『お腹が痛くて動けない』なんて、嘘を咄嗟に思いつかなかったら……どうする気だったの?」
「その発想に至るまで……思案を重ねていたな。……元は人込みに紛れて、行方を眩ます予定だったんだ。それで分かれてメールで『バラバラになってしまったし、帰宅するまでの間。今回はお互いにそれぞれの休日を謳歌しよう』って提案するつもりだったんだが……」
俺は青空さんが困ったときに見せる後頭部を掻く仕草をする。
そう。本来であれば、もっと早い段階で人ごみに紛れる方法を用いて鹿之助達とは別れて別行動を取るつもりだったのだ。しかし意外にも青空さんが目敏く、人ごみに紛れていつものようにぼんやり考え事をしながら離脱しようとすると即座にこちらを発見し、鹿之助の腕を引いて近づいてくるものだから中々離脱することができずに困っていたのである。
そこで、俺の様子を見かねた蛇子がお腹を抑え『食べすぎたみたいでお腹がいたい……。ふうまちゃん、トイレまで
別れ際に何やら蛇子と青空さんが、お互いにウィンクで何か合図を送り合っていたし……俺と鹿之助には分かり合えない女性同士として通じ合える“何か”があったんだろうが……。……あれはいったい何の合図だったのだろうか?
「蛇子に感謝してよね!」
「あぁ、助かったと思っているよ。あとでみたらし団子を奢ってやるさ」
「えー? それぐらいなら稲毛屋でも食べられるんだけどー?」
「わかった。わかった。それじゃ、あとでパフェと苺豆大福もおごってやる」
「ほんと!? やったぁ!」
元はと言えば、蛇子が青空さんと共にショッピングモールで休日を謳歌してもらっている間に、俺だけが途中離脱して昨日のニュースで報道されていた例の倉庫へと向かって魔族絡みの事件捜査の協力をする予定だった。
しかし、直前に鹿之助がまえさき市に付いてくるという話を聞きつけ、蛇子が俺へ同伴の提案をしたことで予定が変わり、最終的に俺と蛇子で東雲革命派というテロリストが惨殺されたという例の倉庫に向かうことになったのである。
また五車町では、現在 青空さんが外出中のうちにアサギ先生の指揮のもと青空さんの母親に協力してもらって。俺がアサギ先生から、任務として課せられている青空さんが1年前所持していたという魔族語で書かれた本の捜索を3年の
俺は更にアサギ先生から、2週間前に五車学園へ入学し対魔忍になりたての青空さんに不審な動きがないか監視して欲しいとの指示を受けている。そこで戦闘能力は持たないが、危機察知能力や青空さんと最も仲の良い鹿之助を同伴させたのだった。
ただ……俺もアサギ先生がどうしてそんなことを俺に言ってきたのかは分からない。彼女が手にしている魔族語で書かれた本というのは、魔族に繋がるような危険なものなのだろうか?
また今回の監視の件や詳細については鹿之助に教えてはいない。『監視』などという言葉を使ってしまえばアイツは動揺してしまうだろうし、監視として見張らせるよりも“初めてまえさき市に遊びに来た青空さんが、迷子にならないように一緒に居てやってくれ”と言った方が鹿之助も変に緊張せずに済むのに違いないからだ。……蛇子曰く『あの様子なら二人は別行動を取ることはない』と話していたし、大丈夫だろう。
だが武闘派ではないアイツを同伴させることは、少し心もとなくは思う。……それでも鹿之助はやるときはやるやつだし、時に将来の夢である正義の対魔忍として悪からは一歩も退かないことから、友人として信頼できるやつであるのは間違いない。
まぁ、鹿之助と青空さんどちらが武闘派かと言われば……紫先生に対して情け容赦なく消火栓を吹きかける青空さんではあるが…………アサギ先生から事の顛末を聞いた身としては、青空さんも追い詰められて致し方なくあの手に出ただけであって、自分から周囲へ喧嘩をふっかけるような好戦的なタイプではないことが分かったし、きっと問題は起こらないだろう。
表側に立地しているまえさき市のショッピングモールへの買い出しとはいえ、万が一都合が悪い事態が発生したとしても鹿之助のことだ。
「……えーっと? それで送迎してくれる人の車種は……銀のクラウンだっけ! ——アレかな?! ……あれ? でも、あの人って……」
みたらし団子とパフェ、苺豆大福を奢ってもらえると聞いた蛇子は、子供のように跳ねながらご機嫌な様子で、今回俺達がお世話になる送迎の人物を探し始めていた。
5分もしないうちにその車を見つけて指をさしたかと思えば、今度は途中で歩みを止める。俺もその指に釣られるようにして指した方向へと視線を移した。
そこには俺の
蛇子が呟いたように俺もあの人については知っていた。……以前、帰宅する際に友人の家の中で見たことがある。
「蛇子——」
それゆえに俺の言葉で少し浮足立った蛇子へ、事前に伝えておかなければならないことがあったのだが……。俺の静止よりも早く、彼女は彼へ向けて大手を振って走り寄って行ってしまった。
………
……
…
「日葵ちゃんのお父さーん!」
「……ん?」
「青空 日葵ちゃんのお父さんですよね?!」
「あ、あぁ……? そうだが……。君は?」
「初めまして! 相州 蛇子って言います! 日葵ちゃんとは学校で普段から仲良くしてもらっている友達です! 蛇子達を現場に送ってくれる人は、先生が信頼できる人って言っていたので、どんな怖い人とか厳格な人かと不安だったのですけど日葵ちゃんのお父さんだったんですね! あぁー。蛇子、変に緊張してたけど……日葵ちゃんのお父さんで安心したぁ」
「というと……もしかして君が——」
「はい! 今日はお世話になります! あと、今回は蛇子だけじゃなくて……ふうまちゃん!」
輝くような笑顔をこちらに向けて、蛇子は俺を手招きする。これに関しては俺も片手を口元に当てて苦笑を隠して笑うしかなかった。
……今、俺達は『お腹を壊して』トイレへ行っているという
「……初めまして。青空さんのお父さん。ふうま小太郎と申します。今回はよろしくお願いします」
「なるほど。君達があの日葵が学校の出来事で楽しそうに話してくれる……『ふうま君』と『蛇子ちゃん』か。私は青空 源太だ。2人とも、こちらこそよろしくお願い致します。まぁ、暑い中での立ち話もなんだ。詳しい話は車の中でしよう」
俺も近づき、蛇子の隣に立って頭を下げながら挨拶をする。そんな俺に対して、彼はまじまじと見つめた後に、まるで対等な立場のように頭を下げて挨拶を返してくれた。
軽い挨拶のあと、青空さんの父親は素早く後部座席の扉を開けて車に乗るように誘導する。開け放たれた扉からは、冷やされた風が俺達を包み込み……蛇子はよほど扉を開けられて乗り込むように促されたことが新鮮な体験だったのか、さらにキラキラと笑顔を輝かせながら俺に対して「まるでお嬢様にでもなったみたい」と小声で話しながら車両に乗り込んだ。俺も蛇子の言葉に相槌を打ちつつも、また彼に促されるようにして爽やかなミント臭のする車に乗り込んでシートベルトを着用する。
「よし。乗ったな。寒かったら、こっちで冷房の調整をするから遠慮なく言ってくれ」
「ありがとうございます」
「ありがとうございまーす!」
俺達がシートベルトを着けたのを確認すると車は発進する。その走り出しは動いていることを感じさせないようなスムーズな動きだった。
世間は休日であり、道はそれなりに混んでいる。しかしカーナビを器用に操作すると、比較的 道の空いているルートを通って送迎をしてくれているようだった。
………
……
…
「……それにしても、意外と世界は狭いのだな。まさか日葵の友達が“対魔忍”だったなんて」
「ええ、俺もまさか今回の送迎の方が、青空さんのお父さんだとは想定していませんでした」
「となると、アレかな? 対魔忍というのは学校の中で優等生だけが成れるものなのかい?」
「えっと——「はい。今回の任務内容は他の学生には伏せられています。ですので、今回の事は青空さんのお父さんも青空さんには俺達を送迎したことは御内密にして頂けますでしょうか?」
「もちろんだとも。私も組織で働いている人間だ。家族と言えども守秘義務は守るさ」
ここで蛇子が余計なことを口走る前に俺の方から、蛇子の言葉を遮る形で押しつぶす。言葉を遮られたことに対して、不服そうな顔でこちらを見ていたが……こっちは気づいていないような顔で、彼との会話の主導権を握って話をする。
男同士で和気藹々と話していると次第に蛇子も、自分たちが『トイレに行く』という建前で離脱したことを思い出したのか、その後の世間話には割って入って来たが納得した素振りで3人での五車学園での出来事を会話のネタとして楽しみ始めた。
しかし……『対魔忍というのは学校の中で優等生だけが成れるものなのかい?』というのはどういうことなのだろうか。青空さんが五車学園に通っているということは、彼女も対魔忍としての素質があるから、俺達と同じ学校に通っているわけであって……。アサギ先生も彼女が対魔忍になりたてとも言っていた。遅れて入ってきた新入生とはいえ、入学時には対魔忍を目指す学校である趣旨の説明を受けているはずだ。だがこれでは、彼女……自分の娘がまるで一般人のような口ぶりだった。……となると、青空さんの母親が対魔忍の家系で、父親はそのことを知らないのだろうか? この理論であれば、現在秋山 凜子が行っている筈の家宅捜査に母親のみが協力しているという情報にも合点がいく。
確かに対魔忍の秘密を知ることは、すなわち必要以上に命を危険にさらす危険性も上昇する——
こればかりは五車学園に帰って、アサギ先生に尋ねてみなければ分からないことだが、ここでは余計なことを言わず 彼がそのように思って、それを否定しない方が後ほどの青空さんとの話のこじれに繋がらなくて済むのには間違いはない。
だから俺は、ここでは彼の話に合わせた。幸いにも俺達が対魔忍であり、青空さんには伏せていて欲しいという言葉に彼は疑いや気にする様子もなく、豪快に笑いながら秘密を承諾してくれる。
「ところで本題になるのですが……これから向かう現場で何が起こったんですか?」
「……詳しいことは
ある程度の世間話が盛り上がり、一区切りついたところで今度は事件について口を開く。途端に先ほどまでの蛇子との世間話とは一転して彼は重々しい口調となった。俺はバックミラー越しに映った彼を見る。彼の目元は、こちらを一瞬チラリと見た後に、正面へ目線を戻したが更に目を細め考え込むような形相となっていた。
「——6人がバラバラになって死亡、6人は衣服と装備だけを残して失踪。魔族の死体に至っては拷問を受けた上で、完全な白骨化を遂げていた……ですか」
「……そうだ。ここは俺達が住む五車町に近い場所にある。そんな場所で致命的な脅威がすぐそこまで迫っている状況だ」
「遺体の方は何とも言えないけど……その6人が失踪している方の遺体は、羅刹オークとか、パーピーとかの仕業じゃなさそうなのは確かだよね」
「ああ、現状の情報では、サラマンダーや知性を持たないスライムが関与している可能性は十分に考えられるが……更に詳しい判断をするには現場をみて状況整理をしてみないとわからないな」
そんなことを話して約1時間……建物が少なくなり、工場地帯を抜けた先に 未だに事件現場であった倉庫を取り囲むような人だかりのできている古びた廃屋にも見える施設に俺達は接近するのであった。
………
……
…
~あとがき~
小説からはズレたお話になっちゃうのですが、今日は8月20日…。
つまり「ハワード・フィリップス・ラヴクラフト」先生のお誕生日です。
いあいあしていますか?
今年も、いあいあしましょうね?
いあ! いあ! いあ! いあ!!!