対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい+ 作:槍刀拳
Episode28+ 『ホイッスルシャウト』
「キェェェェェェエエエァアァアアアアアアアアアッ!!!!!」
絶叫を上げながら、上半身を跳ね起こし、自分に掛かっている布団を跳ねのけ、体中に突き刺し立てられていた治療器具や拘束具がブチブチと皮膚から引き抜ける感覚を覚えながらベッドの端から転がり落ちる!!!
そのまま不規則な高速前転回転を連続でかましながら壁に激しく衝突する!
普段のジト目をがっつり見開いて、ぶつかった壁を背に手にはカーテンの裾を引き千切らんばかりに握りしめながら、過呼吸と息切れでめまいに悩まされながらも、これから襲い来る脅威に対して反撃するつもりで周囲を見渡して……ッ!!!
……?
この部屋には窓が備え付けられていて、窓の外からは日光のような人工的な光が差し込んでいた。
そこで私は半そでのパジャマを着て……いてぇ? 一言では名状しがたい異形の怪物どもに、ズダズタに引き裂かれたはずの腹部も綺麗でぇ……?
自身の視界の左側には、今の出来事に対して目を丸くした『青空 日葵』の両親が。
部屋の出入口である右の扉が慌ただしく開かれ、その先から青空日葵の父親に劣らない屈強な体つきで紺スーツを纏った男性が1人。
癖っ気のある藍色の長髪をポニーテール状にまとめ、毛先だけが赤い髪の女性。二重の瞼と栗色の光彩……日本人(?)にしては珍しい綺麗に整った三角形の鼻と、肉厚な唇。ロケット型のおっぱいと呼称されるような胸に、服が魔乳によってはち切れんばかりの五車学園の教師が1人。
黒髪の長髪、目は碧色で女性用パッツンスカート系のスーツを着用してる……よく授業をサボっているふうま君に世話を焼いている尻の大きな五車学園の女性教師が1人。
細身で長身の糸目で白衣を纏った男性が1人。……こちらの集団も私の病室へ、また驚愕の形相で雪崩のように乗り込んでくる。
「……」
今までの光景と体験が夢であったこと、やっと現実に戻って来れたことを理解することができる。
……だが、私が引き起こしたこの惨状で私に『ハッハッ! 生きてるぅー! ハッハァッ! あー生きてるよ!!!』などと言っている余裕などなく……せめて出来たことは……。
「……オ」
「……」
「オ、オハヨウゴザイマス……。こ、これこそが……寝起きドッキリぃ……。な、なんちゃってー……いぇい……」
「「……」」
「い……いぇい……」
「「「「……」」」」
「……。……ぁはぁ……」
引きつってはいるが……なんとなしにおどけたような表情を作る。
凍りついたままの両親に対して左手の親指を立てて、右の扉から乗り込んできた個性的で濃厚なメンバーにも機械のような上半身の動かし方で両手の親指を立てた。それからやっとの思いで、顔面に滴る冷や汗を手のひらで拭ってから……上半身を正面に戻して 魂が抜けたように安楽な姿勢で背中を壁に預ける。
……無理やり引き抜き余計に広がった点滴の穴から血が滲み出る。しかしそんな些細な問題など私にとっては大したことではなく、糸の切れたマリオネットのような俯いた姿勢で呆然と高速の瞬きをすることだけだった。
………
……
…
……のちに聞いた話では、私が“危険な状態”にあって先生方同士で、どうするべきか壁1枚隔てた場所で話し合いを行っていたらしい。
——危険な状態。
この言葉から考察するに、つまり私は危篤な状態にあったのか。
……でも言われてみれば、あの拷問が夢の中で永遠に行われていたとしたら……?
きっとあれだけでは済まない狂気的奇行に及んでいたはずだ。
現状、どこから説明すればいいかわからないが、ひとまず今、この病室にいる人物紹介ぐらいならできる。
まず紺スーツを纏った男性。こちらが『相州 蛇子ちゃん』のお父さん。頭がつるっぱ——……タコ坊主みたいですね!
次に艶やかな藍色の長髪に毛先が赤い魔乳の五車学園の女性教師。こちらが『上原 鹿之助くん』のいとこにあたるお姉さんである『
最後に女性陣で残ったのが……。五車学園で教師もしている『ふうま
あとこっちの白衣を纏った糸目の男性が……五車学園の校医も務めている……退院するまで私の主治医として怪我の治療してくれる『
私の噂の事はさておき。……彼女等が飛び込んできた理由は、主に……。主にというより確実に、この五車学園の地下に設立されている病院中に響き渡ったとされる私の咆哮のせいである。
病院までも備え付けている五車学園は一体なんなんだ……。
…………そんなツッコミはひとまず置いといて。
………
……
…
「日葵ちゃん……ものすっごい絶叫だったけど、大丈夫?」
「……すみません。驚かせてしまったようで……あの時はちょっとした悪夢を見ていたみたいでして。今は体に穴が増えてしまいましたが問題はないです」
放課後にあたる時間、私が入院している病室へ、学校で配布された私の私物によって大荷物のふうま君と蛇子ちゃんがお見舞いに来てくれる。
ひとまず、病院に置かれている
一方、私は無理やり点滴を引き抜いたことによって、体中が先ほどよりもひどい状態で……あと数巻きしたら
「まさか、地下に通じるエレベーター内まで響き渡るなんてな……。あれがデスボイスで使用されるホイッスルシャウトってやつか? ……こうして、また青空さんの伝説が増えるんだな……。なかなかにビブラートが効いていたと思う」
「ふうま君。素敵で能天気なフォローは結構ですが、今日の件を学校で話そうものなら——翌日には素敵なサプライズがあなたをお出迎えすることになりますよ……。あの咆哮を耳にした時子先生にも口を酸っぱくして話しておいてくださいね……?」
「わかってるよ。他言無用だってことも時子——時子先生にも伝えておく」
「よし……。……それはさておき、今日は二人ともお見舞いに来てくれてありがとうございます。……あと、先ほどから上原くんの姿が見えないのですが、彼はどうしてますか……? 上原くんの
私の言葉に2人は顔を見合わせる。
なんだ。
何があった。
「うん……。鹿之助ちゃんは……日葵ちゃんのおかげで、無事だったんだけど……」
「ああ。鹿之助は青空さんのおかげで問題は何もなかったが……」
二人とも少し俯きながら、とても歯切れの悪そうな様子で私に伝える言葉を選んでいるように見える。
……彼はアレを見てしまった。……まさか。それで狂ってしまったというのだろうか?
……そんなはずはない! 私は精神科ではないし、メンタルに関する知識は疎い。しかしそれでも彼と対面したとき彼は腰が抜けて動けないようだったが、それ以外に何か致命的な症状は見られなかったはずだ。
……でも、やはり絶対とは言えない。一見、症状には出ていないが潜伏機関を経てまた再発したという患者の話を聞いたことがある……もしや彼も……?
「ま、まさか……精神に重篤な障害が!? 良い精神科知ってますよ!!? 『スナック
「待って待って待って! 落ち着いて?! 鹿之助ちゃんは無事だよ! ローブの下は全裸だったけど、祭壇から転がり落ちたときに付いたって本人が言っていた擦り傷以外に大きな怪我はどこにもなかったし! 私達が現場に到着したとき 虫の息だった日葵ちゃんを介抱してくれていたのも鹿之助ちゃんで!!!」
「蛇子も一旦落ち着け。……——青空さん聞いてくれ。鹿之助から事情は粗方聞いたが、本当になんともないんだ。あいつは大怪我もしてないし、気もおかしくなったりもしていない。無事だったんだ」
慌てた様子でポケットや床頭台の引き出しを漁る私に対し、ふうま君が両肩を抑えて片目で私の目を見据える。その気迫から、彼が私を一時的に落ち着けるための嘘を言っているようには見えず、その言葉によって落ち着きを取り戻すことができた。
「……。じゃあ、どうして2人とも そんな意味ありげな含みのある言い方をしたんですか。……率直な意見として、ものすごく驚いたんですけど」
「「…………」」
……またこいつらは顔を見合わせて……。
3時間電車に乗って、3時間もまえさき市でウンコしていたこと言いふらしてやろうか。
「その、だな……。ショックを受けないで欲しいんだが……」
「ショックぅ!? ショックって何ですか!?」
「「…………」」
「……わかりました。なるべく耐えます。……よし。……どうぞ?」
「鹿之助ちゃんは……日葵ちゃんに“会いたくない”って、言ってるの……」
「」
「「!」」
こちらのあんぐりと開いた口と心情を察したであろう2人が即座に自分自身の両耳を塞ぐ。なんだ。お前等、また私が
「……ショックを受けない方が変だよね。日葵ちゃんはさ、私達とも入学初日の付きあいだけど、同じクラスメイトとして鹿之助ちゃんとはすっごく仲がよさそうだったもんね……」
「」
「ちょちょちょっ! ちょっと、日葵ちゃん!?」
——遠くなる意識。
蛇子ちゃんとふうまくんがとっさに肩と背中を支えてくれたおかげで、後頭部をベッド柵へ強打せずに済む。
散った。
いろいろ散った。
何もかもが散った。
……終わった。
果たして何がいけなかったのだろうか? 私は上原くんの前では普通にふるまっていたはずだ。えっちな妄想を本人の目前ではそんなにしていないし、なるべく怯えさせないように、おしとやかにも見せたはずだ。あのカルティストの殲滅の時だって感づかれないように丁寧に素早く害獣処理をしたはずだ。……私の何がいけなかったんだ。
さくっと爆弾を作った事? 大喰らいの泥濘に対して挑戦的な笑みを浮かべたこと? カルティストを防御壁にしたことかな……? それともゲロとアンモニア臭のする女に担がれたことだったりする……? ちょっと心当たりが多すぎて何が原因だったのかわからない。非常事態とはいえ、冷静になれなかった自分を悔やむ。
……無事だったのは本当に嬉しい。……嬉しいけど。それに見合う代償ではないことは明白だ。
「……。……でも、上原くんは無事だったんですよね?」
「うん……」
「……なら。……なら、よかったです。彼に何事もなかったなら……それで」
喉まで出かかった悲鳴を押し殺して、蚊の鳴く様な声で彼が無事だったことを安堵するような声を作り出す。
気分を落ち着けるような大きく息を吐いて 少し苦虫を嚙み潰したような顔かもしれないが、笑ってみせる。でも視線だけは……2人には合わせられなくて、左下に視線を向けて顔だけを2人に向けての発言となった。
「……そうか」
「上原くんとは、もっと いろいろお話がしたかったんですけど、仕方……ないですね! それじゃあ、せめて『伝言』をお願いできますか?」
「……なにかな?」
「……言いたいことはいっぱいありますが……そうですね……。悩むなぁ……」
「今、思いつかないんだったら……また今度だって良いんだぞ?」
「そうそう! また蛇子たちはお見舞いにくるつもりだからね!?」
どうやら、私の友達は1人減ってしまったようだが、あの場の事情を知らない正面の2人は私と友達を続けてくれるようだ。これは実に喜ばしいことには違いなく、こっちの心情を察してもいるのか、そっと更に近づいてきた蛇子ちゃんが私の手をぎゅっと握ってくれる。
すごく温かい掌。私と同じ…私なんかより女性らしい、モチモチとした柔和な手が私を包んだ。
「いえ……ここで決めないと、次はどんな言葉が出てしまうかわからないので……少しだけ待ってください」
「……」
目をつぶり走馬灯のような思い出から、彼に送る言葉を選ぶ。クラスメイトなんだから、学校では会えるだろうが……。……きっと向こうは極力接触を避けたがるようになるだろう。頭の片隅に恨み言のような言葉もふつふつと湧いてくるが、それは2人に任せなくても、この先 いつでも本人にぶちまけられる機会はある。もっと、今 彼の親友から経由して伝えられる言葉を伝えるべきだ。
「……ぁ」
「なんだ?」
……ここでふと、今まで伝えられなかった言葉を思い出した。
「……『入学した初日から、今まで困っていた私を助けてくれてありがとう。特に初日から紫先生に戦闘を強いられたとき、1人だけ助けようとしてくれたのは正義のヒーローみたいで嬉しかった。もう二度と会わないようにするので……最後に怖がらせちゃったのなら、ごめんなさい』……。これでよろしく、お願い……します……」
怖いはずなんてないのに、また校長室へ連行されたときのように目が開けられなかった。
目頭が……。
瞼の全体が……。
ホットアイマスクを当てられたようにじんわりと熱い。
今、目を開けたらきっとどちらにしろ2人の顔は見えないし、情けない姿にしか映らない。だから目を固く強く閉ざしてやり過ごす。うつむいて下唇を少し噛みしめて表情を出してしまわないように努める。蛇子ちゃんに握られていないほうの手で、掛け布団を力強く握りしめる。
でも2人は『伝言』を真剣な様子で聞いているのが瞼越しからでもわかった。私の手を重ねるように握る蛇子ちゃんの手と肩を支えてくれているふうま君の両手は、そのまま擦り抜けて行ってしまそうな私を現世に繋ぎとめているようで、どこかに消えてしまいそうになっている私の意識はそこだけはっきりしている。
「……鹿之助ちゃんに伝えておくね」
「……お願いします」
ここでやっと瞼に乗った重しが消えたかのように瞼が開けるようになった。よし、笑える。感情の山は越えた。仕方ないさ。こういうことだってある。私はどちらかと言えば、友達は多いと思うけど人に好かれることなんて多くないんだから。……これは今までと同じ。これからも変わらない私の個性のようなもの。それに弱点は少ない方がきっと生きやすいに違いない。
……よし、切り替えていこう。宇宙には、たくさんの星があるように次の新しい友達を見つければいいし、二人は私のためにお見舞いに来てくれたんだから。これ以上、過度な心配や気遣いをさせてはいけない。……難しいことじゃないだろ。
「……すみません。お二人とも、せっかく見舞いに来てくれたのに……」
「大丈夫だよ! 蛇子もふうまちゃんも日葵ちゃんのこと分かっているから! あっ……そうだ! 日葵ちゃんに渡さなきゃいけないものがあるんだった!」
「お? なんですか? 蘇生祝いのTRPGルルブですか? 個人的にはシナリオ集の『黄昏の天使』が欲しいのですが」
「……それは探しておくね……。えっと……これ、なんだけど……」
よし。大丈夫だと思い、目を開けて2人に謝罪をしてから、受け渡されたのは大量のプリントの山と『追試試験』と書かれた案内のプリント…………は?
蛇子ちゃんの顔と追試試験案内のプリントを交互に見る。彼女は、凄く気まずそうな顔で私の顔を見ている。
「中間テスト……追試の……お知らせ……?」
「日葵ちゃん、ずっと入院していたから……ね。……退院したら頑張って……ね?」
ペラペラと捲って出題範囲を調べるが……問題はなさそうだ。
一通り“昔の授業”で習った内容であることもそうだが、ポイントさえ押さえていれば五車学園で配布される教科書のいくつかのページを読書する感覚で読み込めば問題なく解けるような範囲だ。高校3年間の授業から出題される大学の一般入試試験の範囲に比べれば大したことはない。それに別に満点を取る必要はないのだ。適当に最低限、点数を稼げれば良い。一般教養問題に関しては何とかなりそうだと思い 頷く。
そんなことよりも……私にはもう一つ気になることがあって、そっちの方が気が気ではなかった。
「ありがとうございます。これくらいの出題範囲なら赤点を取らなければいいので何とかできます。……そんなことより、上原くんは大丈夫でしたか? 彼には事前にテストで出題されるであろうポイントと予想される出題範囲をまとめた資料を渡しておいたのですが」
「えっ」
蛇子ちゃんの表情が、驚愕したように目が見開かれ口が
……確かに私は上原くんには嫌われて“会いたくない”とは言われてしまい、私も2人へ別れの『伝言』を頼んでしまっているが、それはそれ、これはコレである。
追試の案内に記載されている出題範囲のプリントを見る限り、私が上原くんに指定した出題予測範囲はおおよそ的確な範囲であったことが見て分かる。教師たちの授業の進行具合と、ふうま君たちのクラスでの授業の進行度をすり合わせして……おおよその出題範囲を予測し抽出したものではあったが……。
それに私はビックイベント中間試験をおもクソ逃したことの方も衝撃がデカい。中間試験と言えば、ちょっといい点数を取っておいて、後日の結果発表の際に友達同士で点数を競い合ったり、次回の勉強会を開くきっかけにもなるクラスメイトとの親睦を深めるためのメインイベントだ。これを逃したのは人生一般人枠エンジョイ希望勢としての意見として凄まじく痛い。まぁ、卒業するまでに残り約8回の中間テストと9回の期末テストがあるわけだが……。こういうのは出だしが肝心なのだ。
クソ! あの大喰らいの泥濘! やりやがったな!!! 退院して次遭遇した際には殺す…! 弱点も分かった事だし物理的に
……これ。『入院は私のルーティーン(キリッ』 とか言っている場合ではなさそうだ……。
このまま入退院を繰り返していたら、勉強にはついていけても学校のあらゆる
入院生活なら入院生活なりに、株やら魔導書の研究やら資格試験勉強などなど……できることは多いが……。それは大人になってからでもできることだ。
「えっと……。青空さん。鹿之助は大丈夫だった」
「ホッ……。なら、よかった」
「……でも……アレは……青空さんが作ったのか……」
「えぇ。上原くんとは、五車学園の事や町のことを教えてもらう代わりに勉強を教えるという約束でしたからね」
『マジかよ』と言いたげな顔をふうま君がしている。蛇子ちゃんに至っては先ほどと目の開き具合は変わらないが、私から視線を逸らし次になんて言葉かけをしたらいいのか分からないと言った様子で口を梅干しでも食べたようにすぼめている。
あれ? ……もしかして、これ『また私なにかやっちゃいました?』案件であったのだろうか? 否、それはないはずだ。それを “避けるため” に、あの資料はクソ分かりづらい五車学園の教科書のやり方を敢えて採用する形で作成している。もっと簡単な方程式や覚え方、問題の解き方は、いくらでもあったが……わざと小難しい方法を流用しつつ、それを基盤に上原くんの理解度に合わせてわかりやすくしたものだ。簡略化させたほうがきっと呑み込みも早くなるだろうが、もしかすると『授業や教科書で教えていないやり方で問題を解いたから、答えは合っているけど不正解』みたいな採点をされる可能性があり、それを避けるためでもあった。他には……多少の暗記術も記載してあるものの……。それも『体育の授業などで運動しながら方程式を口に出す』という初歩的なものだし……。それだけで、ましてや一般人の彼等が、そのことに気が付けるはずもない。
「……お二人は試験どうでした? 無事に抜けられました? 赤点は避けられましたか?」
「俺も今度、追試を受ける予定なんだ……。まぁ、その……頑張ろうな。あの資料を作れる青空さんなら大丈夫だろうけどさ……」
「へ、蛇子は、そ、それなりだったよ~……。そ、そっか~。アレは日葵ちゃんが……」
……おかしい。話を逸らしたはずなのに、私の資料を作った話から逃れられない。
なんで? そんな変なモノ作ってないよ? 君達、一般高校生だよね? なんでそんなに私の参考資料に突っ込むの? 細かいことを気にしていたら、余計なことに気が付いて長生きできないよ。
……でも、よき観察眼でもある。時として見落としても人は死ぬ。私は一度死んだ。
………
……
…
……どうやら上原くんは2人の話によると、中間テストで好成績を取ることができたらしい。それはとてもいいことだと思う。私も資料を作って、
……だが問題はここじゃない。好成績過ぎたのだ。具体的に、全科目 赤点以上。70点前後を取ったらしい。最初は『ほーん、ええんとちゃう? 100点満点中、半分以上取れたんだし』と軽く流していたのだが、小中等部と五車学園で勉強のできなかった……小テストで悪い成績ばかりだった彼が、いきなり好成績を収めたことがまずかったらしい。
で。ふうま君と蛇子ちゃんが、それとなくどんな勉強をしたのかと聞いたら入院して昏睡中だった私の資料が出てきたと。なるほど。おまけに今、私の口から資料を作った張本人だと確認を取れたと。なるほど。
……なるほど? ま、ままままままぁ? あの資料はただの普遍的な資料だし? まだ焦る段階じゃないって。勉強の資料で私の中身が別人だなんて見抜けるわけがない。適当に本屋で見つけた参考資料を基に五車学園の教科書も併用して作ったとか適当な説明をしておこう。私がその資料を作った事よりも『引用元や参考文献を掲載しなかったことが法に触れるのでは?』と心配している素振りをしていれば、きっと大丈夫だ。
彼等は
そう思いながら“会いたくない”とは言いつつ、渡した資料をちゃんと有効活用している彼の姿を思い浮かべて、微笑まないように私も蛇子ちゃん同様。上がっていく口角をすぼめて誤魔化した。
~あとがき~
終わったかと思ったか? 残念。トリックだよ。
そしていつもより、文章量が増しております。
少しばかり閲覧者兄貴姉貴達に、えっ!? もうここで終わっちゃうの!? いつもの3日目にも定時投稿されないやん! どうしてくれんの、これ…。
なんてドギマギして欲しかったの7割、幕間中にオリ主を絶望に突き落としたいのが2割、その日のテンションとノリが1割で書き上げました。優しさなんてないです。