対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい+   作:槍刀拳

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Episode4+ 『対魔忍! 推参!』

 あれからむやみな交戦を避け、現在私はビルの屋上を活動の主軸として行動している。

 屋上にはヘリポートから警察が突入して来ないよう見張り役のアサルトライフル装備のテロリストと私を輪姦する目的だったテロリストが数名、私の破壊工作によって沈黙した監視カメラが数台ある。さらに大型の室外機やダクトなども設置されており、〈隠密〉行動できるスペースが多く、この場所は私にとって〈隠れる〉には好都合な場所であった。

 発見され、追い詰められるようなことがあったとしても肉便器として使役・酷使される前に、ビルから飛び降り、自由にこの命を散らすことが出来る。あわよくば死出の旅は道連れ世は情けだ。

 私は既にいちど、思い出したくもない拷問のさなかで死を覚悟していたのだ。投身自殺による一瞬の衝撃で死ぬぐらい、あの悪夢に比べれば大したことはないと考えていた。

 

………

……

 

 ……テロリストの占拠から約12時間後。

 それは薄青銅色に輝くビルの合間を縫うようにして飛び、隠密形態をとりながら突如として屋上へ現れた。

 闇夜に融けるような黒色に彩られた鋼鉄の飛行物体。形こそ前の世界で陸上自衛隊が保有するF-2のような形をしているが、F-2より分厚い……AKや高射砲すら寄せ受けない重厚な装甲を持ち、空気抵抗の強そうな機体では考えられないほどの速度で、重々しくも鼓膜を劈くような唸る火竜(ドラゴン)の咆哮を響かせながらビル上空に上昇していく。

 やがて上空50mぐらいの地点から、屋上を目掛けて米粒大の “何か” が落下してきた。

 

「……!」

 

 ——航空機から何かが落ちてくる。

 最初はテロリストが要求している物資かと思ったが、銃口を向け乱射する彼らの反応からどうも様子が違う。

 落下してくるそれは、3つの人型実体であった。途中でパラシュートを開くこともなく、テロリストが展開していない地点へターミネーターが登場するみたいに膝を地面につき、そのまま着地する。

 うわっ。あれは、膝に地面を受けて冒険者やめてそう……。

 そんなことを思う私を他所に、着地した彼女たちは平然と立ちあがる。あれが普通の生身の人間であれば、鉄板の地面に叩きつけられて今頃、キンメダイの開きのように潰れ、高所から落とされたトマトのように内臓や骨粉をぶちまけているはずだ。だが彼女達はそのような様子はない。

 それどころか、私は彼女達の1人に見覚えがあった。デッド(D) オア(O) アライブ(A)に登場するマリーローズのような赤いフリルの付いた黒をベースとしたスクール水着と、布地を尻に食い込ませ過度に大腿部と鼠径部、臀部を露出した引っ叩きたいプリケツ、野生児を連想させるスクール水着痕の残る褐色肌。……くりくりとした大きな瞳と膝裏まで伸びるツインテール。そしてフリントロック式の二丁拳銃。あれは——

 

——『水城(みずき) ゆきかぜ』だ。

 

 前の肉体で、私がヨミハラで巻き込まれた『拉致監禁肉便器化調教』を強いられそうになった事件で別室にてオークに激しく輪姦されて無様なアヘ顔を晒していたが……。あのDOAのマリーローズのような服で、上空から降ってくるツインテールの気の強そうな面持ちの貧乳(まな板)と言ったら彼女ぐらいだろう。

 他の2人の1人は鮮やかなオレンジ髪ショートヘアの元気がよさそうな……悪く言えばマヌケ面をした短刀を二刀流にした女性と、最後の1人は紫色に近い青髪を下ろし細目で紫色のラバースーツを纏った大人びた女性だ。

 ……対魔忍だ。

 そう直感した。『水城(みずき) ゆきかぜ』が混じっていることから、彼女等が対魔忍であることは確定的ではあったが、こんな敵地の中心部に そんな恰好(乳首ガン勃ち)の衣装で正面からカチコミを仕掛けに来るのはこの世界では対魔忍ぐらいで、敵陣でそんな身体のラインが浮き彫りになるラバースーツを着用して見せつけるなんて、対魔忍を除いて普通の感性の人間はそんな恰好をするはずもない。

 ……ところで、転移・転生前から気になっていたのですが。その乳袋はどんな構造になっているんですかね?

 私も今の身なりから、人のことを指摘する余裕はありませんが……“服装はその人を表す”って言いますけど……その服は……ですね?

 

「これが占拠中の本物のテロリストかぁ……。訓練より弱そうやっちゃなぁ」

「私たちは訓練通り、速やかに屋上を制圧して人質の脱出経路を確保すればいいのね!」

「常に状況は変わるものよ。各員油断はしないで。制圧開始!」

「「はーい!」」

 

 彼女達は、まるでピクニックに来たかのような気の抜けた会話と返事をするが、その実力は対魔忍をニッコニコ大百科でしか知らない私でもわかるほどに確かなものだった。瞬きをするほどの一瞬で一般人では手も足も出ない分厚いケブラーベストのような装備を持つテロリストを“忍法”と刀や小刀、旧式拳銃でなぎ倒していく。

 私にはこの光景を描写するだけの余裕も、状況の判断もできない。

 せめて分かったことと言えば、一番年長者らしい紫色の対魔忍がテロリストの横を通過しただけで血しぶきを上げながら倒れる。スタンロッドで動きを止めようとするテロリストに対して、オレンジ髪の対魔忍が影の中から猟犬のようなカウンターで敵を屠っていく。一方『水城(みずき) ゆきかぜ』は二丁拳銃から電撃のようなエネルギー砲を飛ばし制圧していく。……ゆきかぜのその活躍は、ヨミハラの濃度3000倍で見せてほしかったですね……。

 

 15分もしないうちに、十数人は居た銃火器武装の東雲革命派テロリストは、突然現れた対魔忍によって骸として地面に伏すことになっていた。

 

「にゃははは~。やっぱり最新鋭訓練施設のテロリストの方が手ごわかったよー」

「ふうまが装備設定したような多脚戦車も居ないしね!」

「こっちの首尾は問題ないわ。ふうま君、脱出経路の確保ができたことを、別動隊にも——」

 

 どうやら制圧は済んだようだった。

 よかった。身投げする必要はなさそうだ。彼女たちに保護してもらい、一足先に自宅へ帰らせてもらおうと一歩踏み出した時……

 

パァン!!!

 

 私の大腿部に熱い何かが貫通した。

 視線を下ろせば、じんわりと赤いシミが太ももに広がって……同時に背中にも日大タックルされたような激しい衝撃が走る。今の銃声に彼女たちも気が付いたようで、こちらに視線を向ける。

 

「動くなぁ!!! この人質(ガキ)がどうなってもいいのか!!!!!」

「い゙ぁ゙っ……」

 

 脚と背中の痛みに顔を歪めるが、テロリストはお構いなしに片腕で私の首を絞めあげ、私は宙吊りにされるような形で大型室外機の外に連れ出される。私の背後にはいつの間にかにテロリストが回り込み、のど元に鋭利なコンバットナイフを突き付けていた。

 ああああああああああ! まずい! まずいぞ! これでは、ビルから飛び降りれない! 組みつかれて宙に足が浮いた状態では飛べなぁいっ!

 対魔忍たちも、すぐに武器を構えるがその表情からは焦燥の色が伺える。

 

「武器を捨てろ! 武器を捨てないと……っ!

「ッ……」

 

 刃先が私の喉に刺さり、一筋の血が零れ始めた。痛い!

 彼女たちは、お互いにアイコンタクトを取り合いどうするか悩んでいるようだ。だが最終的な決定としては、武器をその場に落そうと指先を緩めようとしている。

 それはダメだ! 彼女達がゲームと同じように対魔忍となってしまう! 対魔忍が対魔忍になってしまう! 対魔忍のお勤めをしてしまう! それも私まで巻き込まれる形で! そ、それだけは避けなければならなぁああい!!!

 

「……っ! ……ッッッ!」

「……! 武器を捨てるから! 武器を捨てるから!! まずは、その子を離しなさい! それ以上は息ができずに死んでしまうわ!!!」

 

 私に出来ることは、この完全にキマった首絞めを行っているテロリストに向けて呼吸ができるようにと解放されている手で高速でタップすることだった。一番年長者っぽい大人の対魔忍はこちらの状況を察してくれたようだ。流石、対魔忍。……さっきは頭対魔忍とか思って、ごめんなさい。

 テロリストは体をこわばらせたまま私を地面におろす。足を射抜かれ、低酸素状態によるふらつきで立てない私は当然、床に腰を打ち付けるわけだが……。テロリストはそんなことお構いなしに、今度は私の頭に銃口を突き付けた。

 

「カヒュッ……。……ぜぇー……はぁー……ぜぇー……はぁ。ゴホッ! ゴホッゴホッ!!」

「ほら、さっさと武器を捨てろ!!! そんなに、この女の脳漿が見てぇのかッ!!!」

 

 私が解放されたところで、対魔忍の彼女たちは仕方ないと言った表情のままゆっくりと武器を地面におろし始める。

 ——だが、おかげさまでこちらは話すことはできるようになった。今が逆転の好機だった。

 

あ゙ぁッ!?このクソ野郎ッ!俺の予定がテメー等のせいで全ておじゃんだ!!!見て見てぇッ!見てみてぇなぁッ!!! ほらッ!撃てよッ! 俺は自分の脳漿を見てみてェっつってんだ!!! ビビッてんのかッ!?オラァ!!さっさと撃てッ!

 

 大きく息を吸い込み。地獄から突き出た鬼のような声で、つい先ほどまで首を絞めていたテロリストに私は絶叫に近い〈威圧〉をし始める。

 この行動に対魔忍とテロリスト双方の動きが……時間停止もののAVのように止まった。

 

「だが、よく考えろォ!? テメーはたった一人だ! この対魔忍を強請る(ゆする)交渉材料は俺しか居ねェ!!! そんなテメーは俺を本当に撃ち殺せるのか? お゙ぉ゙ッ!?

「な、なんだ……このメスガキ……」

「ほらぁ!早く撃てよ!!!タマぐらいあんだろ!?ここでテメーの発言がハッタリじゃないってことを証明して見せろッ! 撃ってみろよッ! 俺は先に、テメーを地獄で待っててやる。テメーが地獄に来たら第二ラウンドで、真っ先に爪楊枝でお前の眼球をお裁縫セットの針刺し、ハリネズミ状にトゲ山にしたら、足の裏を炭になるまでガスバーナーで焼いて、ドラム缶に括りつけた後 缶の中に熱した石を投げ込んで前面と顔面の肉を地獄の業火で焼き切ってやるからよ゙ぉ゙お゙ぉ゙お゙お゙ッ゙!゙!゙!゙

 

 テロリストは明らかに動揺している。

 まぁ、それは対魔忍たちも同じで……陰キャっぽい気が弱そうで大人しそうな一般人の少女がいきなり豹変したら、誰だってそー怯む。私だってそーなる。

 だからこそ、この好機を逃すわけにはいかなかった。素早くテロリスト側へと振り返り、頭に押し付けられている拳銃を掴み、頭蓋骨に接着させる。テロリストの手にそこまで力は入っておらず、引き寄せられるような状態で私の頭に拳銃の銃口が面する。

 

「陰茎と睾丸と直腸にギンピーギンピーを摺り込んで一年以上、死にたくなるような地獄の痛みでのたうち回らせてやる!!!便器に括り付けて脱肛させた上で、ウォシュレットで内臓をズタズタに引き裂いてやる!テメーの額に来世まで残る『死因:ウォシュレット』って刺青(いれずみ)を刻んでやるよぉぉおおお!!! 私を殺し、自身が死んだことも後悔するほどになぁあ゙あ゙あ゙あ゙ッ!」

……きょ、恐怖で頭が……おかしくなったのか……?

 

 テロリスト側が明らかに動揺して私の頭の心配をしてくる。

 ……失礼な。おかしいのは元々だ。私は本来、ここにいるはずの人間じゃないのだから。

 ここで私には2つの選択肢があった。一つは、テロリストが投降するように飴と鞭で揺さぶりをかけること。もう一つは、刺し違えても隙をつくることだった。

 

「——だが……今なら間に合う。テメーが大人しく武器を捨てて、対魔忍に投降するんだ。彼女等は正義の味方だから、大人しく投降すれば法で裁かれることになるが、これ以上の危害を加えることはねぇはずだ」

「……」

 

 情緒不安定な豹変の繰り返しで揺さぶりが効いているようだ。

 奴に対する〈魅惑〉であともうひと押しと、険しい顔を止めて優しい微笑み顔でニンマリと笑いかける。

 だが無情にも相手の警戒をほぐす為の〈魅惑〉行為は思うようにはいかなかった。

 おもちゃの火薬銃のような軽快な音、皮膚が波打つ衝撃と共に、銃口を額に押し当てていた方の腕がテロリストによって振り払われ撃ち抜かれ——

 ——うがああああ!!!クソ痛ぇ!!!!

 

う、うるせぇ!!!黙ってろッ!俺にはもう後がねぇんだ!!!ここで我等の東雲様のためにも、一矢報いなけりゃ意味がねぇんだよ!!! オラ!た、対魔忍だっけか!?対魔忍ども!このクソガキが——」

 

 交渉は決裂した。

 だが、致死となる脳から銃口をそらさられ、奴の視線が一瞬、いや。一時的にでも対魔忍側に向いただけでも十分だった。こちらも無事な腕で腰にある敵から奪取した拳銃を引き抜き、テロリストに突き付ける。腕と脚に開いた痛みに苛まれながら対魔忍プレイ(強姦)を強要されるよりも、死んでしまった方が楽だと判断したことも1つの要因だ。……出血の状況と傷の状態から、この世界の私が助かる見込みは限りなく低い。

 こちらが銃口を向けたことに相手が気が付き、こちらに向けられた銃の引き金が握られたとき、迸るアドレナリンにより周囲がスローモーションのような光景になったような気がする……。直後、お互いの胴体目掛けてゼロ距離での発砲。鉛球をぶつけ合う。向こうは分厚いケブラーベストや軍用ヘルメットを着用しているため、私の攻撃では致命傷には至らない。だが弾丸の衝突による衝撃で確実に怯ませることはできた。

 ……敵との勝敗が決したとき。血だまりの中。意識が薄れゆく中で、……背後にいた対魔忍たちが一斉に動き、怯んだ最後のテロリストにトドメをさすのが見えた。

 

(……斯くして。対魔忍を隷従させようという……テロリストの“根本的な、計画を、阻止できる、のならば、1人の、私の……、死は……、小さなことに……”、過ぎな……——)

 

 口の中が鉄さび味に満たされていくさなか、私は『新クトゥルフ神話TRPG』11頁の勝者と敗者のフレーズを思い出していた。

 ……異様に体中が熱く、心拍が通常の3倍の速さで鼓動を打つのを全身で感じる。

 

 ……大人びた対魔忍が、私を助けようと動くが……。私はそれを尻目に、自分とテロリストの返り血で……おぼれていった……。

 

 

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