対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい+   作:槍刀拳

6 / 50
Episode5+ 『目が覚めたら白い部屋~私は対魔忍から離れ、強く生きます~』

「……ッ」

「あぁっ! ひまり!! ひまりぃっ!!! 看護師さん! 看護師さんっ! 日葵(ひまり)がっ! 日葵(ひまり)が目を覚ましましたぁっ!!!

 

 次に目が覚めたとき、私は白い部屋に白いベッドにクリーム色のカーテンが掛けられた白い部屋(病院)にいた。

 私がリビングデッドのように、腹筋だけの力を用いて上半身を起こした刹那。40代ぐらいの女性が悲鳴を上げ、自身の座っていたパイプ椅子に足を取られ、足をもつれさせながらも部屋から出ていく光景を目にする。

 

あの、ナースコールかスタットコールを使えば……

 

 のちに知ることとなった1週間ぶりに出した掠れた声は、先ほどの女性を呼び止めるほどの大きさにはならず、彼女はそのままどこかに行ってしまった。ひとまずこっちからナースコールを一度押して意識が戻ったことを看護師に報告しておく。……ついでにナースコール越しに転げながら出て行った彼女の声が聞こえた。

 私の身体には幾重もの包帯が巻かれ、沢山のチューブを繋げられ、ベッドサイドモニターには心電図が写し出されている。これだけの重傷ではあったが今は麻酔か鎮痛剤が効いていることもあってか、大した痛みはない。このまま病院の売店にも遊びに行けそうなぐらいには身体は問題なく動いていた。まぁ、“入院は前世の私にとってはルーティーン(毎回あること)だった”し、怪我に関してもそのうち治るだろうからあまり気にしていなかった。

 

 ひとまず医師の話では、テロリストとの交渉が決裂し私に銃弾が撃ち込まれたあと、その場にいた特殊部隊の人たちが〈応急手当〉を行い、その甲斐があって一命をとりとめることができたらしい。

 ……おそらく、その特殊部隊の人というのはあのの事だろう。でも、そのあたりの記憶が朧げで何があったのかよく思い出すことが出来ない。脳が度重なるストレスからの自己防衛反応として健忘症でも引き起こしたのだろうか……?

 ……何がともあれ生き延びることはできたのだ。

 聞く話によると東雲革命派とかいうテロリストから性的暴行を受けた学生もそれなりに居たようで、私は私の損害が肉体の傷害事件で済んだことを心のどこかで嬉しく思っていた。

 今後の治療期間としては、全治2、3か月の見込みらしい。この2、3カ月という値は、あくまでも“特殊な”最新最先端医療を導入したときの予定であり、リハビリを合わせた普通の治療の場合はもっとかかる(・・・・・・)(約半年以上)とのことだった。だが私はこの世界についてもっと知る必要があり、時間も十分にかけて調べものをしたかったために普通の治療を選択した。

 ……まぁ、でも。今までの経験から、この程度の怪我は2カ月以内には治癒してしまいそうなものだが……。とにかく今は時間が必要なのだ。それだけは確かだった。

 そのうち警察の聞き込みも来るそうだが、しばらくの間は治癒に専念という名目で家族を除いて面会の拒否をするつもりだ。ほとぼりが冷めた頃合いにでも事情聴取を受けて“よく覚えていない”とでも言っておけば丸く収まるだろう。

 

………

……

 

——1カ月後。

 

……

 

 私の傷は、ほぼ完治と言っては過言ではないほどの回復力を見せていた。

 どうやらこの世界の普通の少女では“ありえない”回復速度らしいが、私やウォシュレットに殺された友人を含む私の友人達、面識のない警察官や専業主婦のおばちゃん、オカマバーの漢姉様(おねえさま)方などを含めた前世の住人達は、このごく一般的な治癒力を全員持っていたし……指摘されるまでは別段、特に何か思うことはなかった。

 だが主治医の反応を見る限りだと、この世界ではあまりにも異常らしいため“外傷は塞がったけど、筋肉の筋と日常生活動作に関連する……『何かすごい後遺症』がまだ後を引いている”という(てい)で病院に今も滞在している。

 ……この治癒力の早さから政府や国家権力に目を付けられ、『キミ、対魔忍の素質あるかもよ?』だの、『やっぱりキミも対魔忍だ!』だの、『やぁ!対魔忍の神葬ちゃん!』なんて絡まれても……正直困る。

 

——『対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい+(ぷらす)』何かをしたいのだから。

 

 『……またワタシ何かやっちゃいました?』的なノリを出して、自分の首を絞めるような最悪な事態は、絶ッッッ対に!!! 避けなければならない。

 またこの治癒力は、私の説明書に記述されている『CALL of CTHULHU クトゥルフ神話TRPG』の64頁“治癒”に関する技法によるもの……と思われる。

 どうやら『CALL of CTHULHU クトゥルフ神話TRPG(61頁)“肉体的な損傷(負傷)”基準なら、耐久値2ポイント以下になるまではかすり傷として扱えるようであり、『新クトゥルフ神話TRPG(116頁)“通常のダメージの効果”基準でも『重症化さえしなければ』やっぱり、かすり傷らしい。つまり、何度でも“生きている限り”現場復帰が望める。

 …………これは前世では普通のことだと思っていたけど……。

 でもこの世界での周囲の反応から察するにこれは異能のようだ。……可能な限り隠さなければならない。……それに、一見この世界の人間からは便利な異能に見えるのかもしれないが、普通に痛覚はあるし、殴打を加えられたり怪我をしたり拷問をされたりすれば……私が身に染みてよく知っているような永久的な地獄を強いられる。場合によっては気絶だってするし、決して万能ではない。だが隣の芝生は青く見えるものだ。

 

 ……とまぁそんな経緯で長期入院することになった私だが、入院費に関しては心配はいらない。

 なにやら()ちゃんと仕事をしなかったから、私の怪我が重度化したことになっており……。国がお詫びを兼ねて意識不明の重体の時から、私の入院 治療費を負担してくれていたようだ。

 いやぁ! たぶん、私から問題を起こしたと思うんだけど、国家公務員(たいまにん)は大変だなぁ!

 

 ——他にも……この1カ月で、ある程度分かったこともある。

 

 まず私の肉体についてだ。私が肉体の器としている少女は『青空(あおぞら) 日葵(ひまり)』というどこにでもいる普通の女子中学生らしい。学力、運動神経は共に平均以下で、個人的には一般人よりひ弱な印象。面会に来た中学教師からの話では、学校でも友達はおらず図書室で本が友達のような……私が思った通り、やはり陰キャだ。学校から千羽鶴も送られてきたが、正直いらないうえ、折り鶴の中身に『そのまま死ね』と書かれていることから、いじめにも遭っていたことがわかる。テメーが死ね。

 『青空 日葵』の両親については、ナイ牧師から説明があったように優しく模範的な良い親で……別に前世の両親に不満があったわけではないが、何かと怪我をした私を気にかけてくれる。 私が病院生活は暇であることを伝え、事件に巻き込まれたせいでちょっと記憶があいまいなため、社会勉強に使う学校の教科書を持って来てほしいと頼めば、味気ない病院食に対抗するための20種類ものふりかけと一緒にその日のうちに必要物品を持って来てくれる気の利く優しさと愛情深い人たち……と言えばわかりやすいだろうか?

 それにしても若いというのは素晴らしい。知りたいことは山のようにあるが、この記憶力と習得力であれば努力次第で私は充分この世界になじめるだろう。

 

………

……

 

——6か月後。

 

……

 

「いいか! 野郎(TRPG Player)ども! 新クトゥルフ神話TRPGを遊ぶ以前に、TRPGを主催者(GM)側として遊ぶときは、“必ず”そのゲームのルールブックを所持して遊べよ!!!

「「「押忍(おすっ)!」」」

「TRPGで裁定がわからなくなった時の為にも、常に手元に該当ルルブを置いておけ! わからないときはその都度確認だ! だがルルブには、七不思議(任意のほにゃ)があったりすることもある! そんな時は卓の仲間と相談をしてカスタム(ハウス)・ルールを用いるのも1つの選択肢だ!」

「「「押忍!」」」

「GMは公平かつ、ある程度PLの宣言とやりたいことをくみ取ることを意識しろ! テメーの考えたシナリオ通りのゲームなんて、アナログゲームやコンピューターゲームと一緒だ! ある程度の自由を利かせてやれ!」

「「「押忍!」」」

「ひまり……? あの……病院のお友達と遊んでいるところ悪いのだけど……大切な話があって……」

「よし! 私はマッマと話があるから、それまで一旦休憩! 各自、新クトゥルフ神話TRPGのクイックスタート・ルール(無料版)を参照してキャラシートを練っておくように! 困ったこと、わからないことがあれば後でKP()に相談してね!」

「「「「押忍ッ!」」」」

「マ、マッマ……?」

 

 そんな今日も今日とて、病院のヒマな時間を他の入院患者と共に内容を覚えるためにも『新クトゥルフ神話TRPG』のKPとして遊ぶ私の元へ母が申し訳なさそうな顔をしながら面会に訪れる。

 ……ん? なんか最後の返事で参加者一人増えているような気がするけど……TRPGの輪が広がるのは悪いことじゃないし、PLが3人だろうが4人だろうが捌き切れるし別にいいか。

 

………

……

 

 ひとまず落ち着いて話が出来る場所に訪れ、母親と向き合った。歯切れが悪そうな様子で今後の日程を告げられることになる。

 

「……日葵、あのね。お父さんの仕事の都合で、どうしても転勤しなきゃならなくなっちゃったの。……ごめんね」

「あぁ、転勤ってことは引っ越し? ……? ……どうしてあやまるの?」

「どうして、って……あなた、学校にいっぱいお友達が居たんでしょう? それなのに、仕事の都合で大切なお友達と引き離すことになるから……」

「あ。あぁ、あぁ……別にいいよ。お仕事なら仕方ないことだし、それにそれは新しい場所で新しいお友達を増やせるってことでしょ? それはそれで面白そうだし……。で、いつ引っ越しするの? 移住先の場所は? 近くに図書館はある? ……あと数カ月の入院予定だけど……引っ越し先に私でも行ける高校はある?」

「えっ。そ、そうね……。高校に関しては、その町にある学校の方から『ぜひ入学してほしい』ってお誘いと、日葵が入学したい気があるなら、入院が長引いたとしてもすぐに新入学対応してくれるらしいから安心して。一応、入学前に学力調査のためにテストがあるらしいけど……あくまでも学力をはかるためのテストみたいだから、入学自体に影響はないと説明を受けているわ」

 

 学校側から入学のお誘い? ……はて? 『青空 日葵』は学力や体力的な状態から考えても推薦されるような人材ではないが……。

 学校側が超少子高齢化の影響による廃校の危機とか……定員割れでもしているのか?

 ……何か、きな臭い気がする。……考えすぎだろうか?

 

「そっかぁ! それは良かった! 学校側から誘われているなら、是非とも私その学校に行きたいな! あぁ~! 楽しみ! ありがとう、お母さん!」

「……。……ねぇ、日葵?」

「……ん? どったの?」

「その……日葵は環境の変化を嫌う方だったから……。……今回の話。……絶対に怒ると思ったのに……どうか、したの……?」

「……。……あー。どうしてだろうね? 今は、そんな気分……って感じ? ……だから」

「そ、そう……」

「うん……」

 

 ……なるほど。『青空 日葵』という少女は母親には嘘の学校生活を伝えていたようだ。

 しかし、この話は逆に現在の私にとっても好都合な誘いであったため、少し大げさに話に好意的反応を返したところ、若干ギクシャクはしてしまったが……。後日、その高校や転勤先の土地についての話の詳細を聞く。

 

………

……

 

 どうやら私は五車町(ごしゃまち)という町に移住し、そして私は五車(ごしゃ)学園という学校に新入学となるようだ。

 ええやん、学“園”ライフ。フゥーッ(Hoooooooooo!!!)! GOSYA(ゴシャ) ACADEMY(アカデミー)!!!(!!!) 学校や大学には前世で行ったことがあるけど、学園には行ったことがなかったんだよなぁ。

 住所は群馬県まえさき市の隣町のようで、山間の小さな町ではあるが、今世紀に入ってから新たに建設された『ニュータウン』らしい。ニュータウン! いい響きだ。

 ……ところでまえさき市とは何処だろうか? 私の知識では群馬県には“前橋市”と“高崎市”があるのは知っているが、“まえさき市”なんて市は聞いたことがない。五車町という町も……この世界の特有の市町村なのだろうか? 少し前世に似ている反面、ちょっとした違いがどうも気になってしまう。

 ……ともかく、試される大地グンマーで『いなかぐらし!』の予定だ。ご近所付き合いや、私も変な素行をしないようにしないと、町ぐるみで嫌がらせをされそう。だけどそんなことにはならないように善処するし『ニュータウン!』らしいし! きっと大丈夫なはずだ。

 念のため入院中に一通りの『五車町 ニュータウン』について聞き込み調査と、ネット検索で情報収集はすることは確定事項である。

 対魔忍の世界に異世界転生したわけだけど、危険な都心部から離れることで、ここから始まる ほのぼの学園生活スローライフ! 正気と生皮を剥がれる殺伐ライフからバイバイしちゃうぞっ☆

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。