忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

106 / 157
今回は海祇島サイドの話です。視点主は基本旅人になってます。

そう言えばゴローですが、原作の稲妻幕府との戦いではなく、ファデュイとの戦いで昇進して大将になってて、目狩り令がないのでこういうことになっていますね。


第92話 一方その頃旅人は…

海祇島にて、私は九条陣屋から帰還し、一日休みを挟んで海祇島軍隊の大将であるゴローに呼び出されていた。

 

「───哨戒任務?」

 

私は彼の話をオウム返しした。ゴローはコクリと首肯きながら「そうだ」と言い、詳しい理由の説明を始めた。

 

「三日前、ファデュイが注力的に陥落させようとしていた九条陣屋から一掃されたことで敗残兵が海祇島にも流れてきていてな。奴らが態勢を立て直す前に、出来る限り数を減らしておきたいんだ」

 

「なるほど…」

 

私は一応納得したので理解したことを示した。が、それと、とゴローは続けた。

 

「近々、稲妻から完全にファデュイを一掃するための作戦が開始される。ファデュイ最後の拠点である鳴神島の離島を攻略する作戦だ。この作戦が上手く行けば、戦争はきっと終わる」

 

「あ、わかったぞ!え、え〜っと…あの、アレだよ…『背後の憂いをなくす』ってやつだな!」

 

パイモンがそんなことを得意気に言った。

 

「『後顧の憂いをなくす』、でしょ」

 

私は若干呆れつつ、そう言った。パイモンは慌てたように「そうそう、それだ!」と言った。

 

「そういうわけで旅人、お前の『メカジキ二番隊』は結構手柄も立てているし、哨戒任務を任せることにしたんだ」

 

それはそうと…とゴローは更に続けた。

 

「ここからは別件なんだけど、報告書も他の隊に比べてしっかりしているんだ。何か書類仕事をやった経験があるのか?」

 

そう言えば、龍災がまだ収束していない時に、アガレスさんの書類作成を手伝ったりしていたことがある。今になってそれが役に立つとは思わなかった。

 

「はい、一応経験はありましたけど…そんなにですか?」

 

私がそう言うと、ゴローはちょっと苦々しい表情を浮かべた。

 

「その…俺達海祇島の人間の中で、真っ当な教育を受けられる者は少ないんだ。だから必然的に報告書の質も落ちてしまう。その点、旅人の作成したものは要点が纏められていてわかりやすくてな。報告書を書く際の手本にしたいんだが…いいか?」

 

自分の書いたものが人の目に晒される、というのは少し気恥ずかしいけど…皆のためだからね。

 

「うん、いいよ」

 

というわけで了承すると、ゴローは水を得た魚のように嬉しそうな表情を浮かべながら尻尾をぶんぶんと振った。なんというか…凄くモフりたい。ゴローは私の視線に気が付いたのか、頬を若干赤らめながらそっぽを向き、コホン、と一つ咳払いをした。

 

「それでは、旅人。海祇島付近の哨戒任務に当たってくれ」

 

「了解」

 

「了解だぞ!」

 

 

 

「───と、いうわけで副隊長の哲平に色々聞こうと思って来たんだ」

 

「隊長…というか、パイモンさんも、普通に頼めばいいじゃないですか…同じ隊でしょ?」

 

私は軍隊というものに属したことがないから、哨戒任務とかよくわからない。というか哨戒ってなに?って感じ。パイモンに聞いたけど、「オイラもわかんないぞっ!」とドヤ顔で言われた。何故にドヤ顔?

 

というわけで同じメカジキ二番隊の副隊長、哲平に話を聞く運びになった。

 

「いいですか?哨戒任務において重要なのは、如何なる痕跡も見逃さない、ということです。ファデュイ…に限らず、敵部隊が既に侵入している可能性も鑑みて、足跡などを注意深く観察しながら───「そういうのじゃなくて、オイラ達は哨戒任務のやり方とか…あ、後は意味について聞いてるんだぞ!!」あ、そうでしたか…」

 

パイモンが哲平の話を遮って言った。哲平はコホンッ!と場の空気を再びリセットした。

 

「さて、哨戒任務は、基本的には常日頃から行われているものです。まぁ、先程も言った通り、ファデュイに限らず、敵軍の侵入を警戒し、発見し次第適応措置をとる、といったものですね。簡単に言えば家の敷地内に不審者が入ってくるのを防ぐボディーガードのようなものです。入ってきたら実力行使をしたり、降伏勧告をしたり」

 

「わ、わかりやすいぞ…!」

 

私も素直に感心しつつ、他の疑問をぶつけた。

 

「じゃあ、哨戒任務は私達だけで行うの?」

 

「いえ、それは違いますね。哨戒任務、と言っても範囲は島全体…中々広いですし、一隊当たりの戦力ではとても無理です。なので、海祇園島では大体、四部隊が合同で行います」

 

「なるほど…じ、じゃあ交代時間とかはあるのかよ?」

 

交代時間…確かに休息は大切だよね。どっかの誰かみたいに休む必要がないからって休まない、とかにはならないようにしないと。

 

〜〜〜〜

 

「ぶぇっくしょい!!」

 

「…?隊長、風邪でしたら休まれたほうが…」

 

「ズビッ…いや、これは誰かが俺のこと噂してるみたいだな…そうじゃなきゃくしゃみなんか出るわけないから…多分」

 

まさか、酒が残ってて体調不良、とかない…よな?

 

〜〜〜〜

 

それはさておき、哲平の答えはシンプルだった。

 

「ありません」

 

「え?」

 

「ですから、ありません!基本12時間はずっとぶっ通しで歩き続けます!しかも時偶戦闘にも突入するのでめちゃくちゃハードです!」

 

「うえ…オイラ、哨戒任務に行きたくなくなってきたぞ…」

 

パイモンがげんなりしながらそんなことを言った。

 

「パイモンは浮けるから大丈夫でしょ」

 

「疲れるもんは疲れるんだよ!!」

 

事実なのに、とは思いつつも、ここらでからかうのを止めた。哲平がスッと背筋を伸ばして言った。

 

「隊長、メカジキ二番隊、出撃準備完了です」

 

どうやら、隊員の準備が整ったようだ。パイモンが再びげんなりする。私も同様だけど、ここは軍隊。加えてモンドを背負ってるし、ゴローにも期待されてるから泥は塗れない。頑張るしかないね。

 

「じゃあ、行こう」

 

「「「応!!」」」

 

 

 

さて、意気揚々と出発したはよかったんだけどね…。

 

「本当になにもなかったな…ただ歩いただけだったぞ…」

 

「パイモンは浮いてるけど」

 

「だから…オイラはオイラで疲れるんだよ!!お前の心配とか…色々あるんだよ!!」

 

それはそれとして。

 

「隊長、やっぱり妙です。九条陣屋から逃げ出したファデュイ達は、確かにこちらへ向かってきていたはずです。なのに、他の隊にも確認しましたが足跡が確認できませんでした。あるのは望瀧村の住民、或いは海祇島軍隊の者と思われる足跡のみでした…どう思いますか?」

 

どう思うも何も…。

 

「やっぱり海祇島には来てないんじゃないか?途中で食べ物がなくなったとかで───「いえ、それはあり得ません」」

 

バッと私と哲平が声のした方向を向くと、人魚のような出で立ちをした女性───珊瑚宮心海が手を振っているところだった。

 

「さ、珊瑚宮様!?どうしてこちらへ…!」

 

哲平が敬礼をしようとするのを心海は手で制して、私達の方へ歩いてきた。

 

「お久しぶりですね、旅人さん、パイモンさん。それと、哲平、旅人さんと少し話がしたいので…」

 

「は、はい!僕はこれで…」

 

哲平は何故か嬉しそうにその場を去って行った。ふぅ、と心海が溜息を吐いた。パイモンが心配そうな表情を浮かべる。そしてそれは私も同様だった。

 

「旅人さん、改めて、少しお時間を頂きたいのですが」

 

「うん、大丈夫。心海はどうして此処へ?」

 

私がそう聞くと、心海は若干だが不思議そうな表情を向けた。

 

「あの…普通にお話がしたかったのですが…その前に一応建前は必要かと思いまして…報告書を読んで私の考えを旅人さんに直接伝えに行く、という名目で抜け出してきたんですが…駄目、だったでしょうか?」

 

「そんなことないと思うぞ!旅人だって、最近折角仲良くなった心海と話せなくて寂しがってたんだからな〜」

 

私は心海の言葉を否定しようとして、パイモンに先を越された。しかも暴露、というオプション付きで、だ。

 

私は自分の頬が熱くなるのを少し感じながら、なるべく平静を装って話した。

 

「うん、パイモンの言う通りだから…それじゃあ、建前の方の話をしよう」

 

そうでした、と心海は言ってからコホン、と咳払いをして空気を直した。

 

「ファデュイの足取りですが、どうやら全員離島へ向かったようです。海祇島に潜伏していたファデュイもどうやら同様で、足跡を残さないように満潮になる直前に出発したとしか考えられない痕跡が多々ありました」

 

それと、と心海は続ける。

 

「このファデュイの一連の行動から推察すると、恐らくファデュイの司令官が戻ってきた可能性があります。離島を攻略する作戦はゴローから聞いていると思いますが、かなり激しい戦になることを覚悟しておくべきでしょう」

 

「今までは、ファデュイが統制を取れていなかったから勝ててたけど…次の戦いはわからない、ってことか…」

 

パイモンが心海の言葉を聞いてそう口に出した。実際、その通りだと思う。アガレスさんも、九条陣屋で相手には最高司令官がいない、とかなんとかって言ってた気がするから。

 

「ですが、落ち込むには早いかも知れません。開戦当初、つまり三年前にファデュイ相手に大立ち回りを演じた鬼の一族の末裔が放棄されたファデュイの基地から救われたらしいです。心強い援軍になるかもしれませんね」

 

鬼の末裔かぁ…アガレスさんは何か知っていたりするのだろうか?と、パイモンが何かに気が付いたようにハッと顔を上げた。

 

「そう言えば旅人、あんまり心配しなくていいんじゃないか…?」

 

「ん?どうして?」

 

「だ、だって…オイラ達には、あのアガレスがついてるんだぜ?なんとかなるだろ」

 

言われて初めて、ああ、となった。

 

「確かにね。まぁ私達も出来ることを頑張ろっか」

 

「おう!」

 

心海は顎に手を当て、何かを考えているようだったが、不意に口を開くと、

 

「アガレス…あの時の彼ですか…旅人さんは、彼を心から信頼されているのですね」

 

そんなことを言った。私とパイモンは顔を見合わせて苦笑した。

 

「え、違うのですか?」

 

心海は驚いたように目を見開く。私とパイモンは口を揃えて同じことを言った。

 

「「信頼はしてるけど、アガレス(さん)はおせっかいだからオイラ(私)達が困ってたら大体のことはなんとかしてくれる」」

 

そう言えば九条陣屋の一件の後、アガレスさんにちゃんと挨拶も出来なかったけど…元気にしてるかな?

 

なんて思っていたら、心海が、

 

「それじゃあ旅人さん、建前の話は終わりましたし、プライベートなお話をしましょう!」

 

「おっ、いいな!」

 

とそう言った。パイモンもそれに同意し、私も首肯いた。結局、その日は就寝時間になるまで心海と色々な話をするのだった。




いやぁ先日はすみませんでした。病院が結構長引いちまいやして…。

更新が今日になってしまいました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。