忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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追記 : ちょっと書き足ししました。私としたことがちょっち見逃しがあったようで。


第105話 武家の再興…?③

さて、淵下宮から戻ってきた俺は稲妻城でゆったり過ごしていた。と、いうのも『俺の青春ラブコメがカオスな件について』の新刊が出たのだ。俺は八重堂に一日前から並び、新刊第一号まで取ったのだ。かなりハードだったが、後悔はない。

 

「作者様、ありがとうございます。いやしかし…その展開はガチで最高だった。これでまだ完結しないのが…くぅ」

 

続き気になりすぎて死にそう。いや、ほんとにマジで。

 

とはいえ、だ。第一号特典にのみある作者のサイン入り色紙とイラストは堪らない。普段は二次創作のイラストとか原作の表紙とかでしかカラーのイラストは見られないからな。カラーの、それも公式のイラストともなればそれはもう喜ぶしか無いのだ。

 

「しかも〜イラストは〜白亜先生にわざわざお願いしたらしいしな〜」

 

ぐへへ、と俺の口からだらしない笑いが漏れた。因みに、本編を読むのを優先してまだイラストは見ていない。世界に恐らく一つだけ…いや、白亜先生と作者様の場所に一つずつだと考えれば世界に3つはありそうだ。待てよ…?そう考えると…。

 

我等が白亜先生と作者様とお揃いって、コト!?

 

というわけで俺は鼻息を荒くしながら袋とじになっているサイン入り色紙と公式イラスト…そして…。

 

「な…んだ…と…ッ!?」

 

俺が震える手で取り出したのは『キャラクター全貌 作画 : 白亜』と表紙に書かれた冊子が入っていた。

 

「挿絵だけではわからなかったキャラクター原案とか色々見れるってことか…昨日から並んだ甲斐があったな。正確には淵下宮から戻ってきてすぐだが…」

 

影や眞からの招致をそう、ちょっぴり無視したが仕方がないのだ。これだけは欲しかったし貰ってよかった。

 

まぁとはいえ、だ。

 

「さて、アガレス。弁明は?」

 

「はい、何も御座いません。全て私が悪う御座んした」

 

「なんですその言葉遣いは」

 

さて、稲妻城内の将軍の執務室で俺は絶賛土下座をぶちかましていた。勿論、理由は眞と影の招致をちょっぴり無視したからである。

 

「何がちょっぴりよ。しっかり二日間も無視してるじゃない」

 

「ちょっぴりだろ」

 

「「違います(違うわね)」」

 

えぇ…などと思っていると影が俺の額にデコピンとしてきた。俺は額を抑える。若干痛かった。

 

「いいですかアガレス。一応、貴方は助言役という役職があるんですから将軍からの招致にはすぐ応じないと示しが付きませんよ?」

 

影は諭すようにそう言い、眞も首肯く。いや、そうは言ってもさ。

 

「どうしても外せない用事があったんだよ昨日は」

 

「あら?終末番から聞いたのだけれど昨日は八重堂に並んでいたそうじゃない」

 

よりにもよって何してんの終末番。ちゃんと働いてて偉いな!お陰で俺は大ピンチだよ!

 

さて、眞は我が意を得たりとばかりにニヤニヤしている。ちょっとだけ八重神子に似てるその笑みをやめて欲しいものだ。影は相変わらずの無表情だが心做しか頬が膨らんでいる。多分だが、拗ねているようだ。

 

「アガレス…私よりも小説の方が大切だったんですか?」

 

眞のニヤニヤ度が増した!俺は苛立ちを覚えた!

 

さて、巫山戯ている場合じゃないな。

 

「影、小説はいつでも読めるものだが、お前との時間は永遠にあるわけじゃない。比べるまでもなくお前の方が大切に決まっている」

 

「じゃあどうして来なかったのかしらね〜」

 

俺は口を噤んだ。

 

それより、と俺は話題を無理矢理変えた。

 

「で?武家の再興に関しては只野家が再興の意思を示している。だが、楓原家はまだ考えさせて欲しいそうだ」

 

楓原万葉に関してはかなり難しい判断になるだろう。自由を愛している彼にとってはある意味では縛られるわけだからな。

 

俺はそのことを伝えつつ、「あまり期待はしないほうがいい」とは伝えておいた。まぁ、元々は『雷電五箇伝』と呼ばれるほどの名家だったのだし、再興にかかる準備は只野家とは比較にならないはずなので水面下ではしっかり進めるそうだ。

 

『雷電五箇伝』はかつて稲妻の最上位にあった鍛造流派だが、うち4つの流派が潰れ、現在は天目流のみが残っている。うち、楓原家は『一心伝』という流派だった。唯一、天目流を除く他の流派とは異なり跡継ぎが一応ではあるが存在しているため、まぁ幕府側としてはどうしても再興させたいだろう。

 

「そう言えば知っていますか?最近、辻斬りが出るんですよ」

 

「辻斬り?」

 

へぇ、珍しいな。大体、そういう事するやつは碌な奴が…って、辻斬りしてる時点でヤバい奴なのは確定してるのか。

 

それはそれとして、辻斬りか。

 

「はい、先の戦で手柄を立てた者ばかり狙われているようなんです」

 

俺は影の言葉に目を細めた。

 

「…司令官などの高い地位を持つ人間は狙われていないんだろ?」

 

俺がそう言うと二人共キョトン、としてそのまま首を傾げる。

 

「アガレス、私達一言もそんなこと言ってないのにどうしてわかったの?」

 

「ちょっと待って下さい…」

 

影は机の上に置かれた書類を手に取り、何枚かを見た後、目を見開いた。

 

「本当ですね…今の今まで気が付きませんでした。実際に武勲を立てた者しか狙われていないようです。眞、天領奉行からの報告にこのことは…」

 

「ええ、勿論ないわよ?で、アガレス?」

 

眞の疑問に俺は普通に答える。

 

「先の戦での司令官クラスが殺されていたのなら、もっと大事になるだろう。と、いうか城下町内でも噂になり、人の出入りもそれなりに少なくなるはずだ。加えて、俺は昨日から八重堂付近に並んでいたが、人の出入りに関しては普段と特段変化はなかった」

 

つまりここからわかることは。

 

「今ですら大した騒ぎになっていないのだから地位の高い人間は少なくとも殺されていないだろう。天領奉行ももっと騒ぎ立てるだろうしな。一日二日サボった甲斐があったということだな」

 

「「それはない」」

 

デスヨネー。

 

気を取り直して。

 

「影、眞。遺体の数と場所をそれぞれ教えてくれ」

 

二人は顔を見合わせた後、書類をそれぞれ確認してから教えてくれた。俺は顎に手を当て、考える仕草をとった。

 

「今の所発見された遺体は5人、まぁわかってることだと思うが死体が見つかるようになったのは5日前からだな?」

 

二人は首肯く。

 

「一日に一人殺されているのなら、今日も恐らく何処かで殺人が行われるだろう。だが、場所の分布には特に共通点はないな」

 

鎮守の森、離島と稲妻城の間の平原、海岸、崖上、そして離島の中、だ。全くと言っていいほど共通点が存在しない。人口密集地から離れているわけでもないため、共通点は全く存在しないのだ。

 

「そうですね…となると予測は難しいでしょう」

 

「ええ、そうね。アガレス、天領奉行に稲妻中を見回りさせる?」

 

影は的を射た発言をしているが、眞のは流石にどうかと思う。人手不足だし全盛期でもそんなの人手が足りない。何より、単独行動が危険だとはいえツーマンセルで動いたとしても恐らく犯人は捕まえられないだろう。5人もの人間、それも戦を知っており尚且武勲を挙げた人物相手に完勝し続けているはずだ。そうでなければ5日連続武士を相手取ることなど出来ないだろうからな。そういうわけで二人で仮に動いても犠牲者を増やすだけだろう。

 

と、いうわけで俺は首を横に振った。眞は冗談めかして少し笑う。まぁどちらにせよ、こちらも本気で言っているとは思っていないしな。

 

「ではどうします?」

 

影が俺の顔を覗き込む。俺は地図を見て少し考え、とあることに思い当たったのでニヤリと笑った。影はそんな俺を見て不思議そうに首を傾げていた。

 

「なんとかなりそうだ。二人共、この案件は一日だけ俺に任せてくれないか?」

 

俺は二人を見据えてそう告げると、不思議そうに顔を見合わせながらも首肯いてくれた。なんというか、信頼が感じられて嬉しいものだ。

 

「それと、アガレス。関連性があるかはわかりませんが、失踪した者が二人いるんです。一応、後ほど資料を自室に送っておきます」

 

最早俺の自室みたいな扱いになっているのか稲妻城のあの一室。まぁ、あながち間違いではないのだが。

 

俺は影の言葉に首肯くと踵を返す。

 

「それじゃあ、俺は準備するからこれで」

 

俺はそう言って部屋を出ようとしたのだが両肩を物凄い力で掴まれた。影に関してはともかく、眞はそんなに握力がないはずなのにどうしてこんなにも力を感じるのだろうか?

 

「「アガレス?話の続きを、しましょっか?」」

 

どうやら、準備はあまり出来なさそうである。




アガレスは白亜先生が誰かを知りません。旅人は勿論知っていますが、アガレスが白亜先生のことを好きだとかは知らないので言っていないみたいですね。

因みに、知らない理由ですが、アガレスなら調べようと思えば調べられますが作者やイラストレーターが何者かとかは詮索しないタイプなので未知は未知のまま、作者は作者として、白亜先生は白亜先生として彼は見ているわけですね。

合間合間に制作してなんとかってとこだな!!はっはっは!

次の更新も結構遅めです。
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